2007 カンボジア教育者対象 
折り紙研修会講演及び実技指導の記

国際折り紙研究会代表 吉澤喜代



 私たちの会では吉澤章の提唱して来た創作折り紙を基として活動してきました。
 10月22日から10月26日カンボジア・シェムリアップ州教育局主催による教職者の秋の研修会に、特別参加にて折り紙の研修を致しました。
 この話の発端は、吉澤章の著書「やさしいおりがみ」にあります。会員乾雅宏様(乾窓院)がこの本を買上げてシャンティ国際ボランティア会を通してカンボジア国に相当の冊数を寄贈されました。折り方の製図はそのままにしてタイトル、解説の日本語の印刷の上にクメール語訳(カンボジアの公用語)の紙片を貼る作業は檀家の皆様、当会員がボランティアで参加しました。貼り込みは簡単な作業のようでありながら、始めからそこにあるように著者の思いとも、一体になってゆくようにと願っていました。
 折り方の本を差し上げただけではなく、この一冊を手にする人(子供)に、吉澤章が折り紙を子供の造形教育、情操教育に掛けた思いを直接伝えるべきと、提案される方がありました。その事をSVAからシェムリアップ州教育局に話を繋げられ早速に話は進みました。
 SVAシャンティ国際ボランティア会は、前身の「曹洞宗東南アジア難民救済会議」から様々な経緯を経て1999年に改組され、教育・文化活動を通じて平和な社会の実現を目指して活動されています。因みにこのSVAの創設者有馬実成師は生前、吉澤折り紙に関心と理解を寄せられていました。
 研修会全日程(10月22日から10月26日)の内25日、26日両日を折り紙研修に当てるというプログラムを提示していただきました。

10月24日(水)9:30〜19:00
SVA事務所訪問
 昨日23日シェムリアップ空港にお迎え下さったとき、今回の企画を担当して下さるSVAの鈴木様から、通訳スー・ソボン様、チェア・パル様その他の方を紹介して頂き、こちらは同行の会員紹介、一応のあいさつは済んでいた。
 鈴木様からSVAの設立からの経緯と現在の活動についてお話しがあった。事務所の天井近くには折り紙がたくさん飾られていた。
 25日と26日のスケジュールの説明を受ける。
 午後はWS(ワークショップ)会場になっている(ニアク・ムック小学校)下見。WS展示室を確認。図書室として使われている少し大きい部屋に、長いテーブルをどこからか運び込まれ、白い布をテーブルクロスとして敷いて展示台となる。持参した吉澤章の作品と会員の作品を選んで展示する。

吉澤章作品 会員作品
SVA事務局にて 教材準備

 外は薄暗くなりSVAの事務所に戻る。
 明日のWSの進め方、教材のセットを全員でつくるなど準備をする。

10月25日(木) 7:00ホテル発にてWS会場(ニアク・ムック小学校)へ。昨日遅くなったので展示室の作品点検と手直しをする。書き出し掲示をして頂く。展示風景の写真撮影。

折り紙研修カリキュラムと記録

8:00〜9:45
 シェムリアップ州教育局主催による教職員研修会にて折り紙の講習に当る。
 全体の研修会は22日に始まっている。参加者は各地から集まっていた教職者、主として校長先生80名。私たちは少し高いところに並んで紹介を受け、代表として挨拶をする(このレポートの冒頭の原稿のような内容)。

開講のあいさつ

講演の項目

○ 折り紙の概要
 a:一枚の紙を折ることによって表現する造形
 b:表現形式は立体的または平面(レリーフ)
 c:素材は普遍的な紙―この項目については実技にともなってくわしく解説
 d:原則として大切なことは切り込み、書き込みをしないこと
○ 折り紙の起源と歴史
○ 遊びから教育的な折り紙
○ 創作折り紙、即ち現代折り紙
 「素材はどのような紙でも適宜用いる」と話したので新聞紙で「舟」と「ぼうし」を折る。

実技指導(新聞紙で折る) 実技指導2

10:00〜11:30
「やさしいおりがみ」(前半)
実技と解説 子供が興味を持つ自然界のものを主としたテーマにする。
○ いぬのかお 対角線を二本入れることで左右(耳の下)を持てば上下に動かすことが出来る。
○ ことり(一)(二) どこかにも掛けられる。
○ かたつむり 色(いろ)紙がないときを考えて、白い紙で折る。次に黄土色のいろ紙で折る。二つを比較して自分で考えてもらう。
○ 木の葉 緑の紙で折り、かたつむりとセットにしてみることも解説する。

14:00〜15:45
「やさしいおりがみ」(後半)
実技と解説 行事や物語 ここでは日本の女の子のおまつりとして「ひなまつり」を入れる。
世界中の国、それぞれの民族に歴史はあり、文化の歴史もある。カンボジアには細密な手芸があることを称える。広く他の国にも目を向ける機会があることを願い、「ひなまつり」に触れた。
○ かに やさしいが立てられる。
○ こびとのぼうし 角(90度)を三分の一に折るのはおひなさまの頭と同様な折り方。
幾何学的に角の三分の一を折る方法はあるが、ここでは目測の訓練に良い教材と考えた。
○ おひなさま 円錐形の簡単な「おびな、めびな」普通に人形と考えてもらってよいと思う。
○ すいれん 先ず白(コピー用紙のように両面とも白)で折る。白い花のすいれんとして良い。ピンクと緑を重ねて折ると花びらと萼になり、より美しいことが理解される。

16:00〜17:30
造形教育の基礎として理論と実技
 始めにDVD(10分)を映写して、吉澤章と作品についてを映像を見ながら解説することが出来た。折り紙を理解するに役立った。
シンプルな折り線で変化がつけられる折り方
○ 実際に紙を折りながら解説する。
  縦紙、横紙の折る特徴と欠点、応用について。
  斜めの折り線―動物を折るに適している。
  平行の折り線―機械的な折り線は限られた応用になる(制約がある)。
○ こいぬA〜B 顔の大きさで大人の犬や子犬が折り分けられる。
○ ぺんぎんA〜B ぺんぎんでも同じことが言える。
  折り線の数は変わらなくとも、部分の大きさや角度の変化により特徴を折り分けられることは優れた造形と言える。
○ ちょう 角を合わせないで平均にずらして折ることは折り紙を少し知っている人、全く知らなくとも新鮮な感じがする。羽を動かせることも出来る。
○ ぞう 時間も押し詰まったが、この「象」は少し難しい折り方を丁寧にした。カンボジアの人たちへ最終の吉澤折り紙として。

象を手にした受講者と記念撮影

 今回始めてのシステムで行った折り紙研修カリキュラムは受講者としての教職者(先生方)とSVAのスタッフ、会員が一体になって無事に終了しました。
 皆様に感謝致します。

10月26日(金)
8:30 ホテル出発 約30分郊外に車は走る。道路の両側は幅広い水路になっていて色とりどりの睡蓮、河骨、ほてい草などが水も見えないほどに繁っている。其処彼処に水牛が草を食み、にわとりが走り、民家が点在して、子供の頃がよみがえる。更にはセビリア万博の際、日本館に展開した原風景「日本の四季」に重なり時が往き来するように思えた。
9:00〜
草原、水田の緑の中のチェスアスマン小学校に着く。校門を入って校舎をぐるっと廻り裏庭に行くまで児童が並んで私たちを拍手で迎えられる。

移動図書館活動見学
 SVAが創立の頃から子供の教育、文化のために真剣に取り組み、SVAは絵本を贈り、図書館を整備している活動の一端を知ることが出来た。
 実際の活動として、紙芝居のフレームのような箱に入れた絵を、少し引き出しては隠してクイズにして当てさせるなど、簡単なことで興味を起こさせる。木陰の芝生に座って次には移動図書館のスタッフが絵本を読んで聞かせる。そして児童自身が自由に読むというパターン。いろいろの方法を試行錯誤してそれぞれに合うようにしていると思う。カンボジアの言葉に訳した本や、民話を絵本にしたりと、新しい試みがなされているという。この小学校ではまだ図書館は準備中ということであった。

移動図書館のスタッフが児童に絵本の読み聞かせ

10:00〜10:30
 同小学校6年生の児童と折り紙によって交流。昨日先生方にしたと同様にことり、いぬのかお、こいぬ、ちょう、ぼうしなど、ていねいに折り方を教える。ちょうの羽を動かせることなど、折り上がってからの遊び方など話をする。この教室に入れなかった児童や小さい子供たちが、窓から羨ましそうに覗いたり、色紙をほしいと手をさし出す。もっと大勢の子供たちに折り紙を伝える機会に恵まれるようにしたいと心を残し別れる。
11:00〜 東南アジア最大と言われるトンレサップ湖畔のレストランでSVAの皆様と始めて一緒に昼食とお話しも出来た。
13:45
 コンポントム州サンコー小学校の図書室にて展示図書、児童の読書の様子を見学する

 六年生の児童約30人と折り紙による交流。こいぬ(大きい顔は子犬、小さい顔は親犬)、ぺんぎん、ちょう、ぼうしを担任の先生も一緒に折られた。持参した大きい作品ゾウ、イグアノドンを見せる。私たちは日本から来たこと、地図を見て下さいと話した。

6年生の教室でちょうを折る

15:30
シェムリアップ州教育局による研修会閉会式
 教育局副局長、各地から集まった教職者他、運営スタッフ、折り紙の私たちも同席して全員にて閉会式が行われた。それぞれの代表のあいさつ、また感謝の言葉を頂いた。私たちからも吉澤折り紙を精一杯にお伝えして、充実した時間を皆様と共に出来たと感謝のことばを述べる。

絵本贈呈式
「やさしいおりがみ」を代表の二校の校長先生に贈呈。

閉会式場となったサンコー小学校、6年生の教室 同会場で「やさしいおりがみ」を代表者に贈呈
小学校校庭で研修会に関わった全員で記念撮影

記念撮影 校庭にて出席者全員で撮影
 絵本を贈ることの意義が理解される有効な事業になったと、鈴木様に言って頂いた。
16:30
 サンコー小学校を出発してスコールの降る中をシェムリアップに帰る。

10月27日(土)
 世界の文化遺跡アンコールワットを見学できたことは大変な幸せでした。

 SVA本部の鎌倉様、現地の鈴木様他スタッフの皆様の周到なご助力に感謝致します。