紀伊半島縦断6時間30分の旅も、そろそろ終わろうとしています。秋の夕暮れ、対向車のヘッドライトが次第に増してきますが、車窓には何も変化がありません。やがて行程最後の名も知れぬ隧道を出ると、悠久の旅から一瞬にして現実の世界へと引き戻され、日ごろ見慣れたはずの街燈やネオンがカルチャーショックのように眩しく映り込みます。
 左手に新宮高校を見ると目前には国道42号線の交差点が現れ、これを左折するといよいよ新宮市の繁華街に入り、一面を橙色に埋め尽くしたみかんの小売店が乗客の目を引きます。今までの快適な走りを忘れるような渋滞に溺れていると、新宮川に架かる新熊野大橋が姿を見せますが、目前で右折し権現前停留所を通過します。この停留所は、熊野交通バス、三重交通バス、奈良交通バスの熊野市駅・池原・河合方面行きと供用しています。
 300メートルほど走ると突然道幅が狭くなり、新宮城址の裾にあたる丘を車幅ギリギリに越えます。さらに、「新宮駅右」の標識に従ってT字路を右折すると路地裏のような通りを走り抜けて、ようやく新宮駅のバスターミナルが目前に現れますが、他のバス会社とはターミナルを供用していません。奈良交通バスは、明光バスと共に駅前広場の歩道に面した場所に停留所が設けられています。
 旅行鞄や紙袋をさげた乗客が思い思いの方へ消えてゆくのを見届けると、方向幕を「回送」に変え、新宮営業所(旧南紀支社)へと帰って行きます。十津川くまの特急の車両は全て葛城営業所所属ですが、専属の9名の運転士は全て新宮営業所所属に所属しているため、「新宮へ帰ってくる・・」という表現がとてもピッタリと当てはまります。
C長旅を終え、ひとときの休息を取る、新宮駅行き特急(新宮駅停留所)
 6時間半の長旅を終えたバスは、明日に備えて、ひっそりと新宮営業所の車庫へと向かいます。
 この日、新宮駅で降りたのは、私のほか湯の峰温泉からの乗客が一人だけでした。
E長旅の証(新宮駅停留所)
 
少し前までは92番だったのですが、八木駅−五條バスセンターの各停化、神丸停留所の新設に伴い、最終の整理券番号は、とうとう111番になってしまいました。 少なくともこれ以上の数の停留所を走り抜けてきた証です。 一応特急なんですけどね。
 なお写真の運賃表は、1〜21番が1A〜21A番、100〜111が0〜11番になっていますが、これは度々ご説明いたしてますように、整理券発行機が0〜99番までしか対応していないためです。
 
写真をクリックして、はるか6時間半前、八木駅を出発した際の運賃表を思い出してみて下さい。
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新宮高校前
権現前
新宮駅
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@池原行きの奈良交通バスとすれ違う、新宮駅行き特急(権現前停留所)
 八木駅9時13分発に乗車すると、運が良ければ権現前停留所付近で池原行きの奈良交通バスに出会う事が出来ます。こちらは特急、かたや池原行きは新宮駅−熊野市駅間急行。でも、時刻表には急行の記載は有りません。
A新宮城址の側を通り過ぎる、新宮駅行き特急(権現前−新宮駅)
 権現前停留所を過ぎると、道中最後の狭隘区間に入ります。坂とカーブが続きますが、そう長い距離ではありません。歩行者はもちろん、自転車やミニバイクなど、行き交う車両は多く、ある意味山間の狭隘区間よりもハラハラします。
B徐福公園横の路地を抜ける、新宮駅行き特急(権現前−新宮駅)
 新宮城址を過ぎ、迷い込むように、さらに路地に入ります。これが最後の最後に待ち受ける狭隘区間で、突き当たりにはバスターミナルがあります。
DDD51の重連と出会う一場面。(新宮駅停留所)
 運が良ければ出会える、なかなか面白い光景です。
 ちなみに、十津川くまの特急は度々鉄道と立体交差しますが、踏切を渡るのは唯一ここだけです。(運行路線上ではありませんが・・・・)
F出発を待つ八木駅行き特急。(新宮営業所)
 激しく雪が降る中、始業前点検に余念がありません。古来から「荒ぶる神はなはだ多し」と恐れられた紀伊山地は、今でもその道程をあなどる事が出来ません。
G新宮駅を出る、八木駅行き特急。(新宮駅停留所)
 出庫したバスは、一旦国道42号線に出て、新宮駅行き特急と同じ道をたどります。
 「雪ですね。天辻は大丈夫ですか?」「今日は、チェーンいらんらしい。まあ、いってくるわ。」と、短い会話だけを交わし、数人の乗客を乗せて紀伊半島縦断の長旅に出発しました。
H権現前へ向かう、八木駅行き特急。(新宮駅停留所)
 新宮駅を出たバスは、踏切を渡ることなく商店街の一方通行に入り、市民会館前(通過)で新宮駅行きの路線と合流し、権現前停留所へ向かいます。
I新宮営業所に戻る、熊野線の奈良交通バス。(新宮駅停留所)
 池原方面から新宮駅に到着したバスは、十津川くまの特急と異なって、その運用上、新宮営業所に留置することはありません。営業所で小休止の後、再び池原行きや河合行きとして折り返してゆきます。
@
AB
CDEG
HIJK
新宮駅
F
狭隘区間
J現在も残る、新宮駅の古い案内板(新宮駅停留所)
 奈良交通の乗り場位置が今とかなり異なっています。また、北山峡方面が、大和八木駅行きになっています。
 もっと古くは、奈良交通バス、国鉄バスは共に、現在のタクシー用のロータリーに乗り場または降り場があったようです。
K昭和50年代の新宮駅(新宮駅停留所)
 写真右には、手すりに取り付けられた国鉄バスの駐車禁止の表示板とともにヤシの木が写っています。これは、Jの案内板に示されている現在地のヤシの木と同じものです。