柔道整復の受領委任払い

鍼灸保険情報センター
平成11年10月1日



 今回は「柔道整復のみ受領委任払いを認めた理由」及び「鍼灸マッサージに受領委任払いを認めない理由」を検討してみたい思います。
 厚労省は、鍼灸マッサージ界の「受領委任払い」要求に対して「柔道整復師の受領委任払いはあくまでも特例的であり、鍼灸マッサージには認めない」という態度をとり続けております。
この点を考察します。



 一、柔道整復に受領委任を認めた理由

 厚労省は、柔道整復に同意書なしの保険取扱いを認めた理由として「医療保険審議会柔道整復等療養費部会の報告書(平成7年9月8日)」(当サイトの資料参照)で次のように述べております。

 1、柔道整復に係る療養費の受領委任払い
 (1) 療養費は、いわゆる償還払いが原則であるが、柔道整復に係る療養費については、保険者との協定又は個人契約によって、いわゆる受領委任払いが特例的に認められている。
 しかし、受領委任払いについては、施術の内容や額等の患者による確認がないまま施術者から請求が行われていることや現在の仕組みが、協定及び個人契約に基づくものであり、審査や指導・監査の実効性保が困難であること等の問題が指摘されている。
 (2) 柔道整復に係る療養費について、特例的に受領委任払いが認められてきたのは、次のような理由によるものであり、こうした経緯やこれまでの実績を考慮すると、今後もこの取扱いを継続することはやむを得ないものと考えられる。
 1、整形外科医が不足していた時代に治療を受ける機会の確保等患者の保護を図る必要があったこと
 2、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第17条ただし書に基づき、応急手当ての場合には、医師の同意なく施術ができること等医師の代替機能をも有すること
 3、施術を行うことのできる疾患は外傷性のもので、発生原因が明確であることから、他疾患との関連が問題となることが少ないこと
(3) しかし、受領委任払いを特例的に認めるとしても、指摘されている問題を解決するために、柔道整復師に対する研修の促進等制度の周知を図るとともに、支給の適正化の徹底を図る必要がある。

医療保険審議会柔道整復等療養費部会 の報告書平成7年9月8日 (抜粋 当サイト「資料」参照)

 上記を整理しますと、
 *柔道整復には受領委任払いが認められている
 *柔道整復に受領委任が認められた理由は
   ・整形外科医の不足した時代があった
   ・応急手当の場合には医師の同意なく施術できる(筆者注:昭和31年)
   ・柔道整復の対象疾患は外傷性のもので他の疾患との関連が少ない
 *柔道整復に支給の適正化を徹底する必要がある


 「療養費の支給基準」(平成11年版)では以下のように述べております。

 「これ(柔道整復に「受領委任払い」を認めたこと−筆者*注)は整形外科担当の医療機関の配置・医師数の不足、それに加えて、わが国の被保険者が、従来慣習上、特に都市以外においては外科医に受療するよりもむしろ柔道整復師の施術をうけることが多いこと、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがある等の理由により、被保険者保護の立場から認められたものである。」
(「療養費の支給基準」平成11年版 社会保険研究所)

 上記「療養費の支給基準」を整理しますと柔道整復師に受領委任払いを認めたのは、
 イ、整形外科担当の医療機関、医師数の不足、被保険者が従来慣習上外科医に受療するよりも柔道整復師の施術をうけることが多い
 ロ、施術対象疾患は外傷性のもので、発生原因が明確であり他の疾患との関連が問題となることが少ない
 ハ、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがある
ということです。

「療養費部会の報告書」よりも「療養費の支給基準」の方がまとまっていますので、当方が述べさせていただく論述には上記「療養費の支給基準」の「イ、ロ、ハ」の説明を採用させていただきます。



 二、柔道整復に受領委任払いを認めた理由と鍼灸マッサージ

 「イ」については当時(昭和40年代以前)の柔道整復の位置は現在の整形外科に匹敵する地位であったことは広く認められていることです。
 しかし柔道整復だけでなく当時は鍼灸マッサージもまた国民医療にとって重要な地位であったことは、業界があまり宣伝してこなかったせいか、正しい評価を受けておりません。
 過去の業界の文献をみても多くの患者が鍼灸マッサージ治療を受けていたことが書いてありますし、このことは当時の医療状況を考えれば容易に推測できます。

 第一に、現代医療においては現在ほど豊富な治療手段がなかったということです。
 従って当時において自律神経系の疾患、筋筋膜系の疾患、内科的疾患の一部など鍼灸マッサージが国民の健康に果たした役割は大きいかと思います。
(これが最大の理由であろうと思います)


 第二に、健康保険制度がいまだ十分ででなかった頃(国民皆保険制度の発足は昭和36年から)は国民の収入もまた低く、当時地方では「医者が入ったら(往診したら)間もなく坊さんが入る」といわれていわれていた時代がありました。
 これは、人が病気になってもいよいよ助からないという死ぬ間際にしか(「ちゃんと看病しましたよ」という意味を含めて)当時は医者を呼ぶことが出来なかったという事です。
 当時の生活水準からすれば医療は今では想像できないくらいに高価であり、こういう時代背景からすれば安価で治療効果の高い鍼灸マッサージを国民の多くが利用したことは想像に難くありません。


 「ロ」については柔道整復に受療する方々の全てが明らかに自覚的な物理力が加わって捻挫や挫傷を負っているのならば発生原因が明確であろうと思われますが、仮に柔道整復が現在の整形外科領域の疾患を相手にしているとするならば整形外科と同じく慢性的なもの退行変性による疾患が多いのではないかと推測されます。
 もしそうであるとすれば鍼灸マッサージと同じ領域の疾患を扱っているということが推測されます。


 「ハ」について、これは「柔道整復は整形外科と同一理論がある」から受領委任払いはOKで「鍼灸は整形外科(現代医学)と共通理論がないから受領委任払いは認められない」(この後の「」の言葉は文書にしていませんが)との主張であろうと推測します。
 しかし鍼灸も近年来さまざま研究がなされ、その効果の科学的論証が次々と発表されておりますし、現代医療の代替医療としての地位を着々と築き上げております。

 以上、柔道整復に受領委任払いを認めた理由については鍼灸もほぼ同等の医療実績があり、唯一弱い現代医学的な論証も近年来その成果が続々と発表されております。



 三、柔道整復に受領委任払いを認めた理由の現代的妥当性

 さて、次に論述してみたいのは、柔道整復に対し過去において受領委任払いが認められた理由を現代においてもなお柔道整復にのみ受領委任払いを認め、鍼灸マッサージには受領委任払いを認めない理由として活用できるのかどうかという疑問です。

 柔道整復が療養費の枠内であることは先ず前提として、「療養費」の健康保険法上の位置をもう一度おさらいします。
 「療養費の支給基準」(平成11年版)には以下のように書いてあります。

 1 療養費の意義
 現在の社会保険医療においては、厳正な現物給付方式を建前としている。
 すなわち、健康保険法による場合は、保険医療機関または保険薬局等同法第43条第3項各号に定める医療機関等において一連の医療サービスの給付で行うこととしている。
 従って、現金給付である療養費はあくまで療養の給付で果たすことのできない役割を補完するものである。
(「療養費の支給基準」平成11年版)
 ○療養費の支給要件(昭24.6.6 保文発1、017)
 1 郡部等の地域において、その地方に保険医がいない場合又は保険医がいても、その者が傷病のために、診療に従事することができない場合等には、勿論療養費の支給は認められるが、単に保険診療が不評の理によって保険診療を回避した場合には、療養費の支給は認められない。
 2 緊急疾病で他に適当な保険医がいるにかかわらず、好んで保険医以外の医師について診療又は手当を受けたときには、療養費は支給しないこと。
 3 療養途中で、主治医が保険医の指定を受けたが被保険者が知らなかったとき、初に療養を受けるとき法第44条(編注:現在は第44条ノ2)の規定に該当する理由があるか否かにより、療養費の支給、不支決定する。
(「療養費の支給基準」平成11年版)

 上記「療養費」に対する厚労省の考え方をまとめてみます。

 a 「療養費」は「療養の給付」の補完物である
 b 保険医療機関があるのに保険医療機関以外で手当を受けた場合には「療養費」は不支給である

ですね。

 厚労省は上記「a」「b」の制度的考え方があるにもかかわらず柔道整復のみ「イ、ロ、ハ」(注1)の理由があるから受領委任払いを認めたということです。

(注1)
 イ、整形外科担当の医療機関、医師数の不足、被保険者が従来慣習上外科医に受療するよりも柔道整復師の施術をうけることが多い
 ロ、施術対象疾患は外傷性のもので、発生原因が明確であり他の疾患との関連が問題となることが少ない
 ハ、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがある

 先ず、「イ」「ロ」については過去の論理で過去においては妥当性はあると思います。
 また、「ハ」もまた一般論として妥当性があると思います。

 しかし、この−過去において柔道整復に受領委任払いを認めた−論理は、「現代においてもなお通用する論理だろうか」という疑問がわきます。
 結論を先に言えばこの「イ」「ロ」「ハ」の理論構成はそれ自体は単独では正しい。
 しかしこの柔道整復に受領委任払いを認めた理由を現代において、「鍼灸マッサージには受領委任払いを認めない」と理由にした瞬間にこの論理は解体すると考えます。

 以下述べてみます。


 厚労省は、医療併用禁止理論に対する反論でも述べましたが、主語と目的語を曖昧にしたり、論じているカテゴリーが違うのに強引に別のカテゴリーを当てはめるというようなトリックを使います。

以下、
厚労省による「受領委任払いを柔道整復にのみ認め鍼灸マッサージに認めない論理」の骨組み
 先ず、過去の社会背景から導き出された過去においては妥当性があったであろう理論とその結論を述べる。
(これには多くの人が納得する)
      
 次に、この過去の理論が現在においてもなお通用するのかどうかの理論的検討を外す。
(これには普通の人は気がつかない)
      
 最後に、”現代における理論的検討を外した過去の理論”を、現代においてもなお正しい理論であるかのごとく現代理論にスライドさせる。
(ここがトリック)

 以下トリックの解説です。

 厚労省が「a」「b」の理論を遵守するならば、現代において「ハ」という理論に依拠した柔道整復師の治療はどういう評価を受けるのでしょうか。

 当然にも
 a 「療養費」は「療養の給付」の補完物である
  保険医療機関があるのに保険医療機関以外で手当を受けた場合には「療養費」は不支給である
という論理が適用され、

 ハ、柔道整復師が行う施術の一部には整形外科医の行う医療方式と同一理論によるものがある

というように、柔道整復の理論が整形外科との同一性あるなら「近くに整形外科があるので整形外科にかかりなさい」と原則通り指導するのがスジです。
 即ち、柔道整復の整形外科との同一理論性により、「先ず健康保険給付の基本である整形外科(療養の給付)にかかるべきであって、療養の給付の補完物=柔道整復(療養費)にかかるのは整形外科で治らない場合に認めましょう」という理論になりませんか。

 ところが、この理論を厚労省に対して展開しますと「柔道整復は既に現物給付化されている」から「療養費」の原則は「適用されない」、との論理を展開する向きもあります。
 この「現物給付化」という言葉が曲者です。柔道整復は「現物給付化」であって「療養の給付」ではないのです。
 現実に今でも柔道整復のレセプト(療養費支給申請書)では、患者の請求=現金給付=「療養費」という原則は崩れていないのです。

 これは現在、国民の大多数が批判している「過去に得た権益なら、現在においてどんなに国民から見て矛盾するものであろうとも無条件でそれを守る」という腐敗政治の論理そのものではないでしょうか。
 誤解していただきたくないのは、この論文は現在の柔道整復師の受領委任払いに対する批判ではなく、柔道整復に受領委任払いを認めた過去の経緯について現代的検証を抜きにし、鍼灸マッサージに対して、「過去に柔道整復のような経緯がなかったから」という理論構成で鍼灸マッサージの受領委任払いを否定する、その論法を批判しているのです。

 どうでしょうか、厚労省の理論は破綻していると思いませんか。

 次に論議の主軸になるのは「鍼灸マッサージは『療養費』の枠内にあるのだから受領委任払いは法律的に問題があるのかどうか」という論議です。



 四、厚労省の理論のどこに問題があるか

 A、「a」”「療養費」は「療養の給付」を補完するものである”という考え方です。
 これはこれで問題はないと思います。これは健康保険法の「療養費」の精神どおりです。
 問題は、
 B、「b」(注2)”保険医療機関があるのに保険医療機関以外で手当を受けた場合には「療養費」は不支給である”
という考え方です。

(注2)
 2 緊急疾病で他に適当な保険医がいるにかかわらず、好んで保険医以外の医師について診療又は手当を受けたときには、療養費は支給しないこと。

 これは健康保険法の「療養費」(注3)の一部を極大解釈したものです。
 健康保険法の「療養費」では確かに保険医療機関が近くにないとき(無医村)などを想定しておりますが、同時に治療用装具(コルセット等)など保険医療機関で目的の医療サービスが給付出来ない場合をも想定しております。
 鍼灸マッサージや柔道整復はまさにそのように解釈すべきです。

(注3)
 「保険者ハ療養ノ給付、入院時食事療養費ノ支給若ハ特定療養費ノ支給(本条ニ於テ療養ノ給付等ト称ス)ヲ為スコト困離ナリト認メタルトキ又ハ被保険者ガ保険医療機関等及特定承認保険医療機関以外ノ病院、診療所、薬局其ノ他ノ者ニ就キ診療、薬剤ノ支給若ハ手当ヲ受ケタル場合ニ於テ保険者ガ已ムヲ得ザルモノト認メタルトキハ療養ノ給付等ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得」

 少し考えれば分かることですが、整形外科がどこにでもあるのに国民がわざわざ鍼灸マッサージ師や柔道整復師のところに何故行くのでしょうか。
 それは整形外科以外の別なものを求めている証拠でしょう。
 一昔前のような上からのお仕着せの医療では国民は満足しなくなっているのです。

 そういう意味では代替医療として単独の給付を考えるべきです。

 C、「療養費」の条文の「現金給付」という原則です。
この原則は何が何でも守らなければならないものなのかどうかということです。
 現実にはこの原則は完全に崩壊しております。これは別の論文(医療併用禁止理論批判)で述べましたように既に他の保険給付では現実に受領委任払いで行われていたり、本来は被保険者に支払うものであるが直接医療機関に支払うという条文で反故にしております。
(注4)

 (注4)
 一つの例として「家族療養費」の給付方法があります。以下ご参照下さい。
 第59条ノ2
 被保険者ノ被扶養者(老人保健法ノ規定ニ依ル医療ヲ受クルコトヲ得ベキ者ヲ除ク)ガ保険医療機関等又ハ特定承認保険医療機関ノ中自己ノ選定スルモノニ就キ療養ヲ受ケタルトキハ被保険者ニ対シ家族療養費トシテ其ノ療養ニ要シタル費用ニ付之ヲ支給ス
として”被保険者に療養費を支払う”としながら、同じ条項のあとの方では
 第59条ノ2 5
 被扶養者ガ第43条第3項第1号若ハ第2号ニ掲グル病院若ハ診療所若ハ薬局又ハ特定承認保険医療機関ニ就キ療養ヲ受ケタル場合ニ於テハ保険者ハ其ノ被扶養者ガ当該病院若ハ診療所若ハ薬局又ハ特定承認保険医療機関ニ対シ支払フベキ療養ニ要シタル費用ニ付家族療養費トシテ被保険者ニ対シ支給スベキ額ノ限度ニ於テ被保険者ニ代リ当該病院若ハ診療所若ハ薬局又ハ特定承認保険医療機関ニ対シ之ヲ支払フコトヲ得
として”医療機関に支払う”としております。

 家族療養費について本来は被保険者による確認(本当に正確に支払い受取りが行われているかという)が行われるべきなのにそれが無いではありませんか。
 こんな何でもありの論理がまかり通っているのですから受領委任払いにとりたてて問題にすべきことだろうかと思いますが国民の皆さまはいかがでしょうか。



 五、受領委任払いを鍼灸マッサージにも柔道整復と同等に認めるべき

 第一に、国民が鍼灸マッサージや柔道整復にアクセスしたいという要求を他の健康保険給付のように規制をかけずに認めるべきであろうということです。
 整形外科がどこにでもあるのにわざわざ鍼灸マッサージ師や柔道整復師のところに行く、そういう実態があるのに鍼灸マッサージに限って保険給付が不安定、手続きが煩雑、受療契機が不平等(同意書を円滑に発行してもらえる患者とそうでない患者の存在があり受療の機会均等性が全くない)、患者の経済的負担が大きい(窓口で治療費の全額を支払う)というの状況はどのように考えてもおかしいと思います。

 第二に、「受領委任払い」という方法は当時の健康保険制度が具体的な現実と合致していないという中で已むを得ず考え出された給付形態であり、国民の利益を第一に考慮した結果なされた方法です。
 この精神は現代でも受け継がれなければなりません。
 いくら法律が現金給付をうたっているからといって現実の矛盾に目をつむっているというのでは国民の利益と法律の地位を本末転倒させた考え方であり不備があれば改めるのが法律の精神です。


 第三に、柔道整復術に対し過去において受領委任払い認めたことが厚労省が言われるようなそれほど変則的な方策だったのかということです。
 むしろ日本古来の伝統医学であり十分な実績を残してきた医学を正当に扱わないほうがおかのであって、柔道整復術に対する受領委任払いは正しかったのです。
 従って、鍼灸マッサージについても同じことがいえます。
 明治政府が医学の主軸をドイツ医学(現代医学)に置いたという方針は間違ってはいなかったと思いますが、鍼灸マッサージと柔道整復の保険制度上に大きな問題があったといえます。

最後に日本の法解釈がいかにいい加減であるか養老猛司氏の本から引用させて頂きます。

 引用 

   「真っ赤なウソ」  養老猛司 大正大学出版会 p108-109

  そこで「はて?」と思ったんですね。法学部の先生がある出版社から教科書を出している。これで印税をもらっているのはいいのか。アメリカを調べてみると、FBIの職員なんかもらっていませんからね。FBIの職員で小説を書いたやつが、印税をもらえないという話が書いてあったんです。それはそうだなと。憲法第九条どころじやないですよ。

  日本はこれを「法の解釈」って言うんですよ。「法の解釈」によって、ここまではいいだろうとか言っている。では、憲法の場合にそれを解釈するのはだれか。これは内閣法制局。憲法第九条で「自衛隊は違憲でない」という見解を作ったのは内閣法制局であります。その他もろもろの法律について、内閣法制局は「法の解釈」をやる。

  話は戻りますが、東大は一〇学部あって、一〇学部が集まった委員会には当然法学部長もいた。そこで面白い経験をしたんです。当時、総長が医学部から出ていまして、法学部長がそこにいて、東京大学の規則を議論していました。大学は学部自治になっていますから、伝統的に学部にも規則があるんです。

  東大全体の規則と学部の規則とがあって、結局そっくり同じなんです。法学部の文章と東大全体の文章では、語尾がちょっと違っているだけです。それで総長が、医学部ですから、言ってみれば本人は素人。「法学部の学則の語尾がこうちょっと違っているということは、法学部の先生方からすると何か解釈に若干の違いがあるんでしょうね」と、当時の法学部長に、「どういう解釈だったんでしょうね、この語尾の違いは」と質問をしたんです。そうしたら法学部長の言ったことが忘れられません。「いや、解釈せよとおっしゃれば、いかようにも解釈はいたしますが」 って言ったんです。

  ああ、これで内閣法制局っていうのがよく分かった、と。法をいかようにも解釈して、ともかく現実に合うように解釈するのが、内閣法制局の仕事だと。ですから、法学部の先生は別に出版社から本を出して印税もらったからって、国家公務員の服務規定には引っ掛からないという解釈をする所だと、こう思ったんです。
                             引用終 

以上



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