ホメオパシーには、「Miasm(マヤズム)」という考え方があります。これは、他の医療体系にはない独特の考え方です。ホメオパシーで、日常のセルフケアをするというレベルではあまり気にしなくても良いのですが、慢性疾患のケアを考えられている方にとっては頭に入れておくと良いでしょう。では、「マヤズム」について、私なりの説明を試みてみます。

「マヤズム」とは、簡単に言うと、私たち一人ひとりが先祖から受け継いできた“負(病気)の土壌”のことを意味します。
それは、歴史的・遺伝的・肉体的・精神的要素を含んでいて、大きく5つの種類があると考えられています。
その5つの土壌とは、

 Psorinum(ソライナム:疥癬)
 Syphilinum(スフィライナム:梅毒)
 Medorrhinum(メドライナム:淋病)
 Tuberculinum(チューバキライナム:結核)
 Carcinosin(カシノシン:ガン)


の5つです。

それぞれの土壌に特有の特徴・個性・傾向があり、どのマヤズム(土壌)を持っているかによってどんな病気にかかり易い、或はどんな症状を起こしやすいなどの違いがあります。私達は、一人ひとり、必ずこの“負の土壌”を持っていると考えます。そして、このマヤズム(土壌)は、一人につき1つとは限らず、現代人のほとんどは複数の土壌を持っていると考えられています。

このマヤズムを考えるとき、まさに土の中の微生物に例えると分かりやすいかも知れません。
土の中には、長い間かかって出来上がった微生物の環境があり、普通は安定しています。
(人間で言えば、日常は何も問題なく健康ということ。)
そのイメージが下の図@です。
図@
実際の土壌はこんなものではないでしょうが、安定しているイメージ図として表現しています。つまり、普段はこのようにバランスが取れ、安定している(健康な状態)と考えます。しかし、何かの要因で、このバランスが崩れた場合のイメージが下の図Aです。
図A
このように、バランスが崩れると、 
結果A   水はけが悪くなる
酸性・アルカリ性のバランスが崩れる
固くなる
干からびる
ぬかるむ
そして、結果Aが進行すると、
結果B   作物が育たない
作物が枯れてしまう
害虫が付く
腐る
このようになっていきます。これが、病気で言えば、心身のバランスが崩れ(結果A)、病気になる(結果B)ということになるわけです。
そして、この時、バランスが取れている時には大人しくしていた悪玉菌が、暴れだしてしまうのです。悪玉菌が暴れだすと、土壌は腐敗(病気)の方向に向かっていきます。
この時の、悪玉菌がマヤズムなのです。マヤズムは、普段は何も悪さをせず大人しくしていますが、様々な要因で暴れだします。マヤズムが暴れだすことを、「マヤズムがActive化する」又は「マヤズムが立ち上がる」と言います。
そして、マヤズムが立ち上がった結果として、“結果A”という様々な病気の前駆状態が生まれ、“結果B”という病気或は病気が進行した状態につながっていくのです。
また、このとき、上の5つのマヤズムは、それぞれ菌の種類が違うと考えてください。菌の種類が違うことによって、図Aの状態(バランスの崩し方)も変わりますし、結果A及び結果Bも変わってくるわけです。菌の種類によって、それぞれが持つ傾向やかかりやすい病気、進行の具合などが違ってくるのです。
では、このようなバランスを崩すきっかけとなる要因、つまり、悪玉菌が暴れだす(マヤズムが立ち上がる)きっかけとなる要因は何かと言うと、
  ストレス・過食・偏食・冷え・不摂生・疲労・薬品・化学物質・不安・恐怖・心配・怒り・恨み・我慢・責める気持ち
などがあります。こういうものが重なり合い、深く根ざして行き、限界に達したときにバランスを崩し、マヤズムが立ち上がると考えられます。
このように、マヤズムが立ち上がって起きた病気・症状は、暴れているマヤズムを落ち着かせ、図Aの状態から図@の状態へ戻すことが必要になります。これをマヤズム治療と言います。特に、アレルギー性疾患で発作性の症状がある人は、マヤズムが立ち上がっている可能性が高いので、マヤズム治療をすることが必要になってくるのです。
では、参考までに、5つのマヤズムの特徴について簡単に紹介します。(これらは、「マヤズム」名であると同時に、実際のレメディーとしても存在します。)
Psorinum(ソライナム:疥癬) 一番最初に産まれたと言われる根源的なマヤズムです。疥癬マヤズムの人は、皮膚病にかかりやすい傾向があります。意地汚いくらい食欲旺盛ですが、すぐ下痢します。お風呂が嫌いであまり入ろうとしません。体は冷たく、沢山重ね着したがります。常に皮膚が痒く、洗っても洗っても薄汚く見えます。
Syphilinum(スフィライナム:梅毒) 異常に小さい子どもや奇形と関係すると言われます。小さく、腺病質で、病気になりやすい反面、性格的には暴力的な部分があります。自殺願望や殺人願望を抱きやすい傾向があります。最近の凶悪な青少年の犯罪と関係があると類推されます。
Medorrhinum(メドライナム:淋病) イボ・子どもの膣炎・リウマチや粘膜の乾燥として表れます。とても大きなものを欲しがる傾向があります。強欲、特にお金に執着する傾向があります。過剰になると、非常にずる賢く、人のものを横取りしても罪悪感を感じないようになります。
Tuberculinum(チューバキライナム:結核) 肺が弱く、鼻水が垂れ、中耳炎や下痢を起こしやすい傾向にあります。神様や仏様を見たがります。今日はどこ、明日はどこ、今日はこれ、明日はこれ、というようにいろいろな場所やモノを渡り歩く人で、地に足が着いていないような人です。
Carcinosin(カシノシン:ガン) 「抑圧」がキーワードです。上から下から抑え付けられて、自分のことが何も言えないまま生きている人です。黒子が多かったり、紫色の出生班がいつまでも残ったり、イチゴ腫があったりします。もちろん、癌になりやすい傾向があります。
                                                  (「由井寅子のホメオパシー入門」より抜粋)
また、この「マヤズム」は、負(病気)の土壌と説明しましたが、私達は長い人類の歴史の中で、良いモノも悪いモノも同等に受け継いできたのです。ですから、過去から、先祖から受け継いできたあらゆるものの一部として、「マヤズム」があると言えます。受け継いできたものの中に入っているということは、また、未来に受け継がれていくということも言えるわけです。その流れの中にあるものなので、「マヤズム」は消すことはできません。土の中の微生物の例えで言えば、過去から受け継いできた良いモノが善玉菌であり、悪いモノが悪玉菌です。そして、特に良いとか悪いとかに属さないモノが日和見菌と考えられます。また、ここで言う「良い・悪い」というのは、ものの善悪ということではなく、「良い=自然の摂理」「悪い=反・自然の摂理」とでも理解してください。私達は、そういうものを渾然一体のようにして受け継いできているのです。
このように「マヤズム」は、受け継がれてきたものの中に根を張っているようなものなので、消すことはできないわけですが、しかし、暴れださないようにすることはできますし、そのために、ホメオパシーには「マヤズム治療」があります。心身の土壌を一度掘り起こして、改めて善玉菌・日和見菌・悪玉菌が落ち着いて住み分けられるようにしてやれば良い訳です。これは、ホメオパシーならではの考え方であり、治療方法です。
具体的には、ホメオパシーのケーステイクの中で、マヤズムを立ち上がらせたと思われるきっかけを見つけだし、その要素を解消する生活を取り戻すと同時に、5つのマヤズム・レメディーと各マヤズムに関係するレメディーを、同種の法則や超微量の法則などに従いながら、個人個人に処方します。マヤズム治療を受ける方は、何も特別な意識を持つ必要はありませんが、土壌という一番基礎となる部分を大掃除するのだな、というニュアンスで理解しておけば良いかと思います。一番基礎の部分を大掃除するわけですから、それなりに時間がかかったり、汚れたものが沢山出てきたり、忘れていたものが見つかったり、いろいろなことが起こる可能性があります。それが、実際の反応としては、一時的に不快な症状が噴出するという形になる場合もあるわけですが、それによって、基礎の土壌がきれいになり、バランスを取り戻すことができるのです。
特に、現代の慢性的な難治性疾患や周期的又は繰り返す症状を持っている人は、ホメオパシーの見地からすると、マヤズムが立ち上がっていることによるものが多いように見受けられます。逆に言うと、マヤズム治療をすることによって、非常に改善するケースが多いということです。
ホメオパシーを理解する上で、ご参考にしていただければと思います。

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