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早春の番外 |
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3月になったので少しずつ日が長くなっている。 だから放課後も最近ぽかぽかしていて、とっても気持ちがいい。気持ちがいいはずなのに俺の心は寒風が吹き荒んでいる。 そんなロンリーな俺の心にますます傷口を抉るような光景が目に入ってくる。 沢田と鯉積が肩を並べて俺の先を歩いてるじゃねーか。最悪!なんだよ、なんだよ!なんなんだよ! 沢田の奴……ちょっと抵抗したくらいで、ちょっと肘鉄したくらいで、ちょっと悪口いって謝らなかったくらいでこんなにあっさりと乗り換えやがって。 情けないけど二人の後を付いていくのが嫌で、俺は慌てて元来た道を引き返した。なんかこうして引き返すのってまるで逃げてるようで悔しいけど仲良くしてる噂の二人を見たくないのだから仕方がない。 校門まで戻ったところで俺はそこに仁王立ちしてる男を見て心臓が止まりそうになる。 な、なんと、そいつはたった今、沢田と歩いていたはずの鯉積だったのだ。 「古城先輩……忘れ物ですか」 お前に関係ないだろ?といいたいところだが、気の弱い俺は「まぁ、そんなところ」 といって顔を引きつらせた。 「僕が忘れ物とってきましょうか?」 鯉積は親切そうな顔をしていう。俺とお前はろくに話もしたことが ないのに、どうして?俺がきょとんとしてると 「本当は忘れ物なんかないんでしょう?」 といって俺の顔を覗き込んだ。 俺が真っ赤になるのをみて鯉積はイジワルそうな笑みを浮かべる。 「ちょっとだけ、そこまで僕に付き合ってもらえませんか?時間はとらせませんから」 そういって俺を近くのコーヒーショップに引っ張ってきた。 俗にいうシアトル系のコーヒー店、明るい店内とお洒落な内装に俺は思わず辺りを見回す。 「カフェモカ」 「カプチーノダブルで」 コーヒーの味なんかさっぱり解らないから、取りあえず聞いた事のある名前を告げる俺と違って 鯉積の余裕のある様子が俺にはなんか面白くない。 「先輩って沢田先輩と付き合っていたりします」 席に座ると鯉積は単刀直入にいいやがった。顔は可愛いけど喰えない男のようだ。 「ち、違うよ……」 な、何をいきなりこんな明るい店内で言い出すんだ?このバカは? 「ですよね。沢田先輩と古城先輩ってあんまり合わないような気がする」 「な、なに?」 ほっとけよ!似合わなくて悪かったな!だけどてめーだけにはいわれなくねーぞ!ムカついてる俺を無視して鯉積は徐に立上がり何かクッキーのようなモノを注文してるようだ。 なんか年下のくせにこういうところに出入りするの俺より慣れてないか? 手持ち無沙汰の俺はつい癖で鯉積の顔をナプキンに悪戯描きしていると戻ってきて開口一番こういいやがった。 「古城先輩って先輩だけどなんか可愛いっていうイメージですね」 それってクッキーを差出しながらいう台詞か?旨そうだからってつい素直に受け取る俺も俺だけど。 「し、失礼だぞ、お前!」 あぁ、いってる事と行動が噛み合ってないぞ俺! それにしてもお前、後輩の分際で何をいいやがる。温厚な俺だってしまいにゃ怒るよ?それなのにくすくす笑っていてめっちゃむかつくんですけど。 「沢田先輩と下宿先がいっしょだとか?」 そんな事までこいつに話してるのか?下宿先が一緒じゃなくて俺んちに下宿してるんだけど 正直に訂正してやるのも面白くないので無言でいるとじっと俺を見つめてからにやりと笑った。 「古城先輩って罪深いよな。天然で男を振り回すタイプ」 「はぁ?」 なんで俺が男を振り回さなくっちゃいけないんだよ?んなわけねーだろ?ば、ば、ばっかじゃねーの? 俺があたふたしてるうちに「僕を描いてくれたんだ」 そういって俺からナプキンを取り上げた。 「すげー噂以上に上手ですね。でもよかった、俺の事、こんな風に男前に描いてくれて!記念に貰っておきます」 「こら、勝手に……」 俺が腰を浮かせた瞬間、「可愛いお尻」と俺のケツをいきなり撫で上げた 「……っ!!!!」 こ、こいつ〜〜〜?何を考えてるんじゃ、お前は?思いきり睨むと 「クリーム付いてます」 そういって俺の口の端に付いていたクリームをすっと指先で掬い取り俺の目前でぺろりと舐めてみせる。 ひえ〜〜〜〜? 俺達の周囲に座っていた女の子達も呆気にとられて俺達を交互に見つめている。 俺はもう顔から火が出るどころか、顔が爆発するかと思った。こいつ、こいつ絶対変だ!(憤死!)
そのうえ、窓から完全に切れてる沢田の顔が見えた。こっちにすごい勢いでやってくる。 もしかして俺が鯉積にちょっかい出したと思って怒ってる? それは誤解だ、誤解だぞ? 俺はこのまま気絶するかと思った。多分気絶できたらしあわせなんだろう。俺はただただおろおろするばかりだった。 |