PentiumII編:CPUクーラー

■基本はヒートシンク(2000-05-17, 2003-01-03)

はじめに

CPUは、最大の熱の発生源であり、また最も冷却が重要視されるパーツです。 温度が一定温度を超えると動かなくなってしまい、そうなるとPCは役立たずの箱です。 当然チップベンダーは(常識的かつ合理的な)冷却方法を考えてCPUをリリースしているわけですが、 騒音を減らしたいという、ある種わがままな欲求を見たそうとすると、それなりの工夫が必要になります。

イントロダクションでは、チップ用クーラー(CPU/ビデオカード)の静音化の手法として、以下のような内容を挙げました。

  1. ヒートシンクを大きくする
  2. 静かなファンに交換する
  3. 回転数を下げる(電圧を下げる)
  4. グリス(潤滑剤)を注す

このうち、ヒートシンクは最もフル活用したいポイントです。 なんと言っても音を出しません。 このヒートシンク、普通に"CPU用クーラー"という形で探すと、結構種類が限られてしまうのですが、 "汎用ヒートシンク"という形で探すと、それこそ膨大な種類があり、求めるものが必ずあること請け合いです。

冷却能力は表面積に比例するわけですから、できるだけ大きなものを選べば間違いありません。 しかし、ケース内部の空間は限られているわけですから、取り付け可能な最大のものということになります。 この"取り付け可能"というのがなかなか曲者で、いろいろと考慮しなければならない点があります。 私はSlot1のCPUを使っていますので、Slot1(かつ初代S.E.C.Cパッケージ)を念頭に話を進めます。 (Socketでも似たようなものですが)

  1. メモリ、拡張カード、ケース、コンデンサ、リテンション、ケーブル等に抵触しないか
  2. リテンション、基板の強度は足りるか。増強の余地はあるか
  3. 空気の流れを妨げないか
  4. そもそも、CPUに取り付け可能か(初期状態がだめなら加工できるか)

実際の所、ヒートシンクのみで冷却をまかなうことは非常に大変なので、現実問題としてファンは必須になります。 そのため、ファンへの吸気・排気も考慮しなければいけません。 また、大きくなるほどリテンションの強度が必要になりますので、場合によってはリテンションの強化も考えなければなりません。

*まして、などをおごった日には…。

結局の所、CPUに取り付けることを前提としている、CPUクーラーを利用するのが無難なのかもしれません。 (高発熱量のすばらしいCPUを利用している場合はだめかもしれません) 私はそういう製品を買いました。 リテール版のCPUクーラーを見て、けっこう簡単に静音化できそうだという目論見(もくろみ)があったからです。

ヒートシンクでそれなりの冷却能力を確保したならば、ファンによる冷却能力(=音)を相当に絞ることができます。 ヒートシンクの大きさによって、取り付け可能なファンの大きさは異なります。 出来るだけ大きめのものを低回転で回してやると、効率よく静かになります。 「静かなファンを選ぶ」という手もありますが、どれが静かなファンなのかは分かりづらいです。 カタログスペックを見ても実際のところは分かりません。 融通が利くのは電圧を低くして回転数を下げることです。

あと前にも触れましたが、ペルチェ(要コントローラ)といった手もありますが、 それ自体が結構な熱源であることから静かにすることはなかなか難しそうです。 またそれなりの知識と経験が要求される世界ですので、ちょっと手を出しにくいです。 水冷は循環装置が必要になる云々(うんぬん)以前に美観を損ねるので即却下

という事で、大きめヒートシンク&低回転ファンで静音化に決定。

CPUクーラーの選定

S.E.C.C.パッケージ&リテールCPUクーラー

手持ちのCPUであるPentiumII-400MHzはS.E.C.C.パッケージになっています。 Slot1のCPUにはその他S.E.C.C2(PentiumII後期〜PentiumIII)、無し(Celeron)などのバリエーションがあります。 それぞれ形状の違いから使用できるCPUクーラーが異なります。

ただL2キャッシュの有無などの違いはあるものの、基板の形状(穴位置など)が似通っているため、 工夫次第ではこれらのCPUクーラーが取り付けられそうです。 とりあえず、本当に出来るかどうか殻割りして確認することにしました。

*これでCPU保証外…。

まず、殻割り以前に避けては通れないのが、リテールパッケージで付属している純正CPUクーラーの取り外しです。 サーマルプレート(写真では背面)までがPentiumIIのパッケージで、 このサーマルプレートにCPUクーラーがネジ4本でしっかりと取り付けられています。

このネジが+(プラス)や6角などではなく…トルクスねじの8番というものだったりします。 普通の人はトルクスレンチなど持ってませんので、CPUクーラーの他に、意外な出費を強いられるかもしれません。 (トルクスレンチのばら売りをしている所ってあまり見かけません) まぁ、ヘッド交換式のドライバーセットなどを持っているなら、ヘッドを買うだけでいいのですが。

かくいう私の場合、10番以降は揃っていたのですが、肝心の8番がなかった(…くやしい)ので仕方なくヘッドだけ買ってきました。 今持っているのと同じSUNFLAG製のSF T-8Hで、210円でした。

*殻割りの方法については、本筋ではないので採り上げません。

基板を見てみると、どうやらS.E.C.C2やCeleron用のCPUクーラーも取り付け可能そうです(要加工)。 CPUクーラーの選択範囲が広がります。 ただ、PentiumIIIやCeleronはオンダイL2キャッシュですので、その形状は外部L2キャッシュの冷却を考慮していません。 アルミ/銅板を差し込めば解決できますが、結局S.E.C.Cのサーマルプレート(冷却方法)をそのまま利用することにしました。 L2キャッシュの冷却については非常に疑問に思ったので、番外編で取り上げています。

結局、S.E.C.C用のCPUクーラーを購入することに決めて、秋葉原に出かけました。 取り付け可能なサイズは、スロットからメモリまでが6cm、コンデンサを考慮すると5cm、幅はPentiumIIのカートリッジと同サイズ、 (マザーボードから見て)高さにはあまり制限なし、重量はリテンションが支えきれる程度と決めました。 エアフローを妨げるほどのものは…まずないでしょう。

雑誌で様々な種類のCPUクーラーを見ていたのですが…あまり良さそうなものがありません。 S.E.C.C用という限られた範囲で探したので仕方ないのかもしれません。 問題は数少ないS.E.C.C用もリテール版のCPUクーラーとあまり冷却能力に差が無いように見えることです。

SANYOファンとJusty DCF-A02

秋葉原中を歩いて探した結果、Justy PC DIYブランドのDCF-A02に決めました。 ヒートシンクの大きさはW120×D35×H59mmで、2ファン構成です。 ファンは厚さが17mmあり、合計は52mmで前述の条件を超えてしまいますが、 ファンの取り付け位置がシフトできるためコンデンサを避けることができます。

このCPUクーラー、Athlon-700MHz対応をうたっています。 そうそう、これはAthlon用かつS.E.C.C"にも"対応という形で売っています。 ただしAthlon用が全てS.E.C.Cに使える訳ではなく、ねじ穴位置が違ったり、サーマルプレート側のピンが固定だったりするとそのままでは使えません。

Athlon-700MHzは0.25μと0.18μプロセスコアの2タイプが存在します。 何ら断りがないことと、そのヒートシンクの大きさ+2ファンであることから、恐らく0.25μコアでもOKだということだと思われます。 この0.25μコア、最大消費電力は50W(0.18μは39W)で、実にPentiumII 400MHz(Deschutes-0.25μコア)の約2倍です。

これは相当にファンの電圧を絞れそうです。

納得いくまで絞るのだ

さて、ファンにかかる電圧を落とせば羽根の回転数が落ち、静かになります。 では電圧を落とすにはどうしたらいいでしょう? 電気回路には全く縁がなかった(私は電気科卒なのだが…もっとまじめに(略))のでよく分からないのですが、 理科レベルの電圧と電流、抵抗の関係でやってみることにしました。

*この辺は多少危険です。今は市販のファンコントローラがありますので、それを買ってくるのもいいでしょう。

ポンチ回路図

これが適当に考えた回路図です。 DCF-A02に付いているファンは、DC12V 0.2Aが2基ということで、図の左側(FAN1とFAN2)のように合計30Ωの抵抗と見なすことができるはずです。

この抵抗に対して直列に抵抗を入れれば、抵抗の比に応じた電圧降下が起こる… ということで、ファンの電圧を半分ぐらいまで落とすことを目標に、可変抵抗を入れることにしました。 なお、"ぐらい"としているのは、恐らく回転数によって電流値も変わってくるからです。

それが右側の部分(VRとR1)ですが、0〜30Ωの可変抵抗になっています。 固定抵抗が200Ωと可変抵抗の35Ωに比べて大きいですが、まぁどうでもいいことです。

ポンチ回路

固定抵抗、可変抵抗には0.5Wのものを使っています。 この回路にはデフォルトで0.4Aの電流が流れますので(0.4A 12V→0.48W)可変抵抗の値によっては結構危険です。 本当は定格の半分ぐらい(この場合0.25W)にしておくのが安全らしいです。 ということで、これは"静かになる電圧値を導出する"という実験的目的のみに使用することにしました。 抵抗値が決まれば、これをセメント抵抗などに置き換えればいいわけです。 と、いうようなことは途中で気が付いた。

ということで、完成したのが次のような回路です。

完成!

さて、実際に新しいCPUクーラーを取り付けて、音と温度を計測してみました。 ずいぶん立派になりましたが、取り付けには何ら問題はありません。

デフォルトの12Vで駆動してみると…冷える冷える。 リテール版に比べて8℃ほど温度が落ちています。 (これはケース内温度とほぼ同じです) その反面、12V駆動は相当にうるさいです。 DC12V 0.2A駆動のファンが2基もあるのだから当然です。 しかし、これはあくまでスタート地点に過ぎません。

冷え具合に気を良くした私は、ファンなしで稼働させてみることにしました。 理論的には、この程度のヒートシンクが冷却をまかなえる訳もないのですが。 当然の如く温度はうなぎ登り。 温度が安定するのを待つこともなく測定を中止したのでした。

この時の計測結果を下にまとめました。 CPUクーラーは単体稼働で、約10cmの位置から録音しています。 最大と最小の結果が出ています。

*なお、"ファンなし"の時の音(要は特定の音源なし)は、後から取り急ぎ録音したものです。 生活音が消えきっていない時間帯だったので、ややノイズが大きめです。(隣の部屋の換気扇とか) 無音サンプルとして参考程度に見て下さい。

CPUクーラーの違いによる比較

リテールクーラー 新クーラー(FAN 12V) 新型クーラー(NO FAN)
ピーク (相対値) 389 (0.57) 666 (0.97) 210 (0.30)
平均 (相対値) 31.0 (1.82) 72.2 (4.23) 7.2 (0.50)
Wave File (サイズ) cpu_default.mp3 (35KByte) cpu_new_12v.mp3 (35KByte) nosound.mp3 (35KByte)
スペクトル リテール版ファン ファン12V駆動 生活音
温度変化 リテール版 新クーラー(12V駆動) ファンなし

さらに、ファンの電圧を落としてみました。 しかし…結構ダイナミックに音は小さくなってくれるのですが、6Vまで下げても納得のいく静かさにはなりませんでした。 急遽、電源を5Vにつなぎ変えてその下の電圧(2.5〜5V)でやってみることにしました。

電圧を下げるとファンの回転数は落ちますが、リニアに落ちる訳ではありません。 ある一定の電圧以下になると、ファンは止まってしまいます。 例えば、最も簡単に出来る12V用ファンを5Vで駆動するという手ですが、 手持ちの3/5/8cm角ファンで試したところ、まともに動いてくれたのは2個に1個という結果でした。

CPUクーラーに付いていたファンはなかなかに好成績で、2.5V付近まで大丈夫でした。 もともと消費電力・回転数の大きいファンほど、低電圧でも大丈夫な傾向にあるようです。 ただし、動作ぎりぎりの電圧で駆動させようとすると、経年変化で止まってしまう可能性が大きいので、 ある程度の安全マージは必要だと思います。

2.5〜5Vとという電圧レベルでは、発生する音に大した変化はありません。 しかし、意外と冷却能力は変化します。 停止寸前の2.5Vの音と、それなりに動いてくれる5Vの音では、温度に8度近い差が出ています。 計測データを見ると、音は確かに変化していますが、小さいレベルでの差は体感しにくいようです。 結局、納得できる音の大きさということで、常用は5Vとということにしました。

新クーラー(FAN 6V) 新クーラー(FAN 5V) 新クーラー(FAN 最静)
ピーク (相対値) 191 (0.28) 192 (0.28) 191 (0.28)
平均 (相対値) 12.4 (0.73) 10.4 (0.61) 8.5 (0.50)
Wave File (サイズ) cpu_new_6v.mp3 (35KByte) cpu_new_5v.mp3 (35KByte) cpu_new_silent.mp3 (35KByte)
スペクトル ファン6V駆動 ファン5V駆動 最静仕様
温度変化 新クーラー(6V駆動) 新しいクーラー(5V駆動) 新しいクーラー(最静)

グラフを見ると6V〜最静に大した差は見られません。 ピーク値も同じで、唯一平均値からその差を窺うことができます。 これは、ファンなしの結果を見て分かるように、ノイズ(生活音)に紛れてしまう程度の音の大きさだからです。 10cmの距離での計測結果がこれですから、相当に静かであることが想像できると思います。

安全性も重要

5Vで駆動するなら電圧可変回路はいりません。 安全性の面からも外すべきです。 最終的には5V電源から直結しました。

うまくいったからいいのですが、こういった作業をすると結構危険が伴います。 このCPUクーラー編では、電源をショートしたり、CPUの抵抗を飛ばしたり、サウンドカードを焼いたりといった破壊行為をやってしまいました(^^;;;

*この辺は番外編:クラッシャー!で取り上げています。

さて、次は意外とうるさかったビデオカードです。 ビデオカードでは、そのまま取り付けられる製品というのがまず無いと思っていいため、多少の工夫が必要になります。 CPUクーラー編では使わなかった汎用のヒートシンクは、ここで採り上げています。