KARATE



クリスマス番外 


  待ちに待った3連休の初日からどうしてこんなに不機嫌な顔を前に 豪華なディナーを食べなければいけないのだろう?

 事の起こりは、数日前の雄斗の発言から始まっていた。

 「今度の3連休だけど、イブは除いて出張が決まった」

 「え?今年はゆっくり近場の温泉でも行こうって……」

 そうなのだ。部活の顧問をしている教員の羽生雄斗と今はリ−マンとはいえ、会社を興そうと日々奔走している羽鷲竜斗。なかなか休みの噛み合わない二人が、久々になんとか日程を調整した3連休だった。

 「悪い……化学部が特別賞を受賞しちゃってさ。化学部の顧問は今年新婚なんだよ」

 そんな事情はそれぞれある。

 だけど、どうしてそんなみんなの嫌がる出張を選りによって、雄斗が引き受けなければいけないのか。

 惚れた弱味で、いつも竜斗がなんでもユウに折れてはいるが、だからといってこんなに蔑ろにされていいものだろうか?

 「突然すぎないか?」

 「仕方ないだろ、仕事だぞ」

 「結局出張は顧問の仕事でユウの仕事じゃないだろう。どうして誰にでもそうやってイイ顔をするんだよ」

 「おい!女みたいな事をいうなよ」

 ユウのその一言で、二人の関係は決定的なものになってしまった。

 堪忍袋の緒がぶち切れた竜斗は口もきかないで、自室に閉じこもる。

 「どうして……」

 そうだ、どうして一緒にいたいという気持ちを分ってもらえないんだろう。

 こんな気持ちには男も女も年齢だって関係ないはずなのに。

 こう思ってしまう自分はやっぱり女々しいのだろうか?

 自分がユウに感じてる独占欲は、女みたい……なんて言われるようなうざったいものなのか?

 身体以外はなんの拘束力もない男同士だからこそ、気持ちだけは強く繋がっていたい、そんな自分の 気持ちがユウにとって、面倒に感じる時がくる。そんな予測はしていなかった。

 空気みたいに、邪魔じゃない存在を求められているのだとしたら……そして抱きたい時だけ近くに いてなんでも言う事を聞く存在だと思われているのだとしたら……とても一緒にこのまま暮すのは 耐えられないような気がする。

 その日から、ユウは何か話しかけたそうにしていたけれど、竜斗はとてもそんな気分になれなかった。

 幸い今年は家でまったりしたいというユウの希望を入れてクリスマスの料理はすべて ホテルのデリバリーを注文していた。

 いつもの年ならそれでもいそいそと、他のサイドメニューのための買い物や料理も厭わない竜斗だったが、 今年はそんな気分になれなかった。

 もし可能なら家を出てそのまま暫く冷却期間を置きたいくらいだったけど、そんな事をしたら 2度とユウは一緒に住んでくれないような気がする。

 このまま、何か雄斗に話を持ちかけたら、また、『女みたい……』発言をされるような 気がしていた。

 そうなったら本当に耐えられない。

 三連休の約束を簡単に反古にされたことで怒っているのではないのだ。自分の存在がその他大勢の 人達より低い事に傷ついているだけなのだ。

 だけどそんな事はいえない。

 そうして二人だけでイブの食卓を囲んでいるのだった。

 こんなに重苦しい空気は久々だ。自分から折れなければ、雄斗から折れてくれるなんてありえない。

 そう思うと寒々とした気持ちが、してとても食なんか進まなかった。

 「体調が悪いのか?」

 「いや、そうでもない」

 せっかくユウから話しかけてくれたのに、ぶっきらぼうな言い方しかできない自分が悲しい。

 「教頭から直接頼まれたんだよ。出張の事。日頃世話になってるし断りずらかったんだ。 いきなりの約束反古でリュウに負い目があったから、あんな心にもないこと言っちゃって 悪かったよ」

 竜斗が顔を上げるとバツの悪そうな顔の雄斗が上目づかいで竜斗の出方を見守っていた。

 思わず竜斗はため息が出る。

 「今夜はお前が挿れてもいいからさ」

 そんな甘えを含んだ雄斗に竜は思わず笑みを零す。

 女役とか男役とか、そんな事はもうこだわってなんかいない。

 ユウと一緒に身体をくっつけて眠る事ができるなら、それでいいのだ。

 「いいよ。別に……」

 そういった竜斗に「ほんと?」ともう破顔してる男に竜斗は、小さくため息をついた。

 結局惚れてるんだから、なんでも許せてしまうのだなと。

  Fin

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