オクターブ・サークルではやわかり!
「しくみ」から理解する楽典

ヤマハミュージックメディア
坂口博樹:著


〜項目〜

はじめに

第1章 楽譜の歴史と五線
 1-1  楽譜の歴史
 1-2  五線の構造

第2章 拍子と音符の長さ
 2-1  拍と拍子
 2-2  音符と休符
 2-3  拍子記号と小節

第3章 音名と音階/音程
 3-1  基準音階と音名
 3-2  変化記号
 3-3  音部記号
 3-4  基本音程と全音、半音
 3-5  音階の構造
 3-6  教会旋法
 3-7  完全/長短/増減音程

第4章 調
 4-1  調/調号、階名
 4-2  移動ドと固定ド
 4-3  転調と移調

第5章 音律とリズム構造
 5-1  音律と調律
 5-2  リズムの構造とシンコペーション

第6章 和音
 6-1  楽音と非楽音/倍音
 6-2  三和音の構造/主要三和音
 6-3  七の和音
 6-4  和音の配置/転回形
 6-5  コードネーム
 6-6  和音の基本進行/カデンツ(ケーデンス)
 6-7  ダイアトニック・コード
 6-8  副七の和音
 6-9  非和声音
 6-10 テンション

第7章 曲の構造
 7-1  曲の基本構造
 7-2  楽式

第8章 用語と記号
 8-1  記号と標語
 8-2  繰り返し記号と省略記号
 8-3  装飾音符と装飾記号

補足  和音の協和度
      和音の協和度の比較法


 楽典は英語でmusical_grammar、つまり音楽の文法という意味です。それは音楽を楽譜に書くときの様々な決まりであり、それによって音楽の“書き言葉”である楽譜が成り立っているのです。楽譜という“言葉”を知っていれば、世界中の誰でもそれを読むことができます。もちろん、音楽は世界中それぞれの民族にそれぞれの音楽があり、それぞれの語法があります。しかし多くの民族音楽には正確な楽譜を使って音楽を伝えていくという方法はありませんでした。もちろん昔は録音もなかったわけですから、楽譜がなければ、音楽を覚えるのは耳だけが頼りでした。こうして音楽は、人から人に伝わっていくごとにどんどん変わっていったのです。それは音楽にとって自然なことであり、面白さでもあるのですが、ときには残しておきたい優れた音楽でも消えてしまうことがあります。
 西洋文化の中で生まれた五線楽譜は、音楽の形をそれまでより画期的に正確に伝えることができる方法でした。それにより、訓練された演奏者ならば、まったくはじめての曲でも譜面を読んで演奏ができるようになったのです。また自分で作った曲を譜面に書いて、他人に演奏してもらう作曲家という職業も生まれました。それも楽譜という伝達手段があってのとこです。
 このように大変便利な楽譜ですが、それも人間の歴史文化の生み出したものです。そのしくみを作っている楽典もやはりそうです。ですから、なぜそのようなしくみになったのか必ず理由と歴史があります。私たちは音楽の勉強をはじめるとき、多くの場合、楽器の演奏と楽典を一緒に習います。ただしそのとき、楽典のしくみがどうしてそうなっているのかを教えてもらえるチャンスは少ないかもしれません。しかし人間のすることは、今生きている人間だけが作ったものではありません。歴史の中に生きてきた様々な人々の営為がつながって今日の文化があるのです。音楽もその一部です。つまり、どんなに新しい音楽をやっていても、それは時代を超えた人間のつながりの上に成立しているのです。ですから、音楽の成り立ちを知るということは、新しい音楽を作るためにも大切なことなのではないでしょうか。
 楽典を知り、身に付けるためにも、ただ機械的に覚えるのではなく、なぜそうなのか? どういう歴史的経緯があってそうなったのか? などを少しずつでも知りながら覚えていけば、楽典も面白くなり、身に付くと思います。また、「なぜ?」「どうして?」を知ることは、規則や用語を覚える助けにもなります。

(中略)

 本書が、これから楽典を知りたい、音楽のしくみを勉強したいというすべての人に役立ってもらえることを願っています。

「はじめに」より
2011年8月 坂口博樹

重版では訂正いたしました。