思い出を忘れたくて3-3

早春の番外


 俺は慌てて今の独り言を訂正しようと立上がった。だが、ふと冷静になってまた座り込む。

 今さら訂正してどうなるっていうんだ。そして俺は戦いていた。 いつもの沢田とのあまりの違いに。

 なんだよ、なんだよ、なんだっていうんだよ〜〜〜。いつもなら、『お前なんか大嫌いだ!』 なんて俺がいったって 沢田が素直に『そうか』ですますタマなんかじゃねーだろ?。

 それにもし普段俺が『二度と俺の家になんか戻ってくんな!』なんて 言おうものなら、 『そうか……そうだな』なんて言わずにどこかに無理矢理引っ張り込んで あんなことやこんな事をするいい口実にするのが、沢田だろ?。

 やっぱり 絶対に変だ。

 変なものを食ったのか?

 それとも新しい恋人ができたんだろうか?

 それはあの昂と呼ばれた男?

 俺は思わずきつく下唇を噛んだ。

 そんなのは嫌だ。沢田は俺のもんだ。俺だけの……だけどそんな事いえる筋合いがこの俺にはあるのか?今まで、俺はそんな自分の状況に感謝の欠片もなかった。

 どんなに抵抗したって、どんなに嫌がったって俺の意志なんか関係無いように沢田に好き放題されていたからだ。

 俺は嫌だ嫌だと言うだけでよくよく考えたら本気で抵抗なんかしてこなかったかもしれない。

 だって、本当はそんなに嫌じゃなかったんだ。

 沢田に強引にされるのが結構……好きとは言わないけど……嫌悪とは程遠い気持ちだった。

 確かにこの前エルボー喰らわすほど、抵抗したのは初めてだったかも。それが沢田に誤解されたのか?

 しかも俺、まだ謝ってねーし。

 それどころかさっきはもっと最悪な事にとんでもない独り言を沢田に聞かれちゃったのだ。

 謝ろう、やっぱり謝って俺がお前を嫌いじゃないって ちゃんと言おう。

 回数は減らして欲しいけど、沢田の腕の中にいるってとっても安心できるんだって言う事。

 俺は慌てて沢田の遠ざかっていった方向に沢田を追い掛ける。

 「沢田!まてよ!沢田」

 校舎のすぐ陰に沢田はサッカーシューズの紐を結び直すように跪いていた。

 「沢田……」

 「なんだ」

 「あの、あの……」

 「なに?さっきのお前の本心を聞かせてもらった事か?安心しな……もう、纏わりついたりしねーよ。俺が大嫌いなんだろう?親を心配させたくないから当分、お前の家に一応形だけは下宿させてもらう事になると思う。だからって二度とお前の家にいかないなんて約束はできないが、しばらくは、帰らないから安心するんだな」

 「違うんだ……そうじゃない……お、俺、ただ、謝りたくて……」

 「何が違う?お前に謝ってもらうことなんて何もねーな。さっさといかねーとここで犯すぞ」

 ここで犯す?ば、ばっかじゃねーの?ここはまだ、校内だぞ?誰がくるかわかんねーのに?

 でも俺は立ち去る事が出来なかった。少し震えていたけれど、この際ここでやられちゃったって、が、我慢するぞ!

 「震えてるんじゃねーか?俺がそんなに怖いか?今まで悪かったな」

 「さ、さわだ……」

 「俺はな……お前が嫌だ嫌だといいながら結構お前も喜んでると思っていたんだ」

 喜んではいないけど……嫌じゃなかった……この微妙な感じをどう俺の少ないボキャブラリーで 表現すればいいのか……。

 「とにかく当分俺に近付くな。お前に回りをチョロチョロされると迷惑なんだよ」 迷惑?その一言が俺を凍りつかせ、まるで金縛りにあったように身体も口も自由に動かない。 メーワクってなんだよ!メーワクって……

 そういったまま動けない俺を冷たい瞳で見下しながら沢田は立上がり俺をもう振り向きもせずにいってしまった。

 これって俺は失恋したってことか?それとも弄ばれて捨てられたって事か?

 いや、俺は女じゃねーから、弄ばれたとは思わないけど、俺はもう女に勃たなくなっちゃったんだぞ!

 いったい全体この落し前をどうとってくれるんだよ!

 俺を純ケツ……じゃねー……純潔な16才に戻せ!

 悔しい!なんかすごく悔しい!俺の話もちったー聞きやがれ!自分だけで結論出してんじゃねーよ。

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