02/5/27up 08/1/29更新

 

(3)検察庁

 

●検察官とは

 検察官とは、警察が捜査・検挙して送検してきた事件について、もう一度よく調べ、起訴すべきかどうか判断する人(“1人1庁”の国家機関)です。
 
ここでいう「起訴」とは、「こいつをこの罪で処罰したいので公判(法廷での審理)をやってくれ」と、検察官が裁判所に対し求めることです。正しくは「
公判請求」といいます。

 検察官はまた、起訴すると決めた場合は、しっかり有罪にできるよう準備する人でもあります。準備しながら起訴するかどうか考える、ということもあるでしょう。

 つまり、あなたが「オレは裁判官の前で言いたいことがある」と言っても、あるいは警察のほうが「こいつを法廷へ引きずり出してやりたい」と言っても、裁判は開かれないわけです。
 
検察官が「この者を起訴する」と決定しない限り、裁判は開かれないのです。

 まあ、何事にも裏ワザはあって、運転者の側には正式裁判を強引に開かせる手があります。
 不服を隠してわざと略式手続きに応じ、罰金の支払い命令を受けてから14日以内に「不服だ。法廷を開いて正式にやり直してくれ」と言い出す方法です。この請求を裁判所は断ることができません。
 ただし、無罪や罰金の減額になることは、よほど希有な事情でもないかぎり期待できないでしょう。

 検察庁への出頭も任意ですし、黙秘権もあります。ですから、出頭を断ることもできますし(しかし現実には逮捕されることもあります)、出頭して何も言わないこともできます(しかし現実には一切何も言わずに通すのは難しいでしょう)。そのあたり、FAQ「黙秘権」をご覧ください。以下の説明は、自分の主張を述べるやり方についてです。

 

●主張とは

 「主張する」といえば、相手に対し口頭で説明することを想像しますよね。
 でも、こういう手続きでは、
口頭での主張にはあまり意味がありません取り締まりの現場で警察官に1時間たっぷり文句を言っても、反則金を払えば、あるいは略式に応じて罰金を払えば、 「なんかグズグズ言うておったようだが、よく考えたら不服はなかったんだな。取り締まりは正しかったと認めたんだな 」となってしまうわけです。

 たとえば、制限50キロのところをメーター読み65キロ(15キロ超過)で走っていて、そこをどういうわけか30キロ超過で捕まったとしましょう。
「たしかに少し違反はしてたけど、俺は80キロなんて出してない!」
 とさんざん説明して、警察官もニコニコうなづいて聞いてくれても、
「私は違反していました」
 とだけ調書に書かれ、そこにサインしたら、どうなります? 30キロ超過の容疑で取り締まりを受けた場合に「違反した」といえば、15キロ超過ではなく30キロ超過を認めたこと になるのです。

 「不服を主張する」とは、しゃべりまくってすっきりすることではないのです。
 反則金を払わないという選択、略式に応じないという選択、そして、自分のサインのある書類(調書や陳述書等)に書かれた内容、それが「主張」になるのです。そこんとこ、ご注意ください。

 

●主張は自分で書面に

 しかし警察官、検察官は、取り締まり側に不都合なことは調書にはなかなか書かないのが普通といえます。
 また、運転者は「ふむふむ。だいたいこれでいいだろう」と思っても、じつは巧妙に運転者に不利になっている場合もあります。

 となると、どうすればいいのでしょう。
 私は、自分の言いたいことは自分で書面にまとめ、それを提出し、調書には「詳細は本日持参の書面のとおりである」旨、書かせる、それが理想的だろうと考えます。その書面には、現場のようすがよくわかる
写真などをつけておくこともできますね。

 検察庁から呼び出しが来て、しかしどうにも忙しかったので、電話で事情を説明してその書面をまず郵送し、こちらの主張の内容をわかってもらってから、別途日時を決めて出頭した、という人もいます。
 書面を郵送することで、遠隔地の検察庁へ出頭しないまま不起訴になった人もいます。

 

●安全運転者かどうか

 その書面をつくる際は、違反容疑がどうこうばかりでなく、自分が安全運転者であることを(もし本当にそうなら)、しっかり説明しておくことが大切かと思います。
 なぜなら、「いつ事故を起こすか知れない暴走運転者がまた捕まり、不服を主張し、これからも平気で暴走するだろう」というのと、「長く無事故無違反の人が、たまたま捕まった。今後も自信を持って安全運転を続けていくためにも、安易にカネで片づけることはしたくない」というのとでは、どえらい違いだろうからです。

 それから、相手(警察官や検察官)をその場で論破しようと焦ってはいけないと思います。
 彼らはいろんなことを言ってきますが、そのなかには、ウソや脅しがしばしば含まれています。
 「げっ、マジ?」ということがあっても、あわてず、たとえば、「ああ、そうなんですか。それは知りませんでした。わかりました。よく考えてまた出直してきます」というふうに、
落ち着いて応じることが大切かと思います。

 

●「不起訴」とは

 被疑者が略式に応じない場合、検察官は、警察からの報告書等、被疑者の供述(または書面)などを調べて、起訴するか、不起訴とするか、どっちか決めます。
 
不起訴とは、裁判にかけずに事件を終わらせるという、検察官による処分です。

 裁判が開かれなければ、無罪も有罪も罰金も前科も関係ありません。反則金は、すでに納付期限がすぎています。反則金を払わずに刑事手続きへすすみ、不起訴という結果にたどり着いたのです。

 無罪とは違うため、少々すっきりしないかもしれませんが、これは被疑者に対する有利な処分です。
 有利な処分ですから「不起訴をひっくり返して起訴してくれ」と求める手続きは保障されていません。

 不起訴の理由として、「嫌疑不十分」「嫌疑なし」などがあります。「嫌疑不十分」とは、起訴して有罪に持ち込むのは苦しいというケースです。
 「起訴猶予」という不起訴もあります。
 これは、嫌疑はあるけれども、諸処の事情から、わざわざ裁判にかけて処罰するまでもない、というケースです。
「違反は事実としても、こんなの取り締まるのはおかしい」という主張は、「起訴猶予」という形で認められる(ことがある)ようになっているわけですね。交通違反の不起訴の約96%はこの起訴猶予です(2006年)。

 起訴猶予は、ウヤムヤや握りつぶしとはちがいます。法律に定められた正式な処分です。根拠法は刑事訴訟法第248条です。
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる

 

●不起訴の可能性

 統計によれば、略式で終わらなかった人は、かなり高い確率で不起訴となることがうかがえます。

 統計というのは『検察統計年報』(非売品)のこと。それによると、たとえば2006年は、交通違反で正式な裁判のほうに起訴されたのは9787人、不起訴は15万5026人です。

 しかも、起訴される人のなかには、酒気帯びや無免許運転など悪質な違反の常習者がたくさん含まれています。というか、交通違反の裁判を傍聴してみるとわかるとおり、起訴されるのは、ほとんどがそういう悪質な事件です。
 その人たちは、本人が略式を望んでも、「いや、あんたは略式で何度も罰金を払ってきてるだろ」「こんな重い容疑は、略式ではダメだ」と公判請求され 、懲役刑を求刑されるのです。
 『司法統計年報 刑事編』も参照すると、
軽微な (つまり元が反則行為の)交通違反が起訴されることは、きわめてマレなようです

 ただし、悪質とは到底いえなくても、起訴される可能性はゼロではありません。ごくマレにですが、きわめてちっぽけな違反容疑で起訴される人もいます。
 そして、容疑となった違反が重いと、「ごくマレ」というわけにはいきません。容疑が重くなるにつれ、起訴される可能性は少しずつ高くなる、そう考えることができるでしょうか。
 容疑の重さ軽さだけで決まるわけではありません。ほかに、違反歴や主張の内容や人柄、担当検察官の都合・性格などいろんなものが関係してくるようです。そのあたりの私の見解については『交通違反・裁判まるわかり』(小学館文庫)にわりと詳しく書きました。

 

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