無人式自動速度取締り機は「えせ計測器」!!


 

これでみんな検挙されて、みんな罰金を納めとるんですよ。あなただけがおかしい言うとる。きちっと写っとったら、どうしようもないじゃないですか。機械というのは非常に性能がいい。刑事罰を科すんですから、そんなおかしな機械を設置しません。あなたを罰せないと、機械がおかしいことになるでしょ
 無人式自動速度取り締まり機(略して自速機)オービスVに測定・撮影されたある運転者が、検察官から言われたセリフだ。検察官の論法は<<いつも取り締まっている→だから機械は正しくなければならない→よって測定値は正しい>>というもの。
 本末転倒? 狂ってる? いや、この検察官は正直なだけだ。違反処理システムの本質を正直に吐露しているにすぎない。

 それは、事件が起訴されて正式な裁判なるとよーくわかる。
 無実を主張する事件のほぼすべては、自速機の製造販売メーカー(民間の営利企業)の社員や、定期点検を請け負っている会社(これも営利企業)の社員を証人として呼び、
我が社の機械(商品)はこれこれ優秀でありまして、絶対にプラス誤差は出しません
機械のことはよくわかりませんが、マニュアルどおりに点検したら異常ありませんでした
 と証言させ、
当法廷で取り調べた関係各証拠によれば、本件装置は正常に作動していたと認められる

 と有罪にするのである。裁判所にとってメーカー社員は「測定機の専門家」だそうである。
 東京航空計器のオービスVが登場したのは70年代後半。その後、松下通信工業などが自速機の市場に参入。92年には三菱電機が、頭上のアーチ(門型構造物)の上にレーダー式の測定機とカメラ等を設置し、警察内に設置した中央装置へNTT回線で画像を伝送するタイプを全国に販売し始めた。これが高速走行抑止システム(略して高抑)「RS-2000」。俗に「新Hシステム」と呼ばれるものだ。
 現在、自速機は全国に600基ほどある。無罪は、兵庫県・加古川バイパスの「オービスV」事件だけ。被告人車両は大型トラックでタコグラフがあり、その記録を証拠に92年10月、大阪高裁で無罪とされた。
 自速機の無罪はそれ1件だけ。メーカー社員は後の別の裁判で「あれは誤判だ」と言っている。
 私は東京簡裁でよく自速機の事件を傍聴する。裁判官も書記官も廷吏も検察官も証人も、そして傍聴人も同じ(こんな事件をマメに傍聴するのは私とマニアの礼田計さんしかいない)。国選の弁護人も同じことがある。毎回違うのは被告人だけ。何も知らない被告人を同じ進行で無惨に有罪とし、放り出す。そのくり返しだ。こんな狂ったことがいつまで続くのか……。

 ところが!! さいたま地裁の川越支部ですでに2年以上争われているRS-2000事件は、とんでもない展開になっている。
 被告人はジャーナリストの寺澤有さん。国道254号線のRS-2000により97q/h(37q/h超過)と測定・撮影され、無実だと争っている事件である。
 検察側の立証はいつものとおり。他の事件と同じく寺澤さんも無惨に負けるのか……。だが、警察の不正を鋭く暴いて2けたの警察官を退職に追い込んできたという寺澤さんはさすが一筋縄ではいかなかった。なんと、テレビでおなじみ、オカルト叩きで有名な早稲田大学理工学部の大槻義彦教授を証人として申請したのである。

 03年12月、大槻教授の意見書がまず提出された。経歴を見ると専門は物理学、とくに放射線物性学と環境電磁気学。40年前にもう博士となり外国の複数の大学でも講義してきたという。高校のとき物理の試験で0点をとったことのある私など圧倒されそうな経歴だ。
 7ページの意見は、100%正確な測定機などあり得ないことなどをたっぷり述べ、こう結ばれている。
RS-2000は甚だ信用性に欠けるばかりか、学術的、科学的な検証、実験もされていない、学術上、科学技術上の『えせ計測器』です。このような装置が唯一の証拠として刑事事件の立証に利用され、過去、何万件もの有罪判決が言い渡されてきたと聞き、心底驚いています。
 裁判所は『有罪の証拠がない』として、速やかに無罪判決を言い渡すべきと考えます

 言い切っちゃったね「えせ計測器」と! テレビでのオカルト叩きと同じ調子で! しかしまったくそのとおり。おっしゃるとおり。無惨な裁判を見続けてきた私は、飛び上がって踊り出したくなった(笑)。

 これに対し検察官は、先に3回にわたって証言した三菱電機の菅井宗一社員からの反論の意見書を、年明けにも出すと言った。
 だが、04年1月の公判には出なかった。3月になってようやく寺澤さんのところへ送られてきた意見書(A4で2枚)は、物理が苦手な私にも「ええっ!?」というものだった。
 「半導体チップは電磁気、電波の影響に弱い」という大槻教授の意見に対しては、
メーカーも当然そこは考えてあります
 と、また、「多重反射による誤作動、誤測定」については、
それで十分正確に測定できるように設計してある、ということです

 と、何の根拠もなく言い切っているのだ。
 これは、彼が多くの法廷で証言してきたのと同じ調子だ。ちなみに3月17日、菅井社員は東京簡裁でも証人となり「RS-2000の裁判だけで60回以上証言している」と証言。

 そして3月22日(月)午後1時30分、川越支部1号法廷で行われた第17回公判に、大槻教授が証人として出廷!! 証言は約1時間半にわたった。以下、私のメモから一部を。
いつでもどこでも100%正確に測定する機械はない。それが科学の常識だ。私はノーベル賞の選考委員会から依頼されて賞の推薦人に6回なったことがある。100%正確な測定機をつくれたらノーベル賞が100個もらえる
ほとんどあらゆる周波数の電磁ノイズが自然界にはある。アトランダムに偶発的に現われて消える。このノイズに半導体チップはたいへん影響されやすい。現代文明の泣きどころだ。もちろん科学者はさまざまに工夫、努力するが、誤測定は場所を選ばず突然起こる。ノイズから100%安全な装置をつくれるなら、病院へ航空機会社へ納入すればいい
本件装置について100回のデータが出され、すべてマイナス誤差しか出ないとなっているが、たった100回のデータを出してくること自体が信じられない。100回程度でばんばんプラス誤差が出るような装置は警察も採用しないだろう
このような装置を唯一の証拠として人を有罪にするのは、あまりにお粗末。こういうことで有罪にしてきた事実が、私は信じられない
 菅井社員の意見書についてはこうだった。
まったく理解困難。論理的にもぜんぜん意味がわからない。たいへんびっくりした
物理学をまったく知らない人の言うこと。どうしてこんなとんでもない理論を証言されるのか私は理解に苦しむ。基礎的なところの知識に非常に疑いがある
三菱には学位を持ったエンジニアがいるんだから、その人たちが証言すべきだ。それをしないのは、責任あるハイテク企業としていささか疑問だ。自信がないなら納品すること自体を断るべき

 言うかね、そこまで!  しかしまったく正論。そのとおり!
 これまで、何の根拠もないメーカー社員のセールストーク≠ェ鵜呑みにされてきた。菅井社員は「裁判なんてこんなものか」とナメきっていただろう。ショックは大きいはず。
 また、他の多くの事件の被告人や裁判官が今回の証言を知ったら、どうなるのか。いや、これで反省するような国家ではないだろう。はてさて、どう巻き返そうとするのか。
 

ドライバー』(八重洲出版)2004年5-5号 より

200年4月1日発売『交通取り締まりのタブー!』必読
メルマガ「《ESPIO!》大槻教授VS三菱電機」 および 『週刊プレイボーイ』に関連記事あり
 


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