「往療」の基準とは何か



「往療料」の支給基準について

                                              平成18年8月
 最近「療養費の支給基準」について通知をしっかり読まれる保険者が多くなり、それはそれで良いことなのですが、通知の読み方が間違っていることがあります。今回は往療の問題について検討してみたいとおもいます。
 以下往療料についての通知文です。

「往療料は、治療上真に必要があると認められる場合に支給できるものであり、これによらず、定期的若しくは計画的に患家に赴いて施術を行った場合には、支給できないこと。」(「療養費の支給基準」平成18年版p167)

 この通知文では「治療上真に必要があると認められる場合」の内容は明記されておりませんので、保険者はこの点については規制してくることはありません。

 問題は次の「定期的若しくは計画的に患家に赴いて施術を行った場合には、支給できないこと」です。
 
 若干の保険者ではこの一文を盾に「『「定期的、計画的』な往療」は「通知文に書いてあるので認められない」と規制してくるケースがあるようです。

 これは厚労省の通知文の明らかな読み誤りです。これは高校の数学で教える「必要条件」「十分条件」の論理が十分理解されていないことによります。

 以下、検討してみましょう。

 この文章は先の「治療上真に必要があると認められる場合」について「これによらず」以下の文章によって条件を付けているように読まれる方もあるかと思いますが、実は「治療上真に必要があると認められる場合」の文章だけで「往療料」を支払う条件を「十分条件」として提示しています。これで支給基準としては十分です。

 従って「これによらず」以下の「定期的若しくは計画的に患家に赴いて施術を行った場合」は蛇足といえば蛇足です。

 なぜならばこの「これによらず」以下の文章は前文の支給条件とは関係のない往療の方法について書いてあるだけだからです。ここは重要ポイントです。騙されないように。

 従って「これによらず」以下の文章がついていようといまいとこれに関係なく、「治療上真に必要があると認められる場合」に「往療料」が「支払われる」のであって、往療の方法についてこれが「定期的」であろうと無かろうと「治療上真に必要があると認められる場合」さえ満たしておれば、どのような間隔で患者宅におもむこうとも何ら規制の根拠にはならないという論理が成り立ちます。

 少し難しいようですので、この通知文を簡略化してみます。
 
 上記の通知を簡略化してその構造だけを示せば以下のようになります。

 「○○するにはAの条件ですべきであり、これによらずBした場合には認められません。」という文章構造になります。

 例えば公園に以下のような立て札がたっていたとしたらどうでしょうか。

 「この公園では保護者の付き添い(条件A)で遊びなさい、これによらず滑り台とかブランコ(B)はしてはなりません。」(ちょっと回りくどい立て札ですが・・・)

 どうでしょうか。この立て札を読んで「滑り台とかブランコ(B)をしてはなりません」だけを抽出して公園の利用の可否を解釈する人はいませんね。

 こういう文章構造は国語というよりも数学的な論理構造です。ここでは「A」とう条件があってこそ「B」の内容(この場合は「遊び」の内容)が論じられるのであって、「B」だけ取り上げてその善し悪しを論じることは論理上ありえないのです。

 更にこの立て札では「この公園では保護者の付き添い(条件A)で遊びなさい」で全て終わっています。この公園の条件では保護者付きでないと利用できないのですから、これによらず以下の「滑り台」とか「ブランコ」はどうでもいいって言えばどうでもいいことなのです。



附)上記通知文の「よらず」の「よる」の意味は下記辞典の(3)に該当すると思われます。

よ・る 0 【因る/▽由る/▽依る/▽拠る】
(動ラ五[四])
〔「寄る」と同源〕
(1)ある物事が起きる原因となる。《因・由》
「不注意に―・るミス」「金属疲労に―・る破損」「人言の繁きに―・りて/万葉 3464」
(2)ある物事の手段・方法、あるいは材料となる。《依》
「武力に―・る解決」「コンピューターに―・る処理」
(3)ある物事の根拠・基準・理由となる。《依・拠》
「法律の定めるところに―・る」「人は見かけに―・らないものだ」
(4)軍勢・人などが根拠地としてたてこもる。《拠》
「大坂城に―・った豊臣方」
(5)ある物事に関係する。物事の有り様に応ずる。《依》
「成功するかどうかは君の努力次第に―・る」「相手の出方に―・っては実力行使もある」「所に―・り雨」「事と次第に―・っては…」「冗談も時と場合に―・る」
[可能] よれる
                                                Google国語辞典より

 

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