■ 梅花文学大賞 評 ■
四元康祐詩集『世界中年会議』
高橋順子

 今年、第五回「駿河梅花文学大賞」には、歌集一冊、句集三冊、詩集二冊が候補作として挙げられた。ちなみに第一回は歌集、第二、三回は詩集、第四回は句集が選ばれ、すべて女性の作者だった。したがって今回は男性の歌集、句集に贈られてしかるべきであるとの考え方もあろうかと思われたが、本賞は毎年男女の別、詩型の別にはこだわらないことを改めて確認した。
 候補作すべてについて意見を交換した後、詩集二冊の水準が他を圧していることに各選考委員が同意、この二作のうちのいずれか一冊ということになった。その結果多数決で四元康祐さんの『世界中年会議』が選ばれた。
 四元さんはドイツ在住で、外国暮らしが長い方である。四十代前半の中年世代である。本詩集は二冊目。
 外国における日常生活の細部を描き出すうち、とんでもない異次元の事物がさりげなく侵入してくるなど、読ませる詩の書き手である。いまこの国でもっとも多く書かれている詩は、言葉は洗練されているが、外部への興味をなくし、独り言を繰り返しているような詩である。かと思えば、空騒ぎだったりする。久しぶりに内容のある詩を読んだ。
 外国生活で体験した齟齬や勘違いや驚きなどの不協和音を排斥するのでなしに、面白がって自分の中に取り入れることのできる人なのだろう。それが詩の中に奇怪なイメージとなって混じりこんでくるのかもしれない。結果として日本語に新鮮な小気味よい空気を吹き込んだと思う。
 表題作は散文詩だが、会議の進行を書いただけのものが詩といえるものか、と疑問を呈した選考委員もいたが、「世界中年会議」などという会議がそもそもありえそうもないものだし、議長はクレジット・カードだというのだから、荒唐無稽にして皮肉もきいている。悪ふざけの散文か緻密な詩か、こうした話題を提供できるのも、力量のある詩人ゆえのことである。