2008/7/23up

 

オービスの誤測定とどう闘えばいいか?

オービスに撮影され、うわぁ、この程度のオーバーでも捕まるのかと、あきらめて出頭したら、ビックリ。まるで身に覚えのないスピードだった。それで、無実だ!と言い続けてたら起訴された。裁判はどう闘えばいい?

 そういうお尋ねを、けっこういただく。
 オービスが設置される道路は交通量が多い。首都高速の都心環状線なんか1日およそ5万台だという。1年間なら約1800万台。ところが、オービスの測定値が正しいかチェックする定期点検 (通過車両のスピードを別の測定装置でも測定して、オービスの測定値と比較する検査)は、多くて年2回。1回当たり多くて100台にすぎない。しかも、肝心要の証拠=写真に焼きつけられた測定値、こいつをチェックしないってんだから話にならない。オービスはときに“自動冤罪製造装置”でもあるようだ。

 私はオービス裁判を180件ほど傍聴してきた。裁判記録もずいぶん読んできた。そこから、「少なくともこれだけは頭にに入れといてほしい」ということをお伝えしたい。
 なお、ネズミ捕りは、オービスと違って、人為的な要素が関係してくる。たとえば、測定機の設置ミス、操作ミス、他車との取り違えなどだ。が、測定機自体の信頼性については、オービスと同じことがいえる。なので、以下は、ネズミ捕りの場合についても参考になる場合 があるだろう。

 さて、オービス裁判で測定値を否認する被告人は、ほとんど全員、こんなふうに主張する。
隣の車線を他車が追い越していった。その車か、トラックの違法無線の電磁波か、多重反射か、何かが測定に影響したんだろう
 でもね、その考え方では絶対に勝てない。
 オービスは、たとえば130キロと測定したら、違反者が少し先の撮影位置(小さな白線がある)へ130キロで差しかかる時間を計算し、ちょうど差しかかったとき、赤いストロボを光らせて撮影する。その機能が正しく働けば、本当の速度が100キロの場合、白線の少し手前で撮影されることになる。オービスのメーカー社員は、ヘラヘラ笑って法廷で証言するよ。
本件の写真を見ますと、違反車はおおよそ白線のところで撮影されてます。写真自体から、測定は正しかったことがわかります
 そうして裁判官は、必ずこう判決する。
被告人側があれこれ指摘するのは、一般論、抽象的な可能性にすぎない。その可能性による誤測定が本件測定時に起こったと認めるに足る証拠はない
 決まり切ったパターンなのだ。

 そんなオービス裁判をどう闘えばいいのか。
 まず、「身に覚えのない測定値があるってことは、誤った測定が行われた(測定が誤った)んだろう」という考え方を捨てることが肝要と思う。
 たとえばレーダ式のオービスの測定記録写真は、簡単に言うと、次のような手順で作成される。
1、アンテナから電波を常時発射
2、車両に当たって反射してきたと思われる反射波を受け、発射時との波長の差から速度を演算

 「誤測定」を言う人は、受けた反射波に問題があったんだろう(たとえば、戻ってくるまでに多重反射などが起こったんだろう)と考える。そこをもとに、あれこれ「可能性」を指摘する。
 私としては、ここまでの段階で大事なのは、その演算値は時速何キロで、いつ発射された何ヘルツの電波と、いつ受信された何ヘルツの電波 をもとに演算したのか、オービスは一切の記録を残さないこと、そのこと自体であると考える。
 「測定」は、さらに続く。
3、その演算値を若干マイナスし、端数を切り捨て、測定値とする
4、測定値をデータ部に表示させた状態で、違反車を撮影する

 2までが正しく作動したとしても、3の段階で計算を誤ったら? データ部に表示させるための信号が誤って送信されたら? データ部が誤って受け取ったら?
 そう。「誤測定」と「誤表示」は別問題なのである。「誤測定」が起こらなくても「誤表示」が起これば、「身に覚えのないスピードで捕まる」ということが起こるのである。

 オービスは、装置の作動、および、違反車のスピードについて、写真に焼き付けられた測定値(とされる記号ないし模様)だけしか残さない。他のものを一切記録しない。
 それでもオービスは信頼できる、絶対に間違いがない、といえる根拠は何なのか。

 刑事裁判の立証責任は検察官にある。
 オービス裁判における検察官の立証はいつも、オービスのメーカー(営利企業)が作成した書類と社員の証言だけだ。客観的な裏付けデータは一切ない。たとえて言えば、 ある国で製造された食品に禁止された農薬が入っているかどうか、ある国のメーカーの言い分だけに頼るようなものだ。ここが最も重要と私は思う。
被告人側には、当時の実際の速度を立証する方法がない。それは当然のことであり、それを有罪の理由にされてはたまらない
 と、まず確認し、さらに、
被告人が刑罰を逃れたくてウソをつく可能性があるのと同様、営利企業であるメーカーも自社の利益のためにウソをつく可能性がある。ことさらにウソをつかないまでも、自社製品の優秀性を 過信、妄信していることも十分にあり得る
 と確認したうえで、他の車両や電磁波の影響などよけいないことは言わず、
そもそも立証責任は検察官にある。検察官は、メーカーが言うとおりの性能がいつも必ず発揮され、本件測定においても間違いなく発揮されたことの、裏付けデータを出せ。それを専門の学者に鑑定してもらいましょ
 との立場をしっかりとる。それがベストと私は考える。
 そういうふうなやり方で、いったんは勝ったのが、秋田のオービス事件だ。
メーカーが『最先端技術を活用した優れた装置』だといくら言っても、客観的な裏付けデータもなく信用することはできない
 と仙台高裁秋田支部は、運転者の側を勝たせたのである。

 だが、そんな判決が確定しては全国に600基以上あるオービスは鉄くずになってしまう。検察官は最高裁へ上告し、2008年1月、裏付けデータはとうとう出ないまま(じつはない のだろう)逆転有罪となった。
 しかし、いったんは勝ったことの意味は大きい。他にも、裏付けデータがないことを理由に無罪とする裁判官はいるだろう。希望を持って、スジの良い闘いを重ねていくべきと私は思う。

 

2008年3月末発売の『ザッカー』に書いた記事に加筆。

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