大学で科目を履修するにあたり、まず最初に経験するのが「単位」ってなに?という疑問だと思います。大学以前に単位制度を採用しているのは一部の限られた高等学校だけだからでしょう。しかし単位制度は大学教育(もちろん通信教育でも同様です)の根幹を支える制度ですから、これを理解することは科目を履修するための大前提であるといえます。
以下ではこの単位制度について説明します。このページを読み終える頃には、きっと単位制度を理解できるようになっていることと思います。
◇単位制度の概念
すべての履修科目には、履修(正確には科目及第…旧いですか?合格のことです)した場合に与えられる単位数が設定されています。最小1単位(大学によっては0.5単位を設定する場合もあります)、多くて4単位のことが多いでしょう。卒業研究に対しては更に多くの単位が設定されています。この単位数は概ね一週間に行われる講義時間数に比例します。
例えば、履修科目一覧の基礎専門科目欄に「経営情報学序説 (2単位)」とあれば、「経営情報学序説の講義は週2回あり、その期末試験に合格すれば基礎専門科目として1科目を認定すると共に2単位を与える」ことを意味しています。但し、講義時間数の規定については大学によって違いがあるかもしれません。
あまり知られていませんが、単位を得るためには講義室外での自習が必須ということになっています(よく考えれば、これは当然のことなのですが)。つまり単位は期末試験に合格した結果与えられる(ほぼ100%の学生がそう思っているはずです)ものではなく、自習・受講・試験結果を総合した結果認定されるものなのです。実は筆者も自らが教官になるまで知りませんでした(笑)。
この規定を聞いて、筆者も学生便覧を開いてみました。そこにはこうあります。
■科目に対する単位数
大学での学習は与えられるものではなく、自ら行うものである。従って各講義科目に対する単位数も、講義室における学習だけではなく、講義室外での自学自習をも併せて1単位の履修時間を45時間とし、次の基準によって計算する。
(イ) 講義については、教室内における1時間の講義に対して教室外における2時間の自学自習を必要とするものとし、毎週1時間15週の講義を以って1単位とする。 (ロ) 演習については、教室内における2時間の演習に対して教室外における1時間の自学自習を必要とするものとし、毎週2時間15週の演習を以って1単位とする。 (ハ) 基礎教育科目の「基礎数学(含演習)」「応用統計学(含演習)」については、教室内での講義1時間と演習2時間(導入が1時間、操作演習が1時間)で、週3時間の授業に所要の自学自習時間を併せて15週で2単位とする。これらの科目の性格上、講義と演習の単位は切り離さないものとする。 (ニ) 実験については、毎週3時間15週の実験を以って1単位とする。 (ホ) 体育実技については、毎週2時間15週の実技を以って2/3単位とする。
これをマジメに、いや規定に忠実に遵守したら、学生時代は本当に充実することでしょうね。だって90分の講義が4コマあったとしたら、(イ)の規定に従って一日の総勉強時間は18時間にもなります。ええと睡眠時間は…(爆)。
さて、このように科目合格と単位取得とは密接に関係しあっているわけですが、ここまでの話はそんなにややこしいものではありません。また、後で述べますが、全履修科目が必修である場合(医学部医学科・歯学部歯学科・農学部獣医学科など)は、科目履修形態が高等学校と同じであるため、特にややこしいことは考えずに全ての科目合格を目指せば良いわけです。
ところがそれ以外のほとんどの学部・学科(通信教育課程も含みます)では、開講科目数および取得可能単位数の方が必要履修科目数および必要取得単位数よりも多いのが普通です。つまり高等学校なら受講する(授業のある)全ての科目に合格する必要があり、1科目でも不合格であればそれは留年を意味したのに対し、大学教育では必ずしもそうではないのです。誤解を恐れずに言えば、開講全科目に履修希望届を出しておけば、期末試験で各分野2〜3科目くらい不合格でも進級・卒業には何の問題もないことを意味します。
もうお分かりのことと思いますが、高等学校は全科目必修であるために単位を考慮する必要がないのに対し、大学教育では履修科目の選択権が学生の方にあるので、大学側が「これ以上の科目に合格していなければ進級させてあげないよ」「ただし簡単に合格できる科目ばかりじゃダメ」と一定の指標を設ける上で必要なものが単位であるということになります。
例えば、次のような履修科目グループがあるとします。
科目名 単位 担当教授 備考 簡単だ学 1 仏 一正 履修要項:
左記5科目から3科目5単位以上を履修すること取り易いぞ学 1 単位持手家 易しいよ学 1 早久終郎 難解学 2 鬼野鉄郎 とっても高尚学 2 内容分蘭
…そうかそうか、最低3科目取ればイイのね、と考えていかにも楽そうな「簡単だ学」「取り易いぞ学」「易しいよ学」の3科目を選択してしまうのがヒトのならいですが、ここで大学側の思惑が明らかになってきます(笑)。この3科目は単位設定が1単位ずつなので、3科目全てに合格したとしても合計3単位しか取得できません。従ってこの履修科目グループを完成できないことになります。
それではどういう履修方法が考えられるでしょうか。上記3科目で3単位が与えられるので、もう2単位を「難解学」「とっても高尚学」のいずれか1科目で取得すれば4科目5単位が成立し、晴れてこの履修科目グループを完成できることになります。でもそれじゃ4科目もの講義に出なくちゃダメだから、もっと余暇を作ってキャンパスライフをエンジョイしたい!という場合には、「難解学」「とっても高尚学」に合格の上、「簡単だ学」「取り易いぞ学」「易しいよ学」の3科目のうちから1科目を履修すれば良いことになります(3科目5単位の成立)。
要するに大学側は、遊びたければしっかり勉強せよ、楽したければ数多くの時間を講義室で過ごしなさいと暗にメッセージを送っているわけで、これに対抗する履修届提出法はひとつしかありません。そう、「全科目履修」です(爆)。これなら講義が始まってからの方針変換が可能ですし、もしかどれかの科目に不合格になってしまった(「単位を落とす」と言います)場合の「保険」を確保することにもなります。さらに首尾よく全科目合格に成功した場合には5科目7単位をゲットすることになり、この履修科目グループだけではなく卒業に必要な科目・単位数に貢献させることができるため、特に低学年の期間はできるだけ多くの科目を履修することをお勧めします。
◇単位の設定
最初の方でも述べましたが、設定単位と講義時間には正の比例関係が存在します(理科系の実験・実習・演習科目はその限りではありません)。また履修科目グループは細切れにされていることが多く、たいていの場合は履修科目グループを完成させた上でさらに上位グループの科目履修要件の完成が必要とされます。
最近は昔のように教養部と学部が完全に別物である(ほとんどの履修科目がお互いに関連し合わない)ことは少なく、低学年から専門科目の一部を学ばせることが多くなっています。これは学生の立場から見ると興味の対象を早くに学べるという点で大きな利点となっていますが、教える立場から言えば、基礎的とはいえ専門的事項を基礎知識のない学生に講義するのですから大変です。正直言って「分ってるのかな?」と感じることもしばしばありますが、それはさておき、単位の話でしたね。(^_^;
かつては教養部で『外国語(第一外国語および第二外国語)』・『一般教育科目(自然科学・人文科学・社会科学)』・『保健体育科目(体育実技・体育理論・保健科学)』の3大科目群を教授し(特定の学部や一部の大学ではさらに『基礎教育科目』の履修を課していた)、これら全ての科目群で指定された履修要件を満たした場合に専門学部への「移行」が認められるというのが一般的でした。教養部は長くて2年、早い大学では1年半で専門学部に移行させるところもありました。ところが教養部で履修すべき科目・単位数は法律で決まっているため、教養部の期間が短い(早期に専門教育を開始する)大学での教養部学生は非常にタイトなスケジュールをこなさなければなりません。おおげさに言えば、それこそ一科目の失敗は死活問題だったわけです。4年(あるいは6年)一貫教育を行うことが多い現在でも3年次に進学できる単位数に規定を設けている大学が多く、そういう意味において状況は昔と変わりないとも言えるでしょう。
さてここでは理解のしやすさを最優先して、いわゆる「昔風」な教養部・専門学部分離方式での科目履修例をあげて解説することにします。以下に示すのはある大学・学部(見れば分るか ^o^)での履修科目表です。
なお、基礎教育科目は一部の大学・学部でのみ開講されている科目なので、あまり気にしないで下さい。手元に他の資料がなかったので悪しからず。
■教養科目(主に第1・2学年[第1〜3セメスター])
☆外国語科目は第1外国語・第2外国語で2科目16単位必修。
科目群 分野 科目名 単位数 毎週の講義時間数 備考 1年次 2年次 3年次 4年次 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 外国語 第1外国語 英語 8 6 6 4 必修 第2外国語 独語 8 6 6 4 いずれか1科目を選択 仏語 8 6 6 4 露語 8 6 6 4 一般教育 人文科学 哲学 4 2 2 8科目のうち3科目12単位以上を選択
但し芸術については美術・音楽の並習はできない心理学 4 2 2 歴史学 4 2 2 文学(文学) 4 2 2 文学(国語学) 4 2 2 文学(漢文学) 4 2 2 芸術(美術) 4 2 2 芸術(音楽) 社会科学 法学 4 2 2 6科目のうち3科目12単位以上を選択 経済学 4 2 2 社会学 4 2 2 政治学 2 2 日本国憲法 2 2 地理学 4 2 2 自然科学 数学 4 2 2 6科目のうち3科目12単位以上を選択 物理学 4 2 2 化学 4 2 2 生物学 4 2 2 地球科学 4 2 2 統計学 4 2 2 物理学実験 1 3 化学実験 1 3 生物学実験 1 3 地球科学実験 1 3 健康体育 体育学 体育実技 2 2 2 2 必修 健康科学 体育講義・保健科学 2 1 1 必修 基礎教育 文科系 自然環境論 4 3 3 履修にあたり文科系学部・理科系学部で科目の指定は行わないが、専門科目の講義時間との調整は行わないので受講の希望に添えない場合がある 人間科学 4 3 3 教育学 4 3 3 理科系 基礎数学(含演習) 4 3 3 応用統計学(含演習) 4 3 3 基礎物理学 4 3 3 基礎化学 4 3 3 基礎生物学 4 3 3 総合科目I 3 3 6単位必修
但し医学部にあたっては、総合科目I・II に代わり医学概論I・II を履修する総合科目II 3 3 医学概論I 3 3 医学概論II 3 3
☆一般教育科目は人文・社会。自然の各分野で3科目12単位以上を履修し、全体では11科目44単位以上を履修。
☆健康体育科目は体育学・健康科学の計2科目4単位必修。
☆基礎教育科目は総合科目I・II(医学部を除く全学部)、医学概論I・II(医学部)の2科目6単位必修。
■専門科目(主に第2〜4学年[第4〜8セメスター])
☆卒業研究では配属された研究室において指導教授から直接指導を受け、課題研究を遂行する。
科目群 分野 科目名 単位数 毎週の講義時間数 備考 1年次 2年次 3年次 4年次 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 学部共通 工業数学 微積分学 2 2 必修 応用代数学I 2 2 必修 応用代数学II 2 2 3科目6単位必修 応用幾何学 2 2 応用解析学I 2 2 応用解析学II 2 2 応用数学特論 2 2 工業物理学 物理学I 2 2 物理学II 2 2 物理学III 2 2 物理学IV 2 2 物理学実験 1 3 必修 物理化学 物理化学I 2 2 物理化学II 2 2 一般電気工学 電気工学基礎I 2 2 1科目2単位必修 電気工学基礎II 2 2 電気計測 2 2 電気・電子工学実験 1 3 必修 機械工学基礎 機械工学概論I 2 2 機械工学概論II 2 2 機械工学概論III 2 2 基礎製図 1 2 必修 管理工学 確率統計現象I 2 2 1科目2単位必修 確率統計現象II 2 2 数値解析 2 2 計算機言語 1 2 専門教育 情報工学 情報工学概論 2 2 必修 情報数学I 2 2 4単位必修 情報数学II 2 2 数理工学I・演習 3 4 数理工学II 2 2 オートマトン 2 2 2単位必修 言語理論 2 2 パターン認識 2 2 人工知能 2 2 プログラミング・演習 3 4 6単位必修 数値解析・演習 3 4 プログラム言語・演習 3 4 電気・電子回路I 2 2 必修 電気・電子回路II 2 2 2単位必修 情報回路I 2 2 情報回路II 2 2 論理設計 2 2 計算機工学I 2 2 5単位必修 計算機工学II 2 2 計算機工学III 2 2 計算機システム・演習 3 4 情報理論 2 2 2単位必修 情報伝達工学I 2 2 情報伝達工学II 2 2 ソフトウェア工学 2 2 データ構造 2 2 3単位必修 データ管理 2 2 データベース・演習 3 4 制御工学I 2 2 2単位必修 制御工学II 2 2 計測工学 2 2 システム工学 2 2 画像処理 2 2 視聴覚情報処理 2 2 生体情報処理 2 2 自動機械工学 2 2 オペレーションズリサーチ 2 2 シミュレーション工学 2 2 マン・マシンシステム 2 2 生産システム工学 2 2 医用情報処理 2 2 管理情報工学 2 2 情報工学実験I 1 3 必修 情報工学実験II 1 3 必修 情報工学輪講I 1 2 情報工学輪講II 1 2 卒業研究 7 3 18 必修 最終試験 - - 不合格の場合、卒業を認定しない
☆最終試験には単位を付さないが、合格が卒業の絶対条件である。卒業研究内容についての筆記および口頭試験を行う。
ちなみに高等学校の科目評価は40点を以って合格・不合格を分け、不合格者には評価点1を、合格者には得点に応じて2〜5の評価点を与えることになっていました(学校によってはE〜A評価で表現することもあるようです)が、大学では60点の獲得を以って合格とします(大学入試センター試験の想定平均点が60%であるのもこのことによるようです)。高等学校同様、得点によって評価はさらに細分化され、優秀な方から(特優)・優・良・可・不可、あるいは A・B・C・D・E と記録されます。不可(E)の場合は単位が認定されず、必要に応じて次年度以降に再履修しなければなりません。次年度以降に再履修の道が開かれているため、大学の教授はかなり平気で「不可」を出します。これは高等学校の教諭が学年末試験では滅多に40点以下の「欠点」をつけない(進級にかかわるためでしょう)のと大きく対比できる点です。
教授が「不可」を出す傾向は選択科目(必修科目でない科目)に顕著で、筆者が学生の時、一学年120名全員が「不可」だった科目が複数ありました(爆)。ここだけの話、私立大学は国公立大学に比べて評価が甘いようです。これは私立大学では一学年の学生数が数百〜千数百人にも達することがあり、念入りに採点することが不可能であるからという噂です。私立大学でも定員の少ない大学・学部では評価が厳しいとよく耳にすることから、この噂はある程度的を得ているかもしれません。
ただし、この文章を読んだ学生さんが安心(油断)して単位を落としたとしても、当方では一切責任を負わないのであしからず(笑)。
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