ラルゴ

 

脳出血で倒れた時

自分に何が起きているのか分かりませんでした。

実際には電車の駅の構内でひっくり返って

顔を通路のコンクリートに強く

打ちつけ奥歯が折れたのは後から知りました。

痛みを感じなかったのです。

  

どうして体が動かなくなったんだろうと考えていました。

不思議な気分でした。

助けに来た駅員の質疑にも答えられない。

喋れなくなったのです。

本能がじっとしているように呼びかけています。

怖くはなかった。

 

それどころか何故でしょう?

非常に静かな・・平和な気持ちにすら満たされて・・・

いました。そして救急車で病院に運ばれて

しばらくして失神したようです。

 

診断の結果は脳出血による「失語症」「右半身不随」でした。

家族との会話もちゃんとできなかったのです。

真冬の病室、布団をはがしてむきだしにした

身体の右半分がちっとも寒くなかった。

 

1日中、天井を眺めてベッド生活でした。

寝返りも自分ではうてませんでした。

考える時間は山ほどありました。

家族のこと、仕事のこと、自分の身体のこと。

 

こんなに素直に物事を眺めたのは初めてのことでした。

家族にも済まない、仕事中心人間の反省でした。

 

もし、倒れなかったら

こんな考えかたは出来なかったでしょう。

間違っていたことが色々と明らかになっていきました。

 

皆に「ごめんなさい」を言いたかった。

ならば、どうしても治らなきゃいけない。

治ったら皆に会いに出かけてあやまろう。

家庭、職場、それに友人達にも。

 

そう思ってリハビリ訓練に励みました。

今までに犯した心の罪を反省しました。

理由は分かりませんが病気のそもそもの原因は

そういう罪の結果なのではないか?

 

そうとも考えました。

良く言われる「宗教心」

とはこういう風なものなのでしょうか?

退院して間もないころ音楽を聴きました。

ヘンデルの「ラルゴ」でした。

パイプオルガンの重低音の効いたいい録音でした。

ハードロックやポップスを好んだ私でしたが

長い病院生活で音楽に飢えていたのかもしれません。

美しい旋律に胸をうたれました。

 

どうしたことでしょう

何かが胸に突き上げてきて・・・

涙がとまりませんでした。

心が洗われる・・そういう感じでした。

美しいメロディーを皆さんにお贈りします。


このページのBGMは

"Largo" played by Jupie

インターネットで知り合いになれた、”ゆうピー”さん”が

この曲を提供してくださいました。感謝します。