Arabian Nights

バグダッド市内のきれいなモスク

イラン・イラク戦争のころイラクを仕事で訪問した

バグダッド国際博に出展をするために

仕事とは別に今回はひそかな楽しみがあった

あの有名なイラクのアマチュア無線局 YI1BGDを

訪問できるかもしれない

バグダッドに国内で唯一の

正式認可局として、当時存在したこの局

戦時下で無線通信などもってのほかだったろうから

この局が一旦、電波を出すと

世界中から交信を求めるラブコールが

すざましいものだった

何しろこの一局だけしかイラクにないのだから

取りっこ合戦が起きていた

日本で私は幸運にも YI1BGD と交信できた

そして出張するだろうからぜひメンバーと会いたいと

電話番号をもらった

本当に行くチャンスが訪れた

イラクの後はイランに寄るというスケジュール

イランが先だとパスポートのビザを見られて

イラクに入国は許可されない

まずはイラクに行こう、

それにイランには当時、

一局もアマチュア無線局が許可されていなかった

アリババが瓶に油を注ぐモニュメント

バグダッドに到着、バグダッドホテルにチェックイン

初めてきたアラビアンナイトの国

夜空の月と星がすごいロマンチック

「アリババ」や「開けゴマ」のお話の国

感激だった

メンバーの家へ電話をするんだけど

英語の通じない家人が出てきて

困った

アラブの言葉しかだめ・・・

一生懸命に「バグダッドホテル」と叫んだ

メンバーが帰宅したころと思われる一時間後

ホテルに電話が・・・

伝え聞いた本人がとにかくバグダッドホテルへ電話をして

外国人宿泊客を一人ずつ当たっていったらしい

そしてついに僕にたどり着いた

I don't know how you reached me.

(よくここが分かったね)

I am a Japanese Ham operator JL1EEE.

(僕は日本のハムでJL1EEEだよ)

Name is Hack. You gave me your telephone number....

(名前はハック、電話番号をくれたよね)

相手は覚えていてくれた

でもこんなにすぐイラクにくるとは予想しなかったそうだ

すぐに仲間達と会いにきてくれた

ほとんどが学生だった

そして翌日、彼らの無線局へ案内してくれることとなった

Faris・親切にしてくれた

当日、彼らは約束通り無線局へ連れていってくれた

青少年科学館にあった

個人にはまだ許可はなくクラブ局として存在するこの局

フセイン大統領からの寄付というアメリカ製無線機

ドレークのC−ラインだった

日本の八重洲無線もあった・・・が故障してた

交信証を手持ちで来た

郵便事情の悪いこの国、

交信してもカード交換の可能性が低かったから

メンバーの一人Farisがすまなさそうに言った

Hack, We wanted you to operate our station.

(ハック、我々の無線局を運用してほしかったんだけど)

But Microphone is out of order. We are very sorry.

(マイクロフォンが壊れちゃってる。申し訳ない)

これはいい経験

ゲストオペレーションは許可されるという

世界中から、もてもてになるよ。気持ちいいだろうな

僕は彼らのゴミ箱に捨ててあったトランジスタラジオを

見逃さなかった

バラしてスピーカーユニットを取りだし

それをマイクロフオンとして使うように緊急改造修理をした

これですっかり株を上げた・・みんな尊敬のまなざし

予想通り世界中から、束になって呼ばれた

日本の局を意識して拾った

日本側では、みんな大変な喜びようだった

椰子の木の並木道

お昼時間になって僕は皆に申し出た

どっかレストランで皆を食事に招待したいと

そしたらFarisが言った

「お客さんにお金を使わせるわけにはいかない」

でもメンバーは学生の無線家(無銭家?)お金あるかい?

でも彼らの好意に甘える事にした

アラブ人の名誉とか誇りなんだろうね

出てきたものは・・アラブ風の・・・

ハンバーガーとフライドチキン

みんなと無線室で分け合って食べた

親切が嬉しかった

それに・・・すごく美味かった・簡単な味付けなのに

一週間ほど彼らとつきあったがいい奴ばかりだった

Farisは名門の子息でフランス留学でフランス語は抜群にうまい

英語も一番達者だったのですっかり仲良くなれた

国際博の前で・この後イランへ

仕事の国際博にもメンバーは僕の会社のブースを訪ねてきた

でも時間がたつのは速いよ

イランに出発の日が近づいてきた

Farisが車で市内を案内してくれた

Hack, you had better not say you are going to Iran.

(ハック、イランに行くって言わない方がいいよ)

It is dangerous. You are in Iraq. OK?

(ここはイラクだ。危険だからね。オーケイ?)

Have a nice trip to Iran. Bon Voyage.

(イランへ良いたびでありますように。ボン・ボヤージ)

「敵国の話しは危ないからするな」と小声でアドバイスしてきた

フランス語の達者なFarisらしいよボン・ボヤージね

ハムっていいな

同じ趣味というだけで世界中仲良くしてくれる

イランへの直行便などあるはずがないから

バグダッド→フランクフルト→アテネ→イスタンブール→

テヘランと回った

まる一日かかった

テヘランでは銃を突きつけられ靴下の中までチェックされた

検査は4時間にも及んだ

その間、イラクを思い出していた

市内を流れるチグリス河

砂漠の夕暮れ

あの下に何度も起きた大洪水で幾重にも古代都市が

埋まっているという

歴史の国だね何千年という悠久の・・・日本とは違うね

でも人々は親切だった

人間どこでも変らない

砂漠の夕暮れ地平線に日が沈む

その後も中近東では平和がありません

イラクの友達も

無事でいて欲しいとおもいます

・・

この話も「モービルハム誌」のバックナンバーに書かれています