■ 梅花文学賞 現代詩 那珂 太郎・高橋 順子 共選 ■
【一般の部 秀逸】
原田亘子 49 (東京都 八王子市)
ほんとうに ほしいもの

ほんとうは泣いているのかもしれない
剃った眉毛の下のするどい眼
同じ年頃の少年たちが
机を前にして黒板を見つめている時刻
路地のネコじゃらしをはげしく揺らして
駆けぬけてゆくバイクの少年たち

〈ほんとうはどうしたいの?〉
大人は誰も聞いてくれないから
けたたましい音を鳴らして走ってみる
怯えるようにすれちがう老人を
嘲るように笑ってみる
国道を走っていてもつまらない
レースのカーテンがのぞくマンションの窓の下
ほんとうは叫び声をあげている
心細さに地団駄ふんでいる だから
何度も何度もエンジンをふかしてみる
野良猫だけが心配そうにじっと見ている

マシュマロのような掌を振りはらったのだ
きっと誰かが
幼かった頃のあの少年たちの掌を
〈そのまんまでいいのよ〉
ほんとうはそう言って見つめてほしいだけ
そしたらきっと 胸の奥に
小さな赤い花が次々と咲いたはずなのに

―――青春ちらすな 愛の声―――
古びた歩道橋に掲げられた大きな標語
蜃気楼だということを
誰よりもよく知っているから
蹴散らすようにその下を走りぬけてゆく
どこへ行けばいいのかはわからない だけど
真実の愛の声を探している
オアシスの澄んだ水を
もがくように求めている