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パトカーの違反はどうなるの?

パトカーの駐車違反については「ミニパトの哀しき駐車違反」参照
 

「パトカーは違反し放題で、俺らだけ捕まるのは、納得いかない!」
 という方がよくいる。
 そのへん法令はどうなっているのか、見ておこう。

 まず、「緊急自動車」について。
 「緊急自動車」とはそもそも何なのか。
 それは道路交通法施行令(以下、施行令)14条で定められている。

(緊急自動車の要件) 

第十四条  前条第一項に規定する自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第三章 及びこれに基づく命令の規定(道路運送車両法 の規定が適用されない自衛隊用自動車については、自衛隊法第百十四条第二項 の規定による防衛大臣の定め。以下「車両の保安基準に関する規定」という。)により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。ただし、警察用自動車が法第二十二条 の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。

  「前条第一項」とは、施行令13条1項のこと。以下、2項も含め引用する。

(緊急自動車)

第十三条  法第三十九条第一項 の政令で定める自動車は、次に掲げる自動車で、その自動車を使用する者の申請に基づき公安委員会が指定したもの(第一号又は第一号の二に掲げる自動車についてはその自動車を使用する者が公安委員会に届け出たもの)とする。

 消防機関その他の者が消防のための出動に使用する消防用自動車のうち、消防のために必要な特別の構造又は装置を有するもの

一の二  国、都道府県、市町村、関西国際空港株式会社、成田国際空港株式会社又は医療機関が傷病者の緊急搬送のために使用する救急用自動車のうち、傷病者の緊急搬送のために必要な特別の構造又は装置を有するもの

一の三  消防機関が消防のための出動に使用する消防用自動車(第一号に掲げるものを除く。)

一の四  都道府県又は市町村が傷病者の応急手当(当該傷病者が緊急搬送により医師の管理下に置かれるまでの間緊急やむを得ないものとして行われるものに限る。)のための出動に使用する大型自動二輪車又は普通自動二輪車

一の五  警察用自動車(警察庁又は都道府県警察において使用する自動車をいう。以下同じ。)のうち、犯罪の捜査、交通の取締りその他の警察の責務の遂行のため使用するもの

 自衛隊用自動車(自衛隊において使用する自動車をいう。以下同じ。)のうち、部内の秩序維持又は自衛隊の行動若しくは自衛隊の部隊の運用のため使用するもの

 検察庁において使用する自動車のうち、犯罪の捜査のため使用するもの

 刑務所その他の矯正施設において使用する自動車のうち、逃走者の逮捕若しくは連戻し又は被収容者の警備のため使用するもの

 入国者収容所又は地方入国管理局において使用する自動車のうち、容疑者の収容又は被収容者の警備のため使用するもの

 電気事業、ガス事業その他の公益事業において、危険防止のための応急作業に使用する自動車

 水防機関が水防のための出動に使用する自動車

 輸血に用いる血液製剤を販売する者が輸血に用いる血液製剤の応急運搬のため使用する自動車

八の二  医療機関が臓器の移植に関する法律 (平成九年法律第百四号)の規定により死体(脳死した者の身体を含む。)から摘出された臓器、同法 の規定により臓器の摘出をしようとする医師又はその摘出に必要な器材の応急運搬のため使用する自動車

 道路の管理者が使用する自動車のうち、道路における危険を防止するため必要がある場合において、道路の通行を禁止し、若しくは制限するための応急措置又は障害物を排除するための応急作業に使用するもの

 総合通信局又は沖縄総合通信事務所において使用する自動車のうち、不法に開設された無線局(電波法 (昭和二十五年法律第百三十一号)第百八条の二第一項 に規定する無線設備による無線通信を妨害する電波を発射しているものに限る。)の探査のための出動に使用するもの

十一  交通事故調査分析センターにおいて使用する自動車のうち、事故例調査(交通事故があつた場合に直ちに現場において行う必要のあるものに限る。)のための出動に使用するもの

 前項に規定するもののほか、緊急自動車である警察用自動車に誘導されている自動車又は緊急自動車である自衛隊用自動車に誘導されている自衛隊用自動車は、それぞれ法第三十九条第一項 の政令で定める自動車とする。

 

 以上、簡単にいえば、赤灯をつけてサイレンを鳴らしたパトカーが「緊急自動車」なる、ということだ。
 そして「緊急自動車」は、道路交通法のいろんな規定から除外されている。
 39条こうだ。

第三十九条  緊急自動車(消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。以下同じ。)は、第十七条第五項に規定する場合のほか、追越しをするためその他やむを得ない必要があるときは、同条第四項の規定にかかわらず、道路の右側部分にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。

 緊急自動車は、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない。この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない。

 39条2項の、停止義務の免除とは、具体的には次のようなことだ(『執務資料道路交通法解説13-3訂版』より引用。以下、丸数字は同。「法」とは道路交通法)。

@信号機や手信号等の表示にしたがって停止するとき(法第4条、第6条1項、第7条)
A歩道又は路側帯を横断する場合の直前の停止(法第17条2項)
B乗降中の路面電車の後方停止(法第31条)
C踏切直前の停止(法第33条1項)
D横断歩道等直前の愛知氏(法第38条1項・2項)
E指定場所における一時停止(法第43条)
F車いす、身体障害者保護のための停止(法第71条2号)

 40条はこうだ。

第四十条  交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。

 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。
   (罰則 第百二十条第一項第二号)

 41条はこうだ。

第四十一条  緊急自動車については、第八条第一項、第十七条第六項、第十八条、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二、第二十五条第一項及び第二項、第二十五条の二第二項、第二十六条の二第三項、第二十九条、第三十条、第三十四条第一項、第二項及び第四項、第三十五条第一項並びに第三十八条第一項前段及び第三項の規定は、適用しない。

 前項に規定するもののほか、第二十二条の規定に違反する車両等を取り締まる場合における緊急自動車については、同条の規定は、適用しない。

 もつぱら交通の取締りに従事する自動車で内閣府令で定めるものについては、第十八条第一項、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二並びに第二十五条の二第二項の規定は、適用しない。

 政令で定めるところにより道路の維持、修繕等のための作業に従事している場合における道路維持作業用自動車(専ら道路の維持、修繕等のために使用する自動車で政令で定めるものをいう。以下第七十五条の九において同じ。)については、第十七条第四項及び第六項、第十八条第一項、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二、第二十三条並びに第二十五条の二第二項の規定は、適用しない。

 8条1項は、通行禁止の規定で、次のようなものなどがある。
  @通行止め
  A車両通行止め
  B車両進入禁止
  C二輪の自動車以外の自動車通行止め
  D大型貨物自動車等通行止め
  E特定最大積載量以上の貨物自動車等通行止め
  F大型乗用自動車通行止め
  G二輪の自動車、原動機付自転車通行止め
  H車両(組合せ)通行止め
  I指定方向外進行禁止
  J一方通行

 17条6項は、安全地帯等乗入禁止
 18条は、左寄り通行等
 20条1項は、一番目の車両通行帯通行義務
 20条2項は、車両通行帯指定区分通行義務
 20条の2は、路線バス等優先通行帯における義務
 25条1項、2項は、道路外に出るための右(左)折の方法
 25条の2、2項は、指定横断等の禁止
 26条の2、3項は、車両通行帯における進路変更の禁止
 29条は、追越しを禁止する場合
 30条は、追越しを禁止する場所
 34条1項は、車両の左折方法
 34条2項は、自動車等の右折方法
 34条4項は、一方通行路における右折方法
 35条1項は、指定通行区分通行義務
 38条1項前段は、横断歩道等に接近する車両等の義務
 38条3項は、横断歩道等及びその手前30メートルでの追抜き禁止

 22条は、最高速度についての規定であり、速度違反を取り締まるときの緊急自動車は、41条2項により、指定最高速度も法定最高速度を守らずに走ることができる。


 「緊急自動車」は、このようにいろんな規定から除外されている。
 パトカーや消防車や救急車が、犯罪者を検挙するため、また国民の安全を守るため、サイレンを鳴らして赤灯を回して、緊急であることを知らせ、周囲に注意を喚起して、現場へ急行する、そういうときの走行については、いろんな禁止規定から除外されるわけだね。これは当然のことだろう。

 速度違反を取り締まるとき以外の「緊急自動車」の速度については、施行令12条3項でこう規定されている。

高速自動車国道の本線車道以外の道路を通行する場合の最高速度は、前条並びに第一項及び前項の規定にかかわらず、八十キロメートル毎時とする。

 次に、「緊急自動車」としての要件を満たさない(サイレンを吹鳴させず赤色の警光灯を点灯させない)パトカーについて。

 テレビの「交通警察密着24時」といった番組では、追尾式のスピード違反取締りを行うパトカーが、サイレンも赤灯もなしで“獲物”を追いかけ、停止を命じるときだけサイレンと赤灯を…というシーンを見かける。
 「緊急自動車」であるための要件を満たしていない場合のパトカーの違反、それはどうなるのか。

 それは、まず、そのパトカーのスピードによる。
 4輪の「法定速度」は、一般道路では60キロ(施行令11条)、高速道路では100キロ(施行令27条)だ。
 しかし、各都道府県には交通についての公安委員会規則があり、たとえば東京都の場合だと「東京都道路交通規則」(東京都公安委員会規則第9号)の2条が、「専ら交通の取締りに従事する自動車」は、「指定速度」(標識により40キロとか50キロとか指定されているアレ)を守らなくてもいいと定めている。
 ただし、「法定速度」を守ることまでは除外していない。
 交通についての公安委員会規則は、各都道府県にある。だいたい同じようなことが定められている。

 とはいえ、「法定速度」を超えて走る“獲物”を、赤灯・サイレンなしで追うことが、直ちに違反になるわけではない。
 緊急自動車の要件を定めた施行令14条に、ただし書きがある。速度違反を取り締まるときで、

特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない

 と。
 では、赤灯(赤色の警光灯)のほうはどうなのか。

 被告人の道交法違反を検挙するのに警察官も等しく道交法違反を犯したとはいつても、両者の違反の実質的内容は異なるものというべきであり、これを等しくみて、警察官の違反を不問に付し被告人のみ起訴することが許されないという主張自体失当であるといわなければならない。……警察官に対する道交法違反の起訴、不起訴は被告人に対する本件公訴提起の有効無効に何ら影響を及ぼすものではないことは明らかであるといわなければならない 。

 という判例がある(1984年3月15日 水戸地裁)。

 警察官がパトカーにより最高速度を超過して速度違反車両を追尾した場合において、赤色警光灯をつけていなかつたからといつて、警察官について道路交通法二二条一項違反の罪の成否が問題となることがあるのは格別、右追尾によつて得られた証拠の証拠能力の否定に結びつくような性質の違法はないと解するのが相当である…。

 という判例もある(1988年3月17日 最高裁)。
 こうした判例に支えられ、なし崩しに、現実にはサイレン&赤灯ナシで、つまり「緊急自動車」としての要件を満たさず、飛ばし放題ということになっているようだ。

 そのほか、「東京都道路交通規則」には、

 交通の取締り、交通事故調査、被疑者の逮捕、犯罪の捜査、検証又は警備活動のため使用中の車両及び当該目的のため現に停止を求められている車両

 を駐車禁止の規定から除外するなどの規定がある。

 ただし、公安委員会規則が除外するのは、「指定禁止」(都道府県の公安委員会が標識 等により行う規制)であって、「法定禁止」(道路交通法でダイレクトに定められた規制)には及ばない。
 したがって、たとえば、駐車違反を取り締まるためにミニパトが交差点内や横断道上や、道路の右側に駐車した場合、ミニパト自身も駐車違反となる。

「取り締まる側のパトカーなんだから、模範運転をするはず。パトカーがああいう違反をするってことは、あれくらいの違反は、やってもいいんだろう。と思ってやったら捕まった。納得いかない」
 という方もいる。わからないではない。
 しかし、自他の安全&交通の円滑を守ることは、個々の運転者に課された当然の責務なのだ。「警察がやるからオレも」だけでは困るんじゃないか。そんなふうに私は思うが。

 

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