■ 梅花文学賞 短歌 ■
【一般の部 秀逸】
 
路上にてうたう男の目にうつるわれ
群衆のひとりなるべし
船橋 剛二 32 (静岡県 御殿場市)
 
占師「開運の相あり」と言ふもうすぐ
彼岸へ旅立たむわれに
白井 淑子 78 (京都府 舞鶴市)
 
あれはどうなったろう鹿の角の柄の
ゾーリンゲンのナイフは、兄よ
井上 みつゑ 75 (大分県 安心院町)
 
咲きさかるグラジオラスの黄の花に
かすか羽ふり黄揚羽睦む
佐藤 とし江 77 (静岡県 御殿場市)
 
遠き日の爆弾の穴は蓮池となりいて
今年も蓮の花咲く
板橋 絹代 70 (福岡県 瀬高町)
 
病棟の廊下に夕べの風通る消毒薬の
かすかに匂う
寒川 靖子 66 (香川県 丸亀市)
 
名も知らぬ人から吹いた風にさえ
他生の縁を思う夕暮れ
岡本 毅 28 (福岡県 夜須町)
 
青白き漁船の舳先の波静かゆりかご
のごと夜半の漁町
小池 孝 72 (静岡県 沼津市)
 
夕暮れに群れ翔ぶ鳥の影見れば
不吉の夜を抱きにゆきたし
滝本 正則 48 (三重県 久居市)
 
長生きをしてねと言ひし教へ子の
ラリーのボールいつもやさしき
山下 重信 76 (富山県 富山市)