あれは何年前のことだったか。
あるときレコード屋で「新発見、1941年フルトヴェングラーの『新世界』!」という
レコードを見て、おもしろ半分に買ったのが、そういえば
すべての始まりだったように覚えている。ライナーノートによると
戦時中にワイヤー録音されてたのがどこぞの記録保管所から奇跡的に見つかったそうで、
まあ珍品というか貴重品というか....
 
で、聴いてみるとこれがなかなか凄い。ガサガサのモノラル録音であるにもかかわらず、
その音には全く骨董的な「化石」感というものがないのだ。50年の時空を超え、生々しい
音響脈動がダイレクトに伝わってくる。私は大いに驚き、激しく気に入ってしまったのである。
一方で私は以前からワーグナーが好きだった。ワーグナーとナチズムの深い連関は、今なお未来に向けて
芸術の本質を問う魔性の輝きを放ちつづけており、人々の知的芸術的興味を挑発してやまない。
伝統と革命、そして狂気と理性が激しく交錯する時代のダイナミスムの中、
巨匠たちが数々の伝説的足跡を遺した第三帝国周辺の音楽シーンには早くからある程度関心があったが、
そうか、こういう極めた演奏が雨あられだったのか。なるほどこれはイカス。よしよし、
ういやつじゃ、ということで一層関心も深まったのである。
「帝国指揮者」による国家の誇りをかけた演奏の凄絶さと、それを支えた全体主義社会の
狂気の凄絶さ。いずれもむやみに採算度外視である。果たしてこれは
「芸術と政治」という感じできれいに分けられるものだろうか.......
そんな感じで聴き、思索し、さらに同時に帝国模型なぞ作るアンニュイな午後は格別さもまたひとしおである。
で、そのままのノリで私はこのHPを開設し、当然「新世界」のCDもお気にの1枚としてUPしておいたのだ。
 
.....などと余裕かましておったら、驚くべきことにその「フルヴェン新世界」は
真っ赤なニセモノ!という情報が! 何とゆーか盗んだらニセ札だったぞルパン三世カリオストロ状態!
で、さらに凄いのがそのあと。実際のこの演奏の指揮者オズワルド・カバスタは熱烈なナチ信奉者で、
何と第三帝国の終焉と共に自殺して果てたという.....!
おおっなんとすばらしいドイツ音楽史裏街道伝説。やはりこうでなくては!
このHPが「フルヴェン狂熱アイラブユー」な内容だったら実に
しゃれにならない事態だったに違いないが、ちょうど私も
「うーん、『帝国指揮者』を看板にするんならもっとツブシのきかないバキバキのやつを発掘せねば」
とか内心密かに危機感を募らせていた矢先だけに、この事実は私にどおくまんプロえびぞり的興奮展開を
もたらしたのである。すばらしいぞアミーゴ!情報どうもありがとうございました。
....だがしかし、クラシック音楽愛好界でどっちかっつーと「第三帝国」は
ひたすら汚らわしいもの扱いなので、「帝国指揮者」なぞ
好きこのんで探し回る我輩にとって満足への道のりはひたすら険しい。
カバスタの演奏にしても「にせヴェングラー」と判明した刹那、市場から抹殺されてしまったのである。
 
なんともったいないことか! いい演奏なのに。
そんな感じで、我輩の大いなるクエストは続くのである。
 
悪は悪なりに華を残さなくては!
出でよ幻の「帝国指揮者」たち!
 呪わしき暗黒の封印の彼方から!
 
というわけで、禁断の「帝国指揮者」CD、出版物情報などあれば何でもぜひ当方までお寄せください。
また、トスカニーニなど勇敢な「反帝国指揮者」も実は好きだったりするので、そのあたり全体を含めて
巨匠ならでは的面白エピソードなども大募集します。うはははははは。