思い出を忘れたくて3

早春の番外


 ……眠れない……俺はその晩何度も眠れなくて寝返りをうち、ついには起き上がってしまった。まだ夜中の2時半だ。傍らに目を移すと沢田が当たり前のような態度でベッドの半分以上の場所を取って深い眠りの森を彷徨っている。  

 最近自分でも感じるのだけれど、俺の身体は確実に、しかも急速に変化してると思う。

 まず第一に、この若い身空で俺は女性の裸に欲情しなくなった……。

 これは毎日のように沢田とやってるせいのような気がしていたが、先週沢田がサッカーの試合で1週間ほど家にいなかった時だってテレビに写る色っぽいお姉さんの姿をみても悲しい事に俺のからだには何の変化も起きなかった……のだ。

 疲れているんだな!その時はそう思った。

 それなのに、あぁそれなのに……俺はとんでもない事実に愕然とした。

 沢田の留守の時何気なく手にとった枕の沢田の残り香が俺を欲望の渦の中に引きずり込んだ事だ。

 そう、そうなんだ。

 俺はその時、確かに沢田の薫りに欲情したのだ。

 そんな自分が信じられない。うそだ、これは現実ではない……だれかそういってくれ!

 でないと俺……落ち込む……まじに落ち込むよ。

 なんで俺が男に欲情しなくちゃいけねーの?しかも一度も攻める側になったこともないんだよ?

 このまま、俺のあそこは用無しのまま朽ち果てていくのだろうか?

 そりゃ、俺のは楚楚として慎ましくて、沢田のみたいにヒュージでロングじゃないけどさ。

 このままトイレ以外の排泄は、沢田のごつい手の中だけなんて嫌過ぎる。

 いつだって握りつぶされるんじゃないかってびくびくしてるのに、沢田の奴、事もあろうか 『感じやすいな……』なんていいやがるんだ。どんなに『違〜〜う』と否定しても『感じやすい方が俺は好きだ』といって憚らない。

 おい?誰がお前の好みを聞いてるよ?ふざけんじゃねーぞ!

 第一、男が感じやすくてどうするんだよ?え?俺さまは今まで隠してきたが怒らせると怖いんだ!

 ………………はぁ、寝顔に呟いたって虚しいだけだな。

 こいつの寝顔は結構可愛いのに、どうしてあんなに常軌を逸した野郎なんだろう。

 それに本当に沢田も女に欲情しないんだろうか?俺はふとそんな疑問を持つ。 どうして、沢田は俺とこんな関係が続いているんだろう?そしていつまで続くのか?

 間違いなく突っ込む方の沢田には俺のようなアイデンティティの崩壊なんて意識の片隅にもないんだろうな。たしかに男相手なら妊娠の心配がないし、結婚も考えなくてもいい。面倒くさくないよな。

 しかもいったん沢田が俺の事が嫌になれば、下宿にしてる俺の家を出ていけばいいだけのこと。

 サッカーや、受験勉強で忙しいから面倒な恋愛をするより俺みたいな流されるタイプの後腐れなさそうな男に性欲処理してるだけのかな。

 おいおいおい!どうしちゃったよ俺?何をそんなに乙女してるんだ?やっぱり夜中にものを考えると、ついついマイナス思考になってしまうのかな。

 「だから丑三つ時は嫌いなんだ」俺はそう呟いてもう一度寝直そうと沢田の部屋に向おうとした。無論占領された俺のベッドのかわりに沢田のベッドで寝る為なのだが。

 一度起き上がってしまうと今さらごつい沢田とひとつのベッドで眠るのは狭過ぎる。

 ところが、何時の間に起きていたのかいきなり沢田の逞しい腕に腰を掴まれてベッドの中に 引きずり込まれた。

 「眠れないのか?」

 「あ、いや、あの……トイレ」

 「トイレはさっきいったろ?」

 なんで知ってんの?

 「あのさぁ、沢田は俺の何処が気に入ってるんだ?」

 「どうしてそんな事きくんだ?ねるぞ」

 「なぁ、沢田さぁ……女に欲情する事ってある?……俺って女っぽいかな?」

 「なに?お前は女に欲情してんのか?」

 「いや、それが……残念ながら俺、最近全然……だめなんだ」

 沢田はにやりと無気味な笑顔を俺に向ける

 「なんだダメなのか?そりゃ残念……おんなに欲情するようならたっぷりその身体を俺だけに欲情するように調教してやろうと思ったのに……」

 俺は背筋がぞぞ〜〜〜っとした。

 今までのあの行為が調教じゃないとしたらいったい、 お前にとっての調教って何?

 俺の頭の廻りを色とりどりのクエスチョンがぐるぐると回っていたが 恐ろしくて口になんて出せやしない。

 だいたい、お前は俺と3日に空けずやってるだろうよ。

 しかも休日前は寝る前に3回朝2回なんて普通で……これ以上は思いだしたくもないから言わねーけどさ。

 しかも、沢田の奴、ちょっとSが入ってるから俺が嫌がれば嫌がるほど嬉しそうなんだよな。

 この前なんて『挿れる瞬間に寄せるお前の眉間の皺が妙にそそる』なんていいやがっていきなりだよ。いきなり!俺が痛がったり苦しんだり知っていて喜んでるってことか?

 これって許せるか?許せねーよな?

 そんな俺の怒りを知ってか知らずか沢田はそっと唇を寄せてきた。まるで母ネコが子猫をいたわるように、そして愛おしむように顔を舐める。

 「古城はそれで充分男っぽい」そういって腰を引き寄せる。よせって……おい、変なモノ押し付けるな!しかもどうしてお前のはいつも元気なんだよ?

 俺は思わず沢田を睨み付けた。だが、沢田ときたら俺を抱き枕のように両手両足を絡めながら「今夜は疲れが取れないからもう寝ろ、朝になったら抱いてやるから」なんていいやがるのだ。ふざけんな!

 「やだ……」

 「なに?」

 「やりたくない」

 「ばかか?お前は?」

 「は?」

 「お前がそう言うと俺がやらずにいられなくなるのを知っていて煽ってるんだな?」

 「違〜〜う!!!」

 「朝連もあるのに仕方ないやつだ」

 いやだ〜〜〜!!!

 しかし沢田は有無を言わさず俺の 腰を引き寄せた。 

  NEXT   WORK TOP