眠れぬ夜に     

        1500光年のかなたからお届けする闇の向こうに見えるもの


                                         top




    【企画書】  2011.04.27.wed.

    コラボレーションしませんか
    詩集をだしたいんです
    私の何かにインスピレーションをうけて
    ひゅひゅんとさらさらさらっと

    空港の会員制の喫茶店に
    他の雑誌とともに
    どうぞ旅のおともに
    ご自由にお持ちください

    機内の映画のかわりに
    ぱらぱらめくってみたくなる
    気晴らしの本
    ふわっと夢をみたくなる

    30ページくらいの
    ペラペラのパンフレットのような
    ページを閉じて瞑想してもいい
    快適な眠りを約束してくれるような

    題名はもう決めてある
    かがり火
    富士山に秘められたマグマ
    ひっそりと沈む樹海









     【路線地図】  2009.04.12.sun.

     その前に
     お気に入りのページを開いて
     見つからないらしい
     読んでいるらしい
     それから今日の予定の場所を確認する
     国立博物館の阿修羅像を見たい
     上野の公園と不忍池
     ぶらぶらして
     ビールを飲む





     【さくら】  2009.04.11.sat.

     ドラマティックに桜がさいた
     出会いをかざる桜の満開
     日本中桜が咲いているではないか
     喜びにみち
     悲しみにみち
     桜が主役になることもあり
     桜が脇役になるときもある
     今年は脇にまわってもらおう





     【変身】  2009.04.10.fri.

     先生には変身の特技がある
     ウルトラマンになったり
     孫悟空になったり
     猫になったり
     満開の桜の花びらになったり
     ちらほらちりはじめると風になる





     【桜満開】  2009.09.04.09.thu.

     ここ1週間ほどときがとまったようだ
     どこへいっても満開の桜
     木曽川の堤防の桜がトンネル
     黒々とした幹が白い桜のかすみの中に見え隠れ
     桜の花が主役
     幹は脇役
     あるところでは薄いもも色がかった雲になりぽっかり浮かぶ
     原子爆弾の太い足のような幹が雲を支える
     町中を流れる川沿いにも満開の桜
     川にふれんばかりに枝をのばし
     ゆらゆらゆれる
     花びらをいちまいも離さず
     しっかりつなぐ
     満開の桜
     今年も満開の桜
     このままの桜を焼き付ける
     まぶたにしっかり焼き付ける





     【入学式】  2009.04.07.tue.

     晴れ晴れとした入学式
     期待をこめてはじまる
     どんな失敗が待ち受けているやら
     とんでもないことをしでかすことを恐れない
     くじけない
     その試練の連続
     神が見守ってくれている
     体育館の壇上から
     1000人を見る
     期待にあふれる人の顔
     静まり返る
     出会いの瞬間




     【ぐっすり眠る】  2009.04.06.mon.

     そのときの偶然の機会をものにするには
     今までの生き方の積み重ね
     どんなチャンスがめぐってくるかもしれないので
     普段から鍛えてゆくのだ
     毎日の真剣勝負の研鑽により
     即座に対応できる
     付け焼刃は通用しない
     自分を受け入れれば
     この世は幸せになる
     眠り起きれば太陽がにっこり





     【春の風】  2009.04.03.fri.

     通学路を歩く生徒
     私は知っている
     声をかけようと思ったけれど
     今日はまだ黙っていよう
     よりそう生徒の手が
     もう一人の肩にのび
     抱きよせる





     【愛している】  2009.04.02.thu.

     こんなにうっとりする言葉はない
     愛する
     文字にするのにはだいぶ抵抗感がなくなってきた
     しかし
     まだ慣れていないので
     口に出して言うのは恥ずかしい
     勇気がいる
     これをさらりと言えるようになったらいいだろうな
     おシャレだ
     おばさんじゃあ言えないよ
     相手がおじさんでもだめだし
     まず猫になってから言ってみる
     それから人間になって言ってみる
     最後に女になって
     愛しているって心をこめて言う

     言葉に抵抗感があるのはいいことだ
     それだけ重みがある
     言葉に精神が宿り力がある証し
     ダイヤを見つけるのは奇跡
     愛するという言葉を発する機会を得るのも奇跡
     ダイヤは見つけられないかもしれないけれど
     愛の言葉を耳に見つけるのはありえないことではない





     【エイプリルフール】  2009.04.01.wed.

     いたずらっぽい目をした猫
     なにかをたくらんでいる
     どこかすねたような
     どこか淋しげな猫
     出入り自由な空間に
     腹をすかせて
     天井裏のねずみを追っかける
     のら猫の機嫌はいつも晴れのちくもり
     その日の予定は朝おきてから
     ぶらりと散歩しながら思いつく
     そのときばったり
     路地裏を歩いていると
     いい匂いが流れてくる
     すきを狙ってうろうろしている





     【謎の人物】  2009.03.31.tue.

     どんな先生が来るのか
     興味津々であろう
     全面開示しないで
     底知れぬ謎の人物]でいこう
     ブラックジャック
     ブラックホール
     ブラックチョコ
     どんな先生でいこうか
     これからじっくり決める





     【意思疎通】  2009.03.30.mon.

     同じ周波数なのである
     同じ言語感覚で
     あれかもしれないれど
     これであってもよいように
     どのようにでも受け取れる
     そういうことはきっとないであろう
     その信頼感で
     自分の思いの中から
     共通項を探り解答を得る
     曖昧な陽炎
     あたたかい空気ががたちのぼり
     そこから見えてくるものたちは
     前もって願っている
     希望とか夢とか虹





     【メールがひらかない】  2009.03.29.sun.

     ヘールソフトの更新が勝手にはじまって
     終わったとおもったらひらかない
     メールがみられない
     メイワクメールが山と送られてきて
     削除するのが日課になっていて
     それも指の訓練頭の体操と割り切って
     だましだまし自分の都合のいいように世界を塗りかえる
     しかしである
     メールがひらかない
     手紙は郵便配達夫によって配達される
     メールは機械によって送受信される
     機械ソフトが機能しなくなってお手上げ
     送れないし受けられない
     いったいどうなっちゃたんだろう
     しばらく困った状態がつづく予定
     メールだけだからまだ救われる





     【エエラルドの海に鮫】  2009.03.28.sat.

     透き通る深い海に鮫が泳いでいる
     上から見ているから今まで見たことがない
     これは珍しいアングルの鮫でよく見ようと身を乗り出す
     すると鮫のような鮫でないような
     頭がヒラメのようになっており巨大な尾びれがひらひらしている
     それがどうしたことか潜水艦のように
     後ろに向かって泳いでいる
     おや珍しい
     山の崖っぷちからのぞく青い海の大きい魚がゆったり泳ぐ
     あまりにも透き通る海なので深さがわからない
     けれど美しい海の色にすかっとする
     大きさから判断すると鮫に違いないのだけれど
     時間を超越した泳ぎ方をする
     前に進んだりそのまま後ろにするすると下がってきたり
     うっとりくらくらしながら
     じっと見つづけている
     海にそそがれる光の明るさにまぎれもない幸せがあり
     どこかひずんでいるようでありながら
     これが夢かもしれないなんて少しも疑問を抱かない





     【雪山】  2009.03.27.fri.

     ソフトクリームのてっぺんに甘い小さなフリンジのチョコレートが色とりどりに散りばめられていて
     見渡せば大きな雪山になっている雪のようにソフトクリームのように
     舐めれば食べられるしそのソフトクリームの山に足跡をつけサックサックと登っており
     どこまでもご機嫌に歩いていると後ろから誰かを探している人々に
     追い越されそうになりながら探されているのは私ではないかと思いはじめ心が騒ぎ
     そ知らぬ風を装いながらどうしたらここから逃れられるだろうかと密かに策を練る
     ゆっくり歩きながら足元の白いキャンバスに描かれたパステル模様のモザイクに惹かれ
     点々とたどりながら幾何学模様になにか謎が秘められているのではないかと
     その謎を解き明かそうと解読に惹き込まれつつそれよりも色の織り成すデザインにうっとりする
     追っ手の目がどうも気になり足早に通り過ぎようとしている
     考えるのは後でいいのだそれよりもこの人々の群れから離れることはできないだろうか
     前にはだれもいないのにだんだん後ろから来る人々の数が増え
     数のなかに紛れそうになるのになぜだか抵抗したくなり
     はやくはやくと前に進もうとする心理とはうらはらにひきとめようとする
     足元の白い雪が美味しそうで舐めたくなり
     美しい彩りに描かれた芸術の謎に時間を奪われそうになる






     【春の朝】  2009.03.26.thu.
     
     いよいよ朝がきた
     いつ目がさめないともかぎらない
     よくめざめてくれている
     身体の細胞が健気に働いて
     今日も元気に朝を迎えられた
     江戸時代だったら寿命が尽きて
     今の時代でもいつ死んでも
     早く死にたいと思っていたときには長生きして
     長く生きたいと思っているときには
     すぐ死んでしまう
     どうにも
     思い通りにならない





     【沸騰するまで】  2009.03.25.wed.

     寸胴の大鍋に湯を沸かす
     これが結構長く
     待っていると
     ちっとも沸かない
     いらついて
     その場を離れると
     すっからかんに
     干あがっている
     あっという間に時間が過ぎて
     水は蒸発してしまっている





     【食堂街】  2009.03.24.tue.

     お昼に並んで待っている
     お店の外に椅子があって待っている
     待って待って待ちくたびれて
     そうとうお腹がすいて
     やっと食事にありつける
     これなら美味しいはずだ
     待つ時間も食事のコースに入っているに違いない
     お昼は時間が必要だ





     【恐ろしい】  2009.03.23.mon.

     長く生きればこの世に未練がたっぷり
     あまりにも美しいので
     アトランダムに
     散らかり放題でも
     意図的に仕組まれているように
     必然のようにも思われて
     選びとった結果なのであろう
     この世のすべてが
     完全に機能している
     生きているように





     【川の光】  2009.03.22.sun.

     山と山の境を川が流れる
     交通渋滞の信号待ちで
     橋の上で待たされる
     春の昼まっさかり
     蛇行する川面に光がまぶしい
     さざ波がこのうえなく美しい
     そうだ写真に撮ろう
     シャッターを押す
     画面を見たら真っ白
     太陽がまぶしくて映らない
     友よ
     毎日何を思いながら写真を撮っていたのか





     【花粉症】  2009.03.21.sat.

     うまいお茶を飲む
     マグカップにいっぱいがぶがぶ
     花粉が粘膜にひっかかり
     免疫抵抗は戦いを挑む
     自分のからだのことなのに
     どうしたらいいのかわからない
     疲れがたまって
     眠りたがっている
     1年の眠りに癒される
     春の花粉の
     華やぎにある





     【見えない薔薇】  2009.03.20.fri.

     それはどんな色をしているのだろう
     どんな大きさなのだろう
     幕がおろされて見えてくる薔薇は
     どんな色をしているのだろう
     まだ咲いていないのだろう
     これから咲かせる希望通りの
     恵みがいっぱいつまった
     5月の自然にはぐくまれ
     誰かが見ていただろう平和の薔薇






     【別れ】  2009.03.19.thu.

     ラッキィーなしゃぼん玉
     空高く舞いあがり
     地上の景色を映しだし
     くるくると回転して
     調子に乗ってくるくる
     軽々と高くのぼるにしたがって
     景色が小さくなってゆく





     【疲れ】  2009.03.18.Wed.

     1年の疲れ
     気を張って緊張しながら
     1年を終えて
     ようやくほっと気が抜けた






     【春の風邪】  2009.03.17.Tue.

     いつかかったのか寒さもゆらいであたたかくなり
     病原菌は3日前には病に倒れ
     まだ完全には治りきってはいないからうようよしている
     一番弱い粘膜はとりついたら離れない喉
     伸びたりちぢんだり筋肉は鍛えられ
     次は鼻だから敏感に反応して
     どうどうと滝のように流れて健康に洗い流す
     なんとなく熱っぽいような疲れを感じ
     半年前はどんな栄養をとっていたのか
     病原菌に打ち勝つ体力
     栄養が豊富で手っ取り早くバナナが食べごろ
     くすぐったい粘膜は
     なんとなく春の風邪のような





     【星の交信】  2009.03.16.mon.
     
     言葉を交わすことはない
     光通信
     こうかもしれないけれど
     ああかもしれない
     ときどき途方にくれる
     人類の平和のために
     役立つかもしれない
     役に立たないかもしれない
     ただ自分のためになるような気がする
     豊かな自分を空想することができる
     個人は星と同じ
     光で通信をしよう
     愛の言葉を伝えよう
     崇高な価値は愛である
     愛をもっともっと伝えよう






     【陽気な運転手】  2009.03.15.sun.
     
     仲間を乗せて運転する
     陽気な運転手は助手席の人としゃべりまくっている
     うしろに乗ってその会話を聞きながら
     ときどき口をはさむ
     夜明けから夕暮れまで12時間
     鳥を見ているときとお昼をのぞいて
     運転をしっぱなし
     任せっきりな私は気楽で
     ほどよいゆれにうつらうつら
     和やかな会話を聞きながら
     子守唄のようにして眠る
     あそこで見た珍しい鳥
     ここで見た思い出の鳥
     退職後の時間をたっぷり使って
     鳥との出会いがたわいない
     一瞬にして目の前を過ぎていった鳥の
     一声しか聞いていない鳥の
     落としていった1枚の羽根の鳥の
     思い出話に花が咲く





     【春の嵐】  2009.03.14.sat.
     
     激しい風が吹いて
     ガラス窓をがたがた揺らしている
     まるで台風のようだ
     ぶわんぶわんと吹きまくって
     カーテンを舞いあがらせている
     いつやむだろうか
     いつやむだろうか
     いつまでたってもやみそうにない
     北風と南風の喧嘩をしているのだ
     どっちもゆずろうとしない
     まだまだ決着がつきそうもない





     【面接試験】  2009.03.13.fri.
     
     中学校で指導を受けて練習してきたのであろう
     面接室のドアを開ける前にコツコツとノックする
     マニュアルがあるのだろう
     ドアを開けて一歩なかに入って礼をする
     集団で面接を受けるので次々に入ってゆく
     最後の人がドアを閉める
     緊張した面持ちで
     面接室に消えてゆく
     なかから受検番号と中学校と名前をいう声がする
     高校入試もすいぶん変わった
     チャンスが何回もあり
     リラックスして受けている
     面接試験も昔はなかった





     【春の高校】  2009.03.12.thu.
     
     運動場には誰もいない
     校内放送が全館にひびく
     入学試験の第1日目
     5教科の筆記試験
     緊張感に静まり返る
     校長室を本部に
     監督の先生が出たり入ったり
     何か異常があれば迅速に対応策が指示される
     ぴりぴりして
     余分な言葉ははばかられる
     お昼には軽音楽がかけられた
     ほっとするお弁当の時間
     すぐにまた午後のテストがはじまる
     また校舎内が静まり返る






     【スポーツ大会】  2009.03.11.wed.

     先生チームと生徒の優勝チームが対戦する
     バスケットの試合
     前半戦は生徒がリード
     後半になって
     先生チームがだんだん追いあげていく
     スリーポイントが決まる
     ドリブルシュートが決まる
     去年より今年の方が強くなっている
     シュートの入る確率が高くなって
     見ていて安心貫禄がある
     カウントダウンがはじまって
     最後の1本が見事に決まって
     試合終了
     体育館が歓声に沸き立つなか
     ホイッスルが高くなりひびく





     【時間よ止まれ】  2009.03.10.tue.
     
     人生のこのあたりでよしとしよう
     ここで時計が止まっても
     きっと満足できる
     今日が一番新しい
     新しいところが最高の瞬間だなんて
     明日はどんな1日になるのか
     今日よりも
     良い日であってほしい

     今日からの日々は
     どこで時計がとまっても
     きっと満足できる
     
     どこで時計がとまっても
     きっと






     【ずっと見ていたい】  2009.03.09.mon.
     
     じゃんけんの相手をしてほしい
     勝っても負けてもどっちでもいい
     ふっと差し出したら
     じゃんけんぽん
     日向ぼっこをしていても
     ふいに出したら
     じゃんけんぽん
     歩いていても
     じゃ〜んけんぽんとはじめよう
     いつ差し出されても
     呼吸はぴったり
     そういう人っているかなあ






     【アリア】  2009.03.08.sun.

     鼻から後頭部にかけて高音域がきらきらと耀く
     雪解けのなめらかにたっぷりとした水量が
     森の樹液をふるわせながら海へとそそぐ
     この世にもたらされた楽器の弦をふるわせて
     透明な怪物がうごめいてきらきらと波がかがやく
     神が支配する声としてうたうイメージが
     メロディーを奏でる声となって流れる
     循環してやまない感情がゆたかに流れ
     無意識に潜在しようとして透明なからだに
     血がかよい
     呼吸をはじめ
     確かな姿をあらわす





     【泣けば】   2009.03.07.sat.
     
     泣けば笑う
     笑えば泣く
     表と裏は反対になる
     両方とも笑えば笑う
     ということはないものか
     きっとあるに違いない
     誰かが半分すつ分け合い
     分業する
     手をとり合って
     喜びに満たされる
     耐えきれなくなって
     狂いはじめる
     どちらかである
     知らない方がよい





     【賭け事】  2009.03.06.fri.

     あと1クラス残っている
     ふと思いつく
     教室に問題集とプリントの束を置いてくるまでに
     まだ隣にいたら話しかけてみよう
     何しにきたのか珍しい
     1号館から3号館まで渡りを歩いて
     それから2階から4階まである
     両手に40人分をかかえ足早に歩く
     いなくてもいいけどいたらいい
     いなかったらこれであきらめがつく
     まあどっちでもいいような
     いてくれたらおもしろいだろうな
     いてくれるといいな
     ちょっとした賭け

     おおいた
     あなたは選ばれました
     ご招待します
     この日を空けておいてくださいね





     【春の川】  2009.03.05.Thu.

     楽譜を覚えなくてはならないからもう知らない
     なかなか覚えられないのは半分ほんとうで半分はうそ
     歌いながらに迷っているから
     迷いながらに歌っているから
     心が定まっていない
     どうかといえば独占しているから
     中断してしまう
     乾いた花火のような
     打ち上げ前の
     予感
     春の岸辺





     【朝のコンビニ】  2009.03.04.Wed.

     駅構内にあるコンビニによる
     ちぎり黒パンに手がのびたけれどかえす
     菓子パンコーナーをぐるりとめぐり
     買うのをやめようかなと思いつつ
     ほっとゆずれもんに目がとまった
     この名前が美味しそうで
     買ってみることにした






     【雛】  2009.03.03.Tue.

     今日を最後に桐の箱
     いつからかずっと蔵の奥に仕舞われて
     それ以来ずっと忘れられたまま





     【卒業式】  2009.03.02.Mon.

     高校の卒業式
     まだこれから大学入学をひかえている
     不安定な時期の卒業式
     あれはずーっと昔の話
     それぞれの忘れられない卒業式があって
     ふいに思い出される
     かけがえのない卒業式
     もうお別れだね

     新しい夢に向かって
     翔びたつ

     また逢えるようで
     逢えることもある






     【ある晴れた日】  2009.03.01.Sun.

     曇ガラスの向こうに二、三日ぐずついた雨が続いたあとに晴れると
     深くたたえた湖が横たわりこころまで晴れやかになってくる
     森の囀りを聞きながら階段をかけおりていって
     遠い国に残してきてたまりにたまった休日にやらなくてはならない家事を
     ひっくり返された玩具箱の中へもとどおりキレイにてきぱきこなす
     目と鼻と口を描いたお日様を背に受けながら洗濯物を干す
     明るい海の波風に吹かれバリ島の働き者でキレイ好きなお母さんになって
     未来永劫つづくであろう宇宙の光にあたる爽やかさ
     雄と雌とを結びつけるように宇宙を旅して届いた太陽の熱
     太陽系銀河の源のエネルギーを浴びた洗濯物で身をつつむ
     何回も経験しているけれど
     そのつど幸せな気分を味わう





     【立ち稽古】  2009.02.28.Sat.
     
     演出家の身体の動きがなめらかで
     喜怒哀楽が言葉と一体となって表現される

     オテッロの幕開け
     嵐のなかの帆の浮き沈みに
     喜んだり悲しんだり
     手は天を仰いで祈りにうつむく
     地にひれ伏したり抱き合ったり
     オテッロを憧れの眼差しで見つめる
     
     感情が身体に表現される
     歌によって
     さらに深まる
     
     感情のうねりが踊りの渦を巻き
     嫉妬に狂う陰謀に巻き込まれる





     【ユーフォーキャッチャー】  2009.02.27.Fri.
     
     透明なボックスのなかに
     ぬいぐるみ・アイスクリーム・アーモンドチョコ・キーホルダー
     ちょっとしたお楽しみな景品が目の前にある
     たいしてほしくもない
     ボタンを押す作業しかない
     ぶら下がっている機械の
     腕が思い通りに動かない
     東西南北のアルミの指に力が入らない
     ガラスの向こうにある景品を得ようとして
     単純な障害により得られない仕組み
     700円の資本投入をして
     収穫はゼロ
     1度はやってみたいと思いチャレンジしてみた





     【砂のような時間】  2009.02.26.Thu.

     もうこんな時間
     貴重な時間が過ぎて行く
     今という時間が大切である
     とはわかっていても
     といってどうしようとしても無駄
     悲しくなってくるよ
     ひとりの人間は生きているだけで価値があり
     こうして生きているだけで
     だれかの役にたっている
     そういうことだ
     だからといって何もしないでもいい
     いいけれども何かしたくなってくる





     【春の雨】  2009.02.25.Wed.

      もう雪はふらない
      あたたかいのは嬉しいような淋しいような
      冬はもう去っていった





     【人間派】  2009.02.25.Wed.

     なんとか救ってやりたいと
     手をあげる
     つきかえされておしもどされる
     それでもなんとか救ってやりたいと
     また手をあげる
     非情にもつっけんどんにかえされる
     横から見ている私は応援している
     なんとしても救ってやりたい気持ちを訴える
     その前のめりに
     私も救ってやりたくなって
     ようやく手をあげる気になった
     なんどもくりかえされて
     ようやくなんとかなりそうになり
     結局なんにも変わらなかった





     【歌の練習】  2009.02.24.Tue.

     会場に着くまでが難行
     ひと仕事終えてから帰宅して
     それから車で30分
     へとへとに疲れ果てもうエネルギーは残っていない
     歌う楽しみにひきよさせられて
     なんとかたどりつく
     歌いはじめると
     生きるエネルギーが湧いてくる





     【月曜疲れ】  2009.02.23.Mon.
     
     土日の休日のリズムから抜け出られない
     月曜からの仕事のリズム
     かっちりと1時間単位で
     時間制限がある
     それはそれで緊張感で引き締まる
     
     柔軟性がないのだろうか
     月曜日の朝が辛い
     仕事を終えて帰宅すると
     ぐったり疲れる
     
     火曜日になると
     それもなくなり
     延長線上のレールの上を滑る
     金曜日までノンストップ







     【ヴァイオリン】  2009.02.22.Sun.
     
     ヴァイオリン ヴィオラ チェロ バス
     重低音から高音まで
     弦楽四重奏
     自分の身体が弦楽器になる
     興奮すればヴァイオリン
     悲しみはチェロ
     淋しさはバス
     切なさはヴィオラ
     鳴りだす旋律にことばをのせる
     哀しみに切なさがいりまじって
     淋しい音色が彩りをそえる
     私はソプラノ
     喜びにあるときしか歌えない







     【洗濯物】  2009.02.21.Sat.
     
     こまめに洗濯をする
     汚れははやく洗って落とす
     それなのに1週間もたまってしまった
     何回もに分けて洗濯
     軒下の南の日当たりに干す
     
     休日の洗濯は晴れてほしい
     ぽかぽかの陽を浴びながら
     人間を干す
     太陽の子どもになる
     
     地球と太陽が同化する
     宇宙は一体化する

     声にならない声を聞く
     ほんとうのところはわからない
     わからないまま死んでゆく の か







     【サーバーパニック】  2009.02.20.Fri.
     
     ある日エラー表示が出て
     ページが開けなくなった
     その原因は侵入者のようだ
     ネットをさまよう海賊が
     隠された財宝を狙って
     しのびこんだ
     
     海賊は海賊でやっつけろ
     もともと財宝なんてありゃしない
     おっぱらえ
     とっとと消えうせろ
     
     ようやくいつもの日常がもどった
     いままでのなんでもないことが
     いかに当たり前でないことなのか
     非日常を日常に生きている
     
     あなたに日常を伝える
     その日常は
     日常の中でも
     特別な出来事である
     奇跡的に困難をかいくぐって届く






     【カサブランカ】  2009.02.19.Thu.
     
     カサブランカの匂いに泣く
     あの匂いが目につく
     全身に匂いがまわる
     すると混乱する
     錯綜して
     おしべもめしべも
     大きく広がる手も
     ついにはまっしろい色まで
     渦巻いてくる
     夜は雨







     【中学生】  2009.02.18.Wed.

     高校生とは明らかに進化の途中なり
     顔は未知への興味にあふれんばかりに幼い
     テレビで煽られるアイドルに夢中になって追いかけている
     凝り固まったアキレス腱のように大人になっても
     月と太陽ほどにも違わないだろう
     高校生はもうゴリラに近い顔つきをしている

     これからどんな可能性があるのだろう
     可能性のまだ1兆分の1すらも知らない顔をしている
     海原に乗り出す海賊の可能性のある分
     地球をとりまく未知数をあらわしている

     サプリメントに手をのばしこれから筋肉マンに変身しそうだ
     食べたこともない味のある顔をつくりたい






     【ワックスの臭い】  2009.02.17.Tue.

     ワックスの臭いがきつい
     においには敏感なので
     自分の身にはにおいが付かないように
     無臭の製品を選んでいるというのに
     ぴりぴりして
     ざらざらする
     しまいにはズキンズキンとくる
     とうとうくらくらして吐き気がしてきた






     【身辺整理】  2009.02.16.Mon.

     もうそろそろかたづけをはじめよう
     図書館の蔵書の整理の放出によって思わぬ本が手に入った
     日本古典文学大系とか動物たちの超能力とか
     参考図書の見本とか問題集とかセンター対策とか
     だんだん私物が増えてきて
     ジャムとか海苔とか餃子のたれまでもある
     もちろん仕事に使った硯や筆も
     自分の手に触れたものはすべて愛おしい
     少しずつ増えてきたから
     少しずつ減らしてゆけばいい







     【アオゲラ】  2009.02.15.Sun.

     丸裸になったブナの林に青い空が春を呼び
     縄文時代から深い洞穴に目覚めたときと同じように
     ケーンケーンの懐かしく澄んだ声がひびく
     騒がしい人の話し声にこたえ
     キャンプ場や避暑地の朝に
     非日常を満喫させるこの鳴き声が聞かれる
     思えば人なつこい大きな鳥で声も大きいから目立つ
     ふっくら眠りは豊かでおなかの縞模様に特徴がある

     幹にぴったり吸いついて林の中を堂々としている
     下の方の茂みには小さな鳥が飛んでは消え飛んでは隠れる
     下から人間が双眼鏡で眺めていても平気だ
     敵ではないことを山を訪れる動物たちはだれでも知っている

     差し向ける鏡は万能には働かず逆光だから
     被写体は真っ黒で実際は双眼も裸眼もはっきりしない
     フィールドスコープで見れば世界に拓かれて確かめられる

     もう少し頭を下げてくれれば赤いのが見られるのに‥
     あ縞模様が見えた私は見ましたよほらこの位置から
     おれ様はキツツキと言ってるぞようやくドラミングだ

     カメラマンは撮影場所を探す
     枝が交錯して絵にならない







     【バレンタインの日】  2009.02.14.Sat.

     エンゲージリングだったのはいつまでも永遠を約束しているからで
     コバルトブルーに澄んだ海のように好きでいるということは
     運命が奇跡的に生まれたばかりのつややかな細胞を孕んでいたことに由来する
     そうまでして離れられないのはいったいどうしためぐりあわせなんだろう
     地球の長い歴史の中で神それこそ神の存在を感じざるをえないではないか
     ことばにはならない感性のやりとりによってということなんだろう
     それはとろけるように粘膜のうすいピンクのビロードを透過して
     愛というこの世のもっとも尊い情熱の呪文にとり憑かれて甘い
     あんなこともあって憎らしいほどに痛めつけられて吹雪だ雹までふった
     こんなこともあってなにかグルになって包囲されてしまったようだ
     賞味期限がはびこっているここでは今というキーワードはあらゆる場面に有効で
     すべて生きているうちは固くしかもほどけやすいからかえって結びつきが
     信じられないくらいによりつよくなってくるというアラジンにはとてもかなわない
     20歳のお別れがバレンタインの日だなんてなんて素晴らしいのでしょう





     【波光る】  2009.02.13.Fri.

     もうだれも歩こうとはしない夜の川の橋を渡る
     今夜に許されているのは人と自転車だけ
     幸いにしてこの橋をひとり占めして川の上にいる
     太平洋に近い汽水域だから
     海の魚も川の魚もゆらゆら尾をゆらし
     川を海がのぼってゆく
     するする大きなヤマタノオロチの大蛇のような
     海抜10メートルから橋の下の川を覗く
     
     頭を水面すれすれに鯉がのぼってゆく
     のぼる水の流れより速く
     三角の尾を引いて
     1匹2匹3匹
     その群れに
     その下をまた鯉の群れがついていく
     
     きらきら星の光がまたたく
     きらんきらん
     十数か所の波が
     いっせいに同じように呼吸して
     金色の光になってたゆたう
     のぼる水面の波の上に
     橋の水銀灯の光が落ちて
     きらきら反射している
     時の流れを刻むように
     春の思い出に逆らうように









     【列車の競争】  2009.02.12.Thu.
     
     名古屋まで
     JR普通列車で通勤している
     JR貨物列車が後ろから追いつき
     するすると追い越してゆく
     かと思うとだんだんスピードが落ちてきて
     後ろへ後ずさりしてゆく
     その貨物のコンテナの動きが面白い
     速くなったり遅くなったり
     コンテナに大きく書かれた文字が行きつ戻りつ
     普通列車と貨物列車がライバルのように競争する

     そこへ新幹線が参入する
     後ろの方から来たかなあと思っていると
     あれよあれよという間に
     澄ました顔して追い越してゆく

     ‥あっ気にとられてしまう
     そこで普通と貨物は仲良くゴールインする
     







     【とてつもなく】  2009.02.11.Wed.
     
     もうすこしやさしくしてくれないかな
     こんなに私がやさしくしてるのに
     
     やさしくしているつもりなんだけど
     いつもやさしいはずだよ
     
     そうかなあ‥
     どんなに悲しい思いをしているか
     わかってないでしょ
     
     わかってるよ
     わかってるけどしかたがないんだ
     できるだけのことはしてるよ
     
     そうかあ‥
     とてつもなくやさしくしてくれているんだ
     わかった
     今日のところはわかった







     【手を透かす】  2009.02.10.Tue.
     
     窓に白い木綿のカーテンがさがっている
     少し窓を開けて春風を招き入れる
     カーテンがゆれて景色がゆれる
     窓を閉めようとした手の影がゆれて
     白いカーテンに黒い影が射す
     その影が面白いので手を動かしてみる
     5本の指がゆらめくカーテンに影の形を変える

     しばらく遊んでいると
     白いカーテンにサーモン色が映った
     手がカーテンを透過して
     白いスクリーンに手を映しだした
     手の色素が光とともに通過して
     あちらの世界から
     こちらの世界へ
     瞬間に連れてきた
     
     手のあたたかい肉の色
     血の通った生の色
     手の本質
     手のイメージを支える







     【電話の声】  2009.02.09.Mon.

     まだ見ぬ人の身体の器官をとおして
     発声される声
     細胞を震わせて届く








     【胡桃パン】  2009.02.08.Sun.
     
     パンの発酵に失敗する
     小麦粉・砂糖・マーガリン・塩・胡桃
     それにイーストを入れて
     発酵させる
     
     失敗した材料がもったいないので
     もういちどはじめからやり直す
     それってありかな
     
     ありえない気もするが
     試しにやってみる
     今発酵させている
     失敗したときはどうすればいいか
     どこにも再挑戦の方法は書いてない








     【見えないものを見る】  2009.02.07.Sat.
     
     見えないものの
     なかでこそ
     見えてくる
     
     それは
     いちずなひかり
     
     まっしぐらに
     すすむひかり
     
     生きているから
     強いひかり








     【見えない】  2009.02.06.Fri.
     
     3割は目からの情報
     この情報が遮断されたら
     パソコンで
     情報を得ているこの情報が遮断されたら
     
     パソコンが壊れることは耳にしている
     まさか自分のパソコンが壊れるとは
     
     金曜の朝
     クラッシュして
     真っ暗になる
     今までのやり方が効かない
     
     見えないという恐怖の底に
     今まで見えなかったものが
     見えた
     7割は
     見えないものを見ている
     7割が支え
     見ている








     【眠い春】  2009.02.05.Thu.
     
     国語研究室で
     日向ぼこをしていたら
     温室のようにあたたかい
     抱かれているように
     やすらかな気持ちになって
     すーっと意識が遠のいた
     ふっと我にもどって
     うっとりするうたたねに
     春が来た
     
     帰りの電車で
     珍しく席が空いていて
     すわって目をつむったら
     すーっと意識が遠のいた
     ふっと我にもどって
     外を見たらどこかわからなくて
     うろたえた
     席を立って降りなければ
     車内放送が流れて
     まだ降りなくてすんだ
     また席が空いたので
     席について
     春が来たんだ

     夢のような現実に
     陶酔すれば
     眠くなる
     春は眠い








     【デズデモーナ】  2009.02.04.Wed.
     
     3幕のアリア
     階段を煌めきながらのぼり
     頂点で
     ころころと転がるCの声
     ピューマが草原をかろやかに駆ける
     君は風を感じるか
     ピアノでもヴァイオリンでも表現できない
     ソプラノの声
     人間の声








     【せきたてられ】  2009.02.03.Tue.
     
     文字にするエネルギー
     感情が湧き起こってこないと
     伝えたい現象があり
     受けとめる受信機があり
     五感を共有する
     
     生きている呼吸
     脈打つ心臓
     悴むぬくもり
     しびれるしもやけ
     
     寒さに震えるから
     あたたかさに震える
     感度良好
     はっきりと声が聞こえる







     【傷の思い出】  2009.02.02.Mon.

     感情が流れ出す
     風がそっと表面を押しつけ摩擦が起こる
     逆なでするような
     皮膚に爪をたてる

     きっといっしょに見たであろう
     目を逸らさない現実
     擦り傷が痛む
     ひりひりする風の吐息

     虹を追ってここまできた
     さらにはるか遠くにある
     死ぬまで
     死ぬまでねきっと







     【うっとり日向ぼこ】  2009.02.01.Sun.

     胸につっかえる
     こわばりがあり
     心臓の弁が動かない
     身体の腱がちぢむ

     日向に解放する
     無理をしない
     疲労がたまってきたのだろう
     休もうしばらく休もう

     日向に身をまかせ
     目を閉じる
     過去も未来も現在もない
     ただ眠る








     【チェ ゲバラ】  2009.01.31.Sat.
     
     はーい ゲバラ
     20世紀の英雄
     どこから感動がわくのか
     どこから情熱がわくのか
     何のために生きるのか
     守るべき祖国
     死して残る名前
     
     エンディングロールのモノクロの文字が
     音も無く
     流れつづける
     
     チェ・ゲバラが最後に見たであろう
     小学校のむきだしの地面の
     はっきりと見える土と小石が
     3発の銃声のあと
     ぐらりと揺れ
     ぼやけ
     消えていく‥
     
     チェ・ゲバラの残したもの
     真の革命家とは







     【応援歌】  2009.01.30.Fri.
     
     この間はありがとうございました
     下駄箱の前でばったりでくわす君に
     一歩過ぎ引き返し
     丁寧に頭を下げて礼を言う
     
     当たり前だよ
     あれはあいつが悪い
     びっくりしたような顔をして
     はっきりと言う

     その当たり前が
     言えないものだよ
     生きた国語の力とは
     君のような発言力を言う
     はじめて高校生の顔が見えた








     【欅のてっぺん】  2009.01.29.Thu.
     
     4階の空に広がる渡りの廊下
     すっかり枝を落とした欅の枝が伸びる
     校舎と背比べをしているような
     ぐんぐん伸びている
     欅の頭がこちらに伸びる
     手を伸ばしたら
     触れそうな
     手を伸ばしたら
     とどかない
     あと5cm
     ぐっと身をのりだして
     あと3cm
     すると中庭の地面が見えた
     高い
     手を伸ばした
     やっと触れられた
     はじめて人の手に触れた欅の枝先
     もっと大きくなれ








     【ソリストの声】  200901.28.Wed.
     
     太陽の光をさんさんと浴びて
     波がきらきらとかがやく
     高音域になれば
     光のきらめきが強く
     華々しくなる
     艶のある色っぽい
     たっぶりとうるおいをふくむ
     若々しい
     川の流れる










     【梅】  2009.01.27.Tue.
     
     梅がつぼみを
     いっぱいにつけて
     青空におおきく手をひろげている
     まだまだかたい
     いやまてよ
     数千個のうち
     気の早いのがいるかもしれない
     梅の木を探してみた
     すると
     もう咲いている
     おおやっぱりあわてんぼうがいる
     真っ先に咲いて誇らしげだ











     【時間の足りなさ】  2009.01.26.Mon.

     洗濯をする
     通勤する
     駆け上り駆け下りる
     授業する
     音読する
     解説する
     想像する
     掃除する
     すきま時間を利用して呪文を唱える
     クリーニングに出す
     ボタンを探す
     ボタンを付ける
     挨拶をする
     入浴する
     おさらいをする
     風邪をひかないように寝る
     夢想する








     【イタリア語の暗譜】  2009.01.25.Sun.

     早口言葉
     3連符に乗せる言葉
     音の流れは一度聞いたら記憶に残る
     イタリア語は
     未知の世界

     子音が多い
     全く日本語にない
     生活圏の違う言葉
     同じ地球人とは思えない
     海を隔てたユーラシア大陸の言葉

     呪文を唱える
     リズムや音にのせると言葉が踊る
     暗譜の山場
     1歳の子どもの言葉の獲得
     意味もわからぬ言葉のシャワーをあびせる






     【雪がふる】  2009.01.24.Sat.

     晴れているのに冷たい風
     ほうらおもったとおり雪
     晴れているのに雪
     遠くから風に吹き飛ばされて
     晴れていても融けそうにないぼたん雪
     上空でもっと大きなぼたんだったのだろう

     だんだん雲が張り出してきて
     雪また雪の本格的な雪
     ふれふれもっと
     ふれふれもっと
     大雪小雪
     窓の雪に楽譜を忘れる

     だんだん晴れてきて
     勢いがなくなってきた
     いいんだよそれでも
     感動的な贈り物
     土曜日まるまる雪に密着

     晴れてきた
     抜けるような青空
     優雅に思い出の格納庫
     いち日のドラマ
     2009年はこうしてはじまった
     雪のような愛
     愛のような雪







     【石のたたき】  2009.01.23.Fri.

     6時集合橋の上
     若者の車体の高さ
     静かにロックがかかる
     名古屋の街中入り組んで

     こじんまりとした和風の建物
     むきだしの木のぬくもりの壁に道
     するすると木の戸を開ける
     と昔ながらの石のたたきの広さ

     叩き石に並ぶ靴
     備前の大壺に
     梅の枝に花の咲く
     陰影礼賛

     蟹の茶碗蒸し 山芋の胡麻だれ 貝の味噌和え
     さわらの西京焼き かぶらあんかけ胡麻豆腐
     黄瀬戸
     くわい・人参・たらの天麩羅 ぶりしゃぶ
     浅漬の白菜・沢庵 味噌汁 炊きたてご飯
     苺・グレープフルーツ・小豆餡のデザート

     国語部会の新年会
     飛び交う会話を聞きながら
     うなずき笑い
     上品な京料理








     【アップルパイ】  2009.01.22.Thu.

     林檎をむく
     8つに切ってこまかく切る
     水と砂糖のなかに入れて煮る
     とろりとあまい林檎になる
     だれでも知っている
     
     小麦粉とバターとオイルと水を混ぜて
     三つに折ってまたのばし
     三つに折ってまたのばし
     力がこもる
     三つに折ってまたのばし
     待つ楽しみ作る楽しみ
     
     パイ生地に
     林檎をぎっしり詰めて
     オーブンで焼く
     美味しいパイの出来上がり
     泣きたくなるね
     
     何度も繰り返して作るうちに
     レモンや塩や砂糖や林檎の量の加減が
     目分量でわかるようになる
     シナモンやブランデーを加えると
     マリー・アントワネットの味になる
     世界一美味しい
     忘れられない







     【猫】  2009.01.21.Wed.

     ロシアンブルーの猫
     の目に
     ルビーの光が入る







     【赤ちゃんの声】  2009.01.20.Tue.

     赤ちゃんの声
     帰りの車内で探す
     ふたつ前の座席から
     若いお母さんの頭が見えた
     
     赤ちゃんは見えない
     声が場所を特定する
     それで安心した

     そっとしておけばいいのだ
     母親に抱かれて
     眠っているはずだ
     赤ちゃんの声は眠っている






     【川の冬木立】  2009.01.19,Mon.

     木曽川の川
     防水のために植えられた木立がある
     川と堤防のあいだに
     雑木林がある

     川をのこしたいなら
     林をのこさねば
     デ・レーケの思想を受け継がねば

     伐採して公園になってしまう
     今見ている林は
     のこっているだろうか
     今見ている川がざわめく





     【草野球】  2009.01.18.Sun.
     
     監督の指示を聞いて
     試合開始
     守備位置に散らばる
     ユニフォームから声
     
     一斗缶に背を向ける
     火にあたる
     だだっ広い河川敷
     背に火のぬくもりは

     冬の木立が風除けになるか
     伊吹の山は真っ白
     冬の川が光る






     【夜空】  2009.01.17.Sat.

     夜空が見るたびに明るい
     昼間の空と変わらない
     色彩をとらえる目が更新される
     昼間より綺麗な空色になる
     それでいて
     星の光は貫く輝き
     いったいどうなったのだろう
     夜の空が輝きを増し
     雲の白さも純白だ






     【鳥のざわめき】  2009.01.16.Fri.

     鈴なりの熟して甘い満天の柿
     鳥が森の朝を告げ
     町中のひよどりを集め
     ひっきりなしに鳴きづめに鳴く
     数十羽
     枝という枝にひよどりが集まり
     メジロもひよどりの目をうかがいながら
     柿という柿に嘴をつく
     マリアのてっぺんで
     ギーイヨギャーピヨ
     甘柿の美味さに声をあげる
     仲間を呼び集める
     朝から夕方まで
     もう3日もつづく
     けたたましい鳥の森の朝
     ひよどりは食べつくすまで






     【玉手箱】  2009.01.15.Thu.
     
     次々ととりだされる
     iPodには6000曲
     日本語の本を読んでいる
     面白ければ原書を読みたくなる
     さっととりだす
     鞄から英語の本
     ふらふら目の前を泳ぐ
     じゃあお次は
     イタリア語の楽譜
     感動する10の風景
     安く泊まれる宿とイベント
     重い鞄は肩にずっしり






     【冬の夕焼け】  2009.01.14.Wed.

     地球と空との境のあたりが
     ピンク色に染まりはじめる
     パソコンのデータを消去
     部屋の空気が冷める

     火が燃えているようで
     寒いのに
     閉めきる南の部屋は温室
     理路整然と整理整頓

     夕日を背中に浴びながら
     同僚といそぐ
     時間配達人のアタッシュケース
     長い足が一定のリスムを刻む

     冬の橋
     波長のあう
     波の音と風の音
     夕日の色

     御在所では霧氷
     スキーの話にかがやく
     もうすぐ春が
     別れの足音を聞いている







     【流れる雪に風を見る】  2009.01.13.Tue.

     4階のはじっこの教室の一番西の窓から雪を見る
     するとうしろから吹きつけ斜め東へ流れる風の道がある
     風の道は透明なトンネルとなってゆるやかに落ちてゆく
     無風の空間には素直な引力に従う雪がふる

     上から下へ
     真横に流れ
     その向こうは逆流する
     放物線を落ちる
     吹き上がる

     するすると太い風のとんねるが
     雪の通り道をつくり
     入り組んで
     そのなかを雪がふわふわと流れる






     【雪】  2009.01.12.Mon.

     夜明けの雪は暗闇に隠れて
     ふる雪が見えない
     白い綿帽子をかぶり
     寝静まる
     
     夜が明けて
     鳥が騒ぐ
     武者震い
     喜んでいるのか
     
     日が射して
     それでもまだふっている
     時間の問題だ
     雪がとけはじめる
     
     雪がやんだ
     やんでしまった
     そういうことなんだな
     やむにきまっている
     
     みそれだ
     重そうにぼたっとして
     涙のようねえ
     そのうちやむでしょ
     
     日が射す
     降り積もった屋根の雪がとける
     道路の雪がとける
     庭の木々の陰の雪もとける





     【メロディー】  2009.01.11.Sun.

     オテロの曲は難しい
     何度聴いても楽譜と曲が合わない
     音符を追いかける
     歌詞を追う
     曲の輪郭をつかまえる
     だんだん慣れてくるに従って
     音が束になって親しんでくる
     身に沁みてくる
     肌になじんでくる
     曲が身についてくると
     体感する
     曲が身体の一部になって
     芽生えはじめる





     【煮え立つ湯】  2009.01.10.Sat.

     大鍋に湯を沸かす
     だんだん温度が上がるにつれ
     液体のなかで対流する
     細かい粒が上がり
     まだまだ
     表面が盛り上がる
     水にも膨らむ気持ちのようなものがあるのか
     ぼっこんぼっこん
     なめらかに下から沸きあがる
     っぼこっぼこ
     ぐっと待ち
     ぼこぼこぼこ
     水が燃えぐらぐらとくる
     煮えくり返る
     ほうれん草の束を入れる






     【校長先生の鞄】  2009.01.09.Fri.

     重い鞄の口が開いていてちらり
     ぶ厚い新刊書が3冊いや4冊かな
     この3連休はどこへもいかず
     本を読むということらしい
     どんな本を読んでいるのか
     今度お会いしたときに
     聞いてみよう
     専門は数学
     題名でなくとも
     どんな領域かだけでも





     【錆ついた手袋】  2009.01.08.Thu.

     校門を閉める鉄の棒が錆びていて
     力を入れて両穴に通そうと四苦八苦した
     やっと通り
     ただそれだけで今日1日の運を使い果たしたようだった

     手袋をはずそうとしたら
     毛糸の手袋が赤茶色に変わっていた
     落ちないだろうなと諦めた
     しようがないな

     もしかしたらと思い直す
     石鹸で洗ってみたら落ちるではないか
     錆をすっかり洗い落とし
     それから手袋をもういちど丁寧に洗った

     もう捨てるしかないかと思ってから
     みるみる綺麗になって
     よれよれにのびてやわらかく
     よりいっそうあたたかい






     【ゆるやかにはねる髪】  2009・01・07 Wed.
     
     髪が伸びた
     久しぶりに車窓に映った自分の髪を眺めた
     肩を越えて垂れ下がった髪は
     自由奔放にとびはねている
     背中の髪のしたたかさ
     毛先がくるりんとあっちこっちに意志をもち
     万有引力にはっきり抵抗している
     美容師が造ったのではなく
     勝手気ままにばらばらになって
     それでいて顔につりあって
     ちょうどよい
     車窓に映った顔と髪のバランスと
     髪の流れる造形美に見とれた
     ぼうっと実景と虚像にまみれ
     実在する自らの髪の主張を
     静かに聴いた






     【魂の昇華】  2009.01.06. Tue. 

     空の青に憧れる
     日に何度も見あげるのはそのせいだ
     あの青の純度に心を昇華させる
     見ていれば感染する
     頭の中は青い空でいっぱいになる
     からりと晴れて光に充ちる

     悲しみはさしずめ白い雲
     空には空気の層があり
     流れの速さや方向が違っている
     風の種類も層によってさまざまになる
     その層に流れる雲の種類も多様になる
     雲の悲しみの層はたがいちがいに行き交う
     
     上空に広がる空が心模様
     雨がふったり雪が舞ったり
     空を行き交う風は縦横無尽
     自由を満喫している
     強かった弱かったりのろのろしていたり
     風は無色透明な流れ
     とどまることのない動き
     空のなかに風を見る
     見えないけれど
     雲や雨や雪はともだち






     【目にしみる】  2009.01.06. Tue.

     こんな1日がまるっと美しい
     あふれそうになる涙をこらえてすごすとき
     聞こえてくる人の声がやさしくなめらかになる
     みあげる空の青さが目にしみる
     通勤電車の人の立ちすがたがゆっくりゆれる
     川の流れがよどみ遡上する魚の泳ぎ
     とりわけ夜の空が昼間よりも光を抑えて深みをます
     宵の明星が光年の光をとどける
     とげとげしさがなくなりうっとりとした色になる
     感情の波がうねりさざ波にざわめく
     ゆっくりとさかのぼるような時間の流れ
     あしもとを見ながらおりてゆく階段
     透明なエレベーターの大きなネオンが上昇する
     やわらかい羽毛にくるまれた眠りに
     ひとすじの涙が耳もとにたまるころ
     やさしい眠りにささやかれて落ちる
     あふれそうな涙をこらえながら1日をすごす
     水の妖精





     【楽しいことを考えようよ】  2009.01.05. Mon.

     そうだ
     楽しいことを考えようよ
     今日あった美しいこと
     街を歩いて交差点で止まった
     木枯らしが吹いて
     凍えるように寒い
     身を縮こまらせているときに
     目の前の女性のマフラーが
     黒いコートに白いマフラーが
     風に靡いて背中一面にかぎりなく広がっていた
     かろやかにひろがりなびく風のいたずらに
     目を泳がせていると
     ふと隣りにいた男性の手がのびて
     背中にひろがったマフラーを
     するするたくしあげて女性の首に巻きつけた
     女性の背中は黒くなった
     ふたりは顔を見合わせ幸せそうに微笑んだ
     木枯らしはからからと音をたてて
     路上の枯葉をころがらせた
     からからとした音はかろやかにひろがった
     これからは
     今日あった美しいこと
     ひとつひとつ
     書きとめていく





     【さあどうする】  2009.01.05.Mon.

     難問だ
     解けない問題が天から降ってきた
     さあいったいどうしろというのだ
     さあいったいどうしたいのだ
     金星が淋しく光る
     
     だからさあ
     人をたよっちゃいけないのよ
     だからさあ
     もっと明るく正直にね
     金星が淋しく光る
     
     どこかの星がひとつ消え
     どこかの星がひとつ生まれる
     銀河の星は人の数より多い
     星はかぎりなく遠い
     金星は淋しく光る
     
     人間には感情があり
     その感情がその人を生かす
     それぞれ精一杯に生きているのさ
     独立して
     金星が淋しく光るのみ





     【各駅停車】  2008.07.09.Wed.

     田舎から仕事場である都会は名古屋
     その郊外の海に近い汽水域
     木曽川のふるさとからあとをつけて流れだしてくる
     あの地点の一滴がここにきておおきく出会う
     たったの一滴かもしれないけれど
     たましいにおおきな流れとなってどうどうとひびく
     たちまち身体の水分が川となり海となり
     この水の星である地球になる
     その一瞬ののち電車は駅にとまり
     仕事場に向かう





     【今日のはじまり】  2008.07.08.Tue.

     新しい駅
     エレベーターが手前にありかごが天井から吊リ下がって見える
     透明だから計算できる
     2階から下りてきて扉が開き2階までゆくのと
     しばらく歩いてからエスカレーターに乗ってかけのぼるのと
     どちらが早くたどりつけるだろうか
     1日のはじまりを計算する
     1瞬の判断がその日を占う
     だれかがボタンを押したようだ
     とたんに心のスイッチが入る
     うさぎと亀の競争がはじまる
     どちらが亀でどちらがうさぎだろうか
     早くたどり着いた方がお山の大将になる
     どっちだっていいのだ
     ただ今日1日の占いをはじめたいだけ





     【デジャヴ】  2007.03.29.Thu.
    
     展開の奇想天外・歪み・亀裂を補い納得させながら追う
     その思考の速さに程よく合わせて進むスリルに力が入り
     久々に面白いタイムトラベルで
     喪失感を取り戻す迷い無き執念の強さに
     ハッピィエンドの恋愛志向は充溢し
     観終わってからは自分のいない死後の世界に恐怖を感じ
     救われ取り戻した世界を思ったら
     ダグがあなたに思えたクレア





     【子ひつじ】  2007.03.20.Tue.

     ゴンドラにふたり乗って揺られ
     てる気分になってるところへウ
     はうさぎのウ涙がにじんでくる
     ねここ最近は不安を通り越して
     もっとはっきりした激動をなん
     とか持ちこたえられているのは
     流されていく日常と愛に支えら
     れているからで詳しくは伝えき
     れないだからほんとしみじみ
     シャボン玉です






     【あれもこれも】   2006.08.03.Thu.

     みんな知ってもらいたい
     美しい世界が取り囲み
     うっとりながめる脈絡を





     【すかんぽ】   2006.05.09.Thu.

     すかんぽよ
     草の群れから炎たち
     あちらにそちらにゆらめいて
     優しいいのちをそよがせる
     
     すかんぽ すかんぽ
     人の影絵の蜃気楼
     幼いころを透かし見る
     あれもこれも私だった

     すかんぽのように
     立ち居振る舞い
     おさないころにも
     立ち止まり
     初めてであった景色に
     ぼうぜんとした





     【グレープフルーツ】   2006.04.24.Mon.

     両手でふわりと包み 包みきれない
     明るい黄色がはちきれる
     
     なんだかむしょうに 食べたくなって
     包丁でスパンと真っぷたつ
     
     せっかくここまでやっときた
     なにか隠してやしませんか
     
     ぽっかりあいた風洞を
     埋め尽くすように
     グレープフルーツに
     むしゃぶりつく
     やわらかい果肉からしたたる
     指先に沁みる
     指から手へと伝わる
     びしょぐしょになる





     【詩の感触】       2006.04.05.Wed.

     放送室に集められた副教材の
     漢字ドリルを選ぶ
     どれにしようか
     どれもこれも同じに見える
     ぱらぱらめくり
     去年と同じでまいいっか
     ぱらぱらめくり
     
     「詩」に出会う
     おや詩の意味は‥
     詩を使った熟語は‥
     詩を読むより詩を書く方が
     外国の詩人よりすぐれた詩人
     よくよく見れば
     大きく書かれた詩の書体が微妙に違う
     
     もう一度ひっくりかえし
     詩のページを広げ
     漢字ドリルをじっくり見比べる





     【果実】          2005.09.30.Fri.

     実りの秋 すっかり秋
     毎日届く檸檬の香り
     死にそうな脳を覚醒させる
     新しく目が覚める
     
     近くにいても届かない
     遠くにいるのに届いてしまう
     どんどん水嵩は増してきている
     
     人間に絶望していたのかもしれない
     わかったつもりになんて
     なれるわけがない
     この自分でさえわからないのに
     
     極めて正常にできているから
     読めばわかる
     わからないのは
     表現力不足ということできり捨ててしまうけど
     
     それがどうだろう
     どうしたことか
     こころを覗かれているような
     錯覚にとらわれる
     それがどうやらここちよい





     【毎日がローマの休日】  2005.09.20.Tue.

     どこか知らない街にまぎれこみ
     見るもの聞くものが新しい
     時間旅行をしているようで
     映画のワンシーンにすれ違う
     解体する言葉がひるがえり宙に舞う
     少しずつ歪みわずかにずれを生じて
     奇妙なかたちをかたちづくり
     風の断層にゆさぶられ
     予測のできないすがたで舞い落ちる
     その途中経過をうまくとらえられると
     詩になる
     懐かしい郷愁の中に
     泣きたくなるような瞬間があり
     心のすき間に剃刀が横断する
     歓びのすぐとなりに悲しみが横たわっている
     だからきみ
     ぴったりとはりついていないと
     剥離してしまうのだよ





     【本人確認】           2005.09.01.Thu.

     日本国内では実印と印鑑証明書
     海外では署名あるいはパスポート
     原稿用紙1枚の文章でも
     絵画
     曲
     リズム
     メロディー
     声
     手つき
     歩き方
     話し方





     【拗ねて】             2005.08.29.Mon.

     どれだけわがままになってゆくのだろう
     きっと女王さまはいやしない
     月が欠ける
     としても月は星
     規則正しく宇宙に従う
     人の定めたきまりに従い
     とんがった皮膚がひりひりする
     焼け爛れた皮膚をかくそうとして
     すこしはおとなしくじっとして
     月は銀色に影をあたため
     徐々に明るく燃えてゆく
     どこまでも越えようと
     際限の無い欲望
     目を見開いて
     飢えた子猫はたむろする
     どこまでもわがままになってゆくのだろう





     【どっぷりうっとり】        2005.08.14.Sun.

     お人よしで損ばかり
     でもそのおかげで
     後ろ指さされることなく
     大きな顔をしていられる
     なにかそこってつつかれても
     こういうことだったんですけど
     はっきり胸をはって言い切れる
     馬鹿じゃないって許されるものでもないけれど
     
     馬鹿正直に生きてきて
     ここにきてようやく
     認めてくれる人があらわれて
     人生ってすてたもんじゃないなって
     ワインレッドのオーラがかかって
     芳醇な香りがただよう
     
     ものごとは
     純粋であるほど単純で
     贅沢なほど質素なものである





     【色の識別】           2005.08.11.Thu.

     青色 誰もが見上げる空の色
     
     私の好きな青色と君の好きな青色と
     同じであるはずがない
     気分によって色が変化する
     
     私自身今日の青と昨日の青と
     同じとは言い切れない
     色が光の産物としたらこの青は
     時刻によっても微妙に変化する
     
     微妙にずれる青の色
     微妙に揺れる青という言葉
     揺れるずれる言葉の彩
     
     どうしたら私の青と君の青を
     すりよせられる?





     【鐘が鳴る】             2005.08.09.Tue.

     奏でるほどに
     すみやかに
     澄んだ音色を
     
     運動神経と一緒じゃないかな
     練習を重ねれば
     そこそこ
     さまになってくる
     
     イメージトレーニング
     これがいちばんやっかい
     なかなか
     像を結ばない
     
     まだ迷いがあって
     信じるという
     言葉の意味が
     つかみきれていない





     
     【神秘なる力】             2005.08.08.Mon.

     手をかざす
     光が反射して穏やかな
     暖かい色に包まれる
     神の手はおそらくこのような
     
     そっと手を触れれば
     痛みが和らぐ
     安らぎが宿る
     
     痛いの痛いの飛んでいけ
     青い魔術師が
     ぽろりと口をすべらせて
     呪文を人に聞かれてしまった
     
     呪文を唱えるときに大事なことは
     祈りをこめて
     肌を優しく そーっと
     なぜてあげることなんだよ
     青い魔術師は
     黙って空から見ているばかり
     じれったい思いをかみしめながら





     【音とリズム】             2005.08.07.Sun.

     言葉より
     目で追うよりも
     音とリズムに従って
     反応してみてごらん
     人間の殻がやぶれて
     卵に返る





     【現在に未来と過去】         2005.08.06.Sat.

     今ここに立つ私が
     未来から懐かしい思いを抱きつつ
     眺めている
     そのときの私は過去の人である
     
     この今という地点は
     未来からすれば
     もはや取り返すことの出来ない
     動かしがたい貴重な座標点である
     と同時に
     タイムトンネルで未来から過去へさかのぼり
     今ここに降り立つこともできる地点でもある
     
     未来から今へやってきた私は
     いったいなにをするのだろう‥
     
     今の私を未来から
     うっとり懐かしんでいる私がいる
     そしてつぶやく
     あああのころは良かった
     もう一度あのころにもどりたい!





     【砂浜】       2005.08.05.Fri.

     テトラポットが入り組んで
     波打ちに転がされ
     浜昼顔の葉がコンクリートのざらついた肌をのぼる
     こんもり盛り上がり生命が息づく
     
     しっとり砂が素足に這いよって
     15万年前のアフリカの
     黒人の遺伝子に回帰してゆく





     【タイマー】   2005.08.04.Thu.

     タイマーのなかには
     苦しみに嘆いたぶん喜びがつまっている
     
     悲しみの数だけ花の名前を覚え
     喜びの数だけ花の名前を忘れる
     辛い現実から逃れるために花の図鑑を開いた
     毎夜花と名前は涙に滲んだ
     透明なベールの向こうに咲く花はかなしい色を帯びていた
     毎日まいにち花の図鑑を見て眠りについた
     いつのまにか植物学者のように花に詳しくなってしまった
     10年間花は悲しい色をしていた
     
     悲しみの数だけ花の名前を覚え
     喜びの数だけ花の名前を忘れる
     
     花の名前を知っているのは辛い
     悲しみとワンセットになってついてくる





     【スタミナラーメン】   2005.08.03.Wed.

     暑い
     うだる
     こんにゃくになる
     拡散してクラゲになる
     今日はここらで打ち切り
     もうダレだれなんだも〜ん
     
     って息抜きにちょっと覗いてみたら ぷっ
     ななんとうまっそーうなトンコツラーメン
     えーーっ
     差し入れですか?
     絶妙なタイミングじゃありませんか
     うう〜‥ん
     ははは読まれてますねぇ

     油ののったスープに
     もやしと人参とキクラゲ
     レンゲに入っているのは唐辛子ですか
     熱あつのラーメン いっただっきま〜す
     
     暑さは熱さで迎え打て
     そうかそうかあ
     もっと熱くってことね
     わかりやした





     【宇宙探検】     2005.08.02.Tue.

     知らないうちに深い森の中で
     たくらんでいる
     蜘蛛の巣が張り巡らされ
     見えない虫たちが蠢いている
     悪魔の囁きだって聞こえてくるさ
     なんでもありの世界
     黒曜石も何億年を閉じ込めるチャートも
     同じ比重で自由自在に操れる
     孤独な空間ではあるけれど
     だれにも開放されていて
     魂の救済であったりする
     ただし神聖でないと
     ただの石っころになってしまう
     もっかのところ
     新しい宇宙に向けての探検が
     このうえもなく楽しい





     【草刈り】       2005.08.01.Mon.

     庭が荒れて背丈ほどにも猫じゃらしが伸びてのびて
     石畳の両方からハーブの一群がせりだしてせりでる
     秋名菊の子株が石の間をぬって這いだしてもいて
     盗人萩が苔の上に根を張りおおいかぶさる
     笹百合は埋もれて姿はまったく見えないし
     クリスマスローズのこぼれ種の植え替え苗は菫ほどしかない
     それでも花は草と共生していた
     
     ある日
     荒れた庭を見かねた父は
     綺麗に庭の草を刈った
     花と草を見分けられない父であった
     
     綺麗になった庭に新しい空間が広がっている
     またはじめからはじめればいい
     ありがたい父の姿である





     【生きて】       2005.07.31.Sun.

     突然岩が落ちてきて圧死する
     胸が苦しくなった 呼吸が止まった
     君が死んだらと意識にのぼったその瞬間に
     
     どうやって生きていけばいいんだろうと
     つぎに思った
     
     あんなに強烈に死を
     真実に近く感じたことはなかった
     
     流れる涙の先に
     いつもと変わらぬ蝉の声
     夕立のあとの濡れた木々
     空は青い色をなしていた
     
     それでも歌を詠えるのだろうか
     それでも生きていられるのだろうか





     【あの日】       2005.07.31.Sun.

     太陽が南中したころ
     玄関をくぐり階段をおり地下の会場を確かめる
     ドアの向こうで準備する人影と話し声
     なにか大きな幕が上がるのをそっと影から覗き見する
     それぞれの思いが集う会場はまだがらんとしている
     1時間も前に着いてしまった これでまずひと安心
     ゆっくり階段をのぼり踊り場を曲がり外に出て深呼吸
     さてと
     時間になるまでまず会場の周りを大回りに歩くことにする
     玄関を出て北へどんどん歩く
     どんどん歩いて
     遠く離れすぎてわからなくなったところで
     西に曲がりまた南へ東へ北へぐるりと一周する
     そしてまたもとの会場に着く
     玄関を見上げてまたひと安心
     さてと
     まだ時間があるのでもうひとめぐりする
     今度はもっと時間をかけて
     建物やフェンスや木々や道路を記憶にとどめるために!
     あああの建物やフェンスや木々や道路はいまごろどうしているのだろう
     あの真夏の日差しを受けて1年前と変わらずそこにあるのだろうか
     わくわくしながら一歩いっぽ踏みしめて
     刻一刻とときが近づくのを待ち構えていたあの日
     運命の出会いがはじまるのを私は知っていた





     【待ち遠しくて】       2005.07.30.Sat.

     もうすぐあえる
     あの高原を走る野うさぎのくりっとした目が誘う
     雷神はけだるい暑さを吹き飛ばす氷の蒸気を吐き出す
     竹の林を真っ直ぐに翔けて来る甘い言葉の群れ
     遠い未来から呼びかけてくる切なさに涙を流し
     暗闇に叫ぶ歌になにか尊いものを発見したかのように
     それは一筋の光
     大事なものを告げにやってくる
     宇宙の真理が投げかけてくる
     素晴らしいひらめき
     全細胞を解放して宇宙と交感すればきっと通じる
     研ぎ澄ませ
     その訴えている叫びを聞け
     単純であればあるほど純粋になる
     宇宙の誕生を思い起こせば
     答えは見つかる





     【プレゼント】         2005.07.29.Fri.

     物があふれている
     本のように食傷気味である
     なにもかもそろっている
     見渡してみても
     足りないものはない
     宝石も服も靴もバッグも化粧品も
     今あるものでじゅうぶんである
     でもねだってみる
     バッグに潜ませて
     いつもいっしょにいられるような





     【返信】            2005.07.28.Thu.

     前略 もうすっかり記憶のかなたに忘れ去りかけらすらおぼろげになってしまっていたりします
     桜の茂りには蝉時雨のしきりに鳴いて火星の砂浜に捨てられた鳥籠のなかで鳴かぬカナリヤも
     さぞかしうらやましく思っていることでしょう わずかに残る甘い香りをたどってみればところどころに
     黒豹の足跡が消え入りはじめいまにも泣き出しそうな雲の行方を気にしています ほんの少し前までは 
     からりと底抜けに青く澄んでいましたのに淡く白く過ぎ行く風のはかりしれない強さをいまさらにして
     思い知らされたりしています 眩しいシャツに風をはらんで飛ばされそうな勢いに気づくのが遅すぎた春を
     悔やんでいます 押し出された雑踏にまぎれて見失う人影に立ちつくすしか選びようのない道としても
     たったひとつでも差し出されてあればまた出会えるかもしれないという希望に微笑んだりしています
     まるで一度でも逢ったことのあるような親しい言葉で送り出す爽やかさはどこから運ばれてくるのでしょう
     まるでなにもかも知っていそうでついぞ知ることのなかった未知からの懐かしいお手紙の返事とさせて
     いただきます もののみごとに忘れてしまうことにわずかばかりの償いとして かしこ





     【使命】            2005.07.27.Wed.

     この世に生まれたのにはわけがある
     ひとりひとりに背負わされた仕事がある
     その仕事がなんであるのか
     見つけられた人は幸いである
     その人にしかできない
     特別な使命を託されて
     この世に生まれてきたはずで
     その仕事をやり終えたら
     人生をまっとうすることができる
     どの人もその仕事をやり終えて
     死を迎える





     【美しさ】            2005.07.24.Sun.

     言葉に愛がなければ響かないのと同じように
     かたちに愛がなければ美しさを感じない
     
     美しいという思いにいたったら
     どこかに愛が潜んでいるはずである
     すぐには見つからないかもしれないけれど
     きっと見つけられるはず
     
     それは遠い記憶のなかの出来事だったり
     自分ではないだれかの思いがつまったものであるかもしれない
     自然の贈り物なのかもしれないし
     いっとき辛さを忘れさせる神からのメーセージかもしれない
     
     醜いものには愛は見えない





     【先生】              2005.07.23.Sat.

     先生と呼ぶ
     もう先生じゃないからそう呼ぶのやめてくれない?
     先に生まれたから先生なの
     あらそうなの‥
     じゃ これからはお願いだからそう呼ぶのはやめてくださいね
     
     先生と呼ばれるのは嫌である
     先生にふさわしい人には先生と呼びたい





     【よく見える目】          2005.07.22.Fri.

     目覚め覚醒する
     すでに蝉が鳴き朝を予感する
     頭の中が活性化して
     遠くの稜線がくっきりとなだらかに青い
     小型英和辞典のアルファベットが踊る
     凌霄の花 百日紅 カンナ 貝塚息吹 青すすき
     なに不自由なくものがよく見える
     近くも遠くも
     信じられないほどはっきり見えてくる
     年を重ねるに従い
     不思議なこともあるもんだ





     【回復基調】            2005.07.21.Thu.

     書きたい動機はあったのにまとまった時間と集中力がいまひとつ
     さてと
     
     今を逃しては絶対に後悔するという天にものぼる大きな動機
     人生は長く生きるに従い面白くなってくる
     
     守備範囲がきっちり整理され
     整理できない部分も許容範囲におさまって
     ひょいと手を伸ばせばあらゆるものが手に入る
     世間から見れば理解できないかもしれない
     異質な世界だとしても
     
     幸せの涙に暮れる
     とりまく世界は調和してすべてに焦点が合っている
     愛を感じられるから強くなれる
     ただ愛するばかり 疑う余地はまったくない





     【知れば知るほど】         2005.07.20.Wed.

     前を見て真っすぐ進んできたから
     未来が近くにある
     過去をふりかえることはほとんどない
     
     ふとした拍子に
     過去がふいに顔をのぞかせる
     すると思いがけない表情を見せる
     悲しんでいたり
     つっけんどんだったり
     邪険に突き放していたり
     
     遠く離れているはずなのに
     実態はないはずなのに
     はっきり嫌いと言っているはずなのに
     
     未来から今日のこの日を予見しているかのように
     ずっといつも見守りつづけている





     【華やぐ女】             2005.07.18.Mon.

     きわめて正常な感覚をもち
     惹かれるものには敏感に
     
     病的なものはできれば避けたい
     気味悪いのはだめじゃないの
     現代的と言ってはやしたてるのはどうかと
     わけのわからないものはわからないとなぜ言わない
     人間の理解する範囲で説明できるものでありたい
     
     単純で
     わかりやすく
     気分の爽快になる
     華やぐ女とはそういう性格





     【時間を捕まえる】          2005.07.08.Fri.

     未来に囚われの身となって
     さまよい嘆き悲しみに暮れていた
     そのときはっきり見えたような気がした 未来
     なにも見えない未来が見えた
     なにもかも失って途方に暮れた

     なにもないということに
     こんなにも感情があふれてくるものなのか
     いや違う
     ‥‥ようやく気がついた
     今あるもののありがたさが身にしみて
     涙ぐんでしまっていたのだ
     感情が素直に
     涙が堰を切って流れる
     なんて馬鹿だったんだろう
     失うことは怖くない
     静かにあふれる愛にふるえる





     【逃げる時間】             2005.03.11.Fri.

     こんなにもお気に入りのものに囲まれて
     ひとつひとつのものに目が止まる
     美しいからというのは希み
     自然に神秘が宿り
     かたちをとらえる元になっている
     宇宙の真理に近づいたとき
     カチーンと響いてくるのではないだろうか
     光が生まれるのと同じように
     言葉が生まれ
     詩が生まれる
     書きとめられなくて流されて
     時間が失われてゆく





     【ラピスラズリ】             2005.03.08.Thu.

     詩の感触を忘れてしまいそうだ
     沈潜し拘泥し書きこまれて
     秘かにしめやかに見え隠れする
     ぼちぼちですね
     またはじめます





     【木の上】                2004.12.16.Thu.

     学校で一番居心地のいいのはどこ?
     そうねぇ‥この今いま座っているところかな
     僕はね 樹木園のチャレンジの木の上
     あそこに寝っころがってると気持ちいいんだ
     ちょうど太陽が木の間から見えて木漏れ日がきらきらして
     木の葉の緑がいっぱいに広がって綺麗なんだ
     そうなの じゃ先生もその木に登ってみたいな
     
     運動場を走って横切る
     先生って早いんだなぁ 
     短距離の選手だったからね
     
     うっ‥枝まで2mはある
     どうやって登るの?
     じゃ僕がやってみる
     駆け足で幹を蹴り枝に飛びつく
     ぶらさがりよじ登る
     そうか じゃやってみるから
     2・3度失敗
     腕時計をはずしセーターを脱ぎ
     気合を入れて えいっ
     ちょっと手をかして
     ふうーっ
     なぁーるほど馬の背中のように
     ちょうど跨げておまけに背もたれもある
     先生 上を見て
     わっ 言ってたとおりだ
     木の上に別世界がある
     
     おりるのがたいへん登るよりあぶない
     やってみるね
     そうか簡単そうじゃん‥
     ところがどうなったのか
     おりたときに幹に鼻を強打する 痛いっ
     涙がにじんできた 
     先生だいじょうぶ?
     鼻血出てない?
     出てない
     じゃ だいじょうぶ
     泣くわけにはいかない
     ああ痛い けれどいいおもいをした





     【わたくし的贅沢】           2004.12.14.Tue.

     目覚ましが1時を告げる
     ふたご座流星群がよぎる
     まだシフトしない
     まどろみ
     うつらうつら
     1時間に50個か‥
     今年のイベント
     やわら起き出す
     
     見上げる空にオリオン
     1500年かけるロマン
     どの人も見ようと思えば見られる見つけられる
     0.01カラットの星の方がブリリアント
     過去をふりかえる時間とともに
     あっ流れる東へ1秒の7cm
     願い事なんてできやしない
     
     はるかにいる人たちを思う
     伝えられなくなった人こそかなしい
     時間は悶える
     ああまた流れに落ちる
     南へ12cmの2秒消えて現れ尾をひく
     また願いぞこなった
     身体が冷える
     
     大根を切る
     葱をむく
     あたたかい味噌汁のできあがり
     七味唐辛子をふたふりみふり
     ふうふう湯気をたて
     夜空を見ながら舌づつみ
     おかわり
     しんしんとして6度
     首が痛くなり
     斜め南東へ20cm3秒尾をひき消えてまたかすれ
     引き裂かれ
     時間はとどまってはくれない
     
     50年後にはもういない
     星はまたたき
     夜空は地球を見続けているとしても





     【ほろ苦き】               2004.11.22.Mon.

     遠巻きに透き通った目の奥に
     冷たく氷の鏡が横たわっている
     ふとしたおりに生暖かい過去からのすすり泣き
     救いがたくだれからも見放されてしまった枯れ落ち葉
     つい先日まで賑わっていた大通りには人っ子ひとりいない
     海底に沈んだインカ帝国に歴史が堆積の層をなす
     メーテルシロップをかけすぎたバームクーヘンなんて
     脂の乗った秋刀魚のはらわた
     ひとりよがりにから元気をだして
     いつから距離を置き始めたのだろうか
     としてもいつかはこうなるように仕組まれていた
     だからもうよそうくよくよ考えるのは
     スローモーションにときは動き出し
     今を引きずりながら過去が暴走し
     始末に終えぬ
     情け容赦なく振り払おうと振り乱す
     立ち直れないと思うほどに打ちのめされて
     雨降る夜にずぶ濡れに立ち尽くす
     非情に徹して天晴れと言うべきかもしれない





     【鐘がなる】                2004.10.16.Sat.

     百舌鳥が第一声をあげる 再びなくのを合図に布団を撥ねる
     透明ガラスの向こうに晴れやかな薄明かり
     そうだ洗濯日和 シーツやカバーをはがす
     洗濯機にほうりこみスイッチを入れる
     そパソコンのスイッチも入れてお気に入りをのぞく 小鳥や紅葉が可愛い
     朝風呂に入り牛乳石鹸の白い泡にまみれる
     窓のそとには金木犀がびっしり 橙のほうが緑の葉より占める割合が多い
     満開のわりに香りが鈍い 
     まるい蕾がるるっとふくらんでふわっと開きかけたときが一番に薫る
     体重計にのる 相変わらずの数字
     食パンを1まい ちょうどいい焼き加減になるようにこれは神経をつかう
     珈琲になみなみと牛乳をいれる
     予想どおりとけてゆきそうな青空が広がっている
     石畳を歩きながらすこしつめたくなった秋の気配に震える幸せを感じる
     ハーブや秋明菊や百合をよけながら郵便受けの朝刊をとりだす
     1枚のトーストを3種類の食べ方をして味わう
     観覧車特集をしている ホテルにむかう途中で見た写真が載っている
     修学旅行の楽しい冒険を思い出す ふふっ
     洗濯が終了したのを知らせる
     青空を見上げながら干す
     しゅんしゅんとやかんの沸騰する音が聞こえる
     街に空にこころに鐘がなる





     【海底1万マイル】            2004.09.27.Mon.

     こんなにも身近なところにありながら
     何億光年もの先の宇宙に目を奪われて
     
     生命の母なる海に宇宙がある
     まだ知られていない
     生命の神秘の宝庫
     生と死が繰り返されて
     食うか食われるかの
     真剣な物語が
     解き明かされるのを待っている
     
     水の惑星は宇宙を宿している





     【りんご酢】                 2004.09.25.Sat.

     2週間醗酵させる
     熟成して濾過してできあがり
     氷を浮かべ
     じっくり賞味いたしましょう
     さわやかな秋晴れ





     【富士ご来光】               2004.07.24.Sat.

     高山病に苦しみ山小屋で眠り続ける
     小屋の外からやわらかい気配がする
     真っ暗闇のなか懐中電燈をつける

     まだ暗い
     空気が冷たい
     鳥が囀りはじめる
     次第に地球が姿をあらわす
     雲海と空の境界がはっきりしてくる
     今までこんなにも美しい世界を味わったことがあっただろうか
     酸素をゆっくり吸い込み1秒ごとに地球が生きづいてくる
     明るみの中心から厳かに
     目に見えるはやさで
     刻々と
     太陽が姿をあらわす
     この世が色で満ちあふれる
     生命がみなぎる
     空が青い
     雲が白い
     人が美しい





     【霧の花畑】                 2004.07.18.Sun.

     山頂の天気が怪しい
     ガスが流れみるみる視界を閉ざしはじめる
     半袖に長袖ブラウスを重ね着しても寒い
     ショッキングピンクとブルーのウィンドブレーカーを借りる
     
     お花畑の入り口にもはや咲きこぼれる  
     人の列が左に右にゆらりぶらりゆれながら止まりながら
     野アザミの茎の産毛にびっしり露が包囲する
     規則正しい並びに螺旋をえがき蔓ひげをくねらせ
     瑠璃の巻貝をぶら下げるクサフジ
     ルリトラノオの蕾は固い
     シシウドがレースをはる
     崖っぷちに広がる一面の花
     見下ろせば山が雲に吸い込まれている
     つるりとした岩肌が剥き出している道を歩く
     絶対語感・・融合・・乖離・・
     
     激しい雨が降りはじめ傘だけではしのげない
     黒いジーンズが黒々と水を吸う
     ますます強くなる
     引き返すことにする
     ウィンドブレ−カーを返しまた上着を借りる
     ひとり下山する





     【よりよい方へ】               2004.07.10.Sat.

     レアモノが脳細胞を刺激する
     南極大陸を横断したばかり
     鶏のぜんまい仕掛けのタイマーが回転する
     蜜柑ジュースに氷を5個浮かばせる
     絶滅危惧種に登録したい
     ホチキスで壊れかけの過去帳を閉じる





     【種を蒔く】                   2004.06.20.Sun.

     曲がりくねった川がからだを流れ
     みずみずしい感情がさざ波に揺れる
     透き通る水をメダカの群れが
     わずかな振動におびえ逃げる
     安心できればまた近づいて

     動かぬ山をよく見れば
     揺れに揺れ倒れそうに揺れている
     同じ動きなどひとつもなく
     前後左右360度の柔軟さ
     それでいて微動だにしない

     ひとつぶの種
     もうすっかり忘れていたのに
     たわわに実り
     驚愕させる
     やはり種は蒔かねば
     種を蒔かねば





     【アカショウビン】               2004.06.20.Sun.

     11日に衝撃的デビューを果たす
     みずみずしいアカショウビンのおでまし
     15日には羽繕いのあとの綺麗な背中に
     青い羽がキラリときわだって
     一目見て一生残る印象的な1枚だ
     そして19日のアカショウビン 選りすぐりの3枚
     これでアカショウビンに火がついた
     目の色が変わった

     BIRDERのアカショウビンのアップ
     赤・橙・紫へと金属光沢の目のさめるようなグラデーション
     カワセミと同じように光の当たり具合でいろいろな色に変化する

     アカショウビンの第一声を聞いたような爽やかな朝焼け





     【カワセミロード】               2004.06.15.Tue.

     輝くカワセミロードが見えてきませんか
     私には見えてます
     去年の今ごろ私も転げ落ちておりました
     ここが底かと思って安心しておりますと
     次から次へとさらに底が設定されまして
     怖いもの知らずの好奇心がますます刺激されて
     恐怖とスリルと歓喜が入り混ったホワイトサイクロンよりもっと面白い
     カワセミロードでした
     おめでとう・素晴らしい人生が待ってます





     【6月は薄明】                 2004.06.15.Tue.

     ここ2・3日いい日が続いている
     梅雨の晴れ間の心地よさ
     雲ひとつない青空でこのまま宇宙に続いてますって深みがある
     こんな日の夕焼けは綺麗で山の端なんてうっとり

     日が落ちてからがまた素晴らしい
     まだ薄明かりが残っていて逢う魔が時ってこんなとき
     せつない
     自然のなかの人として自然でありたいと希求するなかにあって
     疎外される存在みたいな





     【私信】                     2004.06.15.Tue.

     言い古されて
     技術の習得には努力でしょう
     光があたるまでにどれくらい地道な努力があったことでしょう
     好きだからやれること
     
     その好きなる感情がまた不思議なシロモノなんですね
     どうして好きになるんでしょう神秘的ですね
     好きなものって数えたらそうないんですね
     私に限っているんでしょうか
     
     なんにもないのにもかかわらず
     なんでもあるようで
     望めば手に入れられるって
     そんな幸せな状況にありますね いま





     【南よりの風】                 2004.05.30.Sun.

     少しずつときを刻むように回転し南の窓から生なましい脈動が上気する
     風は奇妙な軌跡を描き刃向かう燕のなんと美しい紙切れの意志
     残されることを拒まれてそれでもなお鋭利な硝子の平行脈を辿り続ける
     地球の創り出すコップいっぱいの光を浴びて
     今日も打ち寄せられる情報のなかから白く渦まく貝を拾う
     ほしいと思うものなどなくて
     したいと思うこともなく
     澱んでいる昼間の月が燻されている





     【カワセミ花子】                2004.03.31.Wed.

     簡単に伝えられるものたちは一瞬に消えてしまう
     伝えられようとして伝えられないもどかしさに悶えているものたちは
     だれかに見つけられたがっている一枚の招待券 ポスターの陰でひらひらしている
     ほんとうのところはだれにもわからないではないか
     としてもあらゆるものから選ばれないとしたら
     エメラルドグリーンがコバルトブルーに変わる一瞬にあざやかにきりぬけてゆけ
     危険水域80パーセントの視線のゆくえにはもうきみの見た光景を重ね合わせられない
     いまだにわからない錯覚薄氷一枚の隔たりとして
     いつまでも消えることのない伝えられないものたちはただよいつづける
     吹雪く激しさから触発される想いに体感温度はさらに下降してゆく





     【愛情表現】                   2004.03.30.Tue.

     自分の顔は永久に 死んでも見ることが出来ないように
     自分という存在も一番知りたいシロモノなのになかなかつかみどころがなかったりします
     こんなに身近な存在で知りたくて仕方のないモノなのにどーしようもないものなんですね
     そこで自分をゆだねられる他者からの反応から自分を確認しようとしたくなるわけです
     まるごと放り出して受けとめてくれそうな相手との相互保証みたいなものとして
     お互いにかよいあう感情イコール愛情があるんじゃないでしょうか 多面体のある一面
     カワセミにとってこういうことって好奇心だったりどういう感覚のものだろうかだったり
     安心をゆだねられる相手でないとできない類のものでしょう 遊んでますね
     警戒心の強い鳥さんなんですから 愛情表現としか考えられませんね
     このふたりには長い春ということかもしれません
     それもまた楽しいじゃありませんか





     【美ら海(ちゅらうみ)のサンゴ】        2004.03.29.Mon.

     それはエメラルドグリーンの深い海の森から消え去りそうにないたとえば風のような
     下弦の月が蒼い天に浮かび輪郭が思い出せないほどにおぼろに霞み悲しみを滴らせている
     伝えられようとするものたちは一瞬にして消えてしまう 伝えようと意識したそのときには
     はるか遠くに現実と虚構が交錯しながら翻弄され
     見上げる空にはらはらと桜のはなびらが舞いはじめている
     体感温度3度の冷たい海流が吹き抜けるサンゴのホームで乗り換え電車を待っていたとき
     ポスターの陰でひっそり一枚の招待券がだれかに見つけられたがっているのだった





     【ワインレッド】                    2004.01.26.Mon.

     コンビニで赤ワインを買って帰る
     コルクじゃないから簡単にあけられる
     ポリフェノールも2倍でアルコールがほろ酔い
     ケンケンツンツンがけらけらつるつるになってゆく
     
     2004年が激動に幕開け
     宇宙がすれ違い爆風に吹っ飛ぶ
     左手がもがれ右足が骨折
     しばらくすると再生するより強化されて
     
     人生は厳しい
     酔いどれながらワインレッドに染まる
     ぜんぜんめげません
     どんなになろうとも愛すべき人生
     わくわくどきどき
     毎日がジェットコースター





     【よいお年を】                    2003.12.31.Wed.

     1年間 楽しい企画を次々と設けてくださり
     さながらジェットコースターに乗っているような気分でした
     ほんとにすっごく刺激的な2003年でした
     たくさんの大人の方と知り合うことができ      おかげで少し大人になることができました
     おまけにカワセミさんの生態や習性を楽しみながら学ぶことができ
     この掲示板がカワセミ社会であることに
     たいへん居心地の良さを感じ満喫しております
     来年はどんな素晴らしい翡翠との出会いがあるのでしょうか
     引き続き来る年もよろしくお願いします





     【ごませんべい】                     2003.12.07.Sun.

     まず世界をまっぷたつに割る
     パリンと潔く割れる
     細かい破片が飛び散る
     ばりばり噛み
     歯ごたえと醤油とごまの味を噛み締める
     
     もうひとつの手が伸びる
     これ美味しいよね思ったより
     えっそんなひとりでゆっくり食べようと思ってたのに
     
     パリパリパリパリ
     口のなかの音が響いて洩れてくる
     ばりばりばりっ
     なんだかせかされたように
     じっくり味わうこともなく
     あっというまに
     あっけなく
     あとわずか





     【憂愁】                            2003.11.07.Fri.

     いっそ泣いてしまえばもうなんにもわからなくなってらくになる
     うすうすわかっているのにわからないふり
     はっきりさせてしまえばもうひとつの世界が見えてくる
     この世界もまだまだ捨てたもんじゃない
     眩しい光に満ちていてそれなりに幸せだったりもする
     輪郭だけがはっきり境界を示していて
     おぼろげながらかすかに揺れている
     ほのめいてなにかをささやき聞こえてくる
     かばえば動物の怒りがぴくりと反応する
     強烈に手に入れたいものというわけではないのか
     両手にありあまるほどの宝物にもうすぐ麻痺してくるにちがいない





     【秋は突然】                          2003.09.13.Sat.

     ある朝目覚めたらひかりのなかに憂いの粒子が紛れ込んでいる
     もっとゆっくりひたひたと偲び込んできてほしいのに
     なんなら冬に飛び越えて行ってくれてもいい
     台風が秋を連れてやってきた突然に
     1歩退き10歩進む秋の深まり
     今日から覚悟を決める
     雲の峰に胸を刺すダークオレンジが脈打っている





     【だれに伝えるの】                       2003.09.01.Mon.

     思い通りにいかないものね
     ガラスのコップが輝いて氷のかけらがゆらめいている
     薬指がピリッと痺れをきらしガラスの口の頂点をなぞる
     おとぎ話の空洞がからりと音をたて物語がゆっくりくずれる
     慣性の法則に逆らうわけだから
     すれあう摩擦で熱くなる痛いんだよね
     もうすっかり秋なんだ
     いったいどういうことなんだろう
     いったいなにものなのかわからないまま
     いまだに楽譜が読めない
     にもかかわらずなりふりかまわず髪振り乱し
     ときを操る指揮者となってタクトをふる






     【梅雨前線通過】                        2003.08.08.Fri.

     それはある日の昼だった
     曲がりくねった中腹の広大なる駐車場に
     数台とまるだけの観光名所
     強い陽射しを遮る山道をたどり
     ひとつの考え続ける主題があった
     冷蔵庫が故障した
     結婚の祝儀を迫られる
     翡翠のフィールドを探す
     それらではなくて
     長い時間をどうするのかっていう
     選択の余地などもうないのに
     拘泥するばかりのわかりきったことなのだ





     【七夕】                               2003.07.05.Sat.

     連れ添ったふたりに横たう深い川に散りばめられた夜景のように
     遠い昔の記憶の淵に沈む光の鈍さで消えかかりそうにきらめいて
     言いよどんだときすかさずうなずいてくれたきみとは違うかもしれない
     そうでしょこんなにも深い海の底に埋もれる樹林のため息が
     浮き上がるにつれ忘れるのもお互いのためかもしれないことも視野に入れて
     いつのまにか擦れ違ってしまっていると知りたくないのに思い知らされ
     いつでも忘れてしまえる関わりで遥か未来を見つめあっていけたら
     神秘の謎が解き明かされるまで銀河宇宙に永遠の光を放つ天の川を
     薄皮隔てて清らかさを感じつつ惹かれてしまうのも年に一度は許されるはず
     ふいに見上げた空にひとつ無限に広がるなかにたったひとつ
     もうどんなに求め合っても見つけられない神の領域に偶然見つけた
     輝いている星
     それが私には今一番輝いて見える





     【梅雨入り前】                          2003.06.07.Sat.

     もうすぐ地上100階ビルの建ち並ぶ
     夜にはもうひとつの顔になる
     準備にとりかかる
     明るいネオンが
     またたいて
     交差するかもしれず
     山手線を外回りにヘレンケラー
     恵比寿
     浅草
     ディズニーランド
     都会が苦手という
     逢えたらいいな
     観覧車
     水中を泳ぐ
     あたふたと迷子になりそう





     【5月の風】                            2003.05.15.Thu.

     うっとりと冬の寒さをやり過ごし
     桜のほのかな香りに吹かれ
     ぼんやり気をもんでいるうち
     いつのまにか
     すっかり夏めいている
     週末にかけなだらかに坂道を降りて
     湿った空気が白く淡く
     化学変化するからなのでしょう
     しっとり粘膜を潤し
     滑らかな薄いベールに覆われる
     エネルギーの鈍くうごめき発光する渦に巻き込まれ
     うろたえながら見えない迷いを見失い
     いつになくきらめく流れに身を投げる
     今宵は5月の風になりたい





     【春の臨時列車】                        2003.05.02.Fri.

     慌てて飛び乗る臨時列車
       ムスカリ:小さな鈴をリンリン鳴らし
       桜:ほんのり頬に紅がさす
       雪柳:長い髪を揺らし
       ヤマボウシ:樹の上からふわふわひらひら
       おだまき:うつむきかげんに流し目送り
       チューリップ :原色に透き通る
       ミツバツツジ:可憐に小躍り
       柿の葉:慎み深くゆっくりと
       牡丹:草かげにも威厳をもって
       スカンポ:土手一面にゆらりゆら
       卯の花:山の斜面にひっそり
       竹:嵐にビュービューしなり
        くすのき:色づいた葉をすっかり落とす
     さあ眩しい夏に到着だ





     【春の雪ん子】                          2003.04.30.Wed.

     春にとけて雪ん子は
     きらきらとなり
     正体が消えてしまう
     それでもときどき寒さがくると
     野原や林の高いところから
     きらきらと踊り出て
     プリマドンナのエレガントターン
     サーカスの曲芸体操
     クヌギの葉や桜の花の舞い
     黒鳥のアイススケート
     夢中になって
     きらきらとして
     熱くなって消えてしまう





     【インクブルー連山】                      2003.04.30.Wed.

     かさかさ落ち葉を踏み歩く
     地響きに驚き這い出た小ヘビ
     保護色がにょろっと波を打つ
     ひとかかえもある幹から伸びる
     気孔から噴き出す生命の火
     赤々と燃える息吹を包み
     青空を映してインクブルー
     純度100%で葉と空が触れ合い
     小刻みに震えるゆがんだ接点
     世界に踏み込むための通行手形





     【桜彷徨】                             2003.04.28.Mon.

     花びらがぺらっとへばりつき
     山は木の芽がうごめいて
     茂りを見上げて木を探す
     はらりとひとひら流線形
     まだどこかで咲いて
     枝の隙間から
     眩しい空が飛び込んでくる

     ほうらねここを曲がれば
     川と山と空が広がる
     3次元が交差する
     そしてここから始まる
     また始めようよ





     【見送る】                              2003.03.10.Mon.

     自由の扉を開けて飛び立つ
     空へ
     穏やかな海に広がる空へ
     春一番の光は青く
     きらめく瞳のなかにとらえる
     スピード加速して
     稲妻走る
     コンクリの護岸で見送る
     青いシルエットに紅がさす





     【名残り雪】                             2003.03.07.Fri.

     ビッグバンから1秒までの未知なる世界
     だれも相手になんかしていない
     ただ生まれたかったのである
     そういうものが原点
     水素はなぜ存在するのか
     宇宙に生まれたかったのである
     冬が好き
     光太郎にやってきた冬
     賢治にも迎えられた冬
     その冬に別れを告げなければならない
     名残り雪降る





     【Do you believe magic ?】                    2003.01.26.Sun.

     可愛く凛々しくカッコイイ
     次から次へ披露する
     見てはうっとり
     幸せな気分にひたる

     随分前からのファン
     フィールドで望遠鏡や双眼鏡を覗く
     帽子には翡翠のバッジが光る
     いろんな鳥に会うのも楽しくなってきた
     去年は鷹の渡り

     静止画でしかも動きのある青い鳥
     遠くから眺めていた憧れが
     突然目の前に現れた
     驚きと喜び
     未だに信じられない

     カワセミ
     ヤマショウビン
     アオショウビン
     ヤマセミ
     うっとり夢心地でいる
     というか病気
     しかも元気が出る





     【お引越し】                             2003.01.08.Wed.

     日のあたる大通り
     行き交う人の混雑が始まる
     せい高のっぽのビルの陰
     昨夜の雪がまだ残る 
     踏み固められ
     靴跡の凹凸を作っている
     透き通って氷
     石英硝子瑪瑙細工
     ビルの谷間を吹き抜ける
     樹氷の梢を触れてきた
     雪ん子の宿った雪の風
     昨夜の雪はまだ溶けぬ





     【雪が降る】                             2003.01.06.Mon.

     瞼を閉じても雪が降る
     しんしんと水結晶の悲しみに
     雪が降る
     
     雪女が振り返る
     めらめらと炎を抱いて
     振り返る
     
     雪国はたとえば白夜のフィンランド
     狐火燃えて
     そろうりそろり氷の精が舞う
     
     蜂の巣状に放射する光の華
     未来に向かって突き進む
     峻烈な美の入り口に雪女





     【太陽系接近】                           2002.12.15.Sun.

     地球はワルツを踊っている
     渦巻き銀河の一筋の
     風を切る流れに沿って
     疼くようなマグマをコアにして
     地球はワルツを踊っている
     奇跡が海から生命を
     乾いた砂漠の表層を
     揺らぎに漂う花粉の香り
     ゆっくり風紋が触れ
     石が砕けさざ波に
     ぴりぴり麻痺させ
     光が透き通り
     神の手をかざす
     接近している
     どうしようもなく
     地球はワルツを踊っている





     【星のリース】                           2002.12.14.Sat.

     ふたごの少年ボルックスとカストル
     流星がヒカリファイバーにオレンジがかって星祭り
     青白いおお犬シリウス
     真っ白いこ犬プロキオン
     若武者オリオンのリゲル
     ピアデス星団のアルデバランは若く赤い
     カペラは黄色
     冬の大六角形に飾り付ける
     天頂に太陽
     オリオンのそばに地球
     三角のバランスをとり満月     
     天の川をおおらかに蛇行させながら螺旋状に取り巻く
     川面に二日月と三日月
     二十七日月と二十八日月をきらきら散らす
     きみに届け星のリース





     【雲海3000m】                          2002.12.01.Sun.

     地球遺跡の入り口にサイレントのパトカー一台
     時雨模様を安全なベールで包む
     パンフレットの苔むした山道を指し示すと駅長さん
     この先の峠を登った人にもらえるんですがどうですか
     まだこれからですがいただけるんでしたら先に
     修験者の巻物を気前よくプレゼントする
     出発時刻までぶらぶら寂れた町を歩く
     県美術館の巡回展覧会を無料で開催
     ちょうど学芸員の解説が始まるところ
     Utrilloの初期作品「白の時代」モンマーニの庭
     コバルトと赤が引き立つ黒々とした裸木
     青色の交響曲はDufyのドーヴィル
     海はどこまでも続いている
     見知らぬ客になめらかな口調が宙を泳いでいる
     続きを聞いていたかった
     巡るバスは山裾を曲がりくねり河口を渡り
     雨がぽつりぽつりと次第に前線にひっかかったらしく激しく
     傘がない降りてから農家の軒先で雨宿り
     空は白く靄がたち紅葉の木々を見やっているうちに
     みるみるうちに雲に囲まれてしまった
     仙人になるべく修験者として雲海3000m
     まだまだ足りないまだまだだ
     雨に打たれるからだが寒い
     雲海に山あり海あり人あり木あり鳥あり
     雲が流れるeternity





     【ダーク銀河パラダイス】                    2002.11.23.Sat.

     流星ははらはら尾を曳き翡翠渦巻く闇の底散る星屑に目をまわす
     今までそこにあっても気づかないのに目の前に流れるからやっと認めたんだ
     もっと流れよ
     流れる姿はその前の姿とは全く違う
     例えば緑のぎざぎざの楕円形が赤くひるがえる流線形だったりする
     線に近くかすかな瞬間の芸術
     そして消えてしまうそれこそ終わりなんだよ
     無限宇宙の塵になる見えない聞こえない認められない
     もっと流れよ





     【秋の有終の美】                          2002.11.13.Wed.

     急に寒さがやってきて葉柄がぴりり締まる
     とたんに色づく一気に黄に赤に純度の高い明るい色彩
     遅れ気味の緑も色を添えるこの世から清らかに浮き上がる
     自然の織りなす神秘の世界ひとつひとつが自らの存在を主張する
     今年はいつになく紅葉が綺麗
     暖冬予想で木々も油断していたのだろう
     まだまだ秋が続くと思っていたそれが見事に謀られた
     やっぱり冬はそこまでやって来ていた驚きが鮮やかさ
     巨大な幹から細長いピラミッドに樹形を伸ばすメイプル銀貨
     にょきにょき枝をとんがらせびっしり三角の葉をぶら下げる公孫樹
     近寄っては痒くなる遠くからうっとり眺めるに限るウルシ
     楓は緑から黄や赤にグラデーションを繰り広げる
     桜も負けてはいないパレットに複雑な色を置く
     今が秋の最高潮
     木の葉が散り始め最後の一葉が散り果てたら冬になる





     【楓は真っ赤に】                           2002.11.10.Sun.

     深く沈みたたえる湖の面を飛石に反響する悲しいほどに透き通る声はメロディーである
     取り囲む竹の林は聴きながら襞をえぐられさわさわとこのうえなくも優しく揺れる
     めくれ翻る風の揺らぎに光の粒子は無邪気に飛び跳ね頬を掠めて黒髪にそよぐ
     冬近づくにつれ着々と時を重ね地球は万事怠り無く大気の層を循環させる
     一直線の先霞むまではっきりと鋭く高く縦横に伸び続ける潤いながら
     仰ぐほど青く曳航する飛行は流れ星のかなたにまで運んで行く
     深閑とした幽谷の森に木魂して楓は震え真っ赤に染まる





     【鼻歌が聞こえる】                          2002.10.20.Sun.

     してやったりとにんまりしているきみの横顔
     そんなに簡単なのかなちょっと困る
     よくわかったねネットの勉強して辿り着くところがこことはね
     まっ将来が楽しみなやつだね久しぶりに出会う
     仲良くやろうぜ





     【観劇】                                   2002.10.02.Tue.

     まるで人ごとのように川をひとつ隔てた向こう岸の葦の草むらにくずおれてゆく
     ごろごろ転がる川原の石は鉱石の奥まで乾ききり人目を憚らず剥き出しに晒されている
     繰り返してはくれないもだえる季節にちょっとしたスキを狙われ弱った枝からまだ青く
     瑞々しい葉をつけながらいつの間にか遠い景色のセピアの射した光に紛れ
     ときの早さを上滑りして奇妙な速度で揺り戻されながら楕円を描いて落ちる
     人の気も知らないで賑やかな明るい道から抜け出ようともがき
     結局混沌の渦に逆らい膨大なエネルギーを放出している
     疲労感にぐったり錐揉み鋭い刺激からシャットアウトするかのように
     やわらかい少年の脈打つ鼓動を秘めながらもうすっかり夜になった
     月はまだ出ていない
     車のライトが次から次に通過する
     たったひとりのなにも見ていない観客がいるばかりである





     【大王崎灯台】                               2002.09.29.Sun.

     ぐわぁーんとS字に曲がり右窓のすぐ下を川が流れる
     林の翳に入ると反対側の景色が窓に映り二枚重ねのスクリーン
     特急列車にたったひとりの貸し切りという信じられないほど贅沢な休日の旅
     というよりこの世はたったひとりかひとり旅
     駅からバスに乗り岬まで少女が加わり中学生かなそれにしても
     田舎道を抜けどんどん寂れてゆく大王崎灯台で降りると潮の香りが迎える
     バス停から岬の丘の細道をぐるりと歩き海に出る
     地響きがする打ちつける波の力強さと地球の胎内に呑み込まれる生臭さ
     防波堤の先に立ちはるか太平洋から吹いてくる風を全身で受け止める
     海が広がる地平線が高い波のうねりが生きている地球の胎動
     わたしはこの地球の心になるそして海に帰る
     灯台に登り海を見渡す船はこの光を見据え海を航海するんだ
     小高い丘の波切神社そのすぐ横にお稲荷さん
     50mほど伸びる厚い苔に覆われた小径を踏み歩く
     左に巻物を銜えた狐が睨みをきかせもう一方の狐が低く唸り声をあげている
     祠の中には数十匹のお狐さんが祀られている
     鬱蒼とした林の中は海から隔絶して海上保安の神が支配する
     人一人がやっと通れる樹のトンネルの階段を降りて行く
     一人じゃもったいないロマンティック街道樹の陰から海が見える
     海鳥が悠然と輪を描きピーヒョロピーヒョロロしきりに啼く
     灯台に灯が点る急いで舟が3隻港に帰ってきて錨をおろす
     夕陽が落ちる魚を料理する匂いがたち始める
     もうそろそろ帰らなくちゃ夜が迫る





     【秋の散歩】                                 2002.09.28.Sat.

     築山に広がる玄関のオジギソウの葉に指を触れる枝ごと揺すれば小枝ごとうなだれる
     ピンクのボールが細かい触覚を伸ばしくたびれてくると縮んで抜け落ちる
     細長い楕円形の貝が規則正しくずらりと並び両の手の平を揃えて折り畳んでしまう
     強烈な真夏の熱を吸収し尽くしたマリーゴールドにくらくらっとめまいを覚える
     右上てっぺんあたりの脳神経の枝分かれした末端をツンと刺激する
     すべてを消し去る毒の香り忌避すべき本能が機能して危険ランプを点滅させる
     藤袴は日本古来からある懐かしい香りがする秋の日しっとりと上品にしずしずとほのかに漂ってくる
     藤袴の自然な優しい香りに包まれたい
     乱れ咲く盗人萩にぷちっと小さい種が4つ並び膨らんでいる
     目に見えぬとげだらけの毛で覆われた鞘でブラウスの左胸にカタカナで名前を書く
     最後の文字が傾いているのを見つけちらとはにかみ直してくれる甘い時間がゆっくりと流れる
     ふわふわと白いケナフの花びらの雌蕊の先が誘うように赤い
     蕾は花びらを包みきれずに柔らかい絹のハンカチを無造作にくしゃくしゃっと丸めている
     奇数の長く伸びる指に分かれた薄い緑の葉が爽やかに風に揺れる
     遠くからわたしを呼ぶ声がする4つ葉のクローバーを見つけたよ
     メタセコイアの樹のまわりに赤蜻蛉がすいすいと相変わらず平行移動している





     【きみは気づかない】                           2002.09.15.Mon.

     馴染みの川を下ること20kmあまり
     上下にスイング左右に蛇行を繰り返しジェットコースターのように走行する
     信号がなくノンストップだからドライブにはうってつけ景色が飛ぶ
     舗装道路より砂利道の方が野性味があって自然に溶け込める
     両側から葛の葉が競り出して茂りこんもりと盛り上がっている
     葛の毛羽立った匂いが充満し喉の粘膜に繊毛が張りつく
     山川空が利休鼠に燻されて幽寂の世界を創出している
     藤袴が一群れ咲いている振り返る余裕などなく残像を描いて確かめる
     凸凹道に車体が大きく傾いてハンドルを取られそうになる
     必死にしがみついて格闘しほっと一息つくころには景色が一変している
     千本松原葦の生える中州伸びる砂浜横切る長い橋
     遠く対岸の堤防を走るエンジン音が濃密な空気に吸収されて力無くくぐもる
     静止画像に抗うようにアオサギがはばたく魚が跳ねる
     車に寄りかかってときを見つめている若者がいた
     モノクロトーンに身を包み長身の黒髪の青年だった
     思い浮かべながら引き返そうかと迷った横顔があまりにも似ていた
     このごろばったりひょんなところで出遇うことが少なくない
     嗚呼きっときみだったのだろうここはきみの故郷でもある
     擦れ違いはしゅっちゅうで双方によっぽど強いエネルギーがないと出会えない
     きみは気づかなかったわたしには見えている
     腰の高さにしか育っていない若いススキが硬直させて頑なに揺れている
     その影で一匹松虫が蟋蟀の大合唱のなか居場所を宣言している





     【Stranded】                                  2002.09.10.Tue.

     もう有頂天になって大きく羽根を広げる気分は最高    
     空を見上げれば踊っている
     ここは開かれた空間
     with me with you
     都会の大通りの橋の上を車が擦れ違う
     地球が黒く沈む夜空が明るい
     髪の長いシルエットがゆっくりスローモションで通り過ぎる
     金星にはきみがいる





     【日本の秋】                                  2002.09.08.Sun.

     人待ち顔をしている
     まだ暑い
     堤防を歩く

     5mほどの棹で木の実を落としている
     人差し指と親指で輪を作った大きさの黄緑色をしたクルミの実が
     10個くらい寄せ集まって房を作っている
     兄と妹の共同作業で仲がいい
     スーパーのビニール袋に8割程になっていた
     実付きの良い一房を貰った

     ランニングの軽い靴音が追い越して行く
     Tシャツが汗に濡れぺたっと肌に吸い付いて背中の筋肉が透けて見える
     彫刻のモデルとして一級品の引き締まった躰をしている

     川と堤防の間にちょっとした雑木林ができていて鳥の憩いの場所になっている
     合歓の木も実を付けていた
     枝豆をぺらぺらっと大きくしたような形をしていてさやの割に実は痩せて扁平で小さい
     さやを左右にプロペラのように広げそこから立ち登って合歓の花が
     青い空に向けてピンクの繊毛を開いていた

     水嵩が随分減ってきていて川原が広がっている
     アユのぴちぴちした若造はエネルギーが有り余って川面をぴょんぴょん飛び跳ねている
     毎秒1匹の割合で飛んでいるからその辺りにはアユが群れをなしているに違いない
     100匹はいそうな勢いのある群れだ
     釣り人が糸を垂れている

     手すりの柵を越え葛の蔓が足下まで這ってきている
     のたうちまわるやまたのおろち
     葛が地を覆って覆い尽くし勢い余って5mほどの木のてっぺんまで登りつめている
     ところどころに赤紫の花を付けていて強烈な匂いを発している
     やぶがらしといい勝負をしている

     羽黒蜻蛉が誘うように舞う
     歩幅ずつ飛び止まり飛び止まりして誘う
     蝶のように閉じた羽根をふわーっと人の呼吸に合わせて広げる
     広げたかと思うとすぐに閉じる
     閉じると7cmほどの細く青い腹と重なり1本の線になる
     線になってしまうと見失ってしまう
     誘われるがまま後をついていくと奥に入っていく
     どんどん入っていく
     もうこれ以上踏み込めそうにないというところまでついていった
     1m先でずっと待っている
     恐ろしい程の間の取り方というか誘い方で
     躊躇ったがここまでとさよならをした
     羽黒蜻蛉はずっとそのまま動かなかった





     【眠り猫】                                    2002.08.13.Tue.

     なんと眠いことよ
     このままソファーにもたれかかれば
     そのまま意識が薄れ眠りの森に迷い込む
     瞼が半分下りてくる
     朦朧として無意識の扉がふわっと開き
     渦巻き銀河がぼうーっと霞んで見えてくる
     無数の星が輝いてそのひとつに吸い寄せられて
     白金色に近づいてもっと近くに近づいて
     左回りに高速回転している
     それに構わず突入すると
     急に青い湖が広がっている 穏やかな湖
     静かな波が雲海になったり
     うーん吸い込まれる
     それがさらに眠気を誘う
     うぅ〜とり〜っ





     【百合】                                     2002.08.08.Thu.

     百合といえば笹百合がいいね次に高砂百合
     立ち姿といい花といい古風で清楚日本人好み
     夕べに高砂朝には笹百合
     これから光が溢れ出すという夜明けに笹百合のほのかなピンクが瑞々しくて
     少女が1日の始まりを祝福してくれるに違いないっていう確信に満ちた可愛らしさがある
     高砂百合はというとだんだん闇に溶けこんで黄昏どきじんわり乳白が浮かび上がってくる
     幽霊がぼうーっと佇むように儚げなんですよそれだから魅惑される
     その幽霊ってなんたって目の覚めるような美人なんだよね
     おお迷っちゃうな 迷ってみたいな 迷っちゃお
     迷いの3段階活用進化論を順調に辿って行けそうな美人霊
     生まれ変わるとしたらさあどっち
     そりゃあ高砂百合でしょう
     わたくしはあなただけは惑わさぬ
     この世の名残りに高砂となっていつか現れて見せましょう
     真夏の夜の夢一夜





     【フラクタル】                                  2002.08.07.Wed.

     ハッブル望遠鏡の成果によって
     宇宙の誕生が解明されつつある
     こころの宇宙の生成も
     無の揺らぎから生まれる
     星が今の瞬間にも生まれているように
     こころも今
     ゆらゆら揺らぎ
     ゆらゆら揺らぎ
     充満したエネルギーが爆発して
     一瞬にして
     星となり
     神秘の光を放つ





     【Fresca】                                    2002.08.06.Tue.

     ゆっくりとこちらに向かってくる
     たじろぐことのない自信に満ち溢れ運動学的に見事に調和の取れた精悍な足取り
     素肌にゆったりと羽織る白いTシャツが風に揺れ大気に漂う粒子の目が一斉に取り巻く
     ここは森の中にひっそり佇む全面硝子の近代美術館
     だってね満面笑顔を見せて手を振るから檸檬の芳香を放つ調べがはっきり聞こえたのよ
     もう少しゆっくり話してくれないかな
     硝子越しの夕立の向こうで確かに半音裏返るような頼りなさで口笛を吹いていた
     
     いつの間にかBossaNovaに変わってピアノに覆い被さるように銀鈴のパーカッション
     呟くように語りかける穏やかな陽射しに小アジサシはもうすっかり空の中に溶け込んでいる
     1000mのスイスの高原を黒豹が駆けまわる 姫沙羅を髪に挿し風の速さで追いかけまわす
     海抜マイナス50mの珊瑚礁を透き通る烏賊が泳ぐ 笑いかけながらクリオネが後を追う
     地球を覆う青い海が見渡す限り広がる その表面に息吹きかけさざ波を起こしながら北上する
     夏の海に銀色の波がピアノのメロディーに合わせて流れを変えて踊るきらきらきらきら
     生まれて初めて迎える深山の森に囀る鳥の鳴き声とともに響き渡るきみの口笛
     薄墨色の帳が降り波に憂いが帯びはじめるとどこからか魚影が伸びてきた 
     シンバルがシャラシャラして面白がるものだからSの字を描いて逃げてしまった
     
     陽が落ちて月照る夜に梟飛び立ちぬばたまの瞳輝き体が火照る
     波打ち際の波荒く寄せる波音声をかき消し静かに自然の中の音に沈む
     海のうねりが精となって立ち上り言霊は天に向かって伸びて行く
     あとには音楽が宇宙の揺らぎにまかせ鳴り響いていた





     【音楽の研究テーマ】                              2002.08.05.Mon.

     音楽の基礎
     美に惹き寄せられる飛び抜けた感性
     研ぎ澄まされた強烈な個性の発露
     音色は透明
     海に純水が混じり合うスローモーションの濃度の揺らぎ
     ユニホーム交換しているHideとBeckhamの二人に流れる空気
     リズムは軽快
     陽のあたる眩しい雲の際だって空の青さに駆け出したくなる
     無限宇宙の真ん中で運命の恋人に巡り遇えたら誰だって小躍りしたくなるでしょ
     旋律は川
     くねくねと思いのままに蛇行して急に瀧に転じて驚かされる
     つらつらときみへの思いを連ねれば滾々と湧き出てさざ波煌めく海めざす
     形式は螺旋
     行きつ戻りつなかなか進まないと思いきや思わせぶりに上昇していたりする
     鳶が悠然と輪を描いて舞い眠りに落ちて無意識の世界にうとうとする
     速度は自在
     始まりと同時に終わりがあって神のお気に召すまま歪みに膨らむ
     もう何からも自由になって今さら何も気にすることがない
     強弱はしなやか
     遠い夏木陰で読んだ小説の一節にある膨大な量の資料に埋もれる
     誰にも理解されないとしてもきっと前に進み出ていよう一歩でも





     【考えあってのことならば】                           2002.07.28.Sun.

     話をしていて一番心に残ったことは
     どんなことであれ
     自分というものがあって
     自分の考えあってのことならば
     認めます
     という先生の言葉です





     【飛び込む】                                     2002.07.25.Thu.

     ペダルを漕いで夜の帳を捲り挙げ突き進む
     空を仰げば白い雲がふわふわとして優しさっていうものはこういうもの
     沁みこむように浮かんでいる
     まばらな距離をそれぞれに置き星が輝いている
     霞む十五夜が赤い
     街頭は暖色の円錐空間を造っている
     透明な境をすんなり入り透明に通り抜ける
     赤い信号が滲む
     車のライトが点滅する
     ガソリンスタンドが後片付けを始めている
     灯油の請求書が来ていたのを思い出し今日はお金持ってないからねまた今度
     声をかけて風を切る
     体の中の水が氾濫している
     瞼が熱い   
     暗い夜道は地面が朧に雲の上にある
     草叢の中をこころもとなくハンドルを握る
     闇に隠れて道が見えない
     迷いながら闇雲に迷ったら迷ったで修正しながらエイトビートで
     立ち止まらない振り返らない
     目的地だけがはっきりしている





     【澄む光景】                                     2002.07.13.Sat. 

     一本の広い道が目の前にある
     これから行こうとしている道に違いない
     すぐ先の左脇にはひとりでは抱えきれない太い幹の桜がある
     白い満開の枝垂桜が空から雪崩ている
     右脇には風草がずーっと遠くまでそよいでいる
     道が続く限り寄り添っている
     左手に草原右手に川
     川の水を求め見やると
     どこまでもなみなみと溢れている
     海のように広いけれど川である
     中央を確かに流れている
     水面の波立ちは穏やかにしてもその下の大量の水の勢いにひとたまりもない
     澄んでいるが底知れず
     こんな感じの色合いになるのかと妙に感心してしまう
     見たことないな
     この光景にたたずみ
     あることに気づいた
     人の気配というものがない
     一本の広い道がある





     【女郎蜘蛛の雄】                                  2002.07.07.Sun. 

     女郎蜘蛛の雄は7回脱皮して成虫になる
     雌は3倍大きい分8回脱皮しなければならない
     7回の脱皮を終えた雄は8回目の脱皮を終える雌を待ち構え
     脱皮したばかりで弱っているところを
     すかさず交接する
     そのタイミングをはずせば餌食となってしまう





     【螢の光】                                        2002.06.23.Sun. 

     源氏螢は5月20日頃からほぼ2週間
     平家螢は源氏が少なくなる頃から7月下旬頃まで
     秋螢といわれるくらいで8月の下旬までいることもある
     源氏螢は大きく平家螢はひとまわり小さく8ミリくらい
     光源も大きい源氏螢は光が後を曳き消えて現れる姿を追うことができる
     光も小さい平家螢は光る呼吸が短く消えて姿を見失ってしまう
     飛行軌跡は鈍い弧を描き並行脈の葉を飛び移って行く
     雨が降った翌日に生まれる生まれたてが強く暗闇に光を放つ
     岩魚や山女の棲む深山幽谷の清流ではなく人が住みはじめる辺りの川縁にいる
     マルタニシや川蜷を食べる
     人参やキャベツを食べたりもする
     生命時間は1週間
     その1週間に群れをなして飛び交い源平合戦を繰り広げる





     【6月は踊る】                                      2002.06.02.Sun. 

     川が二股に分かれていると生きた川に鮎が泳ぐ
     鮎の習性を利用した友釣に釣人は釣糸を垂れ
     ごおごおと止むことのない水音が力強い
     シュノーケルを銜え手に1mほどの槍を持ち川底を覗く
     左手の獲物が逃れようと抵抗して撥ね
     階段状にえぐられた岩の上を白い波飛沫が流れる
     10分の1の川幅に狭められ寄せ集められる水量は
     10倍の速さと勢いに加速して流れ底ほど速い
     ササゴイが夜の餌取りに疲れテトラポットで一休み
     冠のモスグリーンが逆光に青くも光り
     首を振る度に2本の長い羽根が凛々しく揺れる
     エビ・カニが進化して8本のクモに
     アシナガグモは自分の跳べる距離に近づくと飛びかかってくる
     川縁には草が生い茂りモンシロチョウが数十匹乱舞する
     オニグルミの実はまだ青く9月になれば落ちてくる
     対岸には山々が連なり遠くアルプスの頂きがのぞいている
     城の天守閣が互いに睨みを効かせている
     空は高く青い
     雲一つない
     6月が踊り出す





     【7:45の夜空】                                     2002.05.27.Mon. 

     この画面の明るさをほんの少し落としたくらいの空
     宵の明星がピカリ
     距離を置いて2番星が光る
     昼間のような明るい空にも星が見える
     白い雲もたなびいている
     昨夜の雷神が夏をぐっと引き寄せ
     積乱雲がもくもくと立ち昇っていた
     逞しく勇敢な夏
     夜空を見上げながら
     ガロアと肩を並べ歩いた





     【地球の美】                                       2002.05.25.Sat. 

     世界はいよいよ美しく鮮やかに輝いている
     今日見つけたばかりの美しい地球の瞬間を届けよう
     さてそれでは
     たとえばクロオオアリが蛇行しながらも一目散にタイルを軽く行く
     堤防の土手に靡く風草の穂が星の曲線を懐かしみファンタジーを織りなす
     黄金色に実った小麦が刈られて横倒しに1列干される
     青年の乗るベンツのオープンカーが風を切って大地を低く走る
     土曜の朝いつもよりハイスピードで川に沿って太陽に向かう
     ヒマラヤシャジンが群青のベルを鳴らしながら這い昇る
     梅雨に入る前なのにもう紫陽花が外輪から色付き始める
     つい最近買った携帯電話にメールの文字が賑やかに踊る
     能登半島から見た水平線の遙か向こうの波を凝視する
     カレンダーに記録された予定の矢印が半分以上を占める
     運動場で20数人がグランドゴルフのルールに従って動く
     夏の日差しの下生徒たちが資源リサイクル活動に汗を流す
     経験を基にして自分たちの意見をはっきりと主張する
     イースターカーテンの雑紙を息の合った連携プレーで運ぶ
     川縁の林の木々が強い風に身を任せ大揺れに揺れる
     燕はせっせと巣づくりに励んで北に向かったり南に向かったり忙しい
     といった具合に目にするものが生き生きとしている
     なぜなんだろう不思議でたまらない
     今日も1日トップランナーに子守歌
     ただ深く静かに眠れ





     【川の散策】                                        2002.05.12.Sun. 

     ほんのわずかな狂いに敏感なのはきっちり計算し尽くされているからだ
     繋がらない混線は心得たものだ
     ふるさとに源流はあり砂浜に十数人の名前が刻まれている
     川は流れコルリが鋭い線を切り雲がガーゼのような刷毛を塗る
     不意に横切る鳥のつかみきれない影だけが残る
     護岸の杭を棲み家として稚魚と水草の動きに見入る
     ときの流れを見ようとしてときの流れに呑み込まれる
     千年木が白い花を咲かせている
     もうすぐ強い芳香を放つ
     強烈過ぎて香りに飽きるまで頭がくらくらする
     背をかがめ渡りきる瞬間に見た蒼穹にいまも覆われている





     【5月の風】                                         2002.05.04.Sat. 

     すっかり葉桜になったトンネルを抜ける
     木々の緑と新鮮な空気とささやくメロディー
     耳を澄まして心模様を探る
     ひとつひとつを川の水をすくいあげるように
     冷たい感触を味わいながらそうーっとすくいあげてみる
     流体で透明で跡形もなく消え入りそうな
     なにかえたいのしれないものを形にしてみれば
     おとなしく癒されていく





     【ハッブル望遠鏡】                                     2002.05.03.Fri. 

     次々と発表される記事を神秘的な驚きをもって何度も読み返している
     1週間程前宇宙の年齢を130億-140億歳程度と推定する
     最古の星発見から割り出した研究発表がなされたばかりである
     今回は4億2000万光年先にある
     オタマジャクシのような形の銀河を鮮明に捉えている
     雲が漂うように柔らかくふわふわと
     中心核を取り巻く2重のリングが傾いて
     消えかかったところから細く長く尾を引いている
     黄金律の見事さで頭部と尾を形成している
     嗚呼なんと美しい輝き
     こんな宇宙船に乗ってみたい
     画像をよく見ると星や銀河の姿を鮮明に映し出している
     ごくわずかしか届かない宇宙のかなたの光を
     ハッブル望遠鏡は見逃さずに強くはっきりとキャッチしている
     いつも見ている宇宙
     ダイヤの輝き ルビーの煌めき 翡翠の香り 紅水晶の音色
     見えてくる 薫ってくる 聞こえてくる ぞくぞくする感触
     地球にすむ人々に届けてくれる映像とその功績に拍手を贈りたい





     【綿毛の乱れ舞】                                      2002.04.22.Mon. 

     なめらかな放物線を描く水飛沫の波がアンダンテに揺れ
     意味をなさない単語の数々や高いキーの多重音の歓声が
     破り棄てるカレンダーの一枚に封じ込められる夏の跡地
     垣根に並んで立つメタセコイアの赤ん坊の手のように柔らかい葉柄が
     ざっくり枝打ち払われ傷を露わにさらけ出しいまだ癒えぬ切り口から
     ふつふつと怨念を滾らせ勢いよく大気に飛び出す
     掴み所のない空間に頼りなく震える触覚を恐る恐る張り巡らし
     互いを支えにしながら深くこんもりと下草萌え
     濃淡のグラデーションなす陽炎立ち上る
     1500光年から届いた青空にはエネルギー粒子の充ち満ちて
     感覚の鈍りがちなる日常の疲れを解放し生命力を刺激する
     形はくっきりと輪郭を主張し色は鮮やかにデモンストレートする
     見つめられた地球は体温を1℃上げる
     北国で羅針盤を探す少年は記憶をかき消すように息を吹きかけ
     綿毛はくるくる弾みをつけて回転し
     遠く過去に遠心力をつけ鳥になって乱舞してゆく
     宇宙から受け継ぐ精神は人間の哀しみひとつに昇華する





     【カナリアの声】                                        2002.04.21.Sun. 

     クリスタルな青空を見ながら野原に寝ころんでいると
     S135の方角の空の一点から眩しい光の粒子が突然雪崩れ込み
     それは瞬く間に煙のように立ちこめ視界を0にしてしまった
     戸惑う間もなく目の前に雪のハリケーンが近づいてきていて思わず目を閉じたら
     ふわり宙に浮き温かく不思議な感覚
     心地良い感覚に包まれてハイスピードで漂っているうち
     いつのまにか氷の粒子の滝をジェットコースターのように
     あるときはマイナススクランブルを描きながら
     髪を靡かせながら落ちてゆく
     なかなか面白いんじゃないのと思いながら流れに身を任せて
     流れの心地良さに思わずニヤリと笑うと
     あろうことか青空を眺めていた野原に着いていた
     起きあがる力なく睡魔が襲ってきてうっとりとしていると
     カナリアがルビーの波長で歌う声が聞こえてきた
     解読しようとしたけれどその前にすっかり深い眠りに落ちてしまっていた





     【イメージの海】                                        2002.04.19.Fri. 

     目を閉じればイメージが浮かんでくる
     遠い記憶から甦ったもの
     見たこともない遠い世界
     これからの近未来
     これはいったい何なんだろうというもの
     神秘的で好奇心を抱かせるような
     じいっと見続けていたくなるような
     いろいろ
     生々しい音も聞こえてくる
     それをだれかに伝えようとしたいのだけれど





     【太陽は2個】                                         2002.04.18.Thu. 

     地球よりもっと青空がクリスタル
     風は気まぐれ
     生き物は超音波を発信していて
     耳を澄ますとそれぞれメロディーを奏でている
     色とりどりのエネルギーを宿していて
     赤いエネルギーは貴重
     甘い香りはうっとり眠気を招く





     【誰かが呼んでいる】                                    2002.04.16.Tue. 

     生まれたてのみずみずしい木の葉がささやいていて
     もうとっくに桜は散ってしまっているはずなのにどこかに1本忘れたように咲いていたりする
     すっかり春を迎えた落葉の森
     
     奇妙に曲がりくねっている小川のせせらぎが小鳥を呼んでいる
     河原には翡翠やら水晶が転がっていて
     天の川から降ってきた星の砂に隠れた沢ガニがときどき目玉を覗かせる
     1500光年の地球の海から連れてきた桜貝は鳴りやまぬ海鳴りを絶えず聞いている
     
     森に充満した酸素を春風が胸一杯に吸い込んであらゆる細胞に吹きかける
     だから桜貝も一瞬めまいがして地球の海を忘れたりする
     海鳴りのかすんで聴こえなくなったとき桜貝のメロディーが聞こえ出す
     誰かが呼んでいる声が一筋の光のように聞こえてくる





     【追い立てられるような】                                  2002.04.14.Sun. 

     仕事のときは絶えず時間を意識している
     時間の管理人のような
     借金は性に合わないしこんな利息も困り果てる
     きっちり使って充実感を受け取りたい
     ちょっと遅れたりなんかすると罪悪感に嘖まれる
     うっかりなんていうのもあったりするから
     われながら恥ずかしくて
     取り返しのつかないあやまちを犯したような気分になる
     4月から異常に意識してきていてきりきりしている
     まだ2週間しか経っていないのに
     仕事から解放されたときに思索が始まり
     それでバランスを取っていたのに
     それが乱れてきている
     とにかくしばらく慣れるまでということなのかな
     そうでもなさそうだ
     心の焦点が定まらない




     【ものぐるほしけれ】                                   2002.04.08.Mon. 

     いったいきみはいまごろどうしているのだろう
     雪解け水がとうとうと流れ
     その流れるがままに見入っていると
     透明な水嵩が少しずつ高くなっていく
     どれだけときが経ったのだろうか
     そのまま見続けていると水位が目の高さにまで来て
     このままでは水に埋もれてしまう
     と思いながらも水の流れから目が離せない
     透き通っていてなみなみと流れて
     美しい
     どれだけときが経ったのだろうか
     ときに促されて目を開ける
     いったいきみはいまごろどうしているのだろう
     雪解け水がとうとうと流れ





     【バリアに張り付いたリボン】                               2002.04.07.Sun. 

     校門をすべるように右折してゆく車の運転手を追いかける
     さくらの散る今宵は狐が踊る
     ねえ一緒に花見をしませんか
     身を乗り出し手を左右に大きく振り話しかける

     ガラス越しに見える運転手の視界に入らない
     左右を確認したあと真っ直ぐ右前方を見ている
     アクセルを踏みゆっくり車が動き出そうとしている
     気づかない 伝わらない

     透明人間になってしまった





     【花吹雪翔ける黒豹】                                   2002.04.03.Wed. 

     1500光年をふるいにかけてさらさらと時が通り過ぎて行く
     思いがけなく見知らぬ風が氷の粒子を撒き散らしひやりとする
     おかしたあやまちのひとつがおっとりとした穏やかな会話に甦り
     思わず奇声をあげそうになるのをごくりと呑みこむ
     黒豹が息をこらして潜んでいる

     1500兆の花びらが時をえていっせいにうたい流れて行く
     樹氷のように凛として白い桜が清々しい闇を誘惑する
     花びらのひとひらひとひらが今生の精気を込めて震えるように囁き
     闇がほのかに鴇色になるのでもう明日は吹雪だろう
     朧月が地球を見おろしている

     満月に吠える一瞬の刻印が槍となる
     きりきりもみこみ忘れたときに不可思議にリフレインする
     黒豹翔けて花吹雪舞い上がる1500光年の物語がはじまる
     発光する超新星として閃光を放つ

     どこまでも海  どこまでも空  どこまでも闇  どこまでも愛
     それだけのこと





     【彦根城】                                         2002.03.31.Sun. 

     どこへ行くというあてもなく光速道路を走る
     2002年の春休みのリフレッシュにどこかへ
     今までの記憶にないどこかへ
     右脳が転写したくなるようなどこかへ
     午後3時

     住み慣れた土地から離れる
     生活の匂いから遠ざかる
     山を越える
     トンネルを潜り抜ける

     彦根城
     たっぷり流れる掘りに浮かぶ水鳥
     1603年からの日本の歴史
     急な階段の滑らかな手摺り
     鉄砲の三角弓矢の四角
     天守閣のお姫さま
     足元に隠し部屋
     視界に入る地域を支配した光景
     海のような琵琶湖

     あかあかと陽が沈もうとしていた
     野球のユニホームを着た高校生が通り過ぎる
     甲子園は始まっている
     次々と自転車に乗った高校生が通り過ぎて行く
     振り返り話しかける顔は明日に向かって輝いていた





     【時間は何処に】                                     2002.03.29.Fri. 

     図書館でビデオの予約をした。30分後に視聴ということでその間、本を読んで待つことにした。
     短歌と現代詩と芭蕉の本を書棚から選び、椅子に座って読み耽った。
     さてそろそろ時間かと思ってビデオコーナーに行って茫然とした。
     なんとあれから2時間半も経っていたのだ。視聴時間はとっくに終了していた。

     時々この時間の感覚に悩まされる。早くなったり遅くなったり逆戻りしたり飛び越えたり止まったり。
     時間は何処に消えるのか。消失した時間というのはなんとももったいないではないか。
     どの人にも24時間という真理の前に時間が透明になるということは、時間からの離脱を意味している。
     時間からの自由としたら、ここに至福が潜んでいるようにも思える。
     仕事でも、恋でも、先の見えないところでもがいて一体どうなるのだろうと緊張し迷い苦しむところに
     幸せとやらが微笑んでいたりするということに皮肉を感じている。

     今回いろいろ考えさせられた。分からないことが多かった分なおさら。
     このwebで経験したことは非常に刺激的ですらあった。
     はかりしれない幸福をもたらしたことも。
     まだ未熟な技術しか持ちあわせていないのでこういうかたちになってしまってごめんなさい。
     これからも相変わらずこんな調子でしょうけれど。





     【花はちるなり】                                       2002.03.28.Thu. 

     宇宙の原理から超越することができない。というよりできなかったということにしておこう。
     超越しようともがいてみたけれど、激しい徒労感が残った。
     昨日今日絶望のあたりを逍遙していた。
     明日絶望などしていない。また新たに挑戦してみようという好奇心が湧いてきているからだ。
     
     桜のトンネル街道を毎日散歩している。
     太陽の昇る頃
     太陽の沈む頃
     明るくなってくる。
     暗くなっていく。
     この小1時間の天変地異のドラマに魅了される。
     
     冬木立の林が生命をゆっくりと守り育てている。
     死んだように眠っている。
     死んではいないことを知らせてくれるのが桜。
     細い枝の節々が芽吹きはじめ、次第にびっしり重そうにしなってくる。
     蕾がゆらりゆらりいつ咲こうかいつ咲こうか身を震わせる。
     いつ咲くのかいつ咲くのか息を呑んで待つ。
     行ったり来たりそわそわわくわくそれだけを楽しみにしながら待つ。
     気もそぞろ、うわのそら。
     ようやくちらほら咲き始めるともう有頂天。
     この世の春到来。
     桜が春を告げる。
     これで春が確定する。

     あとはちるのを待つばかり。





     【別れの季節に紛れて】                                 2002.03.26.Tue. 

     なんと言って切り出していいのやら。しばらく手のつけられない精神状態が続いたので
     こうしてこの闇に登場する空気の掴み方がいまひとつといったところ。
     ふわり雲に上手く乗ることができれば自由に鳥瞰できるようになり、おかまいなしに孫悟空気分なんだけど。
     まだまだ病み上がり気分。
     足の指先に力が入らなくてふらついている。踏み外して真っ逆様の不安がよぎる。
     振幅の大きな動揺に船酔い。
     先読み不可能なパニックスペースの心理戦からようやく抜け出せそうな。
     今や別れの季節の真っ最中。
     その中に紛れ込んでスターダストの煌めきを見ている。





     【マジカルハート】                                      2002.03.04.Mon. 

     懲りもせずと言った方がいいのかもしれない。
     当たり前、懲りてたらここにあらわれない。懲りないんだよね〜。だめだこりゃ。
     さあはじめよう。このあいだの続き。
     なんだったっけ?はあ〜、あらら、まっ、あれから随分経ったからしかたないか。
     おやすみまでの数を数えるんです。え〜っと3までいったから今日は
     し〜い。これってわたしのために書いているのねえ。そうだったんだあ。なんだか眠くなってきた。
     地球から弾かれて途方に暮れてすねていたんだけれど、6カ月ほどさ迷っていたらある日
     目の前を、りんりん鈴を鳴らして自転車に乗った若者が通り過ぎて行くではありませぬか。
     ときは夕暮れ、空も山も人も車も藍色に染められて海に沈んだようになったとき。
     わたしは空中散歩とシャレこんで黒豹の棲む都会を旋廻していたんです。
     そのわたしの目の前を、軽快にシャカシャカと空中走行していくんです、もう素敵といったらないです。
     それでわたしは釘づけ、一目惚れでした。そうなのそうなの。
     なかなかいいでしょ。ほんと、この話の続きを一番知りたいのはわたしなんですよ。
     どんな展開になるんでしょうか。
     ん〜ん、もうここで、今夜は お・や・す・み。ねむ〜い。





     【まあなんとかね】                                    2002.03.02.Sat. 
                                   
     修行しましたので、かどうかわかりませぬが。
     まあなんとか脱力系でいってみますか。
     なにもかも無にするということで見えてくるものがあるんですね。
     それまでは、真っ暗闇に見えてしまってどうしようもなく。
     地球の沁み入る青さが見えてこないんです。
     ああなぜなんだ、どうしたんだ、いったいなにが。
     それですべて無にしました。なにかを求めようとしていたからなんでしょう、きっと。
     それですべて無にしました。なにかにしがみつこうとしていたからなんでしょう、きっと。
     それですべて無にしました。
     いまのわたしにはもうなにも無い。





     【修行する魂】                                       2002.02.26.Tue.
                                                                           
     原始的で残酷な本能を誰しも持っている。
     それをどれだけ克服できるのか。
     そこに人間の価値が見いだせる。





     【眠くてもはや春眠】                                    2002.02.22.Fri. 

     おお、眠くて眠くてとろ〜りとした気分。蜂蜜をさらりと桜湯で割ってダブルにした感じの脳の状態。
     瞼を閉じて10数えたらもう夢の中に入ってしまえるほど。じゃあ、数えてみる?
     い〜ち。昨日は徹夜をした。それで?はい、それで今日はなんと6時間授業があるうち5時間の担当授業あり。
     これは結構ハードな勤務で、徹夜の翌日の今日ということで、立派に勤務を終えていまは誇らしく極度の疲労に
     襲われています。あ〜ん、ねむ〜い。半分寝てるね、これは。もう思考がでれでれになってて、どーしようもなく
     どうにもならない。もう、どうしてくれます〜。
     に〜い。それでですね、帰り道。今宵も夕陽に向かって派手に撃ちながらドライビングしてきたの。
     ほんものの墨の色はね、うすい青色に黒を一滴の100分の1落とした色なんだけど、
     そのほんものの墨の色をした雲がたなびいており夜が除々に降りてくるにしたがって
     眠くなるんです。はあ〜〜、……おっとお、ちょっと眠ってしまって……。いい気持ちよね〜。
     さ〜ん。4時20分から音楽室で卒業生を送る会で先生たちが贈る出し物で歌う歌の練習をした。
     明日があるさ(ジョージアバージョン)とゆずの少年。芸達者ネ皆さん。ギタリストやらピアニストやらバンド組んで
     歌ってたというボーカリストもいるし。すごいよお。腰まで髪を伸ばしていたって言うんだから。
     えーっともうここまでですね。もう、げんかい。眠いのでお・や・す・み。
     この続きはまたいつか。眠い。





     【擦り切れたセーター】                                  2002.02.20.Wed. 

     鮮やかな紺のセーターを今も着ている。
     これはなんと中学生のときにセーラー服の下に着ていたという代物。
     ほんとによくもまあとあきれるが、愛着があって手放せない。ずっと着続ける。
     なにか訳があるのかというとなにもありはしない。
     ただ自分が気にいったものは不思議と飽きが来ないし
     なにかのきっかけで手にしたものというただそれでもOKならOK。
     ものに対する欲というものがおよそ無いに等しい。
     無ければすむと思えるし、もしも持つことになったら気に入ったものでないと拒否反応を起こす。
     好みが激しくて一瞬で決めてしまう。
     小さい頃から自分の好みというものが出来上がってしまっていて
     どういうわけかまわりがなんと言おうと自分の価値観で判断していて、えらく自分に自信を持っていた。
     気に入ったものは、手放さない。とまあ、そんなあたりのことを言ってみたかった。





     【雪が降る】                                         2002.02.19.Tue. 

     猛吹雪という地方とは遠く離れて南にあるのでいくぶん緩やかなものの、
     大地にへばりついて生きていることを実感させて地の底から冷えて寒かった。
     今日から学年末試験が始まった。テスト監督といっても不正をはたらく輩はまったく見当たらず
     たいていは教室の後ろに座ってぼんやりしているうちに鐘が鳴る。
     なにするということもなくふと窓の外を見やると雪が降っていた。
     立春が過ぎてから2度目の雪。この前は随分と吹雪いていて激しく横なぐりに降りしきっていた。
     今日は細雪。明るく白く死の床から、ふわりふうわり幾重も入り乱れる気流に翻弄されてゆっくり降りてくる。
     校舎は2階なので雪はさらに下へ右に左に大きく揺れながら落ちて行く。
     
     雪は普段の生活から引き離し幻想的な世界をつくりだす。
     雪が降リてくるあの速さが、思考の流れを誘う呼び水になる。
     またそこには神秘、魅惑、不思議という領域でイメージの世界が共振する。
     
     だから、5ミリのひとひら3ミリのひとひらを目で追っていると、もうひとつのイメージを伴った思考が流れだす。
     今年の初めに突然に降った雪。
     映画を観終わってから広がっていた幻想の世界。あのときの雪はこころ踊る最高の雪だった。
     雪に見入っていると、しんしんと自分が凍み透っていき降りしきる雪のそのひとひらになってしまえた。
     あの雪を私は忘れない。忘れようとしても忘れられない。
     あの雪は涙を誘う。今となってはあのときにもどれないときの非情を嘆きたくもなる。





     【書く行為】                                         2002.02.17.Sun. 

     寝食を忘れて書くっていう境地、わかります。
     できたらそうしていたいなって思います。 
     表現することの愉しみがこうしてPCの前に座らせ指を動かせます。
     掃除も洗濯も食事も睡眠も代わりにだれかやってくれない?
     ときが過ぎるにつれて、思考が流れ、それを活字に記憶してゆく。
     こころ模様は、8000年後どんな風に読まれるのだろうか。
     3000年前のこころと変わらないのだから、
     8000年後もさほど変わらないのかもしれない。
     さっぱりわからない、理解不能ということはないだろうと思う。
     言葉の意味は確実に変わっていく。発音も変わっていく。
     変わらないものがあるとしたら、それは、
     ここに流れているメロディーのようなもの。
     透明でいて目に見えない何か。
     はるか遠くにあるようでいて実ははもっとも近くにあるもの。
     掴みようがなくてなんとか掴みたいと願うもの。
     特殊のようでありながら普遍的なもの。
     難しいように見えるけれど実は簡単なこと。
     言葉は神である、言霊であるってこと。





     【独立して思考する】                                   2002.02.13.Wed. 

     国語の授業をしている。
     生徒のうちのだれかに読んでもらいたいのだが
     自分たちで読むのが面倒という理由やら、思春期の恥ずかしさっていう自意識過剰やらがあって
     生徒は先生に朗読をせがむ。
     朗読するのは嫌いじゃないのでご希望に添いましょうという体裁をとって朗読する。
     朗読は結構上手い。とにかく緩急自在に舌が回るし、音の高低も普段から鍛えられている。
     しかし、ちょっと困ったことが起こる。
     本を読むスピードが朗読の早さについていかない。つまりこういうことだ。
     本を読むのは早い。しかし、朗読のスピードは遅い。
     本を朗読する早さに本を読む早さを合わせると、スピードを落とした分脳が遊びはじめるのだ。困ったことだ。
     有り余った活動エネルギーの埋めあわせをするように、もうひとつの脳が思考しはじめる。
     朗読とはまったく違ったことを考えたりする。
     授業の真っ只中の朗読の最中、遠藤周作の「ヴェロニカ」を見て朗読しているというのに
     もうひとつの脳はBBSの文章を見て読んでいる。確かに意味を読み取って笑っていたりする。
     実際の朗読では笑える場面ではないので、にやりとしたりしていたらさぞかし不気味だろう。
     しかし、生徒たちはだれひとりとして気づかない。聞き惚れて教科書の活字を追っている。
     生徒たちは真剣に教科書を読んでいるでしょうね、と教室中をぐるりと見渡してちゃんと掌握したりしている。
     こんなこと考えながら読んでいて間違えたら恥だぞって朗読しながら、また考えはじめる。
     朗読している先生のほかに、もうひとりの自己が独立して思考しはじめる。





     【インフルエンザウィルス】                                2002.02.10.Sun. 

     熱があるの?熱があると一瞬凍った空気に触れたようにぶるぶるっと寒く感じるのよね。
     じゃあ、南の暖かい石垣島に飛んでいってオレンジの太陽に照らされてみるのもいいかも。
     椰子の木陰で強い陽射しをよけながら海からの風を待って1日過ごすってのもご機嫌。
     渚の星の砂を手にすくって綺麗な砂ばかりを化粧壜に入れてきて、お土産に。
     ひりひりのどが痛いの?暴れているウイルスと闘っているのよね。負けられない。援軍を送りこまなきゃ。
     じゃあ、じんわり効いてやさしい漢方のど飴をつくってあげようね。
     甘酸っぱい恋の味がするレモンと強い香りのするカリンと快く酔わせてくれるブランディーをミックスさせる。
     舌の上でころころ転がせて遊んでいられるようなちょっとずつしか溶けない飴。
     噛み砕こうとしてもとうてい無理な氷のように硬くてひんやりと冷たい飴。
     力が抜けるようにだるいの?体が休みたがってるのよね。仕事をしすぎて過労なんじゃないの。
     知らないうちにたまっていた疲れを全部吸収してくれるような、お日様の光をいっぱい含んだふかふかの布団に眠ろう。
     雲の上で寝そべっているようなふわふわな気分に開放しよう。
     それで眠れないの?心配しているから目が冴えてしまうのよね。
     どうすればいいかっていつも人のことばかり考えていて自分のことをすっかり忘れているからね。
     おかげで元気でいるから心配いらない。
     だから何もかも忘れて Good night!





     【潜行するささやき】                                    2002.02.08.Fri. 

     途切れながら弱いつぶやきが貝のやわらかい耳に聞こえてくる。
     それは半世紀前に発光している。

     語られずにいた痛みがやっと離れようとする。
     微かな音が紡がれて古代からの日々を積み重ねて意味を掴む。
     ひも粒子が振動して惹かれるように吸収してくれる耳を探し当て
     奏でるような音となって響く。
     でも届くまでの距離がはかりしれないほど遠くて途方に暮れる。
     半世紀かかるという。

     深く深くだれにも聞こえない届かないホールの底に潜行してゆくばかり。
     奇蹟的に聞こえても出会えない。





     【泳ぐグッピー】                                       2002.02.07.Thu. 

     掃除の時間に、ある教室を通り過ぎたとき、ちらりと入り口の小さい窓ガラスから中が見えた。
     なんだかとっても異次元空間だったので
     数歩通り過ぎてから戻って、鼻をくっつけて中の様子をまじまじと眺めてみた。
     賑やかにいろんなものが置かれていた。
     花や玩具らしきものや水槽があって、教科書みたいな本ももちろん本だなにきちんと並べられていた。
     興味が湧いてきたので、がらがらっと戸を開けて中に入った。
     だれもいなかったけれど、生徒が生き生きと勉強している姿を想像することができた。
     水栽培の黄色のヒヤシンスからは、強い香りが部屋中に漂っていたし、
     腐葉土をたくさん含んだプランターには赤いチューリップや紫のパンジーが咲いていた。
     バケツいっぱいにはられた水の中には大ぶりのマンサクがぴろぴろと花びらを四方に広げ
     一輪挿しには紅色の梅が蕾をふっくらと膨らませていた。
     安らぎの空間に足を踏み入れたような気がした。
     壁には丁寧に葉肉を取り去って葉脈だけになった数種類の木の葉の標本が展示されていた。
     机の上にはやりかけのジグソーパズルが置かれていて、そばに完成される予定の写真があった。
     絵に語りかけながら一片一片をはめこんでいるときのつぶやきが聞こえてくるようだ。
     ぐるりと教室を眺めてみると配膳台の横には水槽があって、グッピーが気持ち良さそうに
     尾ひれをひらひらさせてぴちぴちと泳いでいた。
     水槽の割には10匹ぐらいしかいないグッピーには広過ぎる、もったいないほど贅沢な空間を悠々と泳いでいた。
     澄んだ水の中を泳いでいるグッピーを飽きもせずに見ていたら、いつのまにか私はグッピーになって泳いでいた。





     【新しい赤い星】                                      2002.02.06.Wed. 

     長い帯状の層積雲が暮れ残る空の色を呑み込もうとしている。
     赤々と燃える太陽がさらに大きく膨張しながら、冬枯れの枝ばかりの樹木の間を見え隠れして揺れている。
     夕刻を車で走る。早足で沈む夕陽に向かってゆったりとした左カーブの楕円を描いて堤防を走る。
     そのときの気分によって、気分が曲を選ぶ。
     音楽には創り出した人の感受性が入っているから、自然にそれに共振するものを求める。
     目に見えないけれどはっきりと波長を感知して、アナログの目盛りを微妙に調整するように曲を選ぶ。
     選んだ曲の世界に浸りきって聴く。
     目的地に到着しても曲が終わらないときは、曲が終わるまで車の中で聴いている。
     聴き終えて気持ちを切り替えてからでないと車から降りられない。
     ライトを消して真っ暗いガレージのなかで聴いているときもある。
     今日は秒読み開始位置についてという感じ。新しいスタートを切らなきゃね。





     【だれもいない海に立春】                                2002.02.04.Mon. 

     寒風吹きすさぶ暗い海に春風の一陣が届く。軽くて明るい南の光をきらりとさせて。
     塩辛い潮風に一筋の甘い香りがただよう。赤いローズの香り。
     冷たい海水に情熱の一滴が滴り落ちる。静かに波紋はどこまでも広がっていく。
     荒荒しい波も一休みをしたくなる。海のエネルギーっていうのがなくなってくるから。
     束縛から解き放たれて自由が羽ばたく。
     渚にはいまはだれもいない。海の青さを確かめに、恋焦がれた海に行こう。





     【 The Perfect Fan 】                                   2002.02.02.Sat. 

     ゆっくり回転していてその速さの相性はぴったり。ときには駆け出したりしても。
     爽やかなメロディーが流れていて居心地がいい。リズムも軽くていい。
     それになんといってもうっとりするほど美しい。美意識の遺伝子が同じかも。
     眺めていてときのたつのを忘れる。毎日見ていても飽きない。何回見ても飽きない。
     その物語といったら。 Your pure soul. Shall We Dance ?
     スタートは勘が良くて瞬発力があるから得意領域なんだけど
     突然に号砲が鳴らされてしまって戸惑いのうちにはじまってしまった。
     神の意志がこの宇宙を動かそうとしたんだ。
     巻き込まれながらも、ちょっとしたこういうことには慣れているから。
     でも未だにおおくは謎だらけで、立ちくらみ。
     少しわかってきたのはつい最近のこと。といってもいったいなにを。
     可能性を追求しようとしてもいいところで逃げだしたり放棄するしね。
     それにひきかえ絶対に責めないんだね。どこまでも許してくれて。
     言葉には敏感になってきている。悪いけど吹きだしちゃったよ。
     読み終わりやがて悲しき雪柳
     天使になりきれなくて邪魔したくなるくらい。
     第2コーナーにさしかかったってところかな。





     【わたしのいる地点】                                    2002.02.01.Fri. 

     いっせいに震える空気、花、木、それらが渾然として迫ってくる景色に出会ったときは
     サファイアブルーRタイプで乗りきる。
     デジタルカメラ2000ミリの望遠レンズで8000分の1秒でシャッターをきる。
     そこにじっととどまっているとその世界に呑み込まれてしまう。
     急いで駆け出して空の中に逃げる。
     感情がフロアーいっぱいになって溢れ出てきそうになる。
     そうでなくてもふとした瞬間に溢れるニュトラルなのに。
     水面のさざなみが静かに囁いてくるときには
     そのなかに飛び込んで大きく目を見開いて水中から眺めてみる。
     現実から遠くに離れてしまったほうがかえって良く見えてきたりする。
     ほんとうにマトリックスなのかも。
     あと100年して解明されるとしたら。
     わたしの見える景色はなぜこうもみんなと違っているのだろうか。
     その違いを上手く説明できない。でいる。今のところ。からかなしい。
     でもここがスタート地点ではある。わたしの存在理由。
     そこのところを表現しようとしているのよね。





     【異星人の不安】                                      2002.01.31.Thu. 

     奇妙な格好をした異星人をなかなか周りが受け入れてくれなかった。
     だから随分長い間地球に住む違和感にさいなまれ、自分の位置を確保するのに困惑することが
     日常生活の大半を占めていた。
     といっても、これは対人意識の問題で社会生活を営む上ではたいした問題ではなかった。
     そういったズレを察知するや相手に上手く合わせるテクニックを
     またしても奇妙にというほかにないぐらい悲しいまでに会得してしまっていた。
     自己防衛的な身の処し方ではあるが、へたすると自分というものがなくなってしまいそうな
     そういう危険性があったにしても、結果的にそうならなかった。
     この地球に住む人間社会は、みんなのしていることを普通にこなしていれば普通に生きていける社会なのだ。
     異星人にとっては少し息を潜めなければ生きにくいがどうってことはない。生きていける、少々息苦しいが。
     しかし、時代は確実に変わってきている。50年経過して風通しが非常に良くなってきている。
     胸いっぱいに大きく息を吸いこんでゆっくり吐き出せる。最後の1ミリリットルまで。
     空気には酸素がいっぱい詰まっているような心地良さを身体中に感じる。
     奇妙な格好をした異星人としての自分をようやく受け入れてくれるようになったというわけだ。
     これは地球人のものの見方考え方が変わってきたせいで、なにもわたしが変わったわけではない。
     ようやく異星人の時代がやってきたかなという幸せな予感でいっぱいだ。
     150年早くこの地球に来てしまったという感覚が正直にいえばまだあるとしても。
     しかし不安が残る。地球人はわたしが異星人であることを知っているのだろうか。
     どこまで知っているのだろうか。





     【輝く発光体】                                        2002.01.30.Wed. 

     意識の闇を1段1段降りて行くと眠りに落ちる前の境界区域に入る。
     意識と無意識の混濁しているゾーン。
     この領域にいるのは非常に気持ちがいい。陶酔という感覚に近い。
     もうひとつ意識を抜けば安らかなる深い眠りに落ちるというのが微かにわかる。
     興味の尽きない無限の広がりをみせる神も及ばぬ世界ではないだろうか。
     なにかを待っているとあらわれる。だからじっと待っている。
     行きつくところのない暗闇の向こうに、あるときは発光する球体が見えた。
     蛍のような感じではあるが光り方が強烈で太陽のような光源であった。
     それはゆっくり11次元空間を移動し自由に曲線を描いた後、闇の向こうに消えた。
     またも待っていると、今度は半分隠れて輝かしいダイヤモンドリングがあらわれた。
     そのダイヤモンドリングは翳の物体を後ろから照らしながら移動してゆき、、輪郭をくっきりさせていった。
     いったいなんなのだろう、あれは。
     右上から斜め左下に不規則なでこぼこで流れていた、なにかのかたち。
     なにとは今はいえないが記憶にははっきりと残っている。
     このかたちが現実にいつか顕れたときに重なって初めてわかってくるものなのかもしれない。
     輝く発光体があり、見えないときもあるが絶対に存在し、
     ダイヤモンドリングのように翳なるものを背後から鮮明に浮かび上がらせたりもする。
     闇の向こうにはいつもなにかがある。しかも怖くない。むしろそこに面白さがあったりする。





     【失ったレモン】                                       2002.01.29.Tue. 

     いつものようにぷか〜りぷかりと漂流していると、目の前を今まで見たこともない物体が
     右から左へとデモンストレーションしてゆく。なんなのでしょう。
     それは黄色いレモンであった。
     なんら普通のレモンと変わらないようでただひとつだけ違っているところがあった。
     それは皮膚呼吸していた。
     人差し指でそっと押してみると、風船のようにふわりと進んだ。
     その弾みで細かい粒子が微かに飛び散って、あたりにレモン特有の酸っぱい爽やかな香りが広がった。
     手を伸ばして掌にのせてしばらく眺めていた。確かに息をしている。
     掌の上で転がしたり両手で包んでみたりボールのように放り投げたりして遊んだあと
     ポケットにそっと忍ばせた。
     それは熱を持っていて左ポケットのあたりが温かい。
     時々ポケットに手を入れレモンの感触を愉しんでいた。
     いつしかすっかり馴染んで、同じ気体を呼吸していた。
     あるとき地球の近くを通りかかったときのこと。
     見知らぬ手がぬっと現れた。
     気味が悪くて後ずさりすると、執拗にその手も同じ距離を保って伸びてくる。
     凝視して手の表現している言葉を聴くと、どうやらポケットのあたり。そう、レモンに関心があるらしい。
     しかたなくレモンを差し出すとうれしそうにそうーっと受け取り、両手に包むと音もなく闇に消えた。
     それ以来何かが変わった。なんの前触れもなく突然に、レモンのようなものがからだのなかを落ちてゆく。
     そのあとには必ずブラックホールに吸い込まれるような深い孤独が津波のように押し寄せてくる。





     【苦いコーヒー】                                       2002.01.28.Mon. 

     待ち合わせの時間が刻々と過ぎて行く。
     ここは美術館の一角にある喫茶兼図書室。
     いつか訊かれたことがある。
     待ち合わせの時間からどのくらいまでが遅刻の許容範囲?
     30分、待っても1時間。それ以上は待たないということで合意していた。
     しかしもう1時間が経過していた。
     いったい何があったのだろうか。不安がよぎる。
     地球に住む人はいったい何を考えているのか不透明であるし、
     捩れがあったり、歪みがあったり、意味不明であることが多い。
     そのたびに乗り違えたり、行き違えたり、迷ったり、悩んだり、立ち止まったりしてしまう。
     しかし絶望はしていない。かえって地球人に対する好奇心がよりくすぐられてしまう。
     錯綜しているなかからひとつひとつ丁寧に謎を解くように
     純粋なもの、美しいものの希少価値を見つけることが
     だから、異星人のスリルある愉しみにもなっている。
     きみに向かっていくことで永遠の謎に近づける不思議。
     拠り所となっているのは自分の直観と解釈(想像)。
     このコーヒーを飲み終えたら帰ろう。味はほろ苦い。





     【都会に潜む豹】                                       2002.01.27.Sun. 

     このレールをたどっていくと、150年後の未来都市に出る。オフィスビルが立ち並びその間を飛行する車。
     夜空にはぽっかり満月が浮かび、晧晧と輝いている。
     どのビルの窓も年中閉じられており、もしも誰かが150階あたりで窓を開けたりしたら空気がなだれこんで来て
     ビルの中で行き場を失った風は壁に突き当たってぺしゃんこに押しつぶされて窒息死してしまう。
     こんな息苦しいビルの中で、せっせと仕事をするのが日課になっている。 
     毎日自分自身を飼育しているのでこれが当たり前になっている。
     時々呼吸困難になるのは、ほんの少し前に荒野を駆ける記憶が呼び覚まされて自然に帰ろうとする
     のではなくて
     きっと病気なんだろうと未来医学の最先端をいく医師が判定する。
     時々酸素が不足するのをいまいましく感じながら今日もビルの中を徘徊している。