BY1QH 業余電台

 

日本と中国が国交回復して間もないころ

僕は中国へ出張するようになった

まだ街中に壁新聞など貼られていたよ

長髪でデニムいわゆるGパンの僕が街をあるくと

黒山の人だかりはチョット大袈裟だけど

珍しかったんだろうね

みんな集ってきたものだ

 

アマチュア無線は解禁されて

中国に一箇所BY1PKが存在した

けれどなかなか訪ねるチャンスはなかったよ

何度目かの出張で中央電視台にいった時

これは北京放送局のテレビ局だけどね

仕事の途中で音楽が聞こえてきた

 

懐かしい子供の時に聞いた曲

学生時代に自作の短波受信機に入感した

北京放送ラジオのインターバル音楽だった

感激していると

技術局員が2つ目のアマチュア無線局を

紹介してくれたんだ

 

 

コールサインはBY1QH

所在は北京市内の大学にあるという

漢字で「清華大学」

セイカ大學とはきれいな名前

師範大學らしい

発音は「チン・ホア・ターシュエ」

このチンホアがコールサインのサフィックス

QHなんだとすぐ分った。

 

予約もなんにもないが

訪ねていってみたよ

車から降りて大學のキャンパスへ入った

きっとアンテナがある

空を見れば見つけることは出来る

みつかんなかったよ

 

歩いている学生に聞いた

英語の分る大学生がよってきて

話を聞いてくれた

Do you know where the amateur radio station is ?

(アマチュア無線局はどこかわかりますか?)

耳慣れない無線局

そうだよね、中国では実に長い間

国策でアマチュア無線は禁じられていたからね

 

仕方なく筆談にした

同じ漢字文化の中国だからなんとか分るだろう

書いたよ「素人無線局」ってね

皆首をかしげたね

そうしたら中の一人が分ったらしく紙をひったくった

書きなおされたよ「業余電台」ってね

ああ、そういうのか!中国語で!

無線局はキャンパスのはずれの棟にあった

アンテナから同軸ケーブルが1室に引きこまれて

ここだなとすぐ分った

階段を上っていくとドアがあった

幸い人がいた

Excuse me. May I come in ?

(失礼します。入ってもいいですか?)

 

若い部員らしいがいきなりの英語に驚いたか

しばらく呆然と僕をみたね

でもこいつ英語が話せたよ!

中にいれてくれた

名前は「Yuen」

「遠」のしんにゅうをはずした文字だった

日本語の音読みの「エン」は「ユエン」が語源か

 

親切だった。英語も結構うまい

無線室と屋上のアンテナを案内してくれた

そして僕に言うのには

You are the 2nd foreign Ham visitor to this club.

(貴方は外国人ハムで2番目のこの局の訪問者です)

一番目はアメリカ人だったという!驚き!

くやしいけどWボーイズ(Wはアメリカ)には出しぬかれる

 

ユエンはぜひ無線局をオペレートしなさいと

手続き書類を僕に書かせすぐに当局に連絡した

これまた驚き!

中国のお上がそんなに物分りがいいとは

喜んでそうさせてもらったよ

日本の友達とか世界中のハムから

バンバン呼ばれたね

当時、中国は無線では珍しかったからね

ユエンはおしゃれな中国の若者だった

コーデュロイのパンツにブレザー

あの時代にあれほどのおしゃれをした

中国人・・いまでも信じられない

ユエンは外国にいきたいと言っていた

ぜひ進んだ文化を勉強したいと

日本ではなくアメリカに

英語を勉強したのもその希望があったから

 

日本のハム事情、一般の生活

ユエンから質問ぜめにされたよ

国が隠しても人民は世界で何が起きてるか

うすうす分ってたんだね

暗くなるまで話し合ったよ

 

これはお土産にと

電信の電鍵、モールス・・ツートツートのキー

くれたよ。中国製で軍隊のお古らしい

いい記念になった

ユエンは空港ではあまり目に付かないように

ってそう言ってた

ユエンは今どうしているのかな

現在のBY1QHと交信してユエンのことを

聞いてももう知る人はいなくなってる

外国にいったのかしら

時々思い出すのです