PentiumII編:廃熱を考える

■まずは冷却能力を稼ぐ(2000-05-15, 2003-01-03)

はじめに

静音化を行うにあたって考えなければならないのは、廃熱です。 結構な音を発生する廃熱パーツ一式を取り外してしまえばかなりの静音化になりますが、 PCが動かなくなってしまうことは目に見えています。 つまり、PCが動作する、安全性を確保できる最低限の廃熱能力の維持=静音化の限界ということになります。

*これは、無音化できないという意味ではありません。 ヒートシンクなどの音を発しない廃熱パーツや、シリコンディスクなどの無音デバイスで構成されたPCは(ほとんど)音を出しません。 この状態が一種の理想ですが、なかなか実現は難しいです。

どれだけの廃熱能力があればPCが安定動作するのか、というのは難しい問題です。 一応各パーツには動作温度範囲が定められていますが、夏場など温度変動を考えるとそれなりの安全マージンを確保しておく必要性を感じます。 では何をもって安全だと判断するのか…。 結局、「2年間安定動作してくれた、今の状態を(廃熱能力が)下回らない」という基準を定めることにしました。

なんにせよ温度測定は必要なのですが、普通の人が計測装置を持っている訳もありません。 幸い、私の所有しているマザーボード(Gigabyte GA-686BX)には、Winbond W83781Dという温度監視チップが付いていて、 これである程度の温度計測が出来そうです。(CPU温度のみ。BIOSも対応) ただし、このチップは位置の関係上、厳密にCPU温度が検出できるわけではありません。 だいたい5〜10℃位低い値が出ると言われています。 ただ、今回は基準値が決まっていますので、これはそれ程問題ではありません。 後は、500円位の温度計を買ってきて、外気温とケース内部の温度を測定することにしました。

なお、この温度監視チップの読みとりには、paraffin氏のLM78mon ver1.60と、 PENTIUM 666MHz氏のLM75/LM78 STATUS for Windows ver1.50および、 M75/LM78 STATUS GRAPH PLUGIN ver1.05bを使用させて頂きました。 このページに出てくるグラフは、LM75/LM78 STATUS GRAPH PLUGINを使用したものです。

ここでの目的は、音を発生するパーツに手を着けずにどこまで冷却能力を稼げるかということです。 事前に冷却能力を稼いでおけば、そのぶん音を発生するパーツの能力を下げる(=音を小さくする)ことができます。

空気の流量の改善

これまでの状態

まずは、既存の状態の確認です。 CPUをフル稼働させるという事で、Lightwave3Dでレンダリングをして、CPU温度が一定になるまで待つことにしました。 右がその時のグラフです。 1計測/分に設定に設定してあります。1計測=1pixelで幅140pixcelなので、横軸いっぱいになるには1時間40分かかります。 赤い線がCPU温度で最後の計測値がグラフ上部に表示されています。 青い線が外気温で、計測中は大体24〜26℃の範囲にありました。

廃熱パーツ意外の部分で冷却能力を稼ぐには、ケース内部の空気の流れ(エアフロー)を改善することが考えられます。 空気の流れが良く考えられたケースでは、扉を開けっ放しにするより閉じておいた方が冷却能力が高くなるそうです。

エアフローを改善するには以下ような手段が考えられます。

  1. 空気の流れを妨げるものを外す
  2. 空気の流れを理想的な方向に矯正する(整流板、エアーダクトを使う)
  3. ケースに取り入れる空気の量を増やす(開口部を広げる)

「ケースから排出される空気の量を増やす」という手段も加えたいところですが、 ファンを用いないで空気の排出量を増やす手段は思いつきませんでした。 あとエアフローとはあまり関係ありませんが、 外部の気温を下げるというのもあります (日当たりを考慮したり、気温の低い場所に設置するなど。 例えばアパートには壁に空気を取り入れる口があったりするものです。)

*一番有効なのは「ケースを交換すること」だと思います。 フルタワー型のケースにすれば内部温度は上昇しにくいと考えられます。 私的には却下ですが。

エアフローを改善する手段には、フロントベイを解放するなどという手もありますが、外見を損なうのは嫌です。 くだらないことですが、私はけっこう外見にこだわります。 たとえばバイクの場合、太くてうるさいマフラーや配線うねうねはなど、 いかにも「やってやるぜ/やってます」みたいなノリは好きではありません。 何事もスマートに決めたいものです。羊の皮をかぶった狼が私の理想(^^; ということで「ケースに取り入れる空気の量を増やす」というのは今回やってません。

では、実際にケースの中身を見てみましょう。

空気の流れ

ケースを開いたところです。 中央にマウントされるHDDは下ろしています。(以降HDDは後ろが分かるように半透明処理してます) 空気は前面(フロントベゼル)の下部から取り入れられ、背面のケースファンと電源ファンから排出されます。 背面にもスリットがあり、そこからも空気が取り入れられます。 余談ですが、フロントベゼルには空気取り入れ用の、小さい穴がたくさん空いているような 外見 をしていますが、実は空いてませんでした。

温度の低い下側から空気を取り入れ、上方(電源)と下方(CPU)に分岐する。 下方はメモリと中空マウントされたHDDを経由してCPUに届く。 CPUクーラーを通過した熱はすぐに排出される…という構成は、実に理に叶っているように見えます。 背面のスリットから入った空気は、カード類の冷却に効果がありそうです。

考える程に「よく出来たケースだなー」と感心させられてしまうのですが、 それでも何とか改善してみたいと思いました。

空気の流れを妨げるものを外す

ケーブル周りを改善?

まず目に付くのは、中央付近に集中したケーブルの束です(前の写真を参照)。 ここは電源方向とCPU方向への空気の分岐点にあたり、 フラットケーブルは壁となって双方に悪影響を与えそうです。

そこで、フラットケーブルはスマートケーブルに交換し、 さらに各種ケーブルをスパイラルケーブルとケーブルタイでまとめ上げることにしました。 対象はケーブルが集中しているIDE×2本とFDDケーブルです。 SCSIケーブルは位置の関係上あまり影響なさそうなので対象外にしました。 電源ケーブルも最適化を図り、最短を目指しました。

その結果…かなりすっきりとした構成になりました。 右がその写真です。(こんどはHDDをマウントした状態) 電源ケーブルをまとめたためメンテナンス性は落ちてしまいましたが、いかにも空気の流れは良くなりそうです。

そして温度計測をしてみると…。

たいして変わってません

なんと!44.5℃→43.5℃と1℃しか改善されていません。 ほとんど誤差の範疇です。 スマートケーブル、結構高かったのですが…。(さすがに安いケーブルは怖いので奮発した) スマートケーブルが効果を発揮するのは、microATXなどの内部空間の狭いPCに限られるのかもしれません。

結論:スマートケーブル効果なし!

気を取り直して、次にいきましょう。 見渡してみると、これ以外にエアフローの妨げになるようなものはありません。 あえていうならHDDぐらいですが、これはHDDの静音化で移動する予定なのでここでは触れません。

空気の流れを理想的な方向に矯正する

次に考えたのは、エアフローの矯正です。 会社で触れる、メーカー製のちょっといい(高い)PCにはエアーダクトが付いていることが多いです。 また、アクリル版などできっちり絶縁・整流が行われています。 しかし…この手のPCはけっこう密に作り込まれていることが多いので、 あまり参考にはならないように見受けられます。

いろいろ悩んだ結果、整流板やダクトは取り付けないことにしました。 最も危惧したのは、ケース全体の廃熱能力が落ちるのではないか?という点です。 ドライブ類はケースにマウントされ、フレームを通じて廃熱を行っています。 そこで、一点集中的に空気を流すより、ケース全体に行き渡るようにした方が、 全体としては安全性が高いのではないかと考えたのです。

空気の流れ

その代わりということではありませんが、空気の流れをファンで決めてやる方法を試すことにしました。 ファンを付けると音が大きくなるということで、冒頭に述べた内容に反するのですが、 電圧を十分に絞ったファンは相当に静かである、ということが検討の結果分かったので、試してみることにしました。 これは、エアフローを考えるいい題材にもなります。

まず、私が当初考えていたことは、「暖かい空気は上に行く。空気の流れはそれに沿っているべきだ。」という事でした。 実際には初期状態がまさにその通りだったのですが、違う経路を試してみました。

左が、こうした方が良いではないかと考えた空気の流れです。 前面からの吸気にはファンを使用し、ケース内の流量を増やします。 ケースファンからは吸気を行い、冷たい空気を直接CPUにぶつけます。 最大の熱源であるCPUを通過した空気は、上方の電源の方へ登ると考えられます。 さらに、電源方向へ整流用のファンを使用して空気を流してやることにより、効率よく循環するようになるのではないかと考えました。

*床面に置くことが予想されたHDDの冷却(ヒートシンク+ファン)と併せてこのような構想を立てているので、当初は結構いい感じに思えました。

まず第1段階として、ケースファンを逆向きにしてみました。 ケース内温度は多少上がるかもしれませんが、CPUの冷却には都合が良いはずです。 「グラフは良くなるが、ケース内温度についても考慮しなければならないな…」などと考えつつ、計測を行ってみました。

悪化してます(笑)

しかし…43.5℃→47.5℃と悪化してます(笑)。 よく考えると廃熱効率が悪くなるのは目に見えています。 というのは、電源ファンとケースファンの風量が等価ならば、前後のスリットから出入りする空気が無くなるからです。 これは圧力差が無いためです。2基のファンで排気を行っていたからこそ、負圧で前後から空気が入って来ていたのです。 当初はそこまで考えられませんでした。

強化型

予想外の結果に驚きつつも、最終型となる強制吸入/風向強制型のパーツを投入しました。 これは、SANYOの8cm角静音ファンとCeleron用CPUクーラー2基で構成されるもので、 何の調整もされていないそれは結構うるさかったりします(^^; 左がその写真です。

余談ですが、使っているCeleron用CPUクーラー(写真のそれ)は1個199円で買った掘り出し物です。 秋葉原で見つけたときは嬉しかったなぁ。

下に置いてあるのはまだ語っていないSMART DRIVEだったりしますが、 その辺はハードディスク編で検討してます。 さて一体どうなるでしょうか…。

合計5ファン

43.5℃から変わってません。(またかい) しかしこれも納得できる結果です。 吸気用のファンを増やすことで、吸排気のバランスは改善されました。 しかし、それ以上の改善点がないからです。

しかし、まだこの吸排気の構成はバランスが悪いです。 後方のスリットから出た熱は、上のファンが吸い込んでしまいそうです。 また、気温の低い下の方から排気するというのも無理があります。 熱源が増えたこともあり、むしろ悪化してもおかしくはありませんでした。

初期状態が一番

…などという情けない結果になってしまったのですが、まぁ、楽しかったです(^^; 空気・熱の流れについて色々考えさせられました。 必要なことは、吸排気のバランスを取るということで、闇雲にファンを増やせば良いというものではありあませんでした。 負圧で空気の流れを作るというのは、実にスマートです。

*また蛇足ですが、ケースファンと電源ファンを排気に割り振って、前面に吸気ファンを取り付ける、 という至極標準的な構成は今回やっていないです。 理由は、つまらないから うるさくなるから、です。

あと「隙間を埋める」とか「ファンの電圧を変える」などもやってますが、これは静音化を目的としてやってますので 電源・ケース編に載せることにします。