情報公開法改定への提言(2004年6月28日)


 総務省が、情報公開法改正のための意見募集を行っていたので、それに投稿したものである。その事実を知ったのが締切の数日前であったために、1日で書いた文書である。そのためにやや文章に乱れがある。

 総務省によれば、30件の意見が寄せられたらしい。「情報公開法の制度運営に関する検討会」の報告の7頁に、歴史的資料の個人情報保護の年限の話が書いてあることから、一応私の文章も読んでもらえたのかなと、勝手に思っている。
 また下記の3については、この報告の中でも相当に強く改善すべきであるという指摘があった。

 意見の方向性は、今でもそれほど間違っていないと思っているので、一つの歴史文書として、Web上に載っけておきます。なお文中にある「施行令の第3条」については、ブログの2006年8月15日分を参考にしてください。

2006年8月26日 記


 私は情報公開法施行当初から、宮内庁に対し、情報公開請求を行ってきました。不服審査も経験しており、その体験を文章にして公表しています(文末参照)。その体験から、7点ほど改善点を挙げたいと思います。

1.第5条第1項ハの公務員について
 公的機関の職務に関わった民間人は公務員と見なすべきである。私は、現天皇の教育係(宮内庁東宮職常時参与)であった小泉信三氏の情報が墨塗りにされたことを発見し、情報公開審査会へ不服審査を行った。その結果として「公務員に準ずる存在」として開示決定を受けた(答申番号:平成15年度(行情)188号)。小泉氏に限らず、公務員でない民間人が、各省庁の政策決定に関わっている事項は多いと思われる。そのような職務は事実上の公務員としての行為と考えても良いのではないか。
 また、宮内庁によれば開示される公務員は係長以上となっているが、公務を行っているという点では省庁内の全ての人に変わりはない。よって、公務に携わる以上、公務員の名前は全員開示するべきではないのか。

2.第5条第1項の個人情報の保護について
 1の対象を除き、個人情報の保護に年限を付けるべきである。たとえばドイツの場合、生後110年、死後30年とされている(早川和宏「行政機関情報公開制度と国立公文書館制度」『成城法学』第六十三号(二〇〇〇年)、一四五頁)。特に、歴史的資料への適用(施行令の第3条)には年限をもうけるべきである。「歴史的資料」とは、すでに「歴史」になった文書を指すことは自明である。歴史を描くためには、誰が何をやったのかということは最も基本的な資料になる。その文書が「個人情報」として墨塗りにされた場合、歴史を描くことすらできない。
 また、そもそも歴史的資料の取り扱いについては情報公開法と別途の法を作るべきではないか。歴史的資料には第5条に関わるものが多数ある(1項や3項など)。しかし、行政文書とは異なり、すでに「歴史」となった文書である。その開示については各文書館の運用にゆだねるべきである。もし、立法機関にまで情報公開法の適用範囲が広がるということがあった場合、国立国会図書館憲政資料室にあるような資料のほとんどは、公開が不能になるのではないか。これは歴史学の発展を妨げるだけでなく、大きな文化的遺産の損失になりうる。施行令第3条の見直しを求めたい。

3.各省庁の文書管理ファイル名について
 表題から内容が推測できるようにするべきである。宮内庁を例に取ると、「庶務関係録」「国会提出資料関係」などであり、内容の推測は難しい。直接問い合わせた場合、どのような内容があるか教えてもらえるが、すべての文書に対しそのような手間をかけることは不可能である。どこに何が入っているのかを、最低限わかるようなファイル名を付けるべきである。おそらく、このようなファイル名になっている原因は、文書管理システムが確立していないからだと思われるので、文書管理法などの法的整備が必要なのではないか。

4.歴史的資料の公開について
 公文書館などで管理する歴史的資料の公開を行うことを義務づけるべきである。そもそも歴史的資料を設定したのは、「公文書館、博物館、国立大学等において、歴史的若しくは文化的な資料として又は学術研究用の資料としての価値があるために特別に保有されているものは、できるだけ一般の公開に付されるべきであるが、貴重資料の保存、学術研究への寄与等の観点からそれぞれ定められた開示範囲、手続等の基準に従った利用にゆだねるべきであり、対象文書とすることは適当でない。(総務省HP「情報公開法制の確立に関する意見」)」との理由のためである。それにもかかわらず、宮内庁書陵部などで資料公開が遅れており、公開したくないが故にわざと遅らせているのではないかという疑念すら沸く。予算や人員の関係もあろうが、最低限の目録及び請求があったものを優先させるなどの対策を取るようにするべきである。また、今後歴史的資料が増える可能性が高まる以上、国立公文書館の予算、人員の拡充を積極的に行うべきである。

5.異議申し立てに対する各省庁の回答について
 異議申し立てが行われた各省庁が、情報公開審査会へ諮問するまでの期限を3ヶ月などと決めるべきである。私は現在宮内庁に2件の異議申し立てをしているが、そのうちの一件は8ヶ月以上の時間が経過しているにもかかわらず、未だに審査会への諮問が行われていない。もっと迅速に対応するような規定を作るべきである。

6.電子化資料の取り扱いについて
 今後、電子化情報が多くなる以上、その消去、及び改ざんが行われる可能性が高まることが推測される。これに対する対策(具体的な文書管理の方法。実際に行われた際の罰則。)などを法に組み込む必要はないのか?電子情報の専門家を「情報公開法の制度運営に関する検討委員会」に入れるべきではないのか。

7.歴史学者の関わりについて
 歴史的資料を使用する多くは歴史学者である。是非とも歴史学者からのヒヤリングを行ってほしい。そして、その意見を採り入れることを考慮してもらいたい。

以上。

参考文献
瀬畑源「情報公開法を使いこなす−宮内庁における体験から」『季刊戦争責任研究』38号(2002年冬)
瀬畑源「情報公開法の不服審査−宮内庁に関する審査の実例」『年報日本現代史』9号(2004年)

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