PentiumII編:ハードディスク

■やや他力本願。(2000-06-12, 2003-01-03)

はじめに

いよいよ最大の音の発生源であるハードディスク(以下HDD)です。 "キュイィーン"という回転音や、"ガリガリガリ"というシーク音が耳障りな人も多いのではないでしょうか。 HDDはディスクが高速回転している関係上、ある程度密封されているものの、それなりの騒音・振動・発熱があるのは仕方ありません。 厄介なのは振動で、PCケースと共振し、音を伝えることとあいまって、結果ドライブ単体より大きな騒音になってしまいます。 まず静音化にあたっては何とかしたいポイントです。

静音化するにあたって障害となるのが発熱です。 HDDを(空冷の範囲で)冷却するとドライブ性能が向上するという実験結果を見たことがあります。 逆に言うと熱が溜まると性能が低下するということであり、熱で内部的にエラー発生率が高くなっている可能性が考えられます。 同時に劣化の進行が速くなるため、ドライブの安定性・信頼性が低下すると言えます。 ちょうどドライブを新しくした所ですので、丁寧に使ってやりたい所です。

静音化の手法として、イントロダクションでは以下のようなことを書きました。

  1. 静かなドライブに交換する
  2. 防音ケースに入れる
  3. 防音材で囲む(音を遮蔽する、共振を防ぐ)
  4. マウント(設置)箇所を変更する

前に述べたように、振動経路を断つことは廃熱経路を断つことでもあり、 一般的によく見られる"ゴム/スポンジのスペーサーを咬ませる"というのはちょっと心配です。 できれば、振動は抑えつつも熱は効率的に伝えたい…ということで、厚手の金属板や熱伝導率の高いゴム系のものを使ってやりたいところです。 銅板などが良さげですが、いかんせん加工が大変です。比較的柔らかい鉛シートのような素材を使った方が幸せかもしれません。

結構幸せなドライブの交換

静音化のためにHDDを交換するということは、使えるものを見捨てる、という意味でイヤなのですが、 実に効果的な方法だったりします。 前にも書きましたが、私は最近QuantumのFireball SE 4.3GBをFireball Plus LM 20.5GB(以下Fireball=FB)に換装しました。 この2つのドライブ間には、ちょうど2年分の技術差があります。 その進歩は凄まじく、価格は相当下がっていつつも容量は5倍、性能は2倍以上になっています。 それでいて回転数を5400rpm→7200rpmに上げたにもかかわらず、騒音は劇的に小さくなっています。

余談ですがYBENCH(ver3.03 YONE氏作)の結果を載せておきます。 なおマザーボードが若干古く、ATA/33なのでFBP LMの性能は完全に出ていない可能性が高いです。

私はサイズが大きめのファイル(数MB〜数十MB)をよく扱うので、この性能差は相当に体感することが出来ます。 もちろん、通常の操作でもレスポンスは格段に向上しています。

FB SEのシーク音は、キュイィーン・ガリッガリガリガリという感じなのですが、 FBP LMはフィィーン・コロコロコロといった感じで、絶対的な音だけでなく、不快な音が激減しています。

ハードディスク

  Fireball SE Fireball Plus LM
ピーク (相対値) 798.6 (1.2) 312.3 (0.45)
平均 (相対値) 23.1 (1.4) 17.4 (1.0)
Wave File (サイズ) hdd_se_default.mp3 (35KByte) hdd_lm_default.mp3 (35KByte)
スペクトル Fireball SE Fireball Plus LM

つまり、それなりに年期の入ったドライブを使っている場合、安い・速い・大容量・静かな新ドライブに買い換えることは、結構幸せになれるということです。 古いドライブはバックアップ用に使えます。

以前はIBM製が静かだという評判でしたが、最近のドライブ(15GBオーバー/プラッタ)は概してどれも静かな様です。 ホームPCを目しているのか、ベンダー各社(というよりほぼ全社)静音化に力をいれており、特に回転数を下げてさらなる静音化を図ったドライブもあります。 メジャーなHDDベンダーとしては、IBM、Quantum、Western Digital、Seagate、Maxtor、Fujitsuなどがありますが、 最近は特に製品情報やニュースリリースで"静音化技術"という項目を目にします。 最近はFujitsuの元気がいいようで、一気にメジャー入りした感があります。

静音化を前面に押し出した、または静かそうだと思われる最近のドライブは以下のような感じです。

現在(2000年6月)私が良さそうだと思うのは、IBMのDeskstar75GXPシリーズでしょうか。 これは7200rpmのドライブですが、最近これを買ったY氏によると 「耳を近づけるとシーク音が分かる」 程度の騒音だということで、やはり相当に静かなようです。 IBMブランドの安心感があり、性能面でもATA/66ではトップクラスであると思われます。

ちなみに、Seagateは速くてうるさい(&熱い)というイメージがあったのですが、最近のニュースリリースによると静音化にも力を入れている様です。

それはともかくとしてドライブの静音化

SMART DRIVE (開) SMART DRIVE

とりあえず、現在販売されているHDD静音化ケースを調べてみましたが、 結局見つかったのはグロウアップ・ジャパンのSMART DRIVEだけでした。 この製品は結構メジャーで、雑誌でも紹介されていたりします。 これはアルミ製のケース(箱)で、HDDをほぼ密閉し、内部空間にはスポンジが詰められています。 放熱のためHDDの左右が箱に密着する構造になっており、ケーブル挿入部はビニル系の素材で養生されているなど、市販品ならではの作り込みが感じられます。

しかし問題は…このケースが非常に高いことです。 売っている場所が限られており、秋葉原はUSER'S SIDEで価格を見たのですが、1個6,480円(税別)もしました。 Webサイトで調べた価格ではそれほど高くなかったのですが…。2個も買えば15GB-HDD相当の価格になってしまいます。 今ひとつ納得はいかなかったのですが、その時の私は暴走状態であり、2つも買ってしまいました。

静音化を煮詰めるなら、鉛シートで巻いたり、銅板などで囲んだりと試行錯誤するのが後々の為だと思いましたが、 市販品の手軽さとスマートさに負けてしまいました。

さて、実際にHDDをSMART DRIVEに入れて音を計測してみました。 フロントの5インチベイに取り付けるように出来ているので、まずはそこに取り付けました。 HDDはフロントベイに取り付けると音を大きく感じるので、最終的にはここに取り付けません。 通常の使用方法ではどのくらい静音化できるのかを見るのが目的です。

*元のHDD位置がPCケース中央、ということから一般的ではないのかもしれませんが。

シーク音を入れると計測結果の評価が難しくなるので、とりあえず通常の回転音のみ計測してあります。

シーク音ありは全体の音としてまとめあたりで聞けます。

ハードディスクの音

デフォルト with SMART DRIVE
ピーク (相対値) 798.6 (1.16) 189.6 (0.26)
平均 (相対値) 23.1 (1.40) 11.9 (0.70)
Wave File (サイズ) hdd_se_default.mp3 (35KByte) hdd_se_silent.mp3 (35KByte)
スペクトル Fireball SE デフォルト Fireball SE サイレント
  デフォルト with SMART DRIVE
ピーク (相対値) 312.3 (0.45) 193.4 (0.28)
平均 (相対値) 17.4 (1.02) 9.7 (0.57)
Wave File (サイズ) hdd_lm_default.mp3 (35KByte) hdd_lm_silent.mp3 (35KByte)
スペクトル Fireball Plus LM デフォルト Fireball Plus LM サイレント

やはり、環境音に紛れてしまう程度まで音が小さくなりました。 音の大きいドライブほどその効果は顕著で、FB SEなどは感動モノです。 ただ、やはりシーク音はある程度聞こえます。 これはマウント方法によってある程度変わってくるとは思います。

非常に高価なSMART DRIVEですが、私的には"高いなりの価値はある"といった評価になります。 (完全に納得がいくわけではありません)

マウント方法の検討

さて、最後はマウント方法の検討です。 HDDをフロントベイに取り付けることは、ドライブとフレームの接着面積が大きく取れることから、最も手軽に冷却能力を確保することができると考えられます。 SMART DRIVEも5インチベイに取り付ける構造になっていて、冷却経路もPCケースのフレームを考えているようです。 しかし、フロントベイは自分(耳)の位置に最も近く、またPCケース全体に音を伝えることから、音を大きく感じやすい面があります。 ここは少し取り付けに工夫をしてやりたい所です。

前述の様に、ドライブとベイの間にクッションを咬ませることは、冷却経路を断つことになるのでやりたくありません。 その他に取り付け方法としては、PCケース中央部あたりに吊す、PCケース床面に置くといった方法が考えられます。 吊すと行ってもワイヤーで吊す方法から、ねじ止めや金具の取り付けなど方法は色々あります。 元々はPCケース中央部に3.5インチベイが取り付けてあり、そのベイに入れて吊すという方法だったのですが、HDDをSMART DRIVEに入れたことからそのベイは使えなくなりました。

静音化を考えると吊すのが一番良さそうだったのですが、 冷却経路の確保が難しそうだったのと、ドライブ全体のサイズが大きくなって取り付けの自由度がかなり制限されたことから、床置きすることにしました。 振動を断ち切るために、床には防音材(スポンジ)を敷き、ヒートシンクとファンによって冷却することにしました。 ファンでエアフローの改善を図れば、全体として一石二鳥の冷却方法になります。

ケース床面

PCケース床面は、SMART DRIVEが2個ぐらい置けるスペースがあるのですが、 最下段のISA(サウンド)カードと、謎のスピーカー固定具(写真右)が取り付けてあることから、そのままではぎりぎり1個置けるかどうかという感じになります。 置くのは常用するFBP LMの1台だけで良いのですが、ファンの取り付けとエアフローを考えると、もう少しフロントに近づけたい所です。

設置場所確保

スピーカーステー スピーカーステー

この謎のスピーカー固定具、8cmファンをその内側に取り付けられるように、結構大きめに作られています。 なぜこのような固定具が付いているかはよく分からないのですが…。 実用上、この位置に何かを取り付けるという状況は考えられず、また取り付けるとエアフローが悪化するので、こういった形状になっているのかもしれません。 (コンパクトにする必然性もないですし) まぁ、外しても問題ないはずですが、一応スピーカーには磁石が付いているため、周囲に影響を与えない場所に取り付ける必要がありそうです。

*もしかしたらフレームに"ペタッ"と張り付けてもいいのかもしれません。 とはいえフレームが磁気を帯びて良いことは一つもなさそうです。 分からないなりに、元の取り付け方法と似た方法で固定することにしました。

スピーカー固定具を作って、3.5インチベイの下に取り付けました。

ケース床面

SMART DRIVEの下には使わなくなったマウスパッド(スポンジ製)を仕込んで振動対策とし、両面テープで張り付けました。 このままでは廃熱経路がほとんどないので、エアフローの改善とHDDの冷却を兼ねてCeleron用クーラー×2基と、SANYOのファンを配置しました。

Celeron用クーラー×2基と、SANYOのファン

廃熱を考えるで書きましたが、使い所が悪いせいかエアフローの改善はあまり見られませんでした。 また、これらのファンは起動電圧がそれほど低くなかった(電圧を絞れなかった)ため、それなりに音がしました。(ケース前面だし) …ということで、結局ヒートシンクのみを取り付けることにしました。 空気の流れはそこそこあるとは言え、HDDの温度はそれ程高くない(周囲との温度差があまりない)ことから、この構成には若干の不安が残るところです。 (この問題については後述の部分で解決)

ビデオカード編で書いた熱抵抗値の計算式を見ると分かりますが、 温度差(分母)が小さいほど要求される熱抵抗値は小さくなります(=高い放熱能力が要求されます)。 温度差を10℃とすると、発熱量が5Wでも2[℃/W]の熱抵抗になり、Celeron用ヒートシンク×2程度ではとてもカバーしきれないことが想像できます。

オトナシート

最後にケーブルの取り回し(ノイズおよびエアフロー対策)を考えていると、垂れ下がったSCSIケーブルが若干、気にかかりました。 その他数本のケーブルと併せて、SMART DRIVEの下をくぐらせ、PCケースに沿わせることにしました。 ケーブルをPCケースに密着するのは何かいや(根拠なし)なので、絶縁材とシールド材で挟むことに決め、 適した素材が転がっていないか見渡すと…PCケース扉に貼り付けられた オトナシート電源・ケース編で使用した防音材)が目に留まりました。

目に留まったもの

ふと触ってみると、

「…冷たい。」

この"オトナシート"、実は熱伝導率が結構高いのです。 他の素材と比べてみると覿面(てきめん)で、金属に貼り付けるとみるみる温度が下がっていくのが分かります。

「こっ、これは使える!」

どこに使えるかというとSMART DRIVEの下、PCケース床面です。 材質が柔らかめで、かつ微妙に粘着性があるため、SMART DRIVEとぴったりと接することができます。 結果、PCケースへの接着面積をかなり大きく取ることができ、 しかも防音材熱伝導率が高いと来た日には…これで廃熱は大丈夫に違いありません。

早速貼り付けて廃熱の憂いは取り除くことが出来たのでした。

当初予定していた静音化は完了

さて、HDDの静音化も達成され、当初予定していた静音化は終了しました。 しかし、CPUクーラー、ビデオカードファン、HDDが劇的に静音化されたため、 相対的にPCケースファンが最大の騒音発生源になっていました。 当初は「これだけ静かだったら静音化の必要なし」と考えていたケースファンですが、しばらく稼働させてみると結構気になってしまいます。 そこで、ケース全体の静音化と併せて、ケースファンの静音化も実行することにしました。