昔、大名や上流階級の息女がお嫁入りの際には十種香箱をもってゆくのが
慣例でありました。十種香箱とは、組香に使用する道具一式を
茶箱ぐらいの2段箱に収めたもので、古い大名道具などでは
表面には家紋をはじめとする手の込んだ蒔絵をほどこしたものもあります。
美術品としても価値の高いものですが、日本に残存する数は多くありません。

香道の道具は寸法や内蔵品など細かい約束ごとがあって、
香道について深い造詣がないと作れないものです。要求される仕事も細かく
その製作技術をもつ職人さんも数えるほどしかおられません。
茶道具と違って世間に出回っていない理由も実はここにあります。

私が今回、お道具をお願いしたのは東京 麻布にある麻布 香雅堂さんです。
店長の山田さんは京都御所の近くにある山田松香木店のご出身で、
自他ともに認めるお道具好き。やはり、香道具好きのお母様とともに
御家流や志野流をはじめとする日本の香道具の復刻に尽力されてきました。

香道具は木工、漆器、蒔絵、銀器、日本画など、日本の工芸の全分野の
集大成ですから、職人さんからひっきりなしに電話がかかってきます。
スタッフが非常に豪華なのが特徴で、作家として名が知られている方も
少なくありません。

この十種香箱は志野流のものですが、このお道具一式の特徴は実際に
お手前で使えるお道具で構成されていることです。

乱箱などの他の道具も実はあります。おいおい紹介してまいりましょう。
今しばらく、時間的な関係でかないませんが いずれは入門して、
これらの道具で美しくお手前をしたいものです。
その日のためにお道具の製作をお願いしました。

香道具を収める十種香箱、
この中に下記の香道具全てが納まります。
材は女桑です。この香箱の材は女桑は女桑でも香桑と
いわれて木目が緻密で硬いのが
特色。木目の美しさと木工細工の冴えは感嘆ものです。
木工芸は地味ですが道具の基礎となります。
この木工芸の工房は超一流で、細工には一分のすきもありません。菊形の銀の環に通された紐は萌色、絹糸から染めていただきました。この紐をつくれる職人さんも今ではほとんどおられなくなっているそうです。

この十種香箱、私が入門の暁には御家元のお箱書きを
頂戴できることになっています。
 続いて、銀製の建と焚殻入れ。表面には菊唐草の模様が
彫ってあります。(志野流の伝統は千鳥柄です) 網袋が添います。
銀葉盤及び 香札箱。銀葉を載せる貝の彫刻は十種菊という志野流伝来
の形。この貝の彫刻はちょっと普通の職人さんではできないそうです。

香札は120枚全て手書きです。(裏表でなんと240箇所の蒔絵です。) 
続いて聞香炉
これは『雲鶴』の柄です。御家元よりの頒布品ですが、
図柄に惚れて、無理を言って譲っていただきました。
志野流に伝承されている聞香炉の写しだそうです。
蓋は桑。定家緞子の仕覆が添います。
 
いかがですか?
志野流の十種香箱です。内蔵品としては足りないものもありますが、
主要な道具はそろっております。残りはまた順次ご紹介していきます。

志野流のお道具は装飾を極限までそぎ落としてあり
揃えて使ったときの効果が実によく考えられています。地味に見えて、
実はこんなに贅沢な道具はないのかもしれません。

銀葉箱。銀葉という雲母板をいれる箱です。
そして 志野折
組香の際には香包みをこのなかに収めます。
金箔に極彩色で花鳥の絵が描いてあります。手書きです。
 
十種香箱
札筒。香札を投入する投票箱です。真ん中から2つに割れるようにできています。
【各画像をクリックしてください。詳細の説明のページに飛びます。】

続いて火道具です。象牙と銀で作られています。
重香合です。志野流 長盆略手前に使用します。
 
畳紙です。一番身近な道具ですよね。  −(^^)−
 
火取火箸 火取香炉と対で使用されるお道具ですが
これも十種香箱にはいります。