「ジャ党」で参議院へ乗り込む!?


「あんたも議員になったらどうだ」
 と何度か言われたことがある。交通違反および警察のことだけ長年やってると、議員さんたちと接することも多く、そういう話も出てきたりするわけね。
 でも、自分が実際に議員になるってのは、あまりに遠い。というか、どうも想像できなかった。
「弟子に準備ができたとき、ちょうど師匠がやってくる」
 と東洋の哲学はいうらしい。私はその「準備」ができてないんだと思えた。逆にいえば、もしも師匠がくる運命なら、弟子の準備は、内的な盛り上がりも外部の要因も自然と整っていく。そんなもんだろ。自然体でこつこつやってれば、なるようになるわさ。


 と、べつに気にしないでいたところ、あらまあ、唐突に思いついたんだねえ、おもしろいことを。
 きっかけは昨年9月。都庁へ情報公開関連の用事で行ったときのことだ。ちょっと時間に余裕があったので議会棟へ寄り、後藤雄一さんにお会いした。後藤さんは小さなパン屋のご主人で、「行革110番」としてカラ宴会≠竍カラ弁当≠ネど税金の不正支出をこつこつ暴いてきた人だ。その後、都議会議員に立候補して2回目で当選したのだ。
 議会棟内の狭い事務所で、後藤さんは言うのだった。
「いやあ、議員になると(行政の不正を)10倍突っ込めますよ。そのぶん風当たりも強いですが、楽しいですよォ(笑)」
 同年11月、衆院選があった。東京比例区の候補者に保坂展人さん(社民党)がいた。保坂さんとはNシステムのことで何度もお会いしている。保坂さんの著書『次世代政治家活用法』(リヨン社)の言葉を借りるなら、警察のことで「活用」できる政治家だ。なので、雨の街頭での演説や、小学校の和室での小規模な集会などへ応援に行った。見ていて、選挙ってのはたいへんだなあ、私にはとてもできんなあと思った。
 結局、2大政党<tィーバーの波に呑まれてか保坂さんは落選。警察の広報や情報公開ではどうしても得られなかった資料を「質問趣意書」という議員の特権により簡単にゲットしてくれた北川れん子さん(兵庫県。同じく社民党)も落選した。うむむう……。


 それから間もなく、唐突に思いついたのである、こんなことを。
 政官財の腐敗を鋭く突っ込んでるジャーナリストたちが政党をつくり、国会議員の立場を手に入れたらおもしろいんじゃないか。政局がどうこうでうろうろせず、原則として法律作成には目もくれず、ひたすら議員の特権を利用して政官財の不正を暴きまくる。暴いて雑誌にスクープを打ちまくる。現在、一部の議員が議会活動をミニ新聞などで発表しているが、そういうのとは格段の差。日本の雑誌のスクープを独占できる。既存の雑誌が掲載しないなら自分たちで新雑誌を創刊する。これは売れるぞ。ダメ議員は辞職に、ダメ官僚は懲戒免職に、ダメ企業や天下り法人は廃業に、どんどん追い込まれる。ストップされる税金無駄遣いは数百兆円にのぼる……。
 党名は、とりあえずオヤジギャグ満開の「ジャーナリス党」。略して「ジャ党」。漢字では「蛇党」。仲間のジャーナリストが不正をやれば、当然それにも食いつく。国会の狂犬集団と怖れられ……。


 もちろん、そういうタイプのジャーナリストは徒党を組むのが嫌いなはず。なのになぜ政党か。
 選挙は選挙区と比例とに分かれる。選挙区選挙では自民や民主に勝てっこないだろう。だったら、それなりの知名度を利用して比例(参院選の場合は全国区)で出るのがよかろう。衆院選はよくわかんないんだけど、現職の議員を抱えてないと出られないとかややこしい規則になってるらしい。しかし参院選(今年夏に選挙がある)のほうは公職選挙法第86条の3、1項3号により、立候補者を10人そろえれば出られる。だから政党なのである。正確にいえば、まずは「政治団体」の届け出(無料)をすることになるんだけどね。
 このアイデア、「選挙へ行っても投票したい候補者がいない」という方々から「おもしろそうじゃん。もし出るなら投票するよ」とのお声をいただいてる。
 ただ、重大な問題がある。立候補するには「供託金」が必要で、参院選の供託金は1人600万円。10人で6000万円!! ジャーナリストの小林道雄さん(講談社『日本警察崩壊』など)はこう笑っていた。
「ジャーナリストに必要な能力は、霞を食って生きられることだよ」
 私も笑って返した。
「または、美容師と結婚して髪結いの亭主になることですね」
 そんなジャーナリストたちに6000万円は不可能。「ジャ党」はまったく非現実の夢物語か……。


 ところが、である。寺澤有くんなのである。彼ってば、某社と警察との癒着を週刊誌で暴いて「事実無根で名誉毀損だ」とその会社から訴額2億円の裁判を起こされていたのだが、その後、同社の会長が逮捕されるなど記事が事実であることが動かしようのない事態になるや、同社は今年2月、裁判を放棄。寺澤くんは同社に対し6億円の損害賠償を求める裁判を起こすと言っている、と報道された。
 6億円はともかく、1億円くらいは勝てるかもしれない。寺澤くんは独身。大金の使い道はそうないだろ。そしたらさ、わが「ジャ党」に寄付しちゃえよ浄財を。
 

 かくして夢物語はにわかに現実味を帯びてきたので、私は総務省と参議院に電話していろいろ聞いてみた。下調べである。
 供託金は現金または国債証書で納める。当選人を2倍した数が名簿登載者の数に達すれば没収されない。つまり10人で立候補して5人当選すれば6000万円は戻ってくるわけだ。やっほーい。んで、たとえば3人当選の場合、3に2を掛けて6。10から6引いて4。4人ぶんの供託金が没収となる。つまり6人ぶん、3600万円は戻ってくるわけだ。まあまあじゃん(他人のカネだから気楽だね。あはは)。
 議員の歳費は月額123万7500円。税金や年金がかなり引かれるらしいが、貧乏ジャーナリストには十分に魅力的な額だ。そのほか文書通信費などが月額100万円に立法事務費が月額65万円。でかい。これだけの取材費を出す雑誌は滅多にないぞ。さらにJR各社の無料パスが支給される。交通費タダで全国を取材にまわれるわけだ。もちろん、議事堂裏手の議員会館に家賃タダで事務所を持てる。得票数によっては「政党交付金」てのももらえる。
 素敵なのは、公設秘書を3人持てること。政策秘書には約44万円、第一秘書には月額約41万円、第二秘書には約31万円の給料が税金から支給される。この秘書を有能な新人ジャーナリストにすれば「狂犬集団」の威力は倍増だ。しかも参議院事務局には調査室というのがあり、議員の手足となってくれるらしい。スクープ連発はもう必至!! 原稿料でまた稼げるよん。ジャーナリストが稼げる職業≠チてことになれば、さらに有能な人が出てくる。 
 いや、もっとすごいこともできる。寺澤くんは常々「警察を取り締まる警察が必要だ。その警察もまた腐敗しないよう、任期を限って」と言っている。国会で参考人として陳述したときも強く言っていた。参議院の任期6年の「ジャ党」こそ、警察を取り締まる警察として適役だ。つーか、これしかないでしょ。警察から裏ガネと天下りがなくなれば、日本はずいぶんすっきりするぞ。
 

 つーことでどうだい、コンビニでこれを立ち読みしてる寺澤くん、ちょっと考えてくれよ。
 なんだ、本人に言ってないのかって? そうなんです、「ボケオヤジがまーた妙なこと思いついて遊んでやがる」と嘲笑されるのが怖くて、言ってないんですう。ああ、取らぬタヌキの皮算用は楽しいなと、とりあえず冗談めかしておくけど(笑)、どうよこのアイデア。ねえねえ。

『ドライバー』(八重洲出版)2004年4-5号に若干加筆。

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