●「不服申立」はちゃんとした法律手続き
レッカー移動をされて署や交番へクルマを取りに行くと、レッカー料金について「納入通知書兼領収証書」が渡されます。
また、免許停止などの行政処分は、「処分書」「処分通知書」を交付することで執行されます。
その書類に、「この処分に不服があれば60日以内に不服申立ができる」旨教示されています。
ここでいう「不服申立」とは、「行政不服審査法」(1962年10月1日施行)に定められた法律手続きです。
法律手続きなどというと何だかややこしそうですが、じつは非常に簡単です。●行政不服審査法の趣旨
同法の第1条に、「この法律の趣旨」が明記されています。
@この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。
A行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。●審査請求と異議申立
不服申立は、2種類あります。
行政庁の処分(または不作為。つまりすべきことをしなかったこと)について、その処分庁の上級庁に対してするのが「審査請求」です。
そして、処分をしたその処分庁に対してするのが「異議申立」です。
レッカー移動も2種類あります。
カネの徴収などを警察が仕切る警察ルート≠ニ、都道府県の交通安全協会(以下「安協」)が仕切る安協ルート≠ナす。
警察ルート≠フ場合、都道府県知事が審査庁で、不服申立は「異議申立」となり、安協ルート≠フ場合、都道府県の公安委員会が審査庁で、不服申立は「審査請求」 となるようです。
が、そういうことは気にせず「不服申立」とだけしても、当局のほうで「異議申立」なり「審査請求」なりとして扱います。●不服申立の方法
不服申立の書面を、正本と副本の2通つくり、公安委員会なら公安委員会に出します。
郵送でも持参でもかまいません。
公安委員会の住所は、警察に電話して聞けばわかります。そこの警察本部と同じ住所のはずです。●不服申立書のつくりかた
不服申立書に何を記載すべきかは、同法第15条(審査請求書の記載事項)にあります。異議申立は「異議申立人」「異議申立に係る処分」というふうになりますが、ほかは同じでかまいません。
1、審査請求人の氏名及び年齢又は名称並びに住所
2、審査請求に係る処分
※レッカー料金を払えと告知されたこと、または徴収されたこと
3、審査請求に係る処分があったことを知った年月日
4、審査請求の趣旨及び内容
5、処分庁の教示の有無及びその内容
6、審査請求の年月日●料金
無料です。
ただし、申立書を郵送する場合の郵送費は自分持ちです。
普通郵便でもかまいません。まあ、せっかくですから簡易書留くらいにしておくのも良いでしょうか。
「裁決書」は配達証明便(800円)で郵送されてきますが、その費用を負担させられることはありません。●弁明書と反論書
申立からしばらくして、警察の「弁明書」が郵送されてくることがあります。
これに対し申立人は、反論があれば「反論書」を提出(郵送)することができます。
「弁明書」が郵送されてくるまでに、2年ほどかかったケースもあります。そのケースは、しかし「反論書」の提出期限は30日以内と されました。不公平ではないかと思うのですが…。●口頭で意見を述べる機会
同法第25条は、審査請求の審理は書面によるが、申立人が希望すれば口頭で意見を述べる機会を与えなければならない、と規定 しています。
これは手間がかかりますから、審査庁(実際には警察)はメンドウでしょう。しかし申立人が希望すればその機会を与えなければならないのです。ヒマのある人は、この口述の機会を求め、いったいどんな人物が審理しているのか、雰囲気を味わ ってみるのも良いでしょう。
●裁決は棄却
公安委員会は、警察の暴走を抑えて民主的な運営をはかるため戦後設けられた組織なのですが、1999年秋頃から警察犯罪・不祥事報道が洪水のようにあふれたときさんざん指摘されたように、すっかり形骸化しています。
この「不服申立」も、実際に審査を行うのは警察のようで、裁決は必ず「棄却」となります(申立が60日を過ぎていたとか法律上の不備がある場合は「却下」 つまり門前払いとされます)。
「公安委員はハンコを押すだけで、個別の事例については知らんでしょ」
と、私は現職の警察官から聞いたことがあります。●申立を行うことに意義がある
「どーせ棄却なら、やってもムダじゃん」という方もおいででしょう。
しかし、「不服があれば60日以内に申し立てられる」と明記されているのにそれをしなければ、
「当日はごちゃごちゃ文句を言ってたようだが、ちゃんと胸を張って申立てられるほどの不服じゃなかったんだな。レッカー移動は適切・妥当だったんだな」
と警察および安協に言わせることになります。
国会議員が問題にしようとしても、
「先生、統計をご覧ください。不服申立をする運転者はほとんどいません。国民は不服を持っていないのです。それは、レッカー移動が適切・妥当に行われていることの証左でございます」
と言われてしまうことになるでしょう。実際、不服申立の手続きを利用する人は、きわめてわずかです。
そのことが、不適切なレッカー移動や免許停止処分などが当然のように行われることの、大きな背景となっているのではないでしょうか。昔、「オリンピックは参加することに意義がある」と言われました。それと同じで、この不服申立もヤルことに意義があるの だろう、と私は思います。
裁決書を見て「おう、こんなバカげた屁理屈で棄却したかいな。わはは」と笑う、不服申立の制度がいかに形骸化しているかしみじみ実感する、そういうことで良いんじゃないでしょうか。
ただ、気持ち良く笑いたければ、「審査請求の内容」はそれなりにきちんと書くべきでしょう。そしてその前に、危険で迷惑な場所には路上駐車しないことが大事でしょう。
迷惑な駐車をして面白半分に不服申立をしたのでは、
「警察のやることはいつも正しいから、不服申立などするのは、面白半分のバカなヤツだけだ。不服申立できないよう、法律を改正してしまえ」
なんて警察に言わせることになってしまいますから。