
空港で。日本シリーズの中継を尻目に、いざ高知へ!
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高知行きは、一通のメールで決まった。
それなりに仕事で忙しくしていた10月のある日、勇者の残党氏より例のごとく携帯メールが届いた。彼はマメに近辺で起こった野球ネタをメールしてくれている。
この日もさしづめ「しゃむすん」で小ネタでもあったのだろうとメールをチェックした私は、次の瞬間驚愕した。
何と彼は、高知にいるというのである!
よさこいリーグを観るために船で高知へ渡ったのだと、そのメールには書かれていた。
ああ何という事だろう。俺も行きたい!メールを見た途端、激しい衝動にかられた。しかも世はオリ近合併騒ぎの真っ只中である。はっきりいってこの騒動にも正直疲弊していた。
「サーパス神戸も終わりかもしれん」
愛し、応援したチームが青波とともに消滅する。−漫然とした不安と、恐怖とを感じていた管理人は、気付くと携帯で高知便の空席を確認していた。
高知よさこいリーグ。
ウエスタン・リーグの秋季教育リーグの通称だ。高知県内の6球場を舞台に、明日の一軍を夢見る若手選手たちがしのぎを削る。シーズン終了とほぼ時を同じく開幕し、2週間に渡り熱戦が続く。
日程と仕事の都合とを照らし合わせよく考えた。高知に行ける日をひねり出すとすれば、閉幕間際の週末、21日の夜から高知へ入ろう。ここしか無い。
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今年はとても台風が多い一年でもあった。
高知入りを控えたこの週末も例外では無かった。
水曜日には現に四国に台風が直撃。航空便はほぼ全て欠航となっていた。
この余波を受けて、航空機のチケット予約も困難を極める。羽田−高知便はほとんど満席の状態という中、何とか21日木曜日の出発便と、日曜日の復路便は予約できた。しかし日曜日は昼の便を予約するのがやっと。この時間では最終戦を見ることが出来ない。悔しい思いも残った。
出発の日。平日の夜ということもあってか、羽田空港にはサラリーマンらしき人達の姿が目立つ。かくいう自分もそうなのだ。終業後即羽田入りし、スーツのままで便に乗り込む。おりしもこの日は日本シリーズ真っ只中。空港のTVでも中継が映し出されていたが、もはやそれに興味が向くことも無かった。
導かれるように高知に向かう。勇者の残党氏のメールから約10日後の、高知入りとなった。
高知市内までは空港からバスに乗る。
午後8時過ぎに高知空港に到着した管理人は、空港バスで市内へと向かった。高知市内へ到着したのはそれから約40分後のことである。時計は午後9時を指していた。
ここから宿泊先の筆山荘へとさらに歩を進める。
まずはチェックインだ。空腹を感じていたが、市内を歩くには荷物が重すぎる。着替えも済ませたい。
はりまや橋交差点を西へ、33号沿いを行き、大橋通りを南へ折れる。景色が急に閑散としてくる。街灯もまばらだ。人影も少ない。
ふと、管理人の前を行く一人の男性の姿が目に入った。ジャージ姿で、コンビニのビニール袋を提げている。雑誌や、菓子等を買っているようだ。もう一方の手には携帯電話を持ち、誰かと話しながら数メートル前を同じように歩いていく。
もしや、と思った。宿泊する筆山荘は、知る人ぞ知る阪急ブレーブスの高知キャンプでの定宿。そしてこのよさこいリーグ中は、サーパス神戸監督、コーチはじめ全選手が使用しているのだ。
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部屋の中。一人の宿泊には充分。窓から筆山が見える

筆山荘外観。日曜は正面鏡川沿いで朝市も開かれる |

正面入り口にはこんな札も。嬉しい

市内からバスで東部球場へ。観光客には乗り方が難しい |
予感は当った。前を歩く彼は、そのまま筆山荘の方へと向かっていく。宿の前でやおら振り返り、旅館に戻るのを止めた。そして旅館向かいの鏡川河川敷に行き、携帯での会話を続けていた。
迎祐一郎選手だった。
ともかく彼のナビによって、迷うことも無く筆山荘に到着できた。旅館はこちらの到着が遅かったにも関わらず、暖かく迎、いや迎えてくれた。
事前にHPを通じて、自分が阪急ファンであること、今回はサーパス神戸を応援に行くことを伝えていたせいもあってか、到着早々、選手がこの時間はもう風呂をすませていることや、正面玄関が閉じた夜12時以降に選手が飲んで帰ってくる際に使うインターフォンの存在等を教えてくれた。あなたもそうして下さいという事なのだろう。
ともかく空腹に耐えられなくなっていた管理人は、部屋に入るとすぐに着替えを済ませ、高知市内へと再び戻ることにした。とくに下調べもしていなかったので、適当に目処をつけて入った焼肉店で夕食をとる。この時間にやまちゃんやアーサー王氏に現況をメールしておいた。
食後、今度は商店街を抜けて戻るルートを選んだ。こちらの方が人の通りも多い。
案の定、酔客や、学生らが多く行き交う。その中には、褐色の、体格の良い男らの姿も見ることが出来る。おそらくはよさこいリーグに参加している若手選手なのだろう。顔を見ても誰なのか判りかねるのが情けないところだが、皆でくればもっと盛り上がれるだろうななどと考えながら宿へ戻った。
翌朝からはいよいよ観戦である。
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朝、携帯の着信メロディが鳴った。
着信音を最大にしてあった。その音で目覚めた。通知画面には「アーサー王」と表示されている。
昨晩メールのやりとりの中で現状を報告したところ、「選手達と一緒に朝風呂に入るべき」というリクエストがきていたのだ。
筆山荘では、朝6時から最上階にある大浴場が利用可能となっている。旅館の人によると、選手達は6時45分から朝食になるのだが、その前後で各々朝風呂に入っているという。大浴場は朝食をとっている大広間のすぐ横にあり、食前食後にそのまま立ち寄るという訳だ。
夜間は一般客と選手らとは時間を分けて入浴してもらっているらしいが、朝風呂に関しては皆同じように入ってもらおうという計らい(?)なのか。いささか照れくさいがここは折角の機会と、6時にわざわざ電話を鳴らしてくれた事に感謝しながら、7階の大浴場へと向かった。
エレベーターを降りる。と、いきなり目の前にサーパス神戸のTシャツを着た大男がいる。
「別府だ!」
声にならない声が出た。この階は、エレベーター降り口正面に大広間がある。一般客と仕切られてはいるものの、ここに来れば嫌でも前を通らなければならない。選手、コーチ達が思い思いに朝食をとっている横をそろそろとぬけ、大浴場の戸を開けた。
と、どうやら1番風呂なのか、誰も更衣室には居ない。若干肩透かしを食らいつつも浴場へ。しかし洗髪していると間もなく何人か選手やスタッフが入ってきた。
あえて誰かは書かないが、この状況はなかなかに緊張するものである。本来リラックスする風呂で緊張しなければならないのも、これはこれで辛い。
朝風呂のあとは広間で朝食を済ませ、部屋で少しウトウトしてから出かけた。市内からバスにのり、目指すは高知市東部球場である。選手達をのせたバスは、この間にすでに出発していた。
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高知市東部球場。外で塩屋選手が普通に取材受けてます

ダイエーが練習中。よもやこのユニも見納めとなるとは |

試合後猛烈な練習開始。ゴッシーを監督が熱烈指導

「あと2日しかないんやど!」と選手を鼓舞する監督 |
バスには30分近く乗っていた。
高知市東部球場に着く。辺りは田園風景が広がっている。というより、バスで市内を離れてからは、ずっと田園風景だったといった方が正解だろう。この一帯にだけ、アリーナを始めとしたスポーツ施設が連なっていた。これらはまだ新しい建物ばかりのように見える。詳しくは知らないが、国体か何かの折に行政により建設されたのだろう。立派な施設だったが、常時使われているとも思えず、余りに人気が無いので何か勿体無い気がした。
球場では既にダイエーが打撃練習を始めていた。通常試合前の練習はホームチームが先に行い、ビジターチームがその後というのが慣例である。
試合開始までそれでも若干時間はあったが、平日の、しかも市営球場などとも違い僻地にあるこの球場では応援のファンもまばら。試合前には20人ほどの観客しかいなかった。1チームのスタッフよりも少ない人数である。
そんな中試合も淡々と進んだ。
(確か)リーグ5連敗中だったサーパスであったがこの日も惜敗。6連敗となる(たぶん)。相川、竜太郎、後藤ら中々のメンバーだったが、ダイエー投手陣に押さえ込まれた。
試合後はミーティングの後、サーパス勢だけが練習を開始した。この日はそういう日だったのか、選手も当然の様にそれぞれ持ち場について指導を受けている。
加藤監督の様子に目を凝らしていると、しばらくネット裏でゴッシーをチェックしたあと、直々に指導を開始した。自らトスをし、彼の打撃フォームに細かい指示を与えている。ときには他の選手にも、
「このユニフォームも最後やど」とか、
「あと2日しかないんやど」などと声をかけている。
サーパス神戸も、自身が監督である事もこのときはこれで最後だと監督は思っていたようだった。
この台詞を聞いて管理人は思わず涙がこぼれそうになったが、監督はそれでも機嫌がよいのか、時折大声を張り上げながら、時には自らバットを握りながら指導を続けた。
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1時間くらいたったろうか。
ゴッシーは本当に細かい指示を受けていた。特に下半身の送りを教え込まれていた。写真にもあるように、隣でトスバッティングをしていた福留選手が手を休めて見守るほど、それは熱を帯びていた。
「そろそろ仕上げましょう」
ゴッシーが袖で汗を拭いながらいった。もう残っている観客も10人ほどになっていた。
「よっしゃほなラストな」と監督が言ってからさらに10球ほど打って、直接指導は終わった。他の選手の練習は既に終わっていた。最後の打球が強烈な打球音とともにネットに打ち込まれたとき、スタンドの観客からは期せずして大きな拍手が沸き起こった。管理人ももちろん、自然に拍手していた。
ゴッシーはスタンドに向かって、
「ありがとうございました」と頭を下げた。すがすがしい光景だった。
練習後、ほどなくして選手、監督コーチが球場入り口に現れ始める。駐車場にあった選手バスが入り口に横付けされていた。
高知まで応援に来ている熱心なサーパスファンや、地元のファンが思い思いに選手達に声をかけている。程なく監督が姿を現したので、管理人も
「もう最後かもと思って応援にきました」と声をかけた。と、
「おお、ホンマやでえ。もう終わりやでえ」と静かに応えてくれた。お疲れ様でしたとさらに言うと、「お疲れさん」とバスに乗り込む監督。また涙が出そうになる。
その後、藤井コーチも姿を現したので先の西京極でのお礼をいい、バスを見送った。
寂しいのと同時に、来てよかったのだと強く感じた一日だった。
夜は高知放送の知人に美味しい店の情報を聞き、はりまや橋そばの「あたたかい鰹のタタキ」が食べられるという地酒の店に入った。ここは少々値が張るものの本当に旨かった。
やっと高知らしいものが食えた。
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名物という「あたたかい」タタキを食す。ウマイ!

翌日は高知市からJRに乗り土佐山田駅へ |

土佐山田スタジアム。サーパス応援団がきていた

選手を見送るファン。この日は観客も多かった。 |
翌日。この日も朝風呂に入る。風呂から部屋に戻る際、エレベーターホールで藤井コーチとすれ違う。
昨日の別府コーチに続き、眠気が一気にけし飛んだ。
今日は土佐山田スタジアムへ向かう。
サーパス神戸対JR四国戦を観戦するのだ。
高知へ入る前は、サーパス以外のチーム、特にチームとしては本当に最後となる近鉄の試合を観ることも考えていた。どの試合を観るかというチョイスは、到着してからの気分で決めようと思っていたのだが、高知入り後はもはやサーパス以外のチームを観る気は完全になくなっていた。
JR高知駅の正面に近鉄選手が宿泊している高知ホテルがある。ホテル入り口に「歓迎」と書かれた看板が見えた。バフィーのイラストと「大阪近鉄バファローズ」の文字が一層寂しさを引き立てる。
それを横目にJRに乗り込む。特急「南風」に乗り、土佐山田駅へと向かった。
駅へは程なく着いた。帰りの時刻表を記録し、球場へ歩を進める。住宅や田畑を数分歩くと、忽然とその球場は姿を現した。でかい。
昨日見た東部球場とは違う、地方都市の新しい球場という雰囲気だ。スタンドも人工芝もまだ新しさを感じさせる。
さすがに社会人のJR四国に知っている選手の顔はない。彼らの練習時間は球場の内外をうろうろとし、時間を潰す。途中長村氏が球場の外におり、携帯電話で話をしていた。
試合は昨日とは打って変わって完全なサーパスペース。立ち上がり先発松村がやや乱調だったことを除けば、中盤に連打で得点し、最後は大久保が締めての快勝だった。社会人のチーム相手とはいえ、大久保の復調を見て取れる、意味のある試合だったのではないか。
この日も高知市内で土佐料理を食べ、地酒を飲み、満喫して翌日帰途に着いた。
最終戦を見られなかったのは残念だったが、高知まで来た甲斐は充分に感じられる遠征だった。
その後、サーパス神戸の存続が決まり、加藤監督の留任が決まり、あげくゴッシーもオリックスに残った。「あと二日しかないんやど」という加藤監督の言葉は現実とはならなかったが、管理人はもちろんそうならなくてほっとしている。来年のプロ野球を考えるとどうしても暗い気分になるが、唯一このチームだけは来季の我々の楽しみとなってくれそうだ。
また、今季を最後に山森コーチがチームを去ることになった。彼をきっかけにサーパスを応援していたファンも多かったと思うし、管理人も彼こそ「ミスターサーパス」と公言していただけに非常に残念だ。彼の姿を高知で見られたのも最後の素晴らしい思い出となった。
頑張れ、サーパス神戸!
阪急ファンの希望の灯火よ!
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