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窓を開けると眼下に拡がる町並みから微かな朝食の薫りと小鳥のさえずり
が一気に僕を目覚めさせる。
「寒い……開けんなよ」
ベッドの中の恋人は思いきりシーツを引き寄せてその中にくるまった。
「部屋の空気を換えるだけだよ。寒くなったらエアコンをつけるから」
そういって俺はシーツの上からそっとキスをした。
いきなり腕を引っ張られてベッドの中に引きずり込まれる。
「ま、まて……窓がまだ開いてる」
「まだ時間あるだろ?エッチな事をしたらすぐに温まるって」
そういっていきなりパジャマごと下着を降ろそうとする。
「温まるってそんなことより声が外に聞こえるだろう!」
その悪戯な腕を掴んで左手で慌てて下ろされかけたパジャマを必死に押さえた。
「声出すほど、激しくやる気か?朝っぱらから?」
何を言ってるんだか!いきなり仕掛けてきたのはお前だろうよ。
「そんなわけないだろっ」
「怒るなよ、ちょっと温まろうと思っただけだろ」
腕を掴まれてまたベッドに引っ張り込まれるとそのまま吸い付くように唇を合わせてくる。
もう、25才にもなる野郎相手になんだが、唇は柔らかく爽やかなミントの香りがして幾度となく合わせたものなのにドキドキしてしまう。
「だ、だめだって……ユウ…」
「まてとか、だめとかリュウの方がうるさいよ。いいじゃん、勿体つけんな。その辺のギャルじゃあるまいに」
「でも朝食の用意をしなくちゃ」
もう、起きる時間なのに。それに朝食はお前の方がいつもがっちり食べてるじゃないか?
「んん〜〜いいよ。その辺りのシアトル系のコーヒーショップで食うから。それより今はリュウが食べたいな」
そんな事をいって思いきりボクサーを引っ張る。冗談じゃない、こっちは今日だって普通に会社がある。
最近、受け身になってないから、ユウはちっとも受け身の辛さをわからない。
「ダメだよ。ユウが下になってくれるならまだ、わかるけど」
「ってことは騎乗位?」
思わず、タオルケットを蹴りあげて、ベッドから抜け出した。
単なる言葉遊びに過ぎないって事は僕だってわかってる。休日前ならこっちの方がその気になることだってあるだろう。
だけど今日から、また仕事なんだって。
先週末はこっちからいろいろ雰囲気を作ったのにちっともそんな感じにならなくて、怒ってるのは僕の方だったはずなのに、急にユウの機嫌が悪くなる。
「もう、いいよ」
「当たり前だ、今日は平日の朝だ、しかも月曜日……何を考えてるんだよ」
僕がサニーサイドエッグを焼いている間、無言で雄斗はシャワーを浴びている。全くわがままなんだから。
そのまま朝食をすませたらいつもなら、雄斗は7時40分には家を出る。きゅきゅっと乱暴にネクタイを締めながら上着を放り投げるように肩にかけた。35分 いきなり玄関のチャイムが鳴った。
受話器を上げると見ず知らずの少女がモニターに映っている。
「せんせ〜おはようございます」
「おい、金森じゃないか。小池に鈴木も……。お前らどうやってここまで入った?」
雄斗は僕にはしばらくかけてないような柔らかな声で少女達に語りかけた。
だが、ここのマンションは管理人もいるし、玄関の呼び鈴は、余程の事がないと鳴ったりしない。
いったいどうなってるいるのだろう。
「おじさんが、同じマンションに住んでいるので開けてもらいました」
仕方なく俺は玄関のロックを外しドアを開けると、顔を赤くした中学生らしき少女が3人。
僕は慌てて、彼等から見えない場所に移動する。
「学校じゃ、チョコを渡すの禁止でしょう?夜はせんせー何時に帰るかわかんないし」
そういって派手にデコレーションされたチョコをそれぞれ渡していた。部屋の奥からユウの表情を盗み見ると
満更でもなさそうだ。
「仕方ないな。タクシー呼ぶから一緒に学校に行こう。目立たないところで降りれよ、お前ら」
こうなったら、もう僕なんかユウの眼中にない。
可愛い女の子達に囲まれて柔らかな笑みを浮かべる雄斗を僕は酷く面白くない気持ちで
見送った。
つづく
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