柔道整復の支給基準


         第3 柔道整復師の施術

  1 沿  革
 健康保険における医療支給付は、現物給付としての療養の給付を原則とし、現金給付としての療養費の支給はこれを例外とする取扱いが基本的な考え方になっている。また、制度創設の当初、政府管掌の場合、療養の給付に要する費用は人頭式請負によって支払われることになったため、保険財政の立場からも、療養費の支給は、相当厳重な制限をうけた。したがって、その支給件数および金額とも極めて微々たるものであった。

 しかしこれら療養費支給件数の中では、柔道整復師および接骨業者により治療をうけた費用を療養費として請求する件数が大部分であった。つまり整形外科の未発達という一般的条件によるためか、被保険者の多くは骨折、脱臼その他骨関節に関する治療について外科医から治療をうけることを避け、柔道整復師等の治療をうけることが一般的に行われていた。しかも、これら柔道整復師等の治療費の内容が区々にわたり、療養費の支給額を決定するのに種々事務上の困難を来たした。

 このため、医療上は若干問題とされたが、昭和11年に各都道府県ごとに所在の柔道整復師会と協定を結び料金表を定めて委任払いの方式をとって以来現在に至っている。
 これは整形外科担当の医療機関の配置・医師数の不足、それに加えて、わが国の被保険者が、従来慣習上、特に都市以外おいては外科医に受療するよりもむしろ柔道整復師の施術をうけることが多いこと、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがある等の理由により、被保険者保護の立場から認められたものである。

 その後、昭和17年の法改正により医療費は勤労定額単価式に改められ、療養費についても施行令を改正し、支給の条件を緩和したが、柔道整復術営業者につき手当をうける場合の取扱いについては、緊急その他やむを得ざる事由のあるときを除き事前承認制をとり、また、その承認にあたっては、骨折および脱臼については医師の同意の有無を確かめ、手当の期間・日数・回数などの条件をつけて承認し、頭骨骨折、脊椎骨折その他単純でない骨折については保険医または保険者の指定する者の診療をうけさせるというようなかなり制限的な取扱いがされていた。

 ところで、柔道整復師会との協定料金は各都道府県ごとに区々にわたり、従って患者の差額負担もまちまちになり、思わしくない面が生じたので、昭和19年4月以降は、中央において1点単価の基準を定めた。その額は、昭和18年2月厚生省告示第66号の単価の約2割引とし、8銭ないし10銭の間において、地方の慣行料金その他の事情を考慮して協定することとなった。

 このため、新たに骨折、脱臼。および打撲の各部位について、整復料、処置料の点数および処置または治療回数が定められて保険医の場合と同様、所定の単価に点数を乗じた額が施療の報酬とされ、その他、濫用を防止するとともに運営の円滑を期すため施術録の様式を統一すること、および必要な事項を協定書に挿入することが規定された。

 その後診療報酬単価の改訂に伴い施術の単価も引き上げられ、昭和21年1月には17銭〜20銭、同年4月に50銭〜80銭とおおむねその2割引として契約され、同年12月からは料金表も改められた。

 関係施術者からは、料金表改訂の要望が強くなり、この料金表の内容にも時代に即応しない点などがみられたので、昭和25年当初より、関係施術者の意見を参考とし鋭意検討を重ねた結果、昭和27年6月以降新たな料金表が定められた(同年10月11日一部改定)。また、従来、特別の事由のある場合は、地方の当事者間において、施術点数等を協議決定していたが、今後は都道府県において別段の定めをなすときは、事前に中央と協議して定めることとし、給付の統一的取扱いを期することとなった。

 昭和31年にはさらに制限が緩和され、療養費の請求の場合には、実際に医師から施術につき同意を得たむねが施術録に記載してあることが認められれば、必ずしも医師の同意書の添付は要しないこと、応急手当の場合は、医師の同意は必要としないこと(この場合、応急手当の後において医師の同意を得なければ、引き続き治療することはできない。

施術につき同意を求める医師は必ずしも整形外科、外科等を標榜する医師に限らないこと(昭和31年7月11日医発第627号)とされ、給付支給事務取扱上は一々保険者において施術録を調査した後でなければ支給を行ってはならないという意味ではなく、疑わしいものについて調査を行う場合の根拠としておかれることになった。

 昭和33年6月30日健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法が制定され同年10月1日から適用された。これは社会保険の医療担当者の待遇改善を図るとともに、国民皆保険の基礎的条件の整備を図るために診療報酬の点数および単価に改訂が加えられたものであり、これに伴って、関係団体の意見をも参考として、柔道整復師の施術料金の算定方法が次の改正要点を中心として改定された。
   

  2 支給対象 P90

 被保険者等が柔道整復師の施術をうけた場合の費用は療養費として支給されるが、この取扱いは、他の療養費の場合にくらべて若干相違がある。すなわち他の療養費の場合は、被保険者等がその施術に要した費用を施術者に直接現金で支払った後に、その支払額を証明出来る書類を添付した申請書を保険者に提出して療養費の支払いをうけるのであるが、

柔道整復師の施術に要した費用については、保険者(地方社会保険事務局長及び都道府県知事、健康保険組合)と(社)都道府県柔道整復師会との間で行われている協定に基づき、被保険者は施術者に対し直接現金を支払う代わりに、被保険者がうけるべき療養費の受領を施術者に委任する取扱いが従来から一般的に行われている。

 従ってこの協定を結んでいる保険者に属する被保険者等はその協定の相手方である柔道整復師会に所属する柔道整復師については、一般の保健医療機関に受診する場合と同様の形で、その施術をうけることができる。

 また、(社)日本柔道整復師会の会員以外の柔道整復師については、保険者との間で契約を結ぶことにより(社)日本柔道整復師会の会員と同様の取扱いができることとなっている。すなわち、被保険者等が一部負担金に相当する額を柔道整復師に支払い、被保険者などから受領の委任を受けた施術者が、保険者に療養費を請求する仕組みである。

  しかし、この場合においても、療養費を被保険者に支給していることには変わりない。
  前述した協定及び契約では、施術方針等のほか、施術料金の算定方法も定められており、この協定及び契約に基づく柔道整復師の施術に係わる療養費の算定基準によって施術の費用を算定することとなっている。
 

    3  療養費の額 P91

 柔道整復師会との協定及び契約に基づく施術料金の種類は、初検料、初検時相談支援料、往療料、再検料のほか、施術行為に対するものとしては、整復料(骨折および脱臼の場合)、固定料(不全骨折の場合)、施療料(打撲および捻挫の場合)後療料(整復、固定、施療後に後療が行われる場合)の4種類のみである。
 療養費の支給額は、次の算定基準に基づいて算定することになっている。

「療養費の支給基準」     平成20年度版 P87
社会保険研究所

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