■ 短歌 選評 ■
春日井 建

【一般の部】

 入選の槇原京子氏は、女性の官能性を内容としつつ、軽やかな修辞で切り返し、興味ふかい歌空間を作りあげた。結句「秋」が利いている。有永克司氏は、踊りの輪を輪廻する如くにすすむ、という独自な実感に裏打ちされた比喩がいい。下句とも巧みに照応している。
 秀逸の舟橋剛二氏、路上でうたっている人と自分との関係性が浮彫りされた。彼からは確かに自分もまた群衆のなかの一人なのだ。白井淑子氏、占師のいう「開運の相」を彼岸への旅立ちと見る。着想が心に残った。井上みつゑ氏、「兄よ」という呼びかけで思い出のナイフをうたった。口語発想が生きた。佐藤とし江氏、咲き盛る花と羽ふる蝶と、黄のグラジオラスに重ねた黄揚羽の色感がうつくしい。板橋絹代氏、蓮池は遠い日の爆弾の穴なのだ。痛みの上に咲く花。寒川靖子氏。夕方の病棟スケッチ、岡本毅氏の宗教感ただよう一首とともに忘れがたい夕方の歌である。小池孝氏、漁町の哀感、滝本正則氏、凶々しいものへ吸い寄せられる情感、そして山下重信氏、教え子とのやさしい交情が写された。

【児童生徒の部】

 入賞二篇、宮澤知里さんの歌は、上句太陽と下句テニスボールとを結ぶ「ひとつ」の措辞が効果的。夏のコートが鮮明に浮かぶ。鈴木茂信君の三句「気合い入れ」が愉快だ。この一語が上句にも下句にも明るく生きた。
 秀逸の金栗瑠美さん、知的な寂寥といおうか、若い人らしい歌だ。落合夏紀さん、恋愛以前の思いが初々しい。今野高志君、どんな夢なのか、明るい孤独感を写す。中島千晴君、「理由を見つめる」という着想に注目した。見えないものが見えている。関谷真樹君、試合場にいる「俺」の存在感が伝わる。野口由貴さん、季節に敏感な少女の視野の中を赤とんぼが飛んでいる。栗原はるかさん、笑う、ただそれだけでうれしい気分が読み手にも伝わって、これから先も続けと願う。杉本真理さん、下句のつぶやくような言葉としらべが生きている。興津文哉君、朝顔が鮮度高くうたわれた。樋口智美さん、「スポットライト」一語が鮮やかに歌を生かしている。