04/1/3更新   04/10/11更新

不起訴と処分(点数)との関係

 

 以下、FAQ「点数 と行政処分」に補足して、もう少し私の見解を述べます。

 不起訴で終わったのに、警察は処分を強要する……。そういうトラブルが全国で起こっています。
 私はいろんなケースを見てきましたが、「不起訴=処分撤回(または点数抹消。以下同)」という考えだけでいると、簡単に蹴られてしまいやすいようです。
 まずは、5つの考え方というか論点を頭におくべきかと思います。

1、刑事と行政は別

「不起訴になった。免停処分を撤回してくれ」                         
 と言う運転者に対し、警察はまずこう応ずるのが普通です。
刑事と行政は別だ。不起訴うんぬんは刑事処分のことであり、行政処分は刑事とは関係ない
 そして、なおも運転者がネバると、警察はよくこんなことを言います。                            
不起訴の内容が嫌疑不十分なら撤回(抹消)するが、起訴猶予だとダメだ

 刑事と行政は別だと言いながら、同じ口で、行政処分は刑事処分の結果に左右されると言う……。これはまったく矛盾しています。最初に言ったのはウソだったのか!? ウソで追い返そうとしたのか!? というトンでもない話でしょう。
 こういう矛盾を逃がさず、録音するなりして、徹底的に突っ込むべきだろうと思います。

2、起訴猶予=違反は事実

 不起訴には「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などがありますが、交通違反の不起訴の約9割は起訴猶予です。
 起訴猶予は、刑事訴訟法第248条「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」にもとづ きます。
 しかし、容疑は無実だと真っ向から主張して不起訴になるケースも、私の耳に入っている限りでは、その不起訴はすべて起訴猶予です。

 起訴猶予だった運転者に対し、警察はよく言います。
あんたは起訴猶予だからダメなんだよ
 引きさがらない運転者に、警察はさらにこう言うことがあります。
起訴猶予っていうのは、違反は事実ってことなんだよ。だから処分は撤回(点数を抹消)できないんだよ
 
 トンでもない話ではありませんか。
 起訴猶予とはつまり、
「検察官としては嫌疑は十分と思うが、諸処の事情を考慮して、起訴はしない(処罰を求めない)」
 ということにほかなりません。
 「違反は事実」ではないのです。
 検察官が「嫌疑が(十分に)ある」と思っただけ。起訴すれば、裁判官が「その嫌疑には合理的な疑いがある」として無罪になることは当然あり得ます。
 あり得ないなら、裁判など必要ありません。もちろん、誰しもそれぞれの立場で事実認定をすることはできますが、「起訴猶予=違反は事実」は裁判の否定にほかなりません。

3、起訴猶予は有利な処分

 簡裁または地裁の一審で有罪とされても、高裁に控訴、最高裁に上告できます。上級審で無罪とされることも当然あり得ます。科されようとしている不利益な処分に不服がある場合、申し立てられるよう法律手続きが用意されているのです。
 しかし、「起訴猶予」とされた事件について、被疑者が、
「起訴猶予はイヤだ。嫌疑なしにしてくれ」
「無罪を勝ち取りたいので起訴してくれ」
 と申し立てることはできません。
 なぜなら、起訴猶予は被疑者に有利な処分だからです。

 有利な処分ゆえに、ひっくり返すことができない。ひっくり返そうとするための法律手続き自体がない。にもかかわらず、起訴猶予を不利な処分ととらえ、それを理由に不利益な処分(行政処分)を課そうとする、これはトンでもない暴挙というべきで しょう。
 そんなことを言葉にして追い返そう(強引に不利益処分を課そう)とした者は、責任を問われておかしくないのではないでしょうか。

4、点数は「違反」に附される

 交通違反も犯罪です。不起訴は、容疑のまま終わったことを意味します。処分のための書類に書かれた違反名は、容疑名にすぎないのです。
 容疑名に点数をつけて不利益処分の理由にする、なんてことが許されるのか。そういう考え方もできるかと思います。

5、同じ国家機関の判断を無視

 刑事処分(罰金)の目的は、犯罪を犯した者を懲らしめることにあります。そのために刑事訴訟法という専門の法律があるわけです。不起訴とは、その法律にしたがって検察官が「懲らしめるまでもない」としたことを意味します。 起訴猶予は、まさに「懲らしめるまでもない」ということです。
 一方、行政処分は、懲らしめとは別に、「危険性の高い運転者を道路交通の場から排除して交通の安全を守る」という行政目的のための処分です。
 目的が異なるのですから「刑事と行政は別だ」という警察の言い分はわからないではありません。

 しかし、です。犯罪をよく調べて適切に処理するのが専門の検察官(国家機関)が、「懲らしめるまでもない」としたものを、警察が真っ向から無視して不利益処分を課していいの でしょうか。
 真っ向から無視するなら、行政処分は行政処分で、運転者に主張・立証を尽くさせ、警察以外の第三者に公平・公正な判断をさせるべきはず。
 それがメンドウなら、検察官の判断を参考にすべきでしょう。少なくとも、 運転者に主張・立証を尽くさせ、警察以外の第三者に公平・公正な判断をさせることなく、「懲らしめるまでもない」という検察官の判断を真っ向から無視していいはずがありません。

  交渉に当たっては、「不起訴=処分撤回」ではなく、そうしたスジを踏まえることが大事と思います。

 

 1990(平成2)年6月22日の第118国会、参議院の地方行政委員会において、当時の関根謙一・警察庁交通局長はこう答弁しています。

○諫山博君 一つ提言しますけれども、これで大変現場ではもめているわけですよ。自分が争って無罪になった。ところが、減点だけは残っている。一生これがつきまとう。一生かどうか知りませんけれども、とにかくつきまとう。これは幾ら警察に言っても是正してくれないんですよ。そこで、運転者が違反行為を法律上争うという態度が明確になったら、減点という措置は見合わせるべきではないか、違反行為が司法上明らかになるまでは減点の措置はとらない方がいいと思いますけれども、どうですか。

○政府委員(関根謙一君) ただいまの御指摘の事例でございますが、裁判所で無罪となった事例であって、その際の考え方として、その無罪の理由がそのような事実がなかった場合でありますとか事実誤認であったというような場合でありますれば、行政処分をする根拠を欠いておりますので、これは行政処分をする理由は全くないものと考えます。
 しかしながら、例えば先生今お挙げになりました検察官が不起訴とした事例の場合でございますと、いろいろ理由があろうかと思いますが、例えばそういう事実はあったけれども別の理由で不起訴にしたというような場合には、刑事の判断と行政処分の判断との違い、つまり過去の違反行為について責任を問うという形のものと、その人に将来運転をさせることが危険かどうかということの判断との違いがございますので、そのような場合には、将来その方に運転をさせることが危険であるという判断がなされる場合には不起訴であっても行政処分をするということはあろうかと存じます。

  交通局長は、「行政処分は刑事の結果に関係ない」とは答弁していません。
 「
そういう事実はあったけれども別の理由で不起訴にした」とは起訴猶予のことと解されますが、「起訴猶予なら処分する」とも答弁していません。刑事と行政は違うので、行政のほうでは、「将来その方に運転をさせることが危険であるという判断がなされる場合には不起訴であっても行政処分をするということはあろうかと存じます」と答弁しているのです。
 行政が「
刑事の判断」を待つのは、少なくとも違反事実の認定については、刑事手続きが専門だから任せよう、ということでしょう。刑事と行政がまったく別なら、任せず待たず、行政は行政で事実認定をしてさくさく処分を執行すればいいのです。
 しかし、交通局長は、そうは言っていません。「
将来その方に運転をさせることが危険であるという判断」をする、と言っているのです。
 検察官は違反事実を認めても、「
将来その方に運転をさせることが危険である」かどうかについてを「判断」して、そのうえで「行政処分をするということはあろう」と言っているのです。これは、違反事実とは「別の理由」で不起訴(起訴猶予)つまり有利な処分としたからと解されます。

 

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