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2011年2月14日更新
最新の不起訴率
罰則を伴う違反により、運転者(違反者)が取締りを受ける件数は、毎年だいたい800〜900万件。
そのうち、いわゆる赤キップを切られた事件と、元はいわゆる青キップだったが反則金を払わなかった事件とは 、刑事手続きへ進む。通常は検察庁へ送致(いわゆる書類送検)され、「起訴」か「不起訴」かどちらかになる。「起訴」には、「略式命令請求(略式起訴)」と「公判請求」と2種類ある。
通常は 略式で処理される。具体的には、いわゆる交通裁判所で、略式の裁判手続きで罰金を払って 終わる。当局にとっても、またとにかく早く終わりたい運転者にとっても、略式は便利だ。しかし略式による処理は 、略式に同意するという書類に運転者本人が署名しなければできない。
また、当然のことながら、検察のほうが「この事件は略式で処理しよう」と思うことが必要になる。無免許や酒気帯びの常習、超過速度がきわめて高い速度違反などは 、運転者本人が略式を望んでも、検察官は略式で処理しない。「公判請求」して懲役刑を求刑する(そうなるのが初めの運転者には普通は執行猶予がつく)。通常なら略式で罰金を払って終わるのだが、運転者が略式に同意しない、そういう ケースは、公判請求か不起訴かどちらかになる。
ここで、以下の表を見てもらいたい。「検察統計年報」から、「道路交通法違反等 」(保管場所法違反を含む)の「略式命令請求」「公判請求」「不起訴」の人数を抜き出し 、それに、「交通安全白書」から罰則を伴う違反に対する取締り件数を抜き出してあわせたものだ。
取締件数 起訴
不起訴
※
略式命令請求
公判請求
1987年 12,725,577 1,271,595 10,725 69,938 1988年 10,954,897 1,031,485 9,733 67,349 1989年 8,474,055 942,438 9,197 57,734 1990年 9,040,369 994,279 8,899 53,241 1991年 9,264,950 996,192 8,301 47,864 85.22 1992年 8,846,233 1,003,711 8,274 48,636 85.46 1993年 8,600,922 1,014,107 8,105 54,026 86.95 1994年 8,653,881 948,709 7,858 63,967 89.06 1995年 8,362,792 853,778 8,439 57,784 87.26 1996年 8,666,385 893,884 9,579 58,744 85.99 1997年 8,965,413 927,414 9,982 59,726 85.68 1998年 9,000,102 903,914 11,205 64,257 85.15 1999年 8,953,560 902,777 12,889 70,430 84.53 2000年 7,882,785 780,878 12,586 81,372 86.60 2001年 7,774,398 754,046 12,217 93,024 88.39 2002年 7,791,587 714,599 12,241 105,490 89.60 2003年 8,106,728 645,831 11,823 113,266 90.54 2004年 8,505,919 612,337 11,946 125,487 91.31 2005年 8,939,678 576,202 10,352 131,699 92.71 2006年 8,573,609 520,394 9,787 155,026 94.06 2007年 8,480,056 424,681 9,423 163,196 94.51 2008年 8,175,691 346,844 10,547 155,109 93.6 2009年 8,345,760 318,958 9,888 135,508 93.2
取締り件数が2000年にガクンと減ったのは、1999年秋頃を皮切りに、かつてなかった“全国警察不祥事・犯罪報道フィーバー”が起こったせいと思われる。
2006年からの減少は、同年6月1日にスタートした「放置違反金」制度により、駐車違反の運転者に青キップを切る取締りが激減したせいだろう。略式命令請求がぐんぐん減っているのは、略式に応じず不起訴になる運転者が増えたことに加え、“格好いい車で飛ばすとモテる”という時代ではなくなり、若者が車を欲しがらず、欲しくても不景気で買えなくなった等から大幅な速度違反が激減したこと、また、度重なる厳罰化に加え、若者があまり酒を飲まなくなったらしいこともあり、飲酒運転が激減したこと、などが影響しているのではないかと思われる。
近年については、「放置違反金」制度による反則金の減収を食い止めるため青キップの取締りを意図的に増やし(赤キップの取締りを減らし)ているのではないか、とも推理できる。実際、罰則を伴う違反に対する取締りのうち、青キップ(反則告知)の割合が近年ぐんと増えている。不起訴は、1991年から2007年まで、1994年を除いて一貫して増え続けている。なんと3倍以上に増えた。こうしてみると、1990年末に私が初めての単行本を出し、蓮舫さんがメインの司会をつとめる深夜番組に出演するなどして、「軽微な違反では不起訴は簡単。納得いかない取締りで反則金を払うのはドブに金を捨てるようなもの」と言い続けてきた影響は否定できないのかな、という気はする。もちろん、検察内部で何らかの方針変更があった、などの事情もあるのかもしれない。
その不起訴が、2008年には減り、2009年にはさらに大きく減っている。これはなぜか。1つには、「放置違反金」制度が定着してきて、「駐車違反でわざわざ出頭して違反キップを切られ、反則金を払わず不起訴に」というケースが減ったことがあるのだろうと思われる。公判請求は、2007年に比べて2008年と2009年が増えている。私は東京簡裁の道交法違反の裁判を全件傍聴しようと、ここ8年間ほど通い詰めているが、最近、やはり不景気のせいなのだろう、「普通なら略式ですむ違反なのに、住所不定・無職のため、逮捕して裁判まで1〜2カ月勾留し、その勾留日数の1日を5000円に換算して罰金額に満つるまで算入する。つまり罰金は払い終えたことにして釈放する」というケースが増えている。
地裁への公判請求については、飲酒運転は従来、罰金前科が2犯ほどあると公判請求する運用だったが、2007年9月19日スタートの飲酒運転の厳罰化以降、初犯でも公判請求することが珍しくなくなった。そのせいで公判請求の数が増えた可能性はある。上掲の表中、※印は 、公判請求と不起訴を比べての不起訴率だ。
略式命令請求と公判請求を併せて「起訴」ととらえ、それと不起訴とを比べて不起訴率を計算するやり方もある。しかし、運転者が略式に同意したのに検察官が不起訴とするのは希有であり、略式(=どうせ不起訴になるはずがない人数)を含めて不起訴率を計算するのは不適当と思う。そこで、私のほうでは公判請求と不起訴を比べて“実質的な不起訴率”としている。もとが反則金の事件は、公判請求されても、結果は反則金と同額の罰金刑となる。反則金より高くなるとしても、たとえば1万8000円の端数が切り上げられて2万円になる程度だ。もちろん裁判官も人間であり、狂ったとしか思えないような判決をすることも希にあるが、多くの裁判官は相場どおり(=反則金と同額の罰金刑)とする。
反則金の最高額は現在、4万円。2009年の「司法統計年報」(刑事編)を見ると、簡裁で道交法違反で5万円未満の罰金刑とされたのは16人、地裁では6人。2009年の公判請求の人員、9888人(上掲)のなかに、もとが反則金の道交法違反はごくごく一部しか含まれていないのである。長年にわたり交通違反を見てきて、もとが反則金の事件で公判請求されやすいのは、反警察感情から正義を気取ってゴネるとか、とにかく個々の違反について普通に誠実に適切な決着を求めるのではないケース、といえるかと思う。