Music Magazine Night @ Salon by Marbletron, 31/8/01.
特集「西海岸音楽の現在: グレイトフル・デッドからテクノ、ヒップホップへ」
ミュージック・マガジン編集部主催によるトーク&DJイヴェント。
場所は地下鉄丸の内線新高円寺駅から徒歩2分ほどにあるサロン・バイ・マーブルトロン。ちなみに同じ建物の1階にあるカフェ・マーブルは落ち着いた雰囲気と気を使ってセレクトされたBGMが魅力のカフェ。こちらのカフェには何度も足を運んでいるが、2階のサロンに上がるのは今回がはじめて。『ミュージック・マガジン』9月号の特集「西海岸音楽の現在: グレイトフル・デッドからテクノ、ヒップホップへ」との連動企画として今回のイヴェントが企画されたらしい。
サロンにあがるとメガネの男性(後で分かったことだがどうやらこの人編集長の高橋氏らしい)がCDJを前に次から次へと8cmCDをかけている最中。スピードから果ては坂本冬美までのJ−POP,女性ヴォーカルが中心。曲をかける前に曲名とアーティスト名をぼそぼそと言うだけなので、そのあまりにも貧相な空間にはちょっとひいてしまった。ただし、坂本冬美「夜桜お七」がかかった時にはちょっとときめいた。金沢大学時代、彼女とこの曲についてのレポートを1本書いた経験があったからだ。演歌の特徴である音階を使いつつも、伴奏はフュージョン、あるいはジャズロックまでも飲み込もうかというほどの大胆な構成は冒険心に満ち溢れた力作であった。
そんなことを思い出していたら、今度はやっとターンテーブルを操作する男性が登場(実はこの人が後で紹介する門井氏であった)。ハウス〜ダブ〜ジャズといったあたりのゆるめながらも極端にダウンではないトラックを丁寧につないでいく、、、そう、これが今回の特集で取り上げられる音源の数々だったのだ。それならそうと最初から言ってほしい、などと思ったが、今まで聴いたテクノやハウスとはなんか違うな、と思わせる音であった。
そんなDJタイムを終えた門井隆盛とムードマンの両氏が改めて紹介される。誌上での特集において、現地のレーベルやミュージシャンの動きを伝えるレポートを書いていたのが門井氏で、西海岸レーベルの主要ディスクを紹介していたのがムードマン氏。この二人によるアメリカ西海岸におけるハウス、テクノ、ヒップホップなどの動きを主に日本であまり紹介されていないレーベルやアーティストの紹介が対談形式で進められていく。実際に現地でDJを経験されている門井氏による現場報告や日本国内のみならず海外でもDJとして活躍しているムードマン氏による事細かなレーベル間の交流や人脈の解説は他では聞けない貴重なものだろう。それまで概略としてのダンス・ミュージックの歴史しかを知らないものとしては、ほとんどが未知の世界であったので正直とまどいもあったが、現地のレイヴの状況や、レーベルのプロモーション活動の例(ネット上でフライヤーをまく、つまりE―mailそのものがフライヤー)などに話が及ぶと、ダンス・ミュージックを対象としたフィールドワークのエスノグラフィックな報告を聞いているようで、こちらも自然と話に引き込まれていった。特に今もアメリカに根強く残るヒッピー文化の中でのダンス・ミュージックの消化のされ方などは、アメリカ、特に西海岸特有のエピソードとして興味深いものであった。そんな対談が1時間ほど続いたあとで、最後の締めとして今度はムードマンによる在西海岸レーベルの音源を使ったDJタイム。全体にゆるめのヒップホップとテックハウス中心の選曲で、この日のイベント全体を振り返るような内容であった。
アメリカ西海岸という独自の文化的土壌の上で、他地域とはちがった(デトロイトではなく、ベルリンでもなく、ブリストルでもなく、マイアミでもない)スタイルを形成している現状を、日本ではなかなか紹介されない数々の音源と、実際にその場に立ち会った人物からの証言を交えて体験できたということは貴重かつ有意義な時間であったといえるだろう。
追記:今回の開催をもってミュージック・マガジン・ナイトはしばらく休止するとのこと。理由は編集部内の人員不足ということです。よって次回の開催は未定。取り上げられるテーマによってはまた参加してみてもいいけど今度は遅く来ようと思います。最初の30分はさむすぎるから、、、。