猿谷隧道を抜けると、新宮駅行き特急は猿谷ダムの堰堤の落差を一気に下ります。役隧道を出てしばらくは比較的広い道を走りますが、辻堂の集落が見え隠れする頃には狭隘でうねる道を走ることになります。やがて、「砂利運搬車両はこれより右へ折れ対岸道路を通行して下さい」という横断幕を目前に見つけると、、二股に分かれる道を選ぶことになります。一見、河原へ降りて行く方が幅広で国道の様ですが、狭く続く山側の道が国道です。もちろんバスは、狭い方を選びます。(ただし、河原側を迂回したことはあります。詳しくは、「●十津川くまの特急NEWS最前線」を見て下さい)

 二股の交差点の少し先に大塔村役場前停留所があります。ここから、大塔温泉夢乃湯停留所までは、十津川くまの特急の運転手さんに限らず、国道168号線を走る多くのドライバーが神経をすり減らす区間です。見通しのきかない狭隘路が続く上、交通量が多く、あらかじめポイントを知っていないと対向できません。この道を初体験する方には、絶叫区間となるでしょう。

 大塔村役場前を過ぎると、南朝ゆかりの竹原八郎の墓に向かう石段を見ながら、左右から木々の枝が覆う狭隘路を登ります。途中、熊野川に架かる橋のたもとがかろうじて広くなっているので後続をまくっておくと、集落に入るまで何事もないことを祈るように、一気に走り抜けます。国道168号線では毎度のことですが、途中のカーブミラーに車の影が映った時には完全に手遅れの状態です。

 左右ギリギリに軒が迫る路地を抜けて、銀色の鉄橋を渡ると道は少し広くなり(お世辞にも幹線国道の広さとは言い難いですが・・・・)、辻堂停留所が旅館大阪屋の軒下にひっそりと立っています。現在は奈良交通バスが一日数本しか停車しませんが(大塔村営バスの一般利用の可否については不明です)、かつては、熊野交通バスや国鉄バスも乗り入れ、「急行停車」と表示される威厳のある??停留所でした。

 ホっとするのもつかの間、辻堂停留所を出たバスは、再び狭くなり始めた道をそろりそろりと進みますが、郵便局と交番が向かい合う辻堂局前停留所を過ぎると、遂に信じがたい道路状況を眼の当たりにします。車体ギリギリに石垣と民家の塀が迫り消え去るように右へカーブしている路地を、身をよじりながら走り抜けることになります。さらに今度は、岩肌と民家の塀が迫る上、左へカーブしている坂をはい上がらなければなりません。ここに初めてカーブミラーが登場しますが、乗用車同士がギリギリ対向できるスペースしかなく、バスではとうてい対向できません。狭隘区間を抜けて振り返ると、つい今まで悪戦苦闘した辻堂の集落を眼下に望むことが出来ます。そして、短時間にかなりの標高差を登ったことに気付きます。
 
B辻堂の集落に入ってきた新宮駅行き特急。(大塔村役場前−辻堂) 
 左右に立ちはだかる民家の壁が、同時に前方の視界をも遮っています。対向車が来た時には、しばしば長時間の立ち往生を余儀なくされる区間の一つです。
D停留所のポールが軒を借りる、旅館大阪屋。(辻堂停留所)
 この写真を撮った時、大戸は閉ざされ静まりかえっていました。その後も、度々ここを訪れましたが、私は大戸が開けられている姿を見たことがありません。
E大阪屋旅館の壁に掛かる懐かしい文字。(辻堂停留所)
 停留所の板塀に目を向けると、「急行停留所」の看板と共に、奈良交通と熊野交通の乗車券発売所であることを示す立て札が残されています。旅館の存在を考えても、かつてはかなり賑わっていたのでしょう。
 今なら、「特急停留所」でしょうか?いや、特急が停車しない停留所に「特急通過」と表示する方が合理的かも。
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辻堂口
辻堂局前
閉君
宇井口
城戸
辻堂
宇井
大塔温泉夢乃湯
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狭隘区間
@大塔村役場前にさしかかる、大和八木駅行き特急。(大塔村役場前停留所)
 辻堂集落の難路を、やっと走り終えたところ。途中追い越すところがないので、後ろには多くの車が続いています。たいていは、この停留所前で後続車をまくります。
A乗降扱いを終え大塔村役場前を発車する、2系統・五條バスセンター発、湯の峰温泉行き。(大塔村役場前停留所)
 辻堂集落の難路に、これから挑むところ。特急に比べれば小柄ですが、やはり走りやすい道ではありません。
C辻堂停留所を過ぎて、これから大塔村役場前への狭隘区間に進入する大和八木駅行き特急。(大塔村役場前−辻堂)
 辻堂集落を抜ける間でバスが十分に対向できるのは、この辻堂停留所付近以外にはほとんどありません。そのため、この先で対向できなくなるとバスが辻堂停留所まで後退するという、通常では見られないような事態に遭遇することもあります。私にも経験があります。バスと大型トラックの間に挟まれた状態で数分が経過すると、バスの後退灯が突然点灯すると同時に運転席の窓から、白手袋が「さがれ、さがれ」と合図を送ってきました。この後の悲惨な状況は、ご想像にお任せしますが・・・・・・・
 
F左の写真は、辻堂局前の絶叫狭隘区間に南からやってきた、2系統・湯の峰温泉発、五條駅行き。右の写真は、同じ絶叫狭隘区間に北からやってきた、新宮駅行き特急。(辻堂局前−閉君)
 奈良交通の定期路線バス同士がここで出くわすことは通常ありません。問題は不定期にやってくる大型観光バスやトラックです。乗用車は運が良ければ、左写真のマイクロの運転席側に少し見えている隙間で、かろうじて一台だけ対向することが可能です。(慌てると、段差で車下をこすります・・・・)
 右の写真にカーソルを合わせてクリックすると、動画を観ることが出来ます。(ただし、むちゃくちゃ重たいです)
狭隘区間
 絶叫狭隘区間の辻堂集落を抜けると、少し道幅が広くなりまが、それもつかの間、崩落した路肩の修復工事を行っているために、再度、工事用の重機と崩落防止柵の隙間を縫うように走ることになります。2003年夏には、修復工事が進み少しは走りやすくはなりましたが、工事の進行に合わせて毎日のように様相が変わるため、十津川くまの特急の運転手さんですら対向のポイントが判らないと言います。なおこの路肩崩落が、辻堂・迂回の原因となりました。(「十津川くまの特急、NEWS最前線」を参照して下さい

 崩落箇所をようやく過ぎても、この先さらにうねる狭隘路を走り続けます。左右には空を隠すほどの針葉樹が隙間なく並び、併走する熊野川の流れを確かめなければ、どちらを向いてるのか混乱しそうになります。やがて、川岸側の車窓が急に明るくなると、千メートル級の山々を背景に数軒の民家が現れますが、山々の美しさにしばし見とれていると、閉君停留所があることを見落とすかもしれません。(実は私は、この閉君という名がとても気に入ってるんですが・・・・)

 若干の対向場所が存在する閉君を過ぎると、狭隘路に再突入します。次に視界が開けるのは、宇井バイパスが旧道と分かれる「ふれあい隧道」の入り口です。十津川くまの特急バスは、どうも狭いところが好きなようですね。完全2車線の宇井バイパスを避け、右に静かに残された旧道へと、その似つかわしくない車体を滑り込ませます。バイパス完成後、交通量は少なくなった旧道ですが、熊野川を渡り野迫川村に向かう車があるので、気を抜くことは出来ません。また、その狭さも強烈です。旧道入り口もかなり狭いですが、しばらく進むと、幅員減少の注意標識と共に、進路の左半分がコンクリートの壁で完全に塞がれ、車幅ギリギリの狭隘路になってしまいます。歩行者が通り過ぎるのを待ってゆっくりと走り抜けると、篠原へ向かう道が左に分かれて行きますが、ここが宇井停留所です。

 宇井停留所から先も狭隘路が続きます。車体が道路の凹凸を拾うと左右に大きく揺れ、そのたびに張り出した枝葉をガサガサと擦りながら走ります。遙か左上には、宇井バイパスのアーチ橋がうらやましいくらい真っ直ぐ大きく見えます。さんざん苦労を重ねて旧道を走りきったバスは、1.5車線の宇井橋を渡り大塔温泉夢乃湯停留所に着きますが、当の夢乃湯の入り口は残念ながら遙か上のバイパス側にあり、どちらかといえば熊野川を渡った赤谷・清水方面からの利用を考慮した停留所のようです。大塔村営バスの停留所はバイパス側にあります。

 大塔温泉夢乃湯停留所の先は、熊野川対岸から県道734号線が合流し、辻堂口からこの県道を迂回してきた大型車(主に道路工事のダンプカー)が走るため、旧道であるにも関わらず、対向に苦労する狭隘路です。そして、この狭隘路の坂を登り切ると、やっと2車線道路の宇井バイパスに合流し、大塔と十津川の村境にある城門隧道にたどり着きます。

 
G深山に囲まれた閉君集落にさしかかる、大和八木駅行き特急。(閉君停留所)
 これらは1月に撮影しましたが、千メートル級の山の頂がうっすら雪化粧していることが判ります。(ウ〜ム、それにしてもここの家の犬はよく吠える)
I宇井の集落を走り抜ける、新宮駅行き特急。(宇井口−宇井)
 狭いだけならまだしも、曲がりくねった路地でこの車体を操るのは至難の業です。時に井戸端会議をする人、路上で尾を振るワンちゃん・・・・・
J国道168号線旧道を走る、新宮行き特急。(宇井−大塔温泉夢乃湯)
 写真上方の案内標識には、新宮まで遙か111キロと示されています。夢乃湯の案内もありますが、今は宇井バイパス沿いにしか入り口がありません。これらの案内は、この路がつい最近まで街道筋だった名残です。
 もちろん特急バスは、観光色など微塵も感じさせず、生活道路である旧道を、集落の乗客を捜しながら走ります。
K国道168号線旧道を走る、大和八木駅行き特急。(宇井−大塔温泉夢乃湯)
 背景には宇井バイパスのアーチ橋が見えます。でもやはり、十津川くまの特急には吊り橋がよく似合いますね。それも、山々が四方から見下ろす深い谷間に架かっているような。
 それにしても十津川街道には、大小様々な吊り橋がありますねえ。谷瀬の吊り橋は別格として、名も知らぬ吊り橋の先を、車窓から想像するのも、ちょっとした旅の楽しみです。
L国道168号線旧道を走る、大和八木駅行き特急。(宇井−大塔温泉夢乃湯)
 すぐ上には、宇井バイパスのアーチ橋が架かり、先を急ぐ車が次々に走り去ります。それに対して旧道のコンクリート橋は、まるで時の止まった異世界への入り口のようです。さしずめ、十津川くまの特急は時を旅するタイムマシーン?
M国道168号線旧道を走る、大和八木駅行き特急。(大塔温泉夢乃湯停留所)
 コツン、パキッ、バサバサバサ。宇井バイパスから分かれたバスは、剪定されないまま覆い隠された茂みをかきわけながら、この停留所へ出てきます。走り抜けた後には、木の葉が舞い散ります。
N宇井バイパスから見た夢の湯(十津川村営バス宇井停留所)
 バイパスは走りやすい2車線道路です。写真では見えませんが、旧道は遙か下にあり、十津川特急バスはそちらの方を走ります。
 橋を渡りきったところには、夢乃湯が見えています。
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H閉君の狭隘区間を抜けた、新宮駅行き特急。(閉君−宇井口)
 「定期バスはワンマンです。運行にご協力ください」の看板が置いてあると言うか、放置されていると言うか・・・この十津川線では、あちこちで見かけます。十津川くまの特急はリアバンパーにもこのステッカーが貼ってありますが、ご覧の通りの状況でどのように協力したものやら。
 とりあえず、地元車のように道路状況と待避場所を全て暗記してしまうか、あえてこの国道168号線を自家用車で訪れないように心掛けるしかないでしょう。
O旧国道168号線の宇井橋を渡る、大和八木駅行き特急(宇井−大塔温泉夢乃湯)
 旧道の橋梁とはいえ、真横から見ると堂々とした構えで重厚感がありますす。頭上をまたぐバイパスの橋梁は近代的であか抜けたデザインです。
 集落を一つ一つ回りながら走る十津川くまの特急バスには、生活感漂う旧道の橋梁を渡る姿がよく似合います。