03/1/16データを追加  04/11/5データを追加  05/8/10データを追加  06/1/29更新
06/10/23データを追加  07/8/14データを追加 08/11/2データを追加 09/8/26データを追加

 

最新の不起訴率

 

 罰則を伴う違反(シートベルト違反など点数だけの違反を除いた違反)の取締り件数は、毎年だいたい800〜900万件。そのうち、赤キップを切られた事件と、元は青キップだったが反則金を払わなかった事件とは、刑事手続きへ進む。結果、「起訴」か「不起訴」かどちらかになる。

 「起訴」には、「略式命令請求(略式起訴)」と「公判請求」と2種類ある。
 通常は「略式命令請求」だ。いわゆる交通裁判所で、略式の裁判手続きで罰金を払って終わる。当局にとっても、またとにかく早く終わりたい運転者にとっても、略式は便利だ。

 しかし略式による処理は、略式に同意するという書類に運転者本人が署名しなければできない。また、当然のことながら、検察のほうが「この事件は略式で処理しよう」と思うことが必要になる。無免許や酒気帯びの常習、超過速度がきわめて高い速度違反などは、運転者本人が略式を望んでも、検察官は略式で処理しない。「公判請求」して懲役刑を求刑する(そうなるのが初めの運転者には普通は執行猶予がつく)。

 通常なら略式で罰金を払って終わるのだが、運転者が略式に同意しない、そういう場合、「公判請求」か「不起訴」かどちらかになる。

 ここで、以下の表を見てもらいたい。「検察統計年報」から、「道路交通法違反等」(保管場所法違反を含む)の「略式命令請求」「公判請求」「不起訴」の人数を抜き出し、それに、「交通安全白書」から、罰則を伴う違反に対する取締り件数をあわせたものだ。

 ※印は、「公判請求」と「不起訴」を比べての不起訴率である。ただし、「公判請求」の多くは、無免許や酒気帯びの常習、超過速度がきわめて高い速度違反であり、「通常なら略式で罰金を払って終わるのだが、運転者が略式に同意しなかった」というケースが、以下の表の「公判請求」に含まれる割合は、かなり低い。元が青キップだったケースの不起訴率は100%に近いといえる(そのことは「司法統計年報」を参照すると明か)。

  取締件数

起訴

不起訴

略式命令請求

公判請求

1987 12,725,577 1,271,595 10,725 69,938  
1988 10,954,897 1,031,485 9,733 67,349  
1989  8,474,055 942,438 9,197 57,734  
1990 9,040,369 994,279 8,899 53,241  
1991 9,264,950 996,192 8,301 47,864 85.22
1992 8,846,233 1,003,711  8,274 48,636 85.46
1993 8,600,922 1,014,107, 8,105 54,026 86.95
1994 8,653,881 948,709 7,858 63,967 89.06
1995 8,362,792 853,778 8,439 57,784 87.26
1996  8,666,385 893,884 9,579 58,744 85.99
1997 8,965,413 927,414 9,982 59,726 85.68
1998 9,000,102 903,914 11,205 64,257 85.15
1999 8,953,560 902,777 12,889 70,430 84.53
2000 7,882,785 780,878 12,586 81,372 86.60
2001 7,774,398 754,046 12,217 93,024 88.39
2002 7,791,587 714,599 12,241 105,490 89.60
2003 8,106,728  645,831 11,823 113,266 90.54
2004 8,505,919  612,337 11,946 125,487 91.31
2005 8,939,678 576,202 10,352 131,699 92.71
2006 8,573,609 520,394 9,787 155,026 94.06
2007 8,480,056 424,681 9,423 163,196 94.51
2008 8,175,691 346,844 10,547 155,109 93.6
2009 8,345,760 323,936 9,889 135,787 93.2
2010 8,040,944 295,035 9,272 129,010 93.3
2011 7,844,013 265,150 8,600 127,527 93.7

※ 05年のデータを06年10月23日追加
※ 06年のデータを07年8月14日追加
※ 07年のデータを08年11月2日追加
※ 08年のデータを09年8月26日追加
※06年以降の取締件数には放置違反金納付命令分を含まない
※ 08年について『ドライバー』2009年10-20号(9月20日発売)で解説
※ 09〜11年のデータを13年3月25日追加

 

 さて、3年半前(※2002年)の本誌で「不起訴はどんどん増えるのではないか」と予想したが、そのとおり、毎年約1万人ずつどんどん増え続けている。
 しかも、ただ増えているだけではない。99年秋ごろから警察犯罪・不祥事の報道が続出し、取締り件数(つまり母数)が00年、01年、02年と大幅に減ったのに、不起訴は増えているのだ。03年、04年は取締り件数がぐぐっと盛り返したにもかからわず、略式に応じて罰金を払う人は減り続け、不起訴は増え続けているのである!!

 べつの見方をしてみよう。87〜99年の13年間は、取り締まられたうち不起訴になるのは平均0.65%だった。ところが、00年からは1.03%、1.20%、1.35%、1.40%、1.48%と、少しずつ増え続けている。取締り件数は膨大なので、割合としてはわずかだが、泣き寝入りせずにちゃんと争う人が確実に増えていることがうかがわれる。
 裁判所のキャパシティからして、「公判請求」は年間1万2000人程度しかできず、軽微な違反で「どうしても納得いかない」と略式に応じない人が増えれば、検察庁はどんどん不起訴にせざるを得ない…ということも、データからくっきり浮かび上がってくる。

 量の変化は質の変化をもたらす、と言われる。もしも、争う人が10%になれば、たいへんなことになる。取締り件数は、たとえば04年は約850万件。その10%は85万件。不起訴が何十万人にもなる以前に、検察庁はパンクするだろう。
「泣き寝入りして反則金や略式による罰金を払うのは、ドブにカネを捨てるようなもんだ!!」
 との声が高まり、争う人は爆発的に増えるだろう。マスコミも国会も、放っておけなくなる。
「取締りはこれでいいのか。そもそも交通規制がおかしいんじゃないか。ノルマがあるから、数字稼ぎの、取締りのための取締りが行われるのだ!!」
 という話になっていくだろう。

  それは、現場の警察官にとっても福音にちがいない。警視庁に31年間勤務した元警部補・犀川博正さんはこんなふうに言っていた。
「不公平・不適切な取締りをせざるを得ないとき、警察官も人間、矛盾や良心の痛みを感じるのです。しかし、長くやっているうちに良心の痛みなど忘れ、自分の成績だけを考えるようになる。そういうことが、さまざま不祥事の根っこの1つに確かになっているのではないか」
 ノルマ消化の取締りがなくなれば、現場でのつまらないトラブルも減る。ドライバーにとっても現場の警察官にとってもよいことだ。

 だが、組織は困る。取締りは警察組織の利権と密着しているのだ。「規制や取締りを根本的に見直そう」という方向へ進んでは困る。
 ならば、どうするか。基本は悪徳商法と同じ。
「いまなら簡単に払える。お得ですよ。払わないとヤバイぞ」
 である。反則金や略式というお手軽な手続きを用意しておき、
「文句があるなら裁判だ。裁判はたいへんなカネがかかるぞ」
 と脅す。そしてこれ。
「違反点数や行政処分に、不起訴は関係ない。不起訴になっても点数は消さないし、処分は撤回しない」
 必ずダメなわけではないが、ドライバーたちは「じゃあ、争ってもムダじゃん」となりやすい。
 だが、それでも、略式に応じない運転者は増え続け、不起訴がどんどん増えているのである。

 そこに出てきたのが、駐車違反の「放置違反金」制度だ。
「自分が違反者だと正直に名乗り出てキップを切られるのがイヤなら、クルマの使用者の立場で、反則金と同額の放置違反金を払いなさい。そっちを払えば違反点数はナシです」
 という制度で、06年6月までにスタートする。当然、点数のない(そのかわり争えない)放置違反金のほうへどっと流れるはず。不起訴の人数から駐車違反の分が「はい、消えたァ」となる。
 そうなった場合、ドライバーたちは「点数がなくてラッキー」で終わるのか。ノルマ消化の取締りに対する不満は、どこへ噴出することになるのか。合法的などんな争い方があるのか。今後しっかり注目し、ご報告していきたい。

『ドライバー』(八重洲出版)2005年10-20号に加筆。

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