判例 平成15年11月21日 第二小法廷判決 平成15年(あ)第93号 自動車の保管場所の確保等に関する法律違反被告事件
要旨:
 自動車の保管場所の確保等に関する法律が定める路上継続駐車の罪の故意を欠くとして無罪とされた事例

内容:

 件名

自動車の保管場所の確保等に関する法律違反被告事件 (最高裁判所 平成15年(あ)第93号 平成15年11月21日 第二小法廷判決 破棄自判,無罪)

 原審

名古屋高等裁判所 (平成14年(う)第422号)

主    文

       原判決及び第1審判決を破棄する。
       被告人は無罪。

理    由

 弁護人岩野壽雄の上告趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 しかしながら,所論にかんがみ,本件における自動車の保管場所の確保等に関する法律11条2項2号,17条2項2号の罪(以下「本罪」という。)の成否について,以下,職権をもって検討する。
 第1審判決が認定し,原判決が是認した犯罪事実は,起訴状記載の公訴事実と同旨である。その内容は,「被告人は,法定の除外事由がないのに,夜間である平成14年5月23日午後8時ころから同月24日午前4時30分ころまでの約8時間30分の間,法令に定める適用地域である名古屋市緑区内の道路上に,普通乗用自動車1台を駐車させて置き,もって,自動車が夜間に道路上の同一の場所に引き続き8時間以上駐車することとなるような行為をした」というにある。
 原判決は,被告人が,平成14年5月23日午後7時過ぎころ,外出先から妻と本件自動車で帰宅した際,妻から,近くに買物に行きたいのでもう一度車を運転してほしいと頼まれたため,本件自動車を車庫に入れず,自宅前の道路上に駐車したままにしたこと,同日午後8時ころ,妻に買物に行く旨声をかけたところ,妻から今日はやめると言われたのに,本件自動車を車庫に入れず,そのまま翌朝まで道路上に放置してしまったことを認定した。そして,原判決は,この事実を前提として,被告人は,本件自動車を自宅前の道路上に駐車させた当初,駐車状態がほどなく解消されることを予測していたものの,妻から買物はやめたと言われた時点で,その日はもはや本件自動車を使用する予定がなくなったのに本件自動車を道路上に駐車させたままにしておくことの認識があったというべきである旨を判示して,本罪の故意を認めたものである。
 そこで検討するに,自動車の保管場所の確保等に関する法律11条2項2号,17条2項2号は,専ら故意犯を処罰する趣旨であると解すべきである。そして,本罪の故意が成立するためには,行為者が,駐車開始時又はその後において,法定の制限時間を超えて駐車状態を続けることを,少なくとも未必的に認識することが必要であるというべきである。記録によれば,被告人は,妻から買物に行くのをやめたと言われた時点においては,本件自動車を道路上に駐車させたままであることを失念していた旨を一貫して供述しているところ,本件自動車が駐車されていた場所は自宅車庫前の路上であり,車庫のシャッターは開けられたままであったこと,被告人は日ごろは毎晩本件自動車を車庫に格納していたものと認められること等の本件における諸事情にかんがみれば,被告人の上記弁解を排斥して被告人に本罪の故意があったと認定するには,合理的な疑いがあるというべきである。
 そうすると,本件においては,公訴事実の証明が十分でないといわざるを得ず,本罪の成立を認めて被告人を罰金4万円に処した第1審判決及びこれを維持した原判決は,事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものであって,破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号,3号により原判決及び第1審判決を破棄し,本件事案の内容及びその証拠関係等にかんがみ,この際,当審において自判するのを相当と認め,同法413条ただし書,414条,404条,336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官山本信一 公判出席
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷 玄 裁判官 滝井繁男)

 

 

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