医療保険審議会 柔道整復等療養費部会 
平成7年9月8日の報告書(通知)

 (国保新聞平成7年10月1日より)
 医療保険審議会に設置された「柔道整復師等療養費専門部会」

 委員氏名
 水野 肇(医事評論家)
 桑原 芳彦(健保連常務理事)
 河内山大作(全国化学一般産業労働連合会会長)
 坪井 栄孝(日本医師会副会長)
 西   法正(国立立川病院院長)
 原   桃介(筑波技術短期大学教授)
 深谷 昌弘(慶応大学総合政策学部教授)
 三浦 幸雄(東京医科大学病院院長)
 関野 光雄(全日本鍼灸マッサージ師会会長) 
 中村 万喜男(日本鍼灸師会会長)
 松本 好司(日本柔道整復師会会長)
 村谷 昌弘(日本あん摩マッサージ指圧師会会長)


 「柔道整復等の施術の保険給付について」
 当部会は、平成五年十二月の医療保険審議会の建議を受け、平成六年十二月以降、柔道整復、あん摩・マッサージ、はり、きゅう(以下「柔道整復等」という)の施術に関し、支給の適正化及び保険給付における今後のあり方について検討を行ってきたところである。
 柔道整復等については、原則として、対象疾患、医師の同意等の一定の要件を満たし、医療上の必要性が認められる場合に限り療養費として支給対象とされているが、その支給額は、国民医療費の伸びを上回って伸びており、柔道整復で約二千億円、あん摩・マッサージ、はり、きゅうで約百億円を超えるまでになっている。
 また、平成五年十二月には、会計検査院から、柔道整復に係る療養費については、不適正な請求や請求内容に疑義がある省のが多数認められたとして、適正な支給を期するため、是正改善の処置を執る必要があるとの指摘を受けている。
 これらの状況や医療保険審議会の建議を踏まえ、支給の適正化等について取りまとめた当部会の意見は次のとおりである。



 第1 医療上の役割や保険制度における位置付け

 1、打撲・捻挫に対する柔道蓬復に係る医師の同意
 (1)整形外科の治療、特に、捻挫に係る診断学、手術療法、装具療法等は、近年、急速に進歩しており、外観上は、単なる捻挫と思われるものであっても、筋や腱が断裂している場合等があり、速やかな外科的手術が必要なときもある。
 このため、打撲・捻挫に対する柔道整復については、医師による診断は不可欠であり、医師の同意等を療養費の支給要件とすべきとの意見があった。

 (2)一方、打撲・捻挫に対する柔道整復については、外傷性の疾患のため原因が明らかであること等の理由により、医師の同意等を療養費の支給要件としない、現行の取扱いを継続すべきとの意見もあった。
 (3)打撲・捻挫に対する柔道整復に係る療養費については、医療保険制度の仕組みからみて、他の医業類似行為と同様、医師の同意等が必要であるとも考えられる。
 しかし、具体的な取扱いについては、過去の経緯等も勘案し、従来どおりの取扱いとすることが適当である。
 少なくとる打撲・捻挫に係る療養費の支給の適正化を図る観点から、支給対象となる外傷性疾患について審査基準の統一等を図る必要がある。
 (4)また、柔道整復師と医師との連携の重要性に鑑み、柔道肇復師の研修の充実等を検討する必要がある。


 2 あん摩・マッサージ、はり、きゅうに係る医師の同意
 (1)あん摩・マッサージ、はり、きゅうに係る療養費の支給対象となる疾患の多くは、いわゆる外傷性の疾患ではなく、発生原因が不明確で、治療に長期間を要するものが多いこと、治療と疲労回復等との境界が明確でないこと等の理由により、現在、医師の同意書又は診断書の添付を療養費の支給要件の一つとしている。
 この取扱いについては、柔道整復と比較して不公平であるとして、医師の同意書等を必要とする現行の要件の撤廃又は簡素化を図るべきとの意見があった。
 (2)はり、きゅうに鎮痛効果及びあん摩・マッサージに筋麻痺の緩和効果等の対症効果があるとしても、施術の手段・方式や成績判定基準等が明確でないため、客観的な治療効果の判定が困難であること、治療と疲労回復等との境界が明確でないこと等から現行どおり医師の同意等を療養費の支給要件とすることが適当であると考えられる。
 今後の研究の進展等により、これらの施術の客観的な治療効果の判定等が可能となった段階で、改めて検討することが適当である。
 (3)また、患者が医師から同意等を受けにくい状況にあるとの指摘もあり、必要な場合に同意書や診断書の発行が円滑に行われるよう、具体的な措置を講ずる必要がある。
 (4)また、そのメカニズムは明確ではないが、はり、きゅうには、現行の対象疾患以外にも鎮痛等の効果が認められる疾患については、医師の同意の下に、新たに療養費の支給対象とすることを検討することも必要である。



 第2 給付の仕組み

 1、柔道整復に係る療養費の受領委任払い
 (1)療養費は、いわゆる償還払いが原則であるが、柔道整復に係る療養費については、保険者との協定又は個人契約によって、いわゆる受領委任払いが特例的に認められている。
 しかし、受領委任払いについては、施術の内容や額等の患者による確認がないまま施術者から請求が行われていることや現在の仕組みが、協定及び個人契約に基づくものであり、審査や指導・監査の実効性の確保が困難であること等の問題が指摘されている。
 (2)柔道整復に係る療養費について、特例的に受領委任払いが認められてきたのは、次のような理由によるものであり、こうした経緯やこれまでの実績を考慮すると、今後もこの取扱いを継続することはやむを得ないものと考えられる。
 整形外科医が不足していた時代に治療を受ける機会の確保等患者の保護を図る必要があったこと
 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)第17条ただし書に基づき、応急手当ての場合には、医師の同意なく施術ができること等医師の代替機能をも有すること
 施術を行うことのできる疾患は外傷性のもので、発生原因が明確であることから、他疾患との関連が問題となることが少ないこと
 (3)しかし、受領委任払いを特例的に認めるとしても、指摘されている問題を解決するために、柔道整復師に対する研修の促進等制度の周知を図るとともに、支給の適正化の徹底を図る必要がある。


 2、あん摩・マッサージ、はり、きゅうに係る療養費の受領委任払い
 (1)あん摩・マッサージ、はり、きゅうに係る療養費については、これまで受領委任払いは認められていないが、柔道整復との均衡から、受領委任払いを認めるべきであるとの意見があった。
 (2)しかし、柔道整復に受領委任払いが認められているのは、あくまでも特例的であること、また、あん摩マッサージ、はり、きゅうに係る療養費の対象疾患の多くは、外傷性の疾患ではなく、発生原因が不明確で、治療と疲労回復等の境界が明確でないこと等から、施術を行う前に保険者が支給要件の確認をできない受領委任払いを認めることは適当でない。



 第3 支給の適正化

 1、柔道整復に係る療養費の審査体制の充実
 (1)柔道整復に係る療養費については、会計検査院から支給の適正化を図るべきである旨指摘されていること、受領委任払いという現物給付に類似した取扱いであること等のため、支給の適正化を図る方策を講じる必要がある。
 (2)しかし、柔道整復に係る療養費の審査については、審査委員会が未だ設置されていない都道府県等があること、審査委員の構成に片寄りがあること、施術者により審査の対象となっていない場合があること等、審査体制が不十分な状況にある。
 (3)受領委任払いによる柔道整復に係る療養費の支給の適正化を図るため、適正かつ公平な審査が確保できる公的な審査委員会を各都道府県に設置する必要がある。
 (4)この審査委員会は、審査の公正を確保するため、保険者、施術者、学識経験者の三者が同数の構成にする必要がある。
 この場合、学識経験者の代表として医師も加える必要がある。
 (5)また、この審査委員会では、公平を確保するため、健康保険組合等の保険者や他の都道府県に所在する保険者を含め、全保険者に係る療養費の全数を審査対象とする必要がある。
 (6)また、審査の実効性を確保するため、審査委員会の権限の明確化を図ることについても、検討する必要がある。


 2、柔道整復に係る療養費の審査等の適正化
 (1)支給額の算定基準の適正化
 柔道整復に係る環養費の支給額の算定基準は、原則として出来高払いとなっていることから長期、多部位等過剰な施術につながりやすい面がある。
 したがって、長期、多部位の施術に係る逓減制の充実等の算定基準の適正化を図る必要がある。
 (2)審査基準の統一
 (1)柔道整復に係る療養費を保険者等が審査する場合、これまでに出された療養費の取扱いに関する通知等に基づいて行われている。
 審査の適正化を確保するため、近接部位の取扱い、所定の申請書による申請等審査基準を統一的に定め、その内容の明確化を図る必要がある。
 (2)打撲・捻挫は、関節等に対する可動城を超えた捻れや外力による外傷性の疾患であり、療養費の対象疾患は、急性又は亜急性の外傷性であることが明白な打撲・捻挫に限るべきである。
 したがって、内科的原因による疾患は、療養費の支給対象にならねいことを審査基準において明確にする必要がある。
 (3)また、適正な審査を行うためには、療養費支給申請書への負傷原因の記載が不可欠であるが、現在は、業務災害、第三者行為等の原因しか記載されておらず、記載方法に配慮し、具体的な負傷原因の記載が行われるようにする必要がある。


 3、柔道整復に係る療養費の指導・監査の実行性の確保
 (1)現在、受領委任に関する協定又は個人契約に基づいて指導・監査が行われているが、受領委任払いは、現物支給と同様に、施術を行う前に保険者による内容の確認を行うことができないことから、事後的な調査である指導・監査の充実を図る必要がある。
 (2)指導・監査を拒否した場合等については、協定等で2年間契約を停止し、受領委任の取扱いを行わないこととしているが、この運用の徹底を図るため所要の措置を講ずる必要がある。
 (3)さらに、指導・監査の実効性を確保するため、指導・監査の法令上の位置付けについて導検討する必要がある。


 4、その他
 (1)あん摩・マッサージ、はり、きゅうについても、療養費制度の周知を図るとともに、支給の適正化を図る必要がある。
 (2)また、施術所においては、医師の同意等必要な記録の整備に務める必要がある。



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