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鍼灸保険情報センター
2001/06/01
1 医療併用禁止理論と受領委任払い
(この論は「その1」よりも古い論文です。その1での補足論文として読んでいただければ幸いです)
「医療併用」禁止理論は鍼灸に「受領委任払い」を認めない理由としも影響しております。
鍼灸を現物給付化(受領委任払い)すれば、当然、「医療併用」が起きてくるからです。
「医療併用禁止理論を検討する」でも展開しましたが、ここでもう一度「医療併用」禁止理論を検討してみたいと思います。
「医療併用」禁止の理論は保発32号と保険発28号です。
この2つの通達と「療養費」の本来の考え方と比較します。
「療養費」の支給要件と前提は
1 医療機関で療養(医療)の給付が困難なもの(法第44条の2)
2 「療養費」は「療養の給付」を補完するものである(「療養費の支給基準」)
です。
1、2の2つの命題を分かりやすくいいますと、
*「保険医療で供給することができないとき療養費で供給」
*「保険医療が主役で療養費は補完的役割である」
です。
ここから厚労省は療養費としての鍼灸の支給要件について、「医師による適当な治療手段のないもの」について補完的役割である鍼灸の保険(療養費)を認める(保発32号)という理論を導き出し、医師には治療手段がないのであるから、鍼灸にかかって医療にかかるというのはあり得ないとし、「医療併用」禁止理論を作りました。
この理論構成について検討してみたいと思います。
「保険医療では供給することができない」では「何を供給できない」のでしょうか。
供給相手は慢性疼痛疾患(6疾患)ですから医療機関では一般的には鎮痛剤の投与その他の処置であると思います。
この医師の行う処置での医療効果を医師が自ら判定する場合、医師のインセンティブとして0%の効果とはなかなか判断しないでしょう。(実際的にも0%の効果ということは考られません)
すると当該疾患について保険医療で「ある程度供給ができている」ことになります。
しかし、この医師が現在の治療について更にその効果を高めるために「療養費」での鍼灸治療を試してみたらどうかと考えた場合にはどうなるでしょうか。
つまりこの場合は「医療機関で療養の給付として供給ができない」という意味は、 「より高い治療効果のステージを得るための手段について」「保険医療だけでは供給できない」という意味になりますね。
整理しますと「保険医療では供給できない」は、厚労省が本来主張している
a「保険医療では全く解決できない」=「保険医療では全く無効」
という意味と、上記に論理展開した
b「保険医療だけでは十分な解決ができない」=「保険医療では部分的に有効」
の2つの解釈が可能であることが分かります。
ところが厚労省は
a「保険医療では全く無効」=(保発32号の厚労省解釈)
だけを判断条件に採用し、
b「保険医療では部分的に有効」
という判断条件を採用していないのです。
これは明らかに強引な解釈の仕方ですし、実際の状況としてはa「保険医療では全く無効」の解釈は現実的にあり得ないか、あっても極々まれな例です。
上記のように厚労省は、医師の治療を全面否定された状況のみを想定したもので「医師の治療である程度有効であるが不足部分がある」ということを認めないところに問題があります。
この医師の治療を全面否定された状況のみを想定したものの考え方は現実的に鍼灸の対象6疾患の枠内ではあり得ない状況設定です。
次に保発32号の問題点を更に拡大したのが保険発28号の「所期の効果の得られなかったもの」です。
これは、健康保険法第44条の2の精神から更に遠くなっております。
先ず、「所期」(期待すること)、これがおかしいです。
「所期」には「医師の主観」と「患者の主観」がありますが、現実的には「医師の主観」のみ採用されて、「患者の主観」は採用されません。
(保険者は全て医師に調査しております)
また、6疾患において、「所期」設定のガイドラインがあるはずもなく、医師によってバラバラな判定。
これは、同じような疾患で痛みの状態が同じで、治療行為も同じであっても、患者によって診断書を書いてもらえる場合と書いてもらえない場合があります。
国民の皆様は納得されないと思いますが如何でしょうか。
次、文章の全体「所期の効果の得られなかったもの」を検討してみます。
保険発28号のでは一応「療養の給付」を試みる解釈になっております。
「療養の給付」で「所期の効果がない」と確かめられてから「療養費」ということになると現実にはおかしな現象も出てきます。
「療養費」は最高6ヶ月65回という制限(*注)がありますから仮に患者の疼痛が60%まで改善しており(もう少しの期間治療をすれば100%近くまで改善する可能性がある)のに治療終了をした場合にはこの患者は「治療効果がなかった」と判明している医療機関に戻らざるを得ません。
これは「治療効果があったかもしれない鍼灸は捨てて」「治療効果のないと判明(あくまでも通達上の理解です)して」いる医療機関に戻ることを認めているということで、これも国民には矛盾と映ると思います。
(注*平成14年6月から期間、回数制限は撤廃になりました)
2 鍼灸の「医療併用」禁止理論を改め受領委任払いにするのが自然
以上、見てきましたように、厚労省の「医療併用」禁止理論は健康保険法第44条の2からかなり逸脱していると考えられます。
また、医療の給付形態には現に、「療養の給付」と「療養費」の併用もありますので、鍼灸だけ「医療併用」禁止というのは論理的に無理があります。
厚労省はこの論理矛盾を訂正し、「受領委任払い」を鍼灸マッサージにも認めるのが自然であろうと思いますが如何でしょうか。
さいごに
第44条の2の法律文からみますと「療養の給付」と「療養費」を対立させているのではなく「療養の給付」でできないところ(不足している部分)を「療養費」で補うということです。
「療養費の支給基準」の冒頭でも「現金給付である療養費はあくまで「療養の給付」で果たすことのできない役割を補完するものである。」以外のことは述べておりません。
事実、鍼灸の給付以外はすべて、「療養の給付」を「療養費」で補うという考え方から給付されており(装具、生血、医療による訪問看護等)、「療養費」を使うなら、「療養の給付」は不可、またはその反対に「療養の給付」を使うなら「療養費」は不可という理論構成にはなっておりません。
第44条の2のオーソドックスな解釈は単純に「患者が鍼灸や柔道整復に受けてみたい」という要望に対して、これらは「療養の給付なすこと困難」で「療養費の支給」で補うということでし理論的整然としております。
それを「医師による適当な治療手段のない」「所期の効果が得られなかった」とかの理論を創作をするものですから、柔道整復にはこの理論は適用しないとか、柔道整復は整形外科と共通理論があるとかの言い訳が必要になってくるのであると思います。
厚労省は国民のニーズに答えるためには第44条の2を如何ようにでも解釈する姿勢もあります。
例えば先ほど掲げましたが、訪問看護「療養費」や老健施設等の施設療養費などの「受領委任払い」承認はそれです。
以下、厚労省老人保健課・医療課 監修の「訪問看護業務の手引」には堂々と本来「現金給付」であるが「受領委任形式」にしたことが述べられております。
「老人訪問看護療養費は、形式的にはいわゆる現金給付です。
現金給付とは,利用者が老人訪問看護を受けた場合に,その費用を利用者が一時老人訪問看護ステーションに支払い,後日,市町村長からその費用の償還を受けるというものです。
しかし,利用者の経済的な負担等を考慮して,実際には,現物給付の形がとられています。
つまり,老人訪問看護療養費を市町村長が直接老人訪問看護ステーションに支払い,これによって利用者に支給したこととする法律の手当てがされています。
これにより利用者は,利用料だけで,費用の負担なしに老人訪問看護が受けられるわけです。」(「訪問看護業務の手引」)
厚労省にそういう姿勢があるならば「療養の給付なすこと困難な場合」の解釈をあれこれいじくり回すよりも患者のニーズに答える「療養の給付」以外の措置として「療養費」を受領委任払いを当たり前のこととする方が法律的には順当で自然であると思われますが如何でしょうか。
以上
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