PentiumII編:イントロダクション

■静かなPCを目指せ!(2000-05-14, 2003-01-03)

始まり

最近、部屋の模様替えをしてから妙にPCの発する音が気になるようになりました。 PCを囲む位置に置いてあった本棚を移動したのが原因だと思うのですが…。 PCを組み立ててから2年たちますが、それまで音が気になったことはありませんでした。

「気になる」というと大したことないように聞こえますが、はっきり言って騒音です。 とくに夜中は、PCのたてる「キュイィイィ〜ン」という音を長時間聞いていると、 難聴になるのでは?と思うほどです。 私のPCはもともとこんなにうるさかったのか。いや、そんなことはありません。 経年変化で徐々に音が大きくなってきたに違いありません。

気になり出したら止まらない。 私の妙なこだわりがまた燃え上がりだしました。 「よし、このPCを徹底的に静かにしてやるぞ!」 この時の私はまさに暴走した○○状態。 またしても高コストなPCができあがることが予想されるのでした。

静音化に向けての指針

静音化を実行するにあたり、PCを構成する(音を発する)パーツと一般的な静音化の手法をまとめてみました。 音を発するものは外すというのが究極的な手法だったりしますが、まぁそれが簡単にはできないのは言わずもがな。 静音化を進めるに従ってもう少し深く考えるようになりました。

ケース用ファン
  1. 静かなものに交換する
  2. 回転数を下げる(電圧を下げる)
  3. 風の当たるものを外して風切り音を軽減させる
  4. グリス(潤滑剤)を注す

ファンの回転数を下げれば、発生する音が小さくなります。 また同じ風量(流量)であれば口径が大きくなるほど音は小さくなります。 この辺がポイントだと思います。 ファンの形状や軸受けの構造でも変化しますが、売っている製品を見ても静かかどうかが分かりづらいのが難題です。 流体軸受けは静かだといわれていますが、どちらかというと長寿命性に利点があるようです。 何種類か買ってみるのも手です。(本気)

温度により回転数を変化させるサーミスタ(温度センサ)付きファンというものもありますが、 温度が高くなればうるさくなるわけで、絶対的な解決方法とは言えなさそうです。

あとは風切り音。ケース側のガードを外したり、広げたり、針金タイプに交換したりすると低減します。

軸受けがスムーズに動いていない場合には、グリスを差すと改善できそうです。

ケース本体
  1. ケースを防音材で囲む、載せる、敷き詰める
  2. ドライブ類とケースの共振を防ぐ

防音材は鉛板や銅板といった重量タイプと、 ゴムやスポンジなどの吸収材タイプに分かれるようです。 この辺はオーディオに詳しい人がいれば力強い。 (注:あいにく私はこの方面の知識がないので説得力に欠けます)

ケースとドライブ類の共振を防ぐには「抑える」のと振動を「伝えない」のと 2通りのアプローチがありそうです。 要は音は振動なのでこれを防げばいいのだと考えることができます。 重量タイプでは鉛版、吸収材ではブチルゴムが有名です。

チップ用クーラー(CPU/ビデオカード)
  1. ヒートシンクを大きくする
  2. 静かなファンに交換する
  3. 回転数を下げる(電圧を下げる)
  4. グリス(潤滑剤)を注す

ほとんどケース用ファンと同じですが、大きく違うのはヒートシンクが使われる、 冷却能力がクリティカルであるということでしょうか(大ざっぱですが)。 この辺はオーバークロッカーがいれば心強い、というかその手の雑誌、資料が参考になります。 (あいにく私は定格主義なので要調査です)

ペルチェや水冷といった手法もあります。 しかしペルチェは消費電力が高く(それ自体がかなりの熱源)、かつ通常以上の冷却能力が必要になります。 また水冷は循環装置が音を立てることから静かにはなりにくいようです。

テーマは静音ですから、音を発しないヒートシンクを強化するのが有効だと考えられます。

ハードディスク
  1. 静かなドライブに交換する
  2. 防音ケースに入れる
  3. 防音材で囲む(音を遮蔽する、共振を防ぐ)
  4. マウント(設置)箇所を変更する

IBM製のハードディスクは静か…というのは有名な話です。 とはいえ、最近はプラッタ密度の向上に伴い、低回転低騒音を売りにした製品を各社出しているので、 それらを選択するのもいいかもしれません。 しかし…、静音化のために「静かなドライブを交換する」というのは、 "使えるものを捨てる"ということと同義であり、気がとがめます。

「防音ケースに入れる」は静音化を目的とした製品に入れるということです。 グロウアップ・ジャパンのSMART DRIVEが有名です。

「防音材で囲む」も同じに見えますが、各種防音材で工作することを意味します。 アプローチ自体は前述のケースと同じです。

あと、マウント箇所も結構重要です。 通常、ハードディスクは3.5インチベイにマウントされますが、フロント(ケース前面)に位置することが多く、 ケースのフレームが音を伝える/共振することとあいまって音がよく聞こえてしまいます。 騒音を抑えるには、床置き、5インチベイ、吊し、スペーサーを咬ますなどの手法が考えられます。 私の使っているケース(有名なTQ-700mk2)ではケース中央部分にドライブを"つるす"ような構造になっており、 フロントの3.5インチベイにマウントするよりも音が聞こえにくくなっています。 ただ、ドライブをつるすと廃熱経路が小さくなるため、一概にこの方法が良いとも言えません。 TQ-700mk2では空気の通り道にHDDマウンタ(金型)を配置する様になっています。

リムーバブルドライブ(CD-ROM/FDD/MO等)、
周辺機器(プリンタ/スキャナ等)
  1. 静かなドライブに交換する(機種交換含む)
  2. 防音材で囲む

私的にここは重要ではありません。 というのは、これらは稼働時間が短いからです。 確かにx30とかx50(倍速)といったCD-ROMドライブは結構うるさかったりしますが、 「あれ、もう止まるの?」というぐらい速攻で止まりもします。 また音楽CDはx1で回転するので結構静かです。 それでも気になるなら…x8やx12程度のドライブをジャンクで仕入れてくるか、 "驚速(c)SOURCENEXT"などの仮想CD-ROM化ソフトを使うといった手があります。

同様に稼働時間が短いという理由からプリンタやスキャナといった周辺機器も対象外です。 (静音化が難しいということもありますが)

全般
  1. 耳栓をする、音楽を聞く
  2. PCを遠ざける
  3. 冷蔵庫に入れる、室外冷却機と接続する
  4. ノートPCにする

実現性を考慮しなければネタは尽きません。 実は「耳栓をする、音楽を聞く」がいちばん簡単お手軽安くて早いという説もあります。 まぁ、適度に遊べてスペックを落とさず、現実的な手法でPCを静音化したいと思います。

稼働するための音とは別に「冷却するための音」というのが結構あります。 冷却能力を落として音を小さくする、というアプローチは実に自然です。 この場合、冷却能力をどこまで落とせるかを見極めるのが重要です。 音を発生しないものや、より音の小さいもので冷却能力を稼せげばその分音の発生を抑えることができます。

熱の多くは空気(や金属)を伝わってPCから排出されます。 音を遮(さえぎ)るというアプローチは、廃熱の経路を遮ることにもなりますので熱をため込むことになります。 一定の熱量を超えると…PCを構成する多くのパーツは動かなくなります。最悪、壊れます。 結局の所、静音化で一番重要になるのは、廃熱ということになります。 ということで、私は熱を監視しながら静音化してゆくことにしました。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず

アイワ TP-S5

まずは、何がどの位の音を発しているかを知りたいところです。 一番うるさいものから静音化して行くのがもっとも効率的な方法です。 パーツを一つずつ動かして、それぞれがどの位の音を発しているかを聴いてみるのが妥当な手段ですが、 どうせなら数値化、視覚化して客観的に評価したいと思いました。 …ということで、音を録音してスペクトラムアナライザにかけることにしました。

とはいえ、オーディオの類とは疎遠なので、きちんとした録音装置を持ち合わせていませんでした。 買うのはもったいないので、安い録音機能付きテープレコーダー(アイワのTP-S5)と小型のマイクを借りてきて 生活音の少ない深夜にひっそりと録音することにしました。

*しかし後から気づいたのですが、このテープレコーダー、出力がモノラルしかありませんでした …たぶん、問題はないでしょう。

まず、録音したテープから (1)テープレコーダーの出力→(2)Sound Blaster AWE64 valueのライン入力→(3)44.1kHz/16bit SingleWaveファイル という経路でPCに落としました。 スペクトラム解析には、efu氏のWaveSpectra v1.20を使用させて頂きました。

ノイズが多分に乗っていることを想像していましたが、聞いてみるとそれほど大したことはありませんでした。 (さすばにボリュームを上げると分かりますけど)

悩んだのは音の評価方法です。 フーリエ変換(FFT)された音について、どこを音の大きさとして評価するのか。 単純にピーク値を採るのか、平均を取ってその最大値を採るのか。 また、このは数段のアンプを通過しており、絶対的なものではありません。 相対評価はできるとしても、よくある"静かな図書館の音:20dB"といった評価はできません。

さんざん調べて行き着いた結論は…「音の評価は手段の一つであって目的ではない」ということで、 もっと簡単でアバウトにすることにしました。 身の回りでよく聴く音を同じ環境でいくつか録音すれば、この音はこの位、という感じで目安になります。

身の回りでよく聴く音、というのも難しいですが、考えた結果携帯電話の音を使うことにしました。 デフォルトの"ピピピピピ"ってやつです(アバウトってことで)。 私の持っているDoCoMoのP208では、音は6段階に設定できます。 この6段階の音を録音して音の大きさを見てみました。 サンプルデータ数は2048、窓関数はハニングです。 (これ以降、すべてのサンプリングにはこのパラメータを使っています)

携帯電話の音

音量1 音量2 音量3
ピーク (相対値) 689 (1.0) 1019 (1.5) 1508 (2.2)
平均 (相対値) 14.2 (1.0) 18.9 (1.1) 27.0 (1.6)
Wave File (サイズ) bell_1.mp3 (7KByte) bell_2.mp3 (7KByte) bell_3.mp3 (8KByte)
スペクトル 音量1 音量2 音量3
音量4 音量5 音量6
ピーク (相対値) 2603 (3.8) 3576 (5.2) 3947 (5.7)
平均 (相対値) 42.5 (2.5) 65.0 (3.8) 89.3 (5.2)
Wave File (サイズ) bell_4.mp3 (8KByte) bell_5.mp3 (8KByte) bell_6.mp3 (9KByte)
スペクトル 音量4 音量5 音量6

電子音だけあって、綺麗に特定の周波数が出ており、ピーク値もだいたい「音量1〜6」に沿っています。 平均も取っていますがここではあまり意味がありません。 携帯の音は音のありなしが大きく変動するからです。 PCのパーツの場合は連続して一定の音を出しているので、平均することに意味があります。

とりあえず音量1の音の大きさをを1.0とした場合の相対値も併せて出していくことにしました。 600といった数値では比較しづらいと思いますので。 あと、人間の耳は周波数によって感度が異なるのでこの値が感覚的なものを表すとは限りませのが、 私の主観ではだいたい合っているようなので目安として見て下さい。

PCを構成する各パーツの音

私の使っているPCを構成するもので音を出のは、ケース用ファン、電源ファン、CPUクーラー、ビデオカードのファン、ハードディスク、FDD、CD-ROM×2、MOになります。 このうちリムーバブルドライブであるFDD、CD-ROM、MOは前述のように稼働時間が短いため、対象外とします。

一つ一つのパーツの音を聴き比べてみると、1番うるさいのはハードディスクでした。 2番目がビデオカード(CanopusのSPECTRA 2500)用ファンで、これは意外でした。 ビデオカードはこんなにうるさく無かった筈なのですが…やはり経年劣化でしょうか。 続いてCPUクーラー、ケース用ファンの順です。

それぞれのパーツの出す音を録音し、音の大きさを見てみました。 聴いてみた時には「…ぐらいかな」と思っていたものが、見事に数値化されています。

*上にある携帯の音とはレンジが違うので注意して下さい。 以降のグラフは一部を除きこのレンジで統一します。(違うところは明記します)

電源ファン+ケースファン

電源ファン+ケースファン
ピーク (相対値) 199.3 (0.3)
平均 (相対値) 10.0 (0.6)
Wave File (サイズ) casefan_default.mp3 (35KByte)
スペクトル ケース全体

ケース自体の出す音には、電源用ファンとケース用ファンがありますが、 もともと結構静かだったことと、電源ファンを止めるのが面倒であったことから併せて録音してあります。 さすが、定評のあるTQ-700mk2だけあって全体的にあまり音がしません。

電源(ST-250)はやはり定評のあるSevenTeamのもので、温度センサが付いていてファンの回転数を制御しています。 特に静音化の必要性を感じませんでした。 ケース用ファンは、電源用ファンに比べると多少音が大きいものの、他のパーツに比べると遙かに静かなので、 これも特に静音化の必要性を感じませんでした。

*感じなかったのですが…結果を言ってしまえば、これも静音化の対象になりました。

CPU

CPUクーラー
ピーク (相対値) 389.3 (0.6)
平均 (相対値) 10.0 (1.8)
Wave File (サイズ) cpu_default.mp3 (35KByte)
スペクトル CPUクーラー

CPUは、2年前に大枚11万円をはたいて買ったPentiumII 400MHz。 時は流れ、盛者必衰の理(ことわり)を感じる今日この頃…ということはともかく、CPUクーラーには純正のSANYO MCクーラーが付いています。 SANYOのファンは静かだと言われますが、それなりの音はします。 ヒートシンクの形状は効率よさそうですが、いかんせんサイズが小さい。 これは静かにしてやりたい所です。

ビデオカード

チップ用ファン
ピーク (相対値) 658.2 (1.0)
平均 (相対値) 36.3 (2.2)
Wave File (サイズ) video_default.mp3 (35KByte)
スペクトル チップ用クーラー

意外とうるさくて驚いたのはビデオカード。 恐らく経年劣化だと思いますが、かなりの騒音です。 発熱の大きいRIVA TNTを、小さな3cm角のチップ用クーラーで頑張って冷却しているわけですから、 音がしてしまうのは仕方がないかもしれません。 消費電力は0.75W(CPUクーラーは0.96W)ですから、回転数も結構ありそうです。

ハードディスク

Fireball SE Fireball Plus LM
ピーク (相対値) 798.6 (1.2) 312.3 (0.45)
平均 (相対値) 23.1 (1.4) 17.4 (1.0)
Wave File (サイズ) hdd_se_default.mp3 (35KByte) hdd_lm_default.mp3 (35KByte)
スペクトル Fireball SE Fireball Plus LM

静音化で最も重要になりそうなハードディスク。 最近Fireball Plus LMに換装したのですが、2台の音を聴き比べると技術の進歩を感じます。 この2台のドライブは発売日に2年の差があります。 ハードディスクは年々静かになり、発熱も少なくなっているといわれますが、まさにその通りの結果が出ています。

Fireball Plus LMは回転数が7200回転であるにもかかわらず、5400回転のFireball SEの半分以下の音になっています。 ケースのフレームにマウントしているため、結構大きめの音が聴こえますが、単体で手に持って動かしてみると「コロコロコロ…」という程度の音しかしません。 それでいてRead/Writeの速度は倍以上ですからすごいものです。 ちなみにこの速さの差、というのはかなり体感できます。

いよいよ、実践

さて、前振りがちょーっと長くなりましたが、次はいよいよ静音化に取りかかる …前段階として、廃熱についていろいろと試してみました。つづく。

余談ですが、mp3っていいですね。 wavファイルをそのままホームページに載せようと思うと、割り当ての5MBを軽く突破してしまいます。 (5MBというと少ないようですが、無料のスペースですから文句は言えません) 世間で話題になっていることは知りつつ、今まで使ったことが無かったのですが、こんな所で役に立つとは…。 ちなみに56KB/secでエンコードしてあります。