03/8/20up  04/10/11更新  06/7/22更新

駐禁レッカー料金 どうする?

 

 ●駐禁レッカーの法的根拠

 放置駐車違反の車をレッカー移動するときの根拠は、道路交通法51条3項にある(06年5月末までは6項)。

「警察官等は、道路における危険を防止し、その他交通の円滑を図るため必要な限度において、当該車両の駐車の方法を変更し、又は当該車両を移動することができる 」

 要するに、交通の安全(危険防止)と円滑のため、その車にどうしても移動してもらわないといけないが、「当該車両の運転者その他当該車両の管理について責任がある者」(同条1〜3項)が移動しない(できない)ので、警察がかわりに移動する、移動費用は「実費を勘案して」(同条15項)、「運転者等又は使用者若しくは所有者」に負担させる(同条14項)、それが駐禁レッカー移動なのだ。

●ところが現実は…

 ところが現実には、一刻も早くレッカー移動してもらいたい迷惑車両が移動されるシーンはあまり見かけない。かわりに、
「べつにだれの迷惑にもなっていないのに」
「これ1台を移動したって意味ないのに」
 というクルマがじゃんじゃんレッカー移動されている。

 しかも、06年5月末までは、チョークで印をつけて一定時間待ってからレッカー移動していたが、06年6月1日からは、取締り(確認標章の取り付け)と同じく直ちに行うようになったようだ。
 具体的には、放置車両(運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態の違法駐車)を発見すると、直ちに確認標章を取付け、それが終わると同時にレッカー移動してしまう、という形だ。

 ●違法な権限行使?

 警察関係者の虎の巻でもある『執務資料道路交通法解説』(東京法令出版)は、「必要な限度」についてこう説明している。

「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要最小限度において、という意味であり、いわゆる警察比例の原則によるべきことを明らかにしたものである。この警察比例の原則に反する駐車方法の変更や車両の移動をすれば違法な権限行使となる…」

「連続駐車しているうちの1台が逆駐車をしているとき、その車両に対して本項の規定により移動措置をとることができるかとの質問があるが、右逆駐車の自動車1台を移動したとしても、他の交通になんら影響もないので、『必要な限度』を超えたものとの疑いがあるので移動措置をとるべきではないと考える」

 「警察比例の原則」のことは『法律用語辞典』(有斐閣)がこう解説している。

「行政法学上の警察権の行使について、その対象となる社会公共の障害の大きさに比例しなければならず、その障害を除去するために必要最小限度にとどまらなくてはならないとする原則。現行憲法の下では、警察権に限らず、国民の権利、自由を侵害するすべての行政活動にあてはまるものと考えられている」

 したがって、 
「べつにだれの迷惑にもなっていないのに」
「これ1台を移動したって意味ないのに」
 というレッカー移動は、道交法第51条第3項の規定に違反し、「違法な権限行使」に当たると解される。

●レッカー移動されたら?

 レッカー移動された車を取りに行くのは、違反者である必要はない。
 というか、法律は「違反者が出頭せよ」とは定めていない。

「警察署長は、前項の規定により車両を保管したときは、当該車両の使用者に対し、保管を始めた日時及び保管の場所並びに当該車両を速やかに引き取るべき旨を告知しなければならない」(同条7項)

 「使用者」とは、車検証の使用者の欄に氏名がある者だ。車検証には使用者の欄と所有者の欄とがあり、通常は同一人の氏名が記載されている。ローンの返済が終わっていない場合、所有者の欄はローン会社だったりする。
 法律では、レッカー移動された車を引き取るのは「使用者」なのである。

 では、自分の車を自分で違法駐車してレッカー移動された人が、自分で車を引き取りに警察へ出頭すると、どうなるか。
 その場合、普通は、「あなたが違反したのですね?」と確認されるだろうと思われる。「そうだけど…」とか答えれば、違反者と認められた違反キップを切られ、反則金の納付書を交付されることになるだろう。

「私はその車の使用者なので、引き取りにきた。誰が違反したか、お答えする必要はない。私が使用者であることは、車検証と私の免許証を照合すればわかる」
 と応じた場合、警察官は何とか違反キップを切ろうと(実績にしようと)しつこく突っ込んでくるかどうか、そこはわからない。

 確認標章の取付けとレッカー移動だけで十分に実績になるのか、あるいは、確認標章標章の取付けだけでは取締りの実績にならず、どうしても違反キップを切りたいか、によるだろう。
 また、出頭した者の人物を警察官がどう見るか、警察官の都合やキャラクターはどうか、といったことも関係してくるだろう。そういうことが関係してくるのは、人間対人間のやり取りである以上、自然なことだ。

●レッカー料金がないときは?

 違反キップを切られるかどうかはともかく、レッカー移動された車を引き取りに警察へ出頭すると、必ず、警察官または交通安全協会の職員から、レッカー料金(および保管料)の支払いを求められる。

 レッカー料金の額は、都道府県によって異なる。東京都は1万4000円だ。
 保管料とは、レッカー移動した車を民間の駐車場(警察と契約している駐車場)に保管していた場合の、駐車料金だ。
 両方あわせて「負担金」(同条15項)というのだが、本稿ではとりあえず「レッカー料金」と呼んでおく。

 これに対し、
「払いたくない」
「持ち合わせがなくて払えない」
 と言ったら、どうなるか。

「カネを払わないと車は返せない」
 と言われることがよくある。そう言われるのが普通だろうと思われる。
 そのセリフを真に受け、財布は車の中にあるため困り果て、知人宅へわざわざ行ってカネを借りた、という女性もいる。

 だが、レッカー料金を払わなければ車は返還しない、という規定などどこにもない。警察官または安協職員のセリフは、じつは真っ赤なウソなのである。当日料金を払わない人には、後日払うよう、郵便振替用紙などが渡される。

 真っ赤なウソを言ってまでレッカー料金を取ろうとするのは、なぜか。
 それは、人間は警察署や交番の中(つまり警察の砦)の中では気圧されて言いなりになってしまいやすいが、いったん外へ出てしまうと、払わずにずるずるしてしまったり、「あんなレッカー移動でカネを払えるか!」と不服申立をしたり、要するにカネの徴収がスムーズにいかなくなるおそれが高いから、ということではないかと思われる。

●あくまで払わない場合

 レッカー移動され、出頭して車の返還を受けるとき料金を払わず、後日の振込みもせずにいると、督促状が送られてくる。
 同条第16項が、こう定めている。

「警察署長は、前項の規定により納付を命ぜられた者が納付の期限を経過しても負担金を納付しないときは、督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならない。この場合において、警察署長は、負担金につき年14.5パーセントの割合により計算した額の範囲内の延滞金及び督促に要した手数料を徴収することができる」

 その督促も無視すると、どうなるのか。
 同条17項は、

「…地方税の滞納処分の例により、負担金等を徴収することができる。この場合における負担金等の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする」

 と規定している。つまり差押えができるわけだ。

  差押えには、手間がかかる。レッカー料金を滞納しているという話はよく聞くが、実際に差押えを食らったという話は、私は1件だけでしか聞いたことがない。その件は、銀行預金からの“自動引落し”だったそうだ。

●どうしても納得いかない場合

 レッカー料金を払っても払わなくても、「行政不服審査法」にもとづく「不服申立」(「異議申立」または「審査請求」)ができる。
 そのあたりは、拙著『なんでこれが交通違反なの!?』に詳しく書いた。小見出しでいうと、Q052「レッカー料金に対する『審査請求』とは? どんな手続きをするのか?」と、Q053「レッカー料金の不服申し立てに対してどんな裁決がくだされているのか?」と、Q054「反則金を払ってしまうとレッカー代も払わなければならない?」などだ。

 

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