点数が消えないなら争ってもムダ?
「取り締まりには絶対に納得できないが、不起訴になってもどうせ点数は消えないんだろ。行政処分は受けるしかないんだろ。だったら、刑事手続きで争ってもムダじゃん」
なるほど、お気持ちはわかる。じっさいそういう方が多いよね。だけど、それは3つの点からまちがってると私は思うよ。
(1)処分はどうにもならない?
「どうせ処分は撤回されない」なんて、どこで聞きかじったのか。
@点数は抹消されず、基準どおり処分を執行される。
A点数は抹消されず、しかし軽減された処分を執行される(60日→30日とか)。
B点数は抹消されず、しかし処分は執行されない(処分猶予)。
C点数が抹消され、処分も撤回される。
というふうに、少なくとも4つの決着があるのだ。処分を撤回するための書式もちゃんと用意されている。どういう場合に処分猶予とするか、通達もある。
ただ、現在のところ、多くの場合、警察は@を強行する姿勢をとり、結果として@の決着になることが多い。しかし、制度上いったん累積された点数は消えない(かならず処分は執行される)というのと、そうでないのとでは、本質的にちがう。(2)刑事と行政はべつ
刑事手続きは、刑事処分をどうするか決めるための手続きだ。行政処分をどうこうするための手続きではない。刑事と行政は、目的も手続きもべつなのだ。もちろん無関係ではないけれども、「点数を消すために不起訴を狙う」「不起訴になったら点数を消させる」という、刑事=行政みたいな考え方では、もうまったく話にならない。(3)おいしいカモちゃん
「どうせ点数も処分も……」と、刑事手続きでの争いも捨てる運転者は、違反処理システムにとって、ありがたくてたまらない、おいしいカモちゃんといえるんじゃないかな。ここがいちばん大事なとこと思うので、少し詳しく説明しよう。
シートベルト違反など点数だけの違反を除く取り締まり件数は、毎年800〜900万件。この膨大な数の取り締まりを行えるのは、ズバリ、ほとんどすべての運転者が争わないからだ。処罰を決めるに当たって考慮してほしいことを、処罰をどうするか決める権限のある検察官、裁判官に聞いてもらう、という当たり前のことを、圧倒的多数の運転者がしないからだ。
警察が取り締まりを行った事実のみをもとに、簡単な書類だけで定型的に迅速・簡便に処理してしまえるからこそ、膨大な取り締まりを行えるのである。「ノルマ1件消化」ということが行えるのである。取り締まり(800〜900万件)のほぼ9割は「反則金」で終わっている。残る1割ほどが、刑事手続きの扱いとなっている。法務省の統計によると、02年の全国の検察庁の通常受理人員(大半が警察からの送致)は218万9458人。そのうち40.3%に当たる88万2212人が、交通違反(道路交通法違反と保管場所法違反)となっている。処理の内訳はこうだ。
略式命令請求 公判請求 不起訴
97年 92万7414人 9982人 5万9746人
98年 90万3914人 1万1206人 6万4257人
99年 90万2777人 1万2889人 7万 430人
00年 78万 878人 1万2586人 8万1372人
01年 75万4046人 1万2217人 9万3024人
02年 71万4599人 1万2214人 10万5490人刑事手続きへ進んでも、ほとんどが略式で終わっているのだ。
99年秋ころから続出した警察犯罪・不祥事の報道の影響もあってか、00年から取り締まり件数は大幅に減った。それにあわせ、略式もだいぶ減った。ところが不起訴はどんどん増加。このデータからは、略式に応じずに争う運転者が増えたらしいこと、裁判所が法廷を開いて扱える(=検察官が公判請求できる)のはせいぜい1万2000人台らしいこと、裁判所のキャパシティを超えるものは検察は不起訴にせざるを得ないらしいこと、などがうかがえる。
しかし、だからといってどんどん不起訴にすれば、
「なあーんだ。反則金を払わず略式も蹴れば、少なくともカネはチャラなのか!」
という認識が大きくひろがってしまう。
これ以上は起訴(公判請求)できないし、かといって不起訴も増やしたくない。できるだけ多くの運転者に、なんとかして反則金を払わってもらいたい。あるいは略式に応じてもらいたい……。そこにおいて、
「どうせ点数は消せないなら……。処分はどうにもならないなら……」
と勝手に先を(悪いほうに)読んであきらめてくれる運転者は、ありがたくてたまらないんじゃないかな。そういうことも考えて警察は、「不起訴は関係ない。点数は消さない」と頑強にいうのかもしれない。
「不起訴になってもどうせ点数は消えないんだ。処分は撤回されないんだ。だから(刑事手続きで)争ってもムダなんだよ」
とインターネットなどで宣伝する者がいるとすれば、それは現在のような取り締まりと違反処理システムを維持したい人間だったりして?『ザッカー』2004年12月号より