日本式アホ規制&アホ運転者

の典型を見た!

 
 電車を降りると、いつもは平和な駅前のロータリーで、路線バスがけたたましくホーンを鳴らしまくっていた。違法駐車のせいで動けなくなっているようだった。

 駅というのは、京王線のつつじヶ丘。
 私はちょうど1年ほど前、不動産屋いわく徒歩14分のところへ引っ越してきた。
 ここの駅前は、急行の停車駅にしてはだいぶ寂しい気がするのだが、ロータリーに面してスーパー、ビデオ屋、書店、マクドナルドなどいちおうの商店は揃っている。そこへ寄る人、家族などを駅を迎えにくる人たちのクルマが、ロータリーの外側、あるいは中央の島=iタクシーの溜まりなどとして広く空いている)に沿って、いつもあちこちに駐車している。多いときで計10数台だろうか。

 もちろん駐車禁止場所である。
 けれどそうした用件での入れ替わり立ち替わりの駐車は、とくに誰の迷惑になるでもなく、普通の市民生活、駅前の普通の営みのように思える。一律駐禁ではなく20分か30分までOKとして然るべき場所だろう。私は常々そう思っていた。

 ところがその日、バスがけたたましくホーンを鳴らしているのだ。
 北のほうの甲州街道からロータリーへ進入してすぐのところで、動けなくなっている。そんなこと、いままでなかったのに、なんで? 
 近寄ってみて、私はぶったまげてしまった。
 まず、違法駐車対策なのだろう、調布警察署と京王バスの名で、鉄のパイプをコンクリートの土台に立てたのが数個、鎖で結ばれて道路へ、いつもより大きく張り出していた。その張り出しの内側には、クルマがラクに置けるスペース、つまりまったく無意味な空間が確保されているのだ。
 でもって、わりと大きめで高級そうな白っぽい乗用車が1台、その張り出しの外側に駐車していた。なんと、張り出しから50センチほども離れて。しかもケツを外側にふって斜めに。
 そのケツがぎりぎりジャマで、バスが通れないのである。 
「ぬわんちゅうアホタレだあっ! こういうアンビリーバブルな止め方をするのは、いわゆるオバサンか?」

 バスの運転手は完全にハラワタ煮えくり返っているらしく、飛び降りて付近を見回し、乗ってはホーンをぐりぐり鳴らす。すぐそばのスーパーでは「お車でご来店のお客様に……」と店内放送。しかし白い高級車の主は現れない。
 やがて、しびれを切らしたバスはバックし、タクシーの溜まりを抜けてバス停へ行ってしまった。
 私は、このアホタレな駐車をしたのは誰か見届けてやろうと、タバコに火をつけた。ヒマだね。
 待つこと数分、別のスーパーのほうから、ビニール袋を提げた小柄な中年のご婦人が現れた。ご婦人は小走りで高級車に乗り、そそくさと去った。
 はあ〜、やっぱオバサンかいな。

 2日後、子どもが熱を出したというので女房殿とともにクルマで医院へ連れて行った帰り、駅前へ寄った。あの白い高級車が止まっていたそばのスーパーへミカンを買いに。以前そのスーパーで買った安いSサイズのがすごくうまかったので。
 そしたら、例の張り出しが2日前よりずっと大きく、コレデモカというくらい道路に出っ張っていた。似たような張り出しが別の場所にもあり、計5台ぶんくらいのスペースが、ムダな空間となっていた。

 しかし、周囲の商店に寄ったり家族などを迎えに来たりという駅前の普通の営みは、前と変わらない。
 どうなったか。いつもはあまり見られない二重駐車が何台も出現した。三重駐車まで1台あった。
 私(軽ワゴン)は、ロータリーを1周半ほどして適当な場所を見つけ、女房殿がミカンを買うのを数分間待った。
 そのとき、こっちへ引っ越してきてから初めて、赤灯をまぶしく回したパトカーが駅前ロータリーに入ってくるのを見た。パトカーはスピーカーでわめいた。
「ここは駐車禁止場所です! 直ちにクルマを移動してください。運転手さんが乗ったクルマから移動してください!」
 私は動かず、「かあ〜、これって典型的だな」と感嘆していた。
 一律禁止の規制があり、しかし人々は良識の範囲でそれを破り、普通の日常が成り立っている。そこにある日、きわめつけのアホウが現れる。すると、アホウが去ったあとで、一律禁止の規制を理由に、常識的な人々を排除しようとする……。

 スピードについても同じようなことがいえる。
 無免許の若者が無謀な速度でカーブへ突っ込み事故ったからと、がらがらの高速道路での何の危険もないわずかなスピード違反をビシビシ取り締まる。バカじゃないのか。このバカぶりは、あのオバサンよりよほど悪質だと私は思うぞ。


『NAVI』(二玄社)1999年3月号より
 

参考記事の目次へ戻る