悪い歯ならびの種類
ひと口に悪い歯ならびといってもいろいろな場合があります。上あごの歯が前につき出しているのが上顎前突(じょうがくぜんとつ)、いわゆる出っ歯です。逆に下あごの歯が前に突き出しているのが下顎前突(かがくぜんとつ)、あるいは反対咬合(はんたいこうごう)、受け口ともいいます。
歯の生え方が不ぞろいで、内側にはえたり外側にはえたりねじたりしているのを叢生(そうせい)といいます。乱ぐい歯ともいわれ、犬歯が上にずれてはえる八重歯もこの一種なのです。
奥歯がしっかりかみ合っているのに、前歯がかみ合わずにあいている、開咬(かいこう)もあります。
叢生(そうせい)とは逆に歯と歯の間のスキ間が大きい、空隙歯列(くうげきしれつ)というものもあります。
また、これらの問題がひとつだけあらわれるよりは、むしろ出っ歯のうえに前歯がすいているだとか、受け口でしかも歯があちこち向いている乱ぐい歯だ、といったように、いろいろな問題がかさなっている人のほうが多いといえます。
悪い歯ならびの原因
歯ならびの悪さは、やはり遺伝が強いものです。親が凸凹の乱ぐい歯だったら子供も乱ぐい歯になりがちです。一卵性の双子の兄弟は歯の形から歯ならび、かみ合わせにいたるまでうりふたつです。フランスのハプスブルグ家の家系図とその肖像画をみると、受け口のかみ合わせが見事に遺伝してるのがわかります。
一方、親がなんでもないのに、こどもの歯ならびが悪くなったり、八重歯ができたり、歯と歯の間があいてしまったということもあります。
指しゃぶりや、舌で歯をおす癖があったり、乳歯が長く残って永久歯が曲がってはえてきたり、あごの発育が悪かったりというような場合におこることが多いのです。また、乳歯がむし歯になって早く抜歯してしまったために、後からはえてくる永久歯がその隙間の方向に倒れて、結果的に乱ぐい歯になることもあります。
柔らかい食べ物の影響は?
最近、スナック菓子やハンバーガーなどの柔らかい食物がふえてきて、それで子供のかむ力が弱くなったり、歯ならびを悪くしているという考え方もあります。この仮説について考えてみましょう。
たとえば、約一千年前の出土した骨と現代人の歯ならびを比較すると、現代人の方が歯ならびが悪く、特に乱ぐい歯が著しく増えていることが知られています。また、現代文明から隔離された南太洋やオーストラリア原住民では、やはり乱ぐい歯は非常に少ないです。
これらのことは現代人が何世代にもわたって柔らかい食物をとってきたため、あごが退化して小さくなった結果と考えられています。
では、短期間ではどうでしょうか。北インドの地方出身者の青年を都市に住むものとそうでないものにわけて比較したところ、都市生活者は乱ぐい歯などの悪い歯ならびが異常に高率で見られたとしています。では、この青年たちはあごの発育が悪くなったためにおきたのでしょうか。現在のところ一世代で乱ぐい歯が生じるほどあごの発育が遅れることはないと考えられています。生活の都市化が急激に進むと、むし歯や歯周病が増えることが知られています。この青年たちも食物や食習慣が変化したにもかかわらず、歯みがきなどむし歯予防の考えをほとんど持たなかったので、むし歯や歯周病が増加し、歯をうしなったために歯ならびに影響をおよぼしたのではないかとと考えられています。
悪い歯ならびは文明病
高血圧、心疾患、糖尿病、などは先進国で高い頻度でみられるので、一般に「文明病」と名づけられています。ですから悪い歯ならび(不正咬合)は文明病のカテゴリーの中に入れられる疾患といえます。