PentiumII編:電源・ケース

■静かだと思っていたら。(2000-06-15, 2003-01-03)

はじめに

PCケースは基本的に単なる箱ですが、普通は電源と内部冷却用のファンがセットになっていることが多いので、 ここでは電源・ケース編として合わせて静音化を行っています。 PCケースに対する静音化のアプローチは大きく分けて2つあります。 音の発生源である電源ファンとケースファンを静音化することと、PCケース自体で内部パーツ(機器)の騒音を小さくすることです。

ケースファンの静音化

ケースファンはPCケース外部に一番近いところに取り付けてあるため、 CPUファンやビデオカード用ファンに比べ、より静かであることが望まれます。 ただ、ケースファンは比較的大きめの物が使用される(=低い回転数でも風量を確保できる)ことから、 それほど大きな音を出すわけではありません。 ケースファンが発生する音と、それに対する静音化方法について考えた内容を載せておきます。

ケース用ファン
ファンの回転音(風切り音および摩擦)
  1. ファンを交換する:羽根の形状や軸受けの種類など、静音化に適したものを選択する
  2. グリスを射す:摩擦を減らして駆動音を小さくする
  3. 回転数を下げる:風切り音、摩擦を小さくする
  4. 温度による回転数制御:サーミスタ(温度センサ)を付けて、動作状況に合わせた回転数にする
フィンガーカードの風切り音(フィンガーガード:正式名称は分かりませんが外側に着いた金網のたぐい)
  1. フィンガーガードを外す(減らす):風の当たる障害物を減らす(外周部は残ります)
  2. 金網タイプ等に交換する:風の当たる面積を減らし、風と障害物の当たる角度を弱める
  3. 風の当たる角度を変える:風と障害物が垂直に当たると風切り音は大きくなると考えられるので、 当たる角度を変更して風切り音を小さくする(面積の減少と流れの矯正)
PCケースに与える振動
  1. ケースとの間に防振材を咬ませる:ケースに振動を伝えない(がたつき・ビビリをなくす)
  2. グリスを射す:振動を減らす

今までの静音化と大して変わっていません。 ファンを外して自然放熱に任せる…という手もありますが、 ケース自体の構造を大きく変えなければ、とても必要な放熱能力を確保できそうにありません。 また、自然放熱に任せると結構開口部を大きく取る必要がありそうで、ケース自体の防音性を損ない、本末転倒になってしまう可能性があります。 まぁ、この辺は廃熱を考えるで語っていますが、私的にあまり現実的ではありません。

まずファンの回転音を小さくする方法ですが、一番効果がありそうなのは電圧を下げる方法です。 電圧を下げると回転音は結構ダイレクトに変化しますし、ファンの流量も含めて"自分で納得のできる音"を得ることができます。

右が標準装備で、左がジャンクのSANYO製

ファンの形状や軸受けのタイプ変更で静音化しようとすると、捜すのが大変ですし、それ程変化するものなのかも疑問です。 この辺はいくつか試してみたい所でしたが、秋葉原の自作パーツの店を回ってみると、実際に売っているファンの種類は意外と少ない&結構高いことから、買う気が無くなってしまいました。

普通のPCパーツ屋では、高速標準静音サーミスタ付きの4種類ぐらいを売っている場合がほとんどで、定評のある三洋電機製が多いです。 サーミスタ付きというのは、温度計が付いていて、温度によって回転数が変化するというものです。

ターゲットは静音タイプになるわけですが、どうも回転数を低くすることで静音化を図っている(=デフォルトの回転数が違うだけ)という印象が拭えませんでした。 結局使用したファンは、標準で付いていたなかなか静かめのファン(Yate Loon D80SM-12 DC12V 0.14A:写真右)と、 別用途で買ったジャンクのSANYO DENKI製-静音ファン(DC Petit Ace 25 109D812M401 DC12V 0.06A かなり旧式:写真左)の2つです。

さて、CPUクーラー編でやったのと同じように、音と温度を計測しつつ静音化を図ることにしました。 PCケース内部の空気をきちんと流してやらないと、気を使った内部クーラー類の冷却を無意味にしかねません。

*ケースファンの能力(=音)とケース内部のクーラー類の能力(=音)はバランスする点があるのかもしれませんが、 今回は"個々のパーツをとことん静音化"というパターンで攻めたので、そこまでは至りませんでした。 計測手法が非常にアバウトだったので、そこまでやろうにもやりようが無かったという説もあります。

デフォルトのファンとSANYOのファンを聴き比べてみると、若干SANYOファンの方が音が大きめです。 "静音ファン"と銘打っているのにこの結果とは…原因はいくつか考えられます。

  1. ファンの型式が古いため(経年劣化もある)
  2. 本当は外部コントローラで回転数を制御する(回転パルス検出用のケーブルを使用)
  3. ジャンクである(^^;(例えば本物ではない、内蔵サーミスタが壊れている、とか)

一番可能性が大きいのは3番…なのかもしれませんが(笑)、まぁ考えても仕方がありません。 こーゆう物だとして扱うことにしましょう。 例によって電圧を下げて行くと…なんとSANYO製はすぐ止まってしまいます。 うーむ、もともと消費電力が小さいせいか、起動電圧が大きめです(その割にうるさいですが)。 この時点でSANYOファンの採用は却下されたのでした。

*あまり参考になりませんね。

ケースファン変更による音と温度の変化

標準装備 ジャンクのファン
ピーク (相対値) 199 (0.29) 193 (0.28)
平均 (相対値) 10.0 (0.59) 13.2 (0.77)
Wave File (サイズ) casefan_default.mp3 (35KByte) casefan_sanyo.mp3 (35KByte)
スペクトル 標準装備ファンの音 ジャンクファンの音
温度変化 標準装備ファンの場合の温度 ジャンクファンの場合の温度

グラフではジャンクファンの音のピーク値が大きいのが見て取れますが、数値解析するとなぜか標準装備とほぼ同一…。 ちょっと謎ですが、聴いてもらえば分かるように体感上ではジャンクファンの方がうるさいです。

*イントロダクションの"携帯の音"は例外として、計測結果のデータはピーク値より平均値の方が体感に近いです。

電圧可変回路2

さて、これまでと同様、電圧可変回路を組んで電圧を下げてみました。 今回は0.5Wの可変抵抗を並列に組みました。(右の写真) ファンは1基で1.68W相当です。一応、定格の50%を超えるようなこと(電圧配分)があれば交換しようとは考えていましたが、 元から結構静かなので、あまり電圧を下げる(=回転数を下げる)こともないと踏みました。

できるだけケース内の配線をまとめるために、5V直結したCPU用ファンのものと基板を共用しています。 前回の回路ではショートしてHDDを壊してしまった(^^;ので、その反省を踏まえて慎重にハンダ付けし、ねじれ防止と絶縁のために表裏シリコンゴムで養生しました。

ファンの電圧を下げて行くと…6V近くまで大丈夫です(なかなか優秀)。 音も結構ダイレクトに下がってくれます。 音を聴いてみると、10V程度で納得のいく音まで下がりました。 これぐらいの電圧なら長期運用しても止まったりしないと思います。

もう一つのファンの静音化手法である「温度による回転数制御(温度が高いとファンの回転数を上げ、低いと回転数を下げる手法)」にはサーミスタ(温度センサ)というものを使います。 ファンにサーミスタが組み込まれたファンを買うのが一番楽(3〜4千円位)で、もちろん別途回路を用意するのもありです。

なにげに私の使っている電源(SevenTeamのST-250HR ATX)には、このタイプのファンが取り付けられています。 あまり温度の上がっていない状態では、限りなく無音に近いものがあります。 しかし、温度が上がってくると、ケースファンの音を上回る(といっても大したことはありませんが)ようになります。

このタイプのファンは、実にスマートだとは感じるのですが、絶対的な静音化がはかれる訳ではありません。 温度が上がればうるさくなるのですから。 全体の回転数を下げるという手もありますが、だったら最初から納得のいく音に絞っておけばいいと思います。 しかし、安全性という点からは見過ごせません。季節によって周囲の温度変化も起こります。

…色々考えた末、保険という意味で電源ファンはそのままにすることにしました。 温度が原因かは知りませんが、電源が不安定でシステム全体が不安定になった…という話も聞きますし。 もちろん、電源を交換するという手があります。 PC Power & Cooling社の静音電源など、定評のあるものが結構出ています。 今回購入しても良かったのですが、秋口にThunderbirdに換装しようと考えているので、電源の交換はそこでやることにしました。

風切り音の低減

フィンガーガード

次は、フィンガーガード(*正式名称は分かりませんが、左の写真を見れば分かってもらえるかと)の風切り音を小さくする方法を考えてみました。 当初は「よーし、金網タイプに交換するぞー」などと意気込んでいたのですが、これが結構硬い! 電源側はともかく、ケースファン側などは並のニッパーでは断ち切れません。 これは結構、気合いと根性と時間と場所と工具が必要になりそうです。

逆に電源側は、ねじ穴がケースフレームに埋もれている…ということで、このままでは金網タイプが取り付けられません。 もうちょっとストレートな(ありがちな)構成だったらよかったのですが…。

結局今回は、フィンガーガードの交換を断念したのでした。

*これ以上、ばらしたり組んだり切ったり貼ったりはちょっと…次の構成変更あたりでやるつもりです。

ふと思ったのですが、完全に外したり、金網タイプにすると埃(ほこり)の進入に弱そうです。 埃がシステムに悪影響を与えるとは考えていないのですが、若干、ファンの効率と耐用年数が落ちそうです。 金網にするより、不織布のようなものにした方がいい(音も減る)かもしれません。

ケースとケースファンの隙間

風切り音が発生しそうなのはフィンガーガードだけではありません。 写真はPCケースとケースファンの間を見たものですが、ここに隙間があります。 空気排出穴はケースファンの羽の大きさと比較して、それほど大きいわけではないので、外周部に当たる風の量はそこそこありそうです。 すると、ケース内側に空気が戻ってしまい、音が発生すると同時に廃熱効率を落とすことになります。

…構造を見てそう考えましたが、本当に効率を落としているかは内心怪しいものがありました。 出ても誤差レベルかと思いましたが、できることはやっておきたかったのでやってみました。(簡単ですし)

PCケースとケースファンの隙間を埋めるわけですが、場所的にファンがケースに与えている"かもしれない"振動についても同時に考慮したい所です。 ファンが振動した場合、ケースがその振動を音として拡大することと、ケースとの間でビビリ音(?)のようなものが発生することが考えられます。 振動しているかは触ってみると分かります。 ビデオカードファンがうるさかった時(静音化前)は、触ってみるとビデオチップ用ファンの振動を感じることができました。

で、実際触ってみたところ、ケースファンから振動を感じることはありませんでした。 …どうも振動・共振などの問題はなさそうです。 後ほど出てくる"オトナシート"をファンの周囲に巻き、縁がケースと密着するようにしてみました。

隙間埋めによる音と温度の変化

標準 隙間埋め
ピーク (相対値) 199 (0.29) 191 (0.27)
平均 (相対値) 10.0 (0.59) 8.8 (0.52)
Wave File (サイズ) casefan_default.mp3 (35KByte) casefan_default_plus.mp3 (35KByte)
スペクトル 標準装備ファンの音 標準装備ファンを使用し、ケースとの隙間を埋めた場合の音
温度変化 標準装備ファンの場合の温度 標準装備ファンを使用し、ケースとの隙間を埋めた場合の温度

意外と静かになっています。 ただ、変化幅が相当に小さいことから、体感上はほとんど差を感じません。

それよりも驚いたのは、CPU温度が1℃下がったことです。 誤差レベルといってしまえばそれまでですが、この程度でスマートケーブルに交換するのと同等の効果を得られるとは…。

エアーダクト(没)

上には書いていませんが、風切り音を減らすためにエアーダクトを作ったりもしました。 エアフローに影響を与えないように慎重に設計を重ね、写真の様なものができ上がったのですが…。 どうもエアーダクト自身の風切り音が解消されずに、結局没になってしまいました。 熱に対して臆病すぎたかもしれません。

PCケースによる内部パーツの防音

もう一つの静音化アプローチである、PCケース自体による内部パーツの防音もやってみました。 防音というと、オーディオに詳しい人がいれば心強いです。 ときおり、非常にディープで結晶化されたマニアの世界の一端を耳にすることがあります。 その理論は非常に高度で、凡人にはなかなか理解しがたいものがあります。 あいにく私の周囲にはそういった人がいないため、自力で(実践で)攻めることになりました。

音は振動ですから、この振動を押さえるれば静かになるはずです。 振動を押さえるには、スポンジのような柔軟な素材で吸収するか、質量を大きくして振動しにくくすれば良さそうです。 あとは、無響室(?)のように鋭角の板を並べ、音の反射を収縮させるといった方法なども考えられますが、実現は難しそうです。 (あ、意外と面白そう)

振動を吸収する素材としては、スポンジ、ゴムなどがあります。 振動しにくくする素材には、そのまんま重量物である鉛、銅、鉄などが有効そうです。 ブチルゴムなどは知っていましたが、実際にどの様なものがあるか分からなかったので、ケースのサイズを計って、渋谷の東急ハンズへ素材を探しに出かけました。

オトナシート

東急ハンズの"防音材"コーナーに行ってみると、前述のものはもちろんとして、グラスウールやゲルシートなど様々な防音素材が揃っていました。 値段もかなり幅広いです。 これだけあると何を選んでいいのか悩むところですが…意外とあっさり決まりました。 その名もオトナシート。 日本特殊塗料株式会社という会社が出しているもので、サイズは1.5mm(厚)×30cm×40cmのシートが5枚入っていて、2,400円でした。 これは重量で振動を押さえるタイプのようで、5枚で2,3kg位あります。 なぜこれに決めたかというと、計っていったケース扉のサイズ(30cm×40cm)にジャストフィット! カッターで切れる&片面がシールになっているという加工のし易さ、手頃なシート枚数&価格、ヌルいパッケージ(笑)など、まさにうってつけです。

扉に張り付け

材質としては金属粉とタールを混ぜてシート状にしたような感触で、柔軟で微妙に粘着質です。 意外と熱伝導率が高いようで、放熱の点からもなかなかよさげです。

さっそく扉に貼り付けてみると、扉が重くなり、ケースとのがたつきが無くなりました。 説明には「下向きになる面には貼らないこと(垂直面はOK)」と書いてありましたが、ぴったり粘着できる鉄板などでしたら下向きでも問題なさそうに思えます。

オトナシートを貼った扉(PCケース)を叩いてみると、明らかに音質が変化しています。 いかにも振動が減りそうな…。これは録音した音を聴いてみて下さい。 違いが一発で分かると思います。

*ちなみに他のグラフとはレンジが違っています。手で叩いているので、絶対的な数値に意味はありません。

オトナシートを貼ってケース扉を叩きました

ノーマル オトナシートあり
ピーク (相対値) 1158 (1.7) 1356 (2.0)
平均 (相対値) 89.5 (5.2) 52.7 (3.1)
Wave File (サイズ) case_default_knock.mp3 (8KByte) case_silent_knock.mp3 (8KByte)
スペクトル オトナシートなしケース扉叩く オトナシートありケース扉叩く

ケースとのがたつきが無くなっているのも分かると思います。 何となく良さげです。

さて、これで内部パーツの防音は果たせるでしょうか? ここに至るまでに、内部パーツは限りなく無音に近い状態になっていますので、 違いを分かり易くするためにHDDをSMART DRIVEから出し、Windowsの起動音(HDDのシーク音あり)を計測してみました。

オトナシート貼り付けによる起動音の違い

ノーマル オトナシートあり
ピーク (相対値) 481 (0.70) 411 (0.60)
平均 (相対値) 22.8 (1.34) 19.5 (1.14)
Wave File (サイズ) case_default_wakeup.mp3 (69KByte) case_silent_wakeup.mp3 (69KByte)
スペクトル オトナシートなし オトナシートあり

若干、音は小さくなりましたが、ケース背面から音が出ているせいか、体感上は微妙なところです。 注意深く聴いてみると、一応違いは分かります。 内部パーツがけっこう静音化された(ケース振動も殆ど無い)現状では、あまり効果は無いといっていいかもしれません。 意味合い的には最後のだめ押しといったところでしょうか。

とりあえず全パーツ終了

ついに全パーツに対する静音化が完了しました。 いよいよ次は全パーツ搭載の総合測定結果です。 全体ではどのくらい静音化が果たせたのでしょうか…。