03/12/23更新  05/8/16更新 05/10/15更新

カネがない 罰金なんとかならない?

 

 「反則金」の金額は道路交通法施行令の別表第三で定められています。値引きはありません。
 反則金は行政上のペナルティで、納付は任意です。主な違反の 反則金額の表がネット上にはたくさんあります。

 「罰金」は刑罰(刑事罰)です。必ず裁判を経て科されます。前科になります。
 裁判は2種類あります。略式の手続きと、通常の手続き(いわゆる正式の)ものと。
 いずれも、検察官が起訴(略式命令請求または公判請求)をすることで行われます。「不起訴」で終われば、罰金を払う必要はありません。たんにカネを払いたくないだけの者を検察官がそう簡単に不起訴にするとは考えにくいですが。

 罰金の金額は、検察官が求刑し、それを受けて裁判官が決めます。
 裁判では、まず検察官が、
「違反が事実であることは証拠により明らかである。被告人はこれこれ悪質なので処罰する必要がある。(求刑が罰金刑の場合)×万円の罰金刑が 相当と思料する」
 というふうに主張します。被告人のほうは、
「容疑の違反は犯しておらず無罪とすべきだ」
「容疑の違反を犯したことは事実であるが、これこれの事情により無罪とすべきだ」
「事実であるが、これこれの事情を酌んでどうか寛大な刑(求刑が罰金刑の場合は安い金額)を」
 などと主張します。両方の主張・立証を裁判官が聞いて、ではどうするか決めます。そうやって、それぞれのケースに応じて法律を運用する形になっているわけです。そのような積み重ねにより、紙に書かれた法律が生きたものとなっていくわけです。
 事情があってどうしても罰金の減免を求めたいなら、そのような本来の手続きによって主張していくことになります。

 しかし、取り締まり件数は膨大です。上記のような扱いとなることができる違反の取り締まりは毎年700〜800万件もあります。すべてを本来の手続きで扱うことは到底不可能です。運転者が本来の手続きを辿らないことを前提に、取り締まりも違反処理システムも存立し得ているのです。

 違反が「反則行為」の人(つまり青キップの人)のほぼ100%は反則金を納付し、「非反則行為」の人(つまり赤キップの人)も大半が略式の裁判手続きに応じて罰金を払う、そういう形で大量の違反は処理されています。

 略式による罰金の額には、超過速度や制限速度や前科などいわば外形的な要素によって、基準というか相場があります。
 通常、それ以外の個別の事情は、略式では考慮されません(詳しい調書を取ってもらい相場より明らかに安かったというご報告は1件だけありますが)。
 正式な裁判でも(罰金刑となる場合は)通常、略式の相場と同じ金額の求刑がなされ、求刑どおりの判決となります(運転者の主張が容れられ求刑より1万円減額されたケースを私は数件知っていますが)。

 略式命令(略式による罰金の支払い命令)を受けても罰金を払わず、かつ2週間たっても「正式にやり直してくれ」と申し出ない場合、また、正式なほうの裁判の判決を受けてから2週間たっても控訴しない場合、検察庁から「罰金を払え」との通知があります。

 そのとき、「こんな高額のカネは払えないよ」という人は、どうなるか。
 どうしても払えない場合、略式命令または判決に書かれた、
「右罰金を完納できないときは金5千円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する」
 にしたがって、労役場に留置する手続きを開始されることがあります。この開始は、上記2週間が経過してからさらに1カ月以上経過して、のようです。
 近ごろ不景気のせいか罰金の未納者が多いのか、「払わないと労役場へ入れるぞ」との通知をまとめて出した、という報道がときどきありますね。

 ただし、そのような措置は見せしめとしての面が強いようです。
 労役は、1日5千円のアルバイトではありません。罰金刑(財産刑)を自由刑の形に代えて執行するに当たりその期間を1日5千円で換算する、そういう性質のものです。趣旨は働かせること(封筒貼りなど)ではなく 身柄を拘束して囚人として扱うことなのです。駐車違反(1万5千円)で3泊4日の労役体験をした人の驚きのレポートが拙著『
交通違反ウォーズ!』(小学館文庫)にあります。
 労役場留置のためには、衣服や持ち物を預かって預かりの書類を作成するなど、労役場(刑務所や拘置所内にある)はメンドウな手間がかかります。
 ですから、検察庁(罰金を徴収するのは検察庁)のほうでは、なるべく労役にはしたくないようです。
 病気であるとか失業しているとかでどうしても罰金の全額をすぐに納付するのが困難なことが明らかな者については、ソク労役送りとするのではなく、「じゃあ、いつまでにいくら払えるんだね。絶対にその日には払うんだな? そのあとはどうするんだ」という話になっていくようです。タテマエとしては期日までに全額一括納付ですが、交渉の余地はあるということです 。事実、法務省の統計を見ると「分納」はけっこうあります。

 だいたい、同じ額の罰金でも貧乏人と金持ちとでは支払い能力が、したがって刑罰効果がぜんぜん違うわけですから(フィンランドでは罰金の額は収入によって違うそうです)、本来のことをいえば、運転者の資力を知らずに出された略式命令の金額を見てビックリたまげた人は、14日以内に正式裁判を請求し、罰金の減額を求めて主張・立証するのがスジというものではないのでしょうか。

 

「罰金の執行件数と執行額」
 

    日銀納付 現金収納 印紙収納 労役場留置処分
2000年 件数 265,578 (3,808) 606,197  (15,991) 508  (105) 3,850  (8)
金額 32,803,446 38,168,458 81,889 1,949,634
2001年 件数 278,374 (4,548) 608,754  (16,421) 528  (88) 4,155  (9)
金額 34,495,908 38,541,589 93,598 1,809,680
2002年 件数 287,354 (6,123) 527,574  (24,125) 503  (125) 5,068  (9)
金額 44,376,434 51,221,239 73,254 1,292,900
2003年 件数 283,493 (8,885) 497,991  (33,229) 530  (105) 7,090  (9)
金額 47,577,329 54,723,004 92,926 1,826,822
2004年 件数 746,830 (41,061) 464,466  (31,689) 459  (108) 8,105 (35)
金額 47,549,195 50,569,517 87,818 2,523,539

※法務省の統計より。
※会計年度別。金額の単位は千円。
※件数の8割は交通違反といわれる。
※丸カッコ内は分納の件数で、外数。
※『ドライバー』05年10-20号に掲載したもの。
 

 

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