映画『ヒトラー最期の12日間』(Der Untergang)感想A面
 
 
 
(以下、2005/6/12に掲示板投稿した内容です) 

昨年、ドイツで1945年ベルリン最終戦の映画の製作が進行中、という情報が入ってきました。 
しかも監督はあの心理サスペンス映画『es』で「現代にも脈々と息づくおドイツ的ナチ心理」を 
クドいほど的確に描いたオリヴァー・ヒルシュビーゲル! ということで、男子たるものこれに期待 
せずにいられましょうか。その結果が『ヒトラー最期の12日間』となって、今回「ドイツ映画祭 
2005」で日本初公開となったわけです。 

で、その結果ですが、一言でいって....... 

なんじゃぁあ、こりゃぁぁあああ!?(By松田優作の真似をするクサナギくん) 

という感じで、吾輩おもわずズッコケました。 
あんだけ期待していたのがこれかよ、これなのかよ、ちょっとまじかよ的な状態です。 
端的にいってヒトラー大本営最後の日々と、そのときの地上での一般市民・兵士の悲惨な日々の 
エピソードが交互に展開される感じなのですが....... 
 

@ ヒトラーを「人間的に」描いている!? 
 これはこの映画のポイントの一つとされていたのだが、実際のところ「人間的」というよりは 
 「周囲の人に個人として接するときはけっこういい人」的な描写に終始していて、あれでは 
 イスラエルのマスコミから突き上げを食らうのも無理はない。つーか人間ヒトラーの「正体」が 
 何だったのか、という部分について注目に値する描写が何も無いのが悲しい。ヒトラー役者の 
 せっかくの名演技が勿体無いぞありゃ。 

A サイドストーリーの激甘納豆ぶり! 
 総統大本営のドラマの一方でいくつかのサイドストーリーが展開され、老人部隊&ヒトラー 
 ユーゲント部隊の犬死にぶりや狂信的SS将校による即決処刑裁判の描写が出てくるが、 
 いかにもお座なりでダサイ演出。しかも、みなあまり悲劇的結末に至らずに助かってしまう。 
 特に本編ラストシーンのハッピーエンドぶりは....もう少し何とかならなかったのだろうか? 
 たとえヒトラー付秘書トラウドル・ユンゲの証言があの通りだったにしても! 

B サイドストーリーの激甘納豆ぶり2! 
 サイドストーリー中で「ドイツ兵代表」となるのが武装SS所属の軍医で、ひたすら人助けの 
 ためにがんばり続ける。彼は人間的義務のためにベルリンにとどまった立派な男だった!!! 
 ああ、なぜこういう偽善的演出を堂々とやってしまうのか理解に苦しむ。 

C 赤軍兵による乱暴狼藉の場面がまったく無い! 
 ベルリン戦最大の問題のひとつであった以上「まったく無い」のはいくら何でも不自然だろうと 
 思う。自国の悪についての描写が手ぬるい上、何気に戦闘シーンでロシア軍の協力を得ている手前 
 描けなかったのだろうか? なんだかよくない制約である。 

D あと、細かいことだが! 
 総統ボディーガード部隊の指揮官で「狂信的で粗暴」なために部下からも嫌われていたらしい 
 ヴィルヘルム・モーンケSS准将が、なぜか、末期的状況下でも人間的良識を失わない立派な 
 軍人として描かれていた。何故だろう? 映画製作に関し、彼の遺族になんか義理でもあるの 
 だろうか? 
 ちなみに本物の顔はこんな感じで、うおっ、やばいぜこいつは!!(爆) 
 

.....と。 
以上、とてもあの野心的でオモロな知的心理映画『es』の監督がつくったものとは思えません。 
最後の最後のトラウドル・ユンゲ存命中のインタビュー・ビデオで、彼女がゾフィー・ショルと 
自分を対比させる場面はなかなかぐっと来るかもしれません。が、レニ・リーフェンシュタールの 
インタビュー記録がナチ時代の自分についての内省と懐古が不気味に入り交じったものだった 
実例から判断するに、あれだけで素直に感銘を受けていいものかどうか、という気がしないでも 
ありません。 
                                                                                        

 
 
 .....以下続刊であります。