03/12/04更新   05/3/26更新

「意見の聴取」 

 

道路交通法第104条

  公安委員会は、第百三条第 一項第五号の規定により免許を取り消し、又は免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内においてこれと異なる期間を定めたときは、その期間。次条第一項において同じ。)以上停止しようとするとき、又は同条第 二項(同条第四項において準用する場合を含む。)の処分移送通知書(同条第一項第五号に係るものに限る。)の送付を受けたときは、公開による意見の聴取を行わなければならない。この場合において、公安委員会は、意見の聴取の期日の一週間前までに、当該処分に係る者に対し、処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所を通知し、かつ、意見の聴取の期日及び場所を公示しなければならない。
   意見の聴取に際しては、当該処分に係る者又はその代理人は、当該事案について意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することができる
   意見の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、公安委員会は、道路交通に関する事項に関し専門的知識を有する参考人又は当該事案の関係人の出頭を求め、これらの者からその意見又は事情を聴くことができる。
   公安委員会は、当該処分に係る者又はその代理人が正当な理由がなくて出頭しないとき、又は当該処分に係る者の所在が不明であるため第一項の通知をすることができず、かつ、同項後段の規定による公示をした日から三十日を経過してもその者の所在が判明しないときは、同項の規定にかかわらず、意見の聴取を行わないで第百三条第二項又は第四項の規定による免許の取消し又は効力の停止(同条第二項第二号に係るものに限る。)をすることができる。
   前各項に定めるもののほか、意見の聴取の実施について必要な事項は、政令で定める。

 

●「意見の聴取」とは何か

 90日以上の 免許停止処分および免許取消処分の基準に達した運転者 には、「意見の聴取」の通知がきます。30日と60日の停止処分については「意見の聴取」はありません。

  「あなたはこれこれの処分の基準に達した。『意見の聴取』を行なうが、出席するか?」という旨の通知は、キップを切られた日からおおよそ1カ月くらいで届くのが普通でしょうか。それより若干早い場合も、もっと遅れる場合もあります。

 意見を聴取するのは、都道府県公安委員会(方面公安委員会を含む)の委員、または公安委員会から委任された警察官です。
 公安委員会というのは、警察を民主的に管理することを役目としていますが、報道などにもあるようにすっかり形骸化しており、警察と一体のものというべきです。
 警察が行なった取り締まりにより警察がしようとしている処分の妥当性を、当の警察に委任してしまうという、そのことがまさに証明といえるのではないでしょうか。

 「意見の聴取」は、上掲の第104条1項および103条1項5号によれば、「違反した」者を対象としています。
 そして警察は、警察無謬の原則のもとにあり、「取り締まりは不適切だったかも」という考え方はしません。
 したがって、公安委員会(=警察)は、「違反した」かどうかについて運転者に争いがある場合でも、 警察官が取り締まりを行なったこと(それなりの書類が警察によりつくられたこと)だけをもとに、「違反した」者と見なし、「意見の聴取」の通知を出します。

 「意見の聴取」に 出頭すると、意見を聴取され、その日のうちに処分が執行されるのが普通です。
 処分の執行は、処分書(または処分通知書)を交付することで為されます。
 処分対象者が出頭しない場合、主張すべき意見はなかったものとして、点数の基準どおりの処分の対象とされるのが普通です。 まれに、かどうかよくわかりませんが、出頭しなくても90日免停が60日免停に軽減されることもあるようです。
 「意見の聴取」に出頭しない場合、処分は後日執行される(処分書等は後日交付される)ことになります。

 「意見の聴取」は事実上、「お上はお目こぼしをすることもある。民はお慈悲を乞いなさい」という場であるといえます。実際、「取り締まりに対する文句を言う場ではない」「違反事実の有無をあれこれ言う場ではない」などと最初に釘をさされることもあります。
 法律上、「意見の聴取」は、しかるべき手続きにより「違反した」と認定された者に対して行なうわけですから、つまり情状を酌量するかどうか決めるための手続きなわけですから、それは本来は当たり前のことではあるのですが。

※ 参考記事「運転免許の行政処分とは

 

●指定日に出頭できない場合

 「道路交通法の規定に基づく意見の聴取及び弁明の機会の付与に関する規則」(平成6年9月26日 国家公安委員会規則第27号)というのがあり、その第8条はこうなっています。

 行政庁は、当事者又はその代理人の申出により又は職権で、意見の聴取の期日又は場所を変更することができる。
 前項の申出は、意見の聴取の期日又は場所の変更を求めるやむを得ない理由を記載した書面を行政庁に提出することにより行うものとする。
 行政庁は、第1項の規定により意見の聴取の期日又は場所を変更したときは、速やかに、その旨を書面により当事者又はその代理人に通知する とともに、公示しなければならない。
 前項の規定による公示は、第39条第2項の掲示板に提示して行うものとする。

 これは、いちおうそう規定されているということです。やむを得ない理由さえあれば自動的に延期されるだろうとか、やむを得なさそうな理由をコネればOKだろうとか、のんびり構えていくると、ハネつけられることもありますよ。

 

●具体的な進行

 具体的な進行は、おおざっぱにいえば次のようになります。
 30人くらいとか、部屋に集められます。始まる前に、または部屋に入る前に、免許証の提出を求められます。提出すると保管されます。
 正面に聴聞官(警察官。ときに公安委員)がいて、そばに進行役の警察官がいて始まります。
 進行役が、運転者を1人ずつ、聴聞官の前に呼びます。そして、処分の理由となった、いわば罪状を読み上げます。
 続いて聴聞官が運転者に、本件処分についてなにか言いたいことはないか尋ねます。
 言いたいことがある人は言い、嘆願書など提出したいものがあれば提出します。表彰状などを出す人もいます。
 1人につき数分で終わり、次々と同じことがくり返されます。
 全員の意見を聴取すると、聴聞官と進行役は退室。
 間もなく進行役が戻ってきて、各自に処分通知書を交付します。
 「意見の聴取」により、処分が軽減されることはあります。
 軽減はもっぱらワンランクダウン。免取りなら180免停に軽減、90日免停なら60日に、が普通です。

 免許証は、停止処分の場合は、停止期間が終わったとき戻ることになります。取消処分の場合の免許証の扱いは私は知りません。
 ご自分を処分の対象にする(だから「意見の聴取」の呼出をする)こと自体がおかしいじゃないか、と交渉に行く人は、最初に免許証を提出しない(そもそも持参しない)ほうがよいかもしれません。

 

●違法な「意見の聴取」

 「意見の聴取」は、かつて「聴聞」と呼ばれていました。
 1974年(昭和49年)12月11日、浦和地裁で、次ような判決が出ています。

 聴聞を主催した公安委員において事案に対する十分な理解を欠くまま聴聞が実施されるときは、その聴聞は、法の期待する聴聞たる実質を有しないといってよいから、違法であることを免れない 。

 運転免許の取消処分をするにあたって、道路交通法が公開による聴聞を経ることを要件とし、かつ、その聴聞において被処分者に意見を述べ、有利な証拠を提出する機会を保障したのは、公開による聴聞を行うことにより取消処分の基礎となる事実やこれを前提とした法律適用について、被処分者に十分意見を述べさせ、立証を尽くさせることによって、公安委員会の事実認定およびそれを前提とした法律適用に恣意、独断の疑いが入らないようにし、もって、取消処分の適正さを確保するためであることは、原告の主張するとおりである。

 ところが、運転免許の取消処分をするにあたって行う聴聞においては、その手続構造上、処分を求める者と処分をする者とが分離されていないため、聴聞の実施方法いかんによっては、公安委員がいかなる証拠にもとづいて事実を認定しようとしているのか、また、その事実認定を前提としてどのような法律適用をするのか、被処分者にとって必ずしも明らかでなく、その結果、被処分者が意見を述べ、有利な証拠を提出しようとしても、実質的にみてこれを有利適切になしえない事態が起こりうることは、先に述べた方が公開による聴聞を経ることを要件とし、かつ、その聴聞において被処分者に意見を述べ、有利な証拠を提出する機会を保障した趣旨に照らして、望ましいことではなく、とりわけ、当該取消処分の結果に影響を与える可能性のある事項のなかに、事実認定上微妙なものが含まれているため、あるいは、法律適用上見解の対立の予想されたものがあるため、被処分者に十分な主張、立証を尽くさせることが事実認定やそれを前提とする法律適用に適正さを期するうえで重要であると認められる場合に、被処分者において当該取消処分を争う意思を有しているにもかかわらず、有効適切に意見を述べ、有利な証拠を提出することができないとするならば、法がこれを保障した趣旨は、甚だしく損なわれるといわなければならない……。

 要するに、容疑は事実と認定できる証拠を被処分者にちゃんと示し、それをもとに、被処分者に反論・主張・立証を尽くさせる、そういう「意見の聴取」を経ないとダメだよ、ということです。
 ところが、現実の「意見の聴取」はぜんぜんそんなものではなく、「あんたの言うことは聴かない」なんて暴言が出ることもあるようです。「意見の聴取」の様子をしっかり録音しておくと、あとで争う(または交渉する)とき、有利な材料になるかもしれません。

 

●処分軽減の理由

 何が軽減の要素になるか。それは、

違反行為自体に情状酌量の余地があること、
運転者の反省ぶり、
素直に刑事処分を受けている(これから間違いなく受ける)こと、
会社や家庭などで処分や叱責をしっかり受けていること、
処分による生活への影響(その人にとっての免許の必要性)、
運転者の周囲の人たちの監督が期待できること、

 などだろうと思われます。
 あと、警察や消防などからの感謝状なども効果があるようで、警察からの感謝状や表彰状があると、必ず、最低でもワンランクダウン、ただし裏にハンコが押され、二度は使えなくなる、という話はよく聞 かれます。

 感謝状等以外のものはすべて、口の達者なヤツがウソで言うこともできるものばかりです。
 口で言うのは、主張、説明、です。それらを裏付けるもの、立証するものがあるかないか、ない場合はどれほど信憑性があるのか、そうしたことが大事になってくるでしょう。

 どういう案件を軽減するか、きょうは何件軽減するかといった内部的な取り決めがある場合もあるように思われます。
 軽減されておかしくない人が軽減されなかったり、「なぜ?」と運転者自身も驚く形であっさり軽減されてしまうことも現実にはあります。

 『点数制度の実務』(啓正社)に、「免許の停止等に関する軽減基準」という項があります。警察のほうではタテマエとしては以下のように考えているようです。

点数制度においては、違反行為に係る累積点数の多寡によって、その行為者の危険性の度合を定型的、画一的に評価推認することとされているため、行為者の人格的態度その他について特段の事情がある場合は、行為者の危険性を定型的に評価推認することがかえって実情にそぐわない場合があり得ると考えられる。
 そこで、特段の事情がある者については、社会的に相当と認められる範囲内で処分を軽減することが、むしろその行為者の危険性の改善に効果が あると思われ……


 そして、「
処分を軽減することが、行為者の危険性の改善に効果があると認められるときは」、免停を30日軽減できることとされており、「その者の運転者としての危険性がより低いと評価すべき特段の事情があって、明らかにその者の危険性の改善が期待できる場合は」免停を60日軽減することができるとされている、とあります。

もちろん、処分の軽減事由に該当するからといって、処分を軽減しなければならないというものではなく、要は、その行為者の主観的・客観的事情を総合的に判断して、処分軽減の是非を決定することが必要であろう
 ともあります。
 また、こうも書かれています。
点数制度に関する処分基準については、誰でも容易に理解できる内容のものとなっており、そのため被処分者は、同一点数の他人が受けた処分と比較することによって、処分の不均衡を了知することができるのである。それだけに、処分の軽減は、誰にでも相当な措置として理解され、納得されるものでなければならない
処分を軽減するに当たっては、同一の条件にある者に対して不公平な取扱いにならないよう、慎重にその内容を検討するとともに、処分を軽減した事案については、これを分類整理しておき、これらの先例を参考にしながら、公平な取扱いができるようにすることが必要である

 こういうなかで、何をどう述べるか、何を提出するか、よくお考えください。
 無責任な悪質運転者にはハンドルを握らせるな! との声が交通事故の被害者、遺族の方々の間にあることも、忘れないほうが良いでしょう。

 

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